抗議デモのため27.2kmが12.2kmに短縮された、ブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージの個人タイムトライアル。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が元世界王者らしい圧巻の走りでステージ優勝を飾り、区間3位のアルメイダがヴィンゲゴーとの差を10秒縮めた。

マイヨロホ保持の正念場を迎えたヴィンゲゴー photo:A.S.O. 
カメラに視線を送るアルメイダ photo:A.S.O.
9月11日(木)第18ステージ
バリャドリッド〜バリャドリッド 12.2km(個人TT)
獲得標高差 33m
ブエルタ・ア・エスパーニャも佳境に入った第18ステージは、今大会唯一の個人タイムトライアル。舞台は2023年大会でもTTが行われたバリャドリッドで、当初は27.2kmの設定だったが、レース主催者は選手の安全確保のためコースのほぼ全面をバリケードで封鎖できる12.2kmに短縮。コース内へ侵入を試みた抗議者が現れたものの、450名以上が動員された警察によって未然に防がれ、ステージは問題なく進行した。
優勝候補の筆頭は2年前にステージ優勝したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)。また、総合首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)と50秒差で総合2位につけるジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)の戦い、そして総合表彰台を賭けたトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の争い(36秒差)にも注目が集まった。

バリャドリッドでの短縮コースで行われた12.2kmの個人タイムトライアル photo:A.S.O.

153名の選手が駆けたブエルタ第18ステージ photo:A.S.O.
総合成績の下位から順にスタートし、序盤組で好走したのはオランダのTT選手権で2連覇中のダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック)。ジロ・デ・イタリアの個人TTを制した26歳は、途中に変更されたコーナーでのミスを乗り越え、その後の基準となる13分19秒でフィニッシュ。その直後に大本命であるイタリア王者のガンナが走り出した。
元世界王者のガンナは4km地点の第1中間計測をホーレより1秒遅れで通過。しかし続く8kmの第2計測で4秒上回るトップタイムを刻むと、後半に猛チャージをかけ13分フラットでフィニッシュ。平均時速56.2km/hという、驚異的なスピードを叩き出した。

全体の17番目に走り出したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.

13分フラットでフィニッシュしたフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が photo:A.S.O.
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)は、前日に見せた疲労を感じさせない走りで最終的に区間14位でレースを終える。集団スプリントが予想される翌日に向けて弾みをつけるなか、トラック選手でもあるイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)はトップに11秒差と迫る。TTスペシャリストで来年チューダー・プロサイクリングへの移籍が決まっているシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)も12秒遅れと、ガンナには届かなかった。
この後に出走する総合上位勢を含め、トップタイムに最も肉薄したのはマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)だった。元オーストラリアTT王者のヴァインは第1計測をガンナより3秒早いタイムで通過し、そのリードを第2計測で9秒まで広げてフィニッシュに飛び込んだものの、ガンナに僅か0.9秒及ばなかった。

ガンナに1秒差まで迫ったジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

区間4位と健闘したブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) photo:CorVos
フランスTT選手権を2連覇中のブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)もガンナには10秒及ばず、いよいよ総合上位勢が登場。最後から4番目にヒンドレーが走り出し、13分31秒でフィニッシュ。直後に2017年のTT世界選手権ジュニア王者のピドコックがヒンドレーを3秒上回り、僅かに総合リードを広げた。
2年前はここで区間4位に入っている相性の良いアルメイダがスタート。第1計測をトップタイで通過し、後半にタイムを失ったものの、ガンナの8秒遅れで暫定3位に食い込んだ。
そして153番目、マイヨロホを着るヴィンゲゴーが走り出す。第1計測をトップから2秒遅れとまずまずの出だしで通過し、第2計測はアルメイダから3秒遅れで通過。結果的にトップから18秒遅れ、アルメイダから10秒遅れでフィニッシュ。総合2位とのタイム差を50秒から40秒まで縮められたものの、「体重の重い選手に向いているコースだから、9位という結果にも満足している。まだ総合首位に立っているし、すでに明日、明後日に意識を向けている」と語った。

8秒遅れの区間3位だったジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

ステージ9位でマイヨロホを守ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
この結果、約140名の走りをホットシートで見守ったガンナがステージ優勝に輝く。「むしろホットシートに座っていた3時間の方が苦しかった(笑)。走り出しはリズムがなかなか掴めなかったものの、最後は数字を気にせず感覚に任せて踏み切った。ツール・ド・フランスでの落車の後、闘う気持ちで戻ってきた。脚には登坂の疲労が溜まっており、85kgの体重でブエルタの過酷な山岳を登り続けるのは簡単ではない」と、ようやく訪れた勝利のチャンスを掴んだガンナは語った。
総合争いではマシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)がフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)を抜いて総合6位に浮上。それ以外で総合上位に大きな動きはなく、ヴィンゲゴーはマイヨロホのままラスト3日間に臨むこととなった。

ツールでの落車リタイアを乗り越え、勝利を飾った フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.

アルメイダと40秒差まで詰められたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.


9月11日(木)第18ステージ
バリャドリッド〜バリャドリッド 12.2km(個人TT)
獲得標高差 33m
ブエルタ・ア・エスパーニャも佳境に入った第18ステージは、今大会唯一の個人タイムトライアル。舞台は2023年大会でもTTが行われたバリャドリッドで、当初は27.2kmの設定だったが、レース主催者は選手の安全確保のためコースのほぼ全面をバリケードで封鎖できる12.2kmに短縮。コース内へ侵入を試みた抗議者が現れたものの、450名以上が動員された警察によって未然に防がれ、ステージは問題なく進行した。
優勝候補の筆頭は2年前にステージ優勝したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)。また、総合首位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)と50秒差で総合2位につけるジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)の戦い、そして総合表彰台を賭けたトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の争い(36秒差)にも注目が集まった。


総合成績の下位から順にスタートし、序盤組で好走したのはオランダのTT選手権で2連覇中のダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック)。ジロ・デ・イタリアの個人TTを制した26歳は、途中に変更されたコーナーでのミスを乗り越え、その後の基準となる13分19秒でフィニッシュ。その直後に大本命であるイタリア王者のガンナが走り出した。
元世界王者のガンナは4km地点の第1中間計測をホーレより1秒遅れで通過。しかし続く8kmの第2計測で4秒上回るトップタイムを刻むと、後半に猛チャージをかけ13分フラットでフィニッシュ。平均時速56.2km/hという、驚異的なスピードを叩き出した。


マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)は、前日に見せた疲労を感じさせない走りで最終的に区間14位でレースを終える。集団スプリントが予想される翌日に向けて弾みをつけるなか、トラック選手でもあるイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)はトップに11秒差と迫る。TTスペシャリストで来年チューダー・プロサイクリングへの移籍が決まっているシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)も12秒遅れと、ガンナには届かなかった。
この後に出走する総合上位勢を含め、トップタイムに最も肉薄したのはマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)だった。元オーストラリアTT王者のヴァインは第1計測をガンナより3秒早いタイムで通過し、そのリードを第2計測で9秒まで広げてフィニッシュに飛び込んだものの、ガンナに僅か0.9秒及ばなかった。


フランスTT選手権を2連覇中のブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール)もガンナには10秒及ばず、いよいよ総合上位勢が登場。最後から4番目にヒンドレーが走り出し、13分31秒でフィニッシュ。直後に2017年のTT世界選手権ジュニア王者のピドコックがヒンドレーを3秒上回り、僅かに総合リードを広げた。
2年前はここで区間4位に入っている相性の良いアルメイダがスタート。第1計測をトップタイで通過し、後半にタイムを失ったものの、ガンナの8秒遅れで暫定3位に食い込んだ。
そして153番目、マイヨロホを着るヴィンゲゴーが走り出す。第1計測をトップから2秒遅れとまずまずの出だしで通過し、第2計測はアルメイダから3秒遅れで通過。結果的にトップから18秒遅れ、アルメイダから10秒遅れでフィニッシュ。総合2位とのタイム差を50秒から40秒まで縮められたものの、「体重の重い選手に向いているコースだから、9位という結果にも満足している。まだ総合首位に立っているし、すでに明日、明後日に意識を向けている」と語った。


この結果、約140名の走りをホットシートで見守ったガンナがステージ優勝に輝く。「むしろホットシートに座っていた3時間の方が苦しかった(笑)。走り出しはリズムがなかなか掴めなかったものの、最後は数字を気にせず感覚に任せて踏み切った。ツール・ド・フランスでの落車の後、闘う気持ちで戻ってきた。脚には登坂の疲労が溜まっており、85kgの体重でブエルタの過酷な山岳を登り続けるのは簡単ではない」と、ようやく訪れた勝利のチャンスを掴んだガンナは語った。
総合争いではマシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)がフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)を抜いて総合6位に浮上。それ以外で総合上位に大きな動きはなく、ヴィンゲゴーはマイヨロホのままラスト3日間に臨むこととなった。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第18ステージ
1位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | 13:00 |
2位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) | +0:01 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +0:08 |
4位 | ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +0:10 |
5位 | イヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +0:11 |
6位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | +0:12 |
7位 | ケランド・オブライアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | +0:15 |
8位 | アレック・セガールト(ベルギー、ロット) | +0:16 |
9位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:18 |
10位 | ダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック) | +0:19 |
22位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | +0:29 |
23位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:32 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 65:07:13 |
2位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +0:40 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | +2:39 |
4位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +3:18 |
5位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +5:17 |
6位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +5:20 |
7位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +4:57 |
8位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +7:26 |
9位 | トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) | +7:42 |
10位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +10:19 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 239pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 160pts |
3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | 115pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) | 61pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 41pts |
3位 | ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 32pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 65:11:32 |
2位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +0:58 |
3位 | ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +8:05 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツXRG | 194:12:20 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +29:17 |
3位 | デカトロンAG2Rラモンディアール | +1:07:49 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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