雨のもてぎで、笑顔もスピードも全開!2025年秋の「もてぎエンデューロ」から、頑張っていた、そして目立っていた人とチームを紹介します。



工藤政幸さん:4時間エンデューロ ロードソロ1位

工藤政幸さん(4時間エンデューロ ロードソロ1位)とスペシャライズド S-WORKS Tarmac SL8 photo:So Isobe

「いやぁ、最後はちょっとラッキーでした(笑)」と笑うのは、4時間エンデューロ・ロードソロ総合優勝の工藤政幸さん。レースでは最終周回で一時遅れながらも、先頭復帰してゴール勝負を制するという粘り勝ち。「登りで千切れちゃったんですけど、みんな疲れてるし、最後だからもう一度追いつけるかもって。スプリントは得意じゃないので勝負に加われれば良かったんですが、(2位に入った)坂大恵太さんの後ろに入れて、ラインが分かれたタイミングで思い切って踏みました」と振り返る。そしてフィニッシュライン上で差し切って優勝。最後は運良く差せちゃった、と言うものの、それは「差せちゃった」じゃなくて「差した」んですよ(取材班はバッチリ見てました)!

愛車はスペシャライズドのS-WORKS Tarmac SL8。レースマシンとしての総合力で選んだものの、実際に乗ってみると快適性の高さに惹かれたという。「正直、もっと硬いバイクかと思ってたんです。でも乗ってみたら想像以上に乗り心地が良くて、スピードも伸びる。とても良いバイクですね」と太鼓判。

サドルの角度はちょっと特殊 photo:So Isobe
ハンドルはRovalのRapideハンドル。エアロ性能を重視 photo:So Isobe


「快適で速い、とてもバランスのいいバイクだと思います」と太鼓判 photo:So Isobe

パーツ類はあえて奇をてらわず、「サドル(の角度)以外は全部オーソドックス。変に尖りすぎちゃうと、わけがわからなくなるでしょ(笑)」と言う。ただしボトムブラケットは、ポガチャルが使うことでも知られるBIKONE(ビコネ)の製品。手に入れた当時は日本代理店がなく個人で取り寄せたという。カステリのエアロジャージも「とても速く感じますし、何より恐ろしくフィット感が良いです。私と同じような体型の人には超オススメですね」と太鼓判を押す。

目指すのは、直前に迫ったツール・ド・おきなわ140kmでの優勝だ。「調子に乗らず、風邪ひかず、体調管理をちゃんとして遊びたいなと思ってます。おっさんですからね(笑)」。



廣瀬博子さん:4時間エンデューロ ロードウーマンソロ

廣瀬博子さん(4時間エンデューロ ロードウーマンソロ1位)とピナレロ DOGMA F photo:So Isobe

「出るからにはもちろん勝ちを狙ってました」。ハキハキした笑顔で語るのは、4時間エンデューロ・ロードウーマンソロ優勝の廣瀬博子さん。実はこの方、全日本マスターズトラックの個人追抜きで3連覇中という実力者。ロードは今季登録外ながらも安定した走りで狙い通り優勝を掴み取った。

愛車は泣く子も黙るピナレロのハイエンドモデル、DOGMA F。「実は自転車を始めた時からピナレロってかっこいいな、って思っていたんです。でも当時は値段が高くて手が出せなくて。お世話になっているショップがピナレロ専門店ってこともあって、もうこれが最後のチャンスかもと思って、思い切って買いました」と振り返る。バイクを受け取ってまだ数ヶ月だが、その感触には大満足。「よく空気を切り裂くように走るって言うじゃないですか。いやいや言い過ぎだよと思ってたんですけど……本当でした(笑)。向かい風でもスーッと進むんです」。

憧れていたピナレロ。思い切って今年納車したという photo:So Isobe

チェーンリングはデュラエース。トラック競技ベースなので大きいギアを選びたかったそう photo:So Isobe
パワーはガーミンのRallyペダルで計測 photo:So Isobe



パーツ構成はペダリスト店長の山崎泰史さんにほぼお任せ。「トレーニングもお願いしてる方なので、私の乗り方を全部わかってくれてるんです。自分であれこれ言うより、信頼して丸投げしました」。ホイールは宇都宮ブリッツェンがプロデュースするブイレコードで、「横風の影響がほとんどなくて、軽いし反応も良い。私の体重でも安心して踏めますね」と高評価。

コンポーネントはアルテグラをベースに、チェーンリングのみデュラエース(54-40T)。「アルテだと大きいチェーンリングが無いんですよ(最大は52-36T)。やっぱり掛かりがいいですね。トラックをやっていると、どうしても大きいギアを選びたくなります」。

今後の目標を聞くと、少し照れながらも力強く答えてくれた。「本当は大島のマスターズTTを狙ってたんですが、ちょっと事情が合わず。来年のグランフォンド世界選手権で良い成績を出せるように頑張りたいと思います!」。



Mukaikazeのみなさん:4時間エンデューロ 男女混合1位

Mukaikazeのみなさん(4時間エンデューロ 男女混合1位) photo:So Isobe

今年のもてぎエンデューロ、4時間エンデューロ男女混合クラスを制したのは、千葉を拠点に活動するチームMukaikaze(ムカイカゼ)。メンバーは千葉市のショップ「サイクル・フリーダム」に通う20代前半〜中盤の仲間で構成され、普段はロングライドやカフェライドを中心に楽しんでいるとのこと。

「チーム名は"OIKAZE"から取ったんです。市原にあるお気に入りのカフェで、みんなでよく集まる場所なんですよ」という。練習はフリーダムのライドに参加したり、南房総方面に向けて100kmほど走ったりと、がっつり練習とまったりカフェライドの半々くらいのバランスで楽しんでいるそう。

レースでは男女混合チームながら、平均ラップ7分台をキープ。「女性をカバーするというより、全員がイコールで走るチームです。むしろ彼女(尾上さん)がエースですね」と胸を張る。スタート直後はトップチームの集団に混ざり、「お姉ちゃん、ここ先頭グループだよ!」と間違えられる場面もあったとか。「でも、そんなこと言ってくるおじさまに、しっかり分からせました(笑)」と笑う。

「今回みんなで出場を決めて勝てたので、来年も出るしかないですね。せっかくなので同じメンバーで2連覇を目指したいなと思います」と、勝ってなお気合いは十分だ。



武田杏梨さん:2時間エンデューロ キッズ2位

武田杏梨さん(キッズレース4.8km女子1位、2時間エンデューロキッズ2位)とスペシャライズド Tarmac photo:So Isobe

2時間エンデューロ・キッズクラスで2位、カテゴリー内の女子として最速だったのは、あちこちのエンデューロ会場で黄色いジャージを目立たせているトライアスロンチーム「#1-PRIMERA-」に所属する武田杏梨さん。小学6年生ながら、堂々とした走りで大人顔負けの安定感を見せた。

「普段はトライアスロンをやってます。でも最近はあまり練習ができてなくて……今日は久しぶりのレースでした」と笑顔で語るものの、その走りは本物。朝のキッズレースではぶっちぎりの優勝で、2時間でも2位というダブルヘッダー。今回は家族全員で一緒に参戦でした。

愛車はスペシャライズドのTarmac。「トライアスロンのショップの方がコーチの知り合いで、いいのがあるよって紹介してくれたんです。特にこだわりはなかったけど、乗ってみたらすごく良くて」と、素直な笑顔。「夏休みにはカナダでトライアスロンの合宿にも行きました。サマーキャンプみたいな感じで、練習ばかりだったけど楽しかったです」。

今後の目標を尋ねると、迷わず即答。「トライアスロンの日本代表になりたいです。でも自転車の大会でも優勝したいですね」まだ12歳ながら、その言葉は本気。この先のレースシーンで杏梨さんが輝く姿を見られる日も、きっと遠くないはず!



半田信頼さん:2時間エンデューロ ロードソロ1位

半田信頼さん(2時間エンデューロ ロードソロ1位)とリドレー Helium SLX photo:So Isobe

「自分の得意な展開が来たんで、そこはもうギアかけて踏むだけでした」そう語るのは、2時間エンデューロ・ロードソロをスプリントで制した半田信頼さん。東京都足立区で自身の名前をもじった「パンダサイクル」を営む、まさに走れる店長だ。

実業団登録こそしていないが、ZWIFTでのオンラインレースが主戦場。「リアルレースは久しぶりでしたけど、スプリント勝負になったら負けられないと思ってました。何とか耐えていたので最後は"ローテキャンセル界隈"になっちゃいましたが...。」と笑う。最後は持ち味を存分に発揮し、きっちり差し切って優勝をつかんだ。

愛車はリドレーの軽量モデルであるHelium SLX。平坦が得意なのにHeliumを選んだ理由は振りの軽さ。「このバイクは踏み出しの軽さと反応の速さが絶妙なんですよね」と走りを語る。鮮やかなパープルとピンクの差し色が目を引くフレームは、まさに半田さんのアイデンティティ。「ピンクが好きなんです。お店のテーマカラーもピンクなので、統一感があるでしょ(笑)」。

ハンドル周りは全てこだわりのアルミ製。所有するバイクは全てディズナのアグリーR60ハンドルで揃えているという photo:So Isobe

シートポストもアルミ。トムソンのゼロオフセットを使う photo:So Isobe
ステムは140mm/マイナス20度。トラック用の「PISTA」を使う photo:So Isobe



組み方にも「ステムもハンドルもシートピラーも全部アルミです。カーボンのしなるフィーリングが嫌いなんですよね。スプリントで力が逃げる感じがあるので、反応の鋭さ重視です」と確固たるこだわりがある。デダのトラック用ステム「PISTA」(140mm/マイナス20度)とシャロー形状のディズナ アグリーR60ハンドルを組み合わせて深く低い前のポジションを作っている。

ショップのコンセプトも半田さんらしさに溢れている。「モノ売りではなく、コト売りが中心です。バイクを売って終わりじゃなくて、一緒に走って、一緒に遊ぶところまで付き合いたい。初心者でも気軽に始められる、そんなお店にしたいんです」。



横山昂平さん:6時間エンデューロ ロードソロ1位

横山昂平さん(6時間エンデューロ ロードソロ1位)とBMC Teammachine SLR01 photo:So Isobe

「運に恵まれた部分もありました。でも、やれることは全部やりました」そう語るのは、6時間エンデューロ・ロードソロを制した横山昂平さん。雨のもてぎを6時間、平均40km/hで240km走り抜き、最後は各カテゴリー混戦のスプリント勝負で勝利を掴んだ。

「今日は落車が本当に多かったです。目の前で3回、横や後ろでも何回も見ました。だから安全圏内の前の方にいることを意識して、有力選手が見える位置から絶対に離れないように走りました」。「正直、勝てるとは思ってなかったです」と言いつつ、最終コーナーを抜けた瞬間には、ライバルと横並びのスプリント。「2時間の選手も混じってたので大変でしたが、最後まで踏み切れたのは淡々と走る練習のおかげです」。

普段の練習は霞ヶ浦周回。「家からすぐ行けるんです。一周130kmありますが、90kmくらいを全力で走って帰るのが定番ですね」。雨の日も風の日も淡々と走るそのスタイルが、6時間の安定感を生んでいるという。

ホイールはエンヴィのSES 6.7。「サーキットエンデューロならこれですね」とイチオシ photo:So Isobe

オンボード動画も撮影。Youtubeチャンネルでアップされる予定、とのことです photo:So Isobe
軽さと空力を重視したヴィジョンの5D EVOハンドル photo:So Isobe



愛車はBMCのTeammachine SLR01だ。「正直、買うときは理由なかったんです(笑)。前に乗ってたのがコルナゴ・V3RS(パマペイント仕様)で、そのバイクを壊してしまって、すぐ乗れるのが欲しいと思ったときにショップにこれが在庫であったんです。見た目で選んだのに、乗ってみたらすごくバランスが良かった。硬いけど、踏みやすい。銀のフレームカラーも好きなんです」と、今はそのポテンシャルをとても気に入っている様子。

ホイールはエンヴィのSES 6.7。ポガチャルの活躍でリムハイトの低いSES4.5はよく見かけるようになったが、6.7をレースユースしている方はちょっと珍しい。「サーキットなら間違いなくこれ。圧倒的に伸びが良くて、淡々と走るサーキットエンデューロには最高です」。ヴィジョンの5D EVOハンドルも軽さと空力を重視したチョイスだ。

バイクは「硬いけど、踏みやすい。銀のフレームカラーも好き」と評価する photo:So Isobe

レーススタイルは逃げが得意。「去年は2時間の部で春・秋と両方優勝しました。どっちも逃げ切りでしたね。でも今回は雨と距離を考えて、スプリント一本に絞りました」と勝負勘もバッチリ。今後は来年のグランフォンド世界選手権が目標で「仕事がかなり忙しいんですが、スケジュールを調整してどうにか行きたい。32歳で世界戦に挑むって、最後のチャンスかもしれないですからね」と静かに萌える意欲を話してくれた。

ちなみに、横山さんはオンボード映像を中心にYoutubeチャンネル「サイクリズム レコード」を運営中。今回の動画もアップされております。

text&photo:So Isobe

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