開催中のブエルタ・ア・エスパーニャに、連日影響を及ぼしている、パレスチナの旗を掲げたデモ隊。第11ステージは安全確保のためフィニッシュ地点が使えず、第15ステージは沿道から飛び出してきた抗議者により落車が発生。混沌の状況を振り返る。



特にスタート地点で多く掲げられるパレスチナの旗 photo:CorVos

スペインに入国した初日から沿道で多く見られたのはパレスチナの旗。それはスタートとフィニッシュ地点のみならず、中間スプリントポイントやカテゴリー山岳の頂上付近など、レース映像で使われる要所が多かった。

その抗議者がレース結果に影響を及ぼしたのは、スペインに入国した初日の第5ステージ、24.1kmのチームタイムトライアルでだった。18番目にスタートしたイスラエル・プレミアテックはデモ隊にコースを塞がれ、警察車両とモトバイクが進路を確保したが、数名は一時停止を余儀なくされた。

第10ステージではメイン集団に突撃したデモ隊によってシモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ)が落車。そして翌日の第11ステージでは、この日のフィニッシュ地点であったビルバオの市街地にデモ隊が集結し、「安全確保が困難」と判断されたため、このステージに勝者は設けず、フィニッシュ手前3km地点で総合タイムを計測するという措置が取られた。

この連日続く抗議活動の影響を受け、第14ステージにイスラエル・プレミアテックは胸元から「イスラエル」の文字を削除したジャージで出走。スペインのEFEによると、同ステージでは主催者が使用していたラジオ無線がハッキングされ、政治的なスローガンや歌に差し替えられていた。

休息日前日の第15ステージでは、残り56km地点で草陰に隠れていた抗議者が、リドル・トレックの牽引する逃げ集団に突入を試みて直前で転倒した。それを制止すべく警官がコースを横断し、その回避行動の影響でハビエル・ロモ(スペイン、モビスター)が落車。レース復帰が遅れたロモだったが、大きな怪我はなく無事フィニッシュしている。

ブエルタは第11ステージが行われた9月3日に、抗議デモに対する声明を発表。「選手の安全と身体的な保全は、主催者にとって絶対的な最優先事項である。ステージ中に起きた出来事については強く非難する」とし、「大会組織の全メンバーは、今後も当局や国家・地域の治安当局と緊密に連携し、安全とレースの円滑な運営を保証するために取り組みを続ける」とコメント。

一部メディアが、大会側が抗議者が集結する可能性のあるマドリッドではなく、第20ステージのフィニッシュ地点である1級山岳ナバセラダの頂上で大会が終わることを予定していると報道。しかし主催者は「第21ステージの中止の可能性について、我々は否定する」と発表した。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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