圧巻の走りでステージを制したガンナは「ホットシートでの3時間の方が苦しかった」と笑い、アルメイダは「“もし”は考えない。やれることをコントロールするだけ」と語った。コース短縮の個人タイムトライアルとなったブエルタ第18ステージを、選手たちの言葉で振り返る。



ステージ優勝 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)

13分フラットでフィニッシュしたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が photo:A.S.O.

(レースよりも)むしろホットシートに3時間座っていた方が苦しかった(笑)。走り出しはリズムがなかなか掴めなかったものの、最後は数字を気にせず感覚に任せて踏み切った。第3週は(ベルナルの勝利など)素晴らしい流れだ。残るステージも全力で臨む。

ツール・ド・フランスで落車リタイアした後、しばらく落ち込んだ。そこからバイクに戻るのは簡単ではなかったものの、闘う気持ちで戻ってきた。ここまで2週間のブエルタで脚には登坂の疲労が蓄積している。体重85kgでブエルタの過酷な山岳を登り続けるのは簡単ではない。だけどそんな中で勝つことができて嬉しい。

ステージ2位&マイヨモンターニャ(山岳賞) ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)

ガンナに1秒差まで迫ったジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

ここ最近で最もTTの感覚が良かったのは、依然として昨年(2位だった10月)のクロノ・デ・ナシオンだ。でもガンナに次ぐ2位というのは素晴らしい結果。なんたって彼は世界最高のTTスペシャリストなのだから。自分の出力をモニターしながら進み、あれ以上の力は出せなかった。スタート前に彼の走りを画面で見ていた時、時速67km近い数値を出していたのだからね。

第20ステージこそ僕の強さを発揮できる場だ。ジョアン(アルメイダ)の調子は良いし、今日も僅かにタイム差を縮めた。最終山岳は決定的な動きが生まれるほどの難易度ではない。勝敗を決めるのはこの3週間で蓄積された疲労ということになるだろう。ステージ全体の難易度も高いので、最後の山岳はボーナスみたいなものだ。

ステージ3位&総合2位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)

8秒遅れの区間3位だったジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

─コース短縮がなければと思うか?
それは永遠に分からないことだろう。人生は“もし”の積み重ねだからね。あまり考えすぎても仕方がない。結果には十分満足すべきだと思うし、今日は調子も良かった。

開幕日と同じ自信を持っているから、できる限りのことをやるだけ。良い日もあれば悪い日もあるので、ただ集中して自分にできることをすべてやり、コントロールできるものを徹底してコントロールするだけだ。

ステージ9位&マイヨロホ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

アルメイダと40秒差まで詰められたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

今日の結果には満足している。今日はフラットで、体重の重い選手向きのコースだった。平均時速が55km/hを超えるTTは初めてだ。だからこそ良い結果だと言える。まだ総合首位に立っているし、すでに明日と明後日に意識を向けている。

ステージ22位で総合3位を守ったトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)

数値的には過去最高のTTとなった。ここに向けて登りなどの強化に集中し、チームTTの練習はしたが、個人TTにはそれほど時間を割いてこなかった。そんな中でも脚に力を感じた。

─もっと長い距離のTTを走りたかったか?
今日より長いTTを望む選手などいないと思う(笑)。ビルバオの(第11)ステージ以降、精神的な疲労を感じていた。そのため第2週の後半は苦しみながら走っていた。だが第3週に入り、第1週のような調子が戻ってきた。

グランツールでここまで総合上位にいるのは初めてだ。僕にとって総合表彰台に立つことはステージ優勝よりも価値がある。勝利への渇望と総合表彰台の価値、そのバランスを取るのに苦労している。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.