フィニッシュ地点にデモ隊が集結したため、ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージの勝者はなしとなった。残り3km地点で総合タイムが計測される措置が取られ、最終山岳で飛び出したトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)とヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が総合タイムを稼いだ。

特別ユニフォームが手渡されたヴィンゲゴー photo:A.S.O. 
バスク出身のランダ photo:CorVos

スタート地点となったサン・マメススタジアム photo:CorVos
9月3日(水)第11ステージ
ビルバオ〜ビルバオ 157.4km(丘陵)
獲得標高差 3,185m

第11ステージ ビルバオ〜ビルバオ image:A.S.O. ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージの舞台は、スペインでも自転車競技熱が高いバスク地方。コースはバスクらしい短い急坂が続く典型的な丘陵ステージで、5つの3級、2つの2級山岳が等間隔に配置され、後半に向けて難度が増すレイアウト。終盤は2023年ツール・ド・フランス第1ステージでも登場した2級山岳ビベロ(距離4.2km/平均8.3%)を2度越え、同じく3級山岳ピケ峠(距離2.3km/平均8.8%)へと続く。
前日ステージにマイヨロホを取り戻したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)を先頭にレースはスタート。この日も序盤から逃げ狙いのアタックが相次ぐなか、1つ目の3級山岳の頂上手前でマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)とジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が飛び出す。頂上は2日連続の逃げとなったニコラウが先頭通過したが、下りでピーダスンが加速し、単独先頭に立った。

スタート直後に飛び出したマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)とジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) photo:A.S.O.

プロトンはこの日、ヴィスマ・リースアバイクが終始ハイペースを維持した photo:A.S.O.
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るピーダスンには、メイン集団からマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)とオールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)が合流する。先頭3名は協調して続く2つの3級山岳をクリアしたものの、プロトンを先導するヴィスマ・リースアバイクがタイトにペースを管理し、タイムギャップは2分を超えない。
続く3級山岳モルガ(距離8.2km/平均3.5%)に入ると直後にソレルが加速。登坂耐性がありながらもスプリンタータイプのピーダスンとアウラールを振り落とす。バスクにフィニッシュした2022年大会に15km独走勝利を決め、本人も「もう一度ここで勝ちたいが、難しいだろう」とレース前に語っていたソレル。ここにルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が追いつくが、残り59kmでプロトンに吸収され、レースは振り出しに戻った。
やがて計2度登坂する2級山岳ビベロ(距離4.2km/平均8.3%)の1度目へ。ビルバオから南東約25kmのムルギア出身であるミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)が飛び出し、そこにブエルタ通算2勝のサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)が合流する。先頭2名は周回の1度目のフィニッシュラインを通過。プロトンからはピーダスンがアタックし、お目付け役のヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)ら6名が追走集団を形成した。

単独先頭に立ったミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

ランダが遅れ、サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)がレース先頭に立つ photo:CorVos
中間スプリントはランダが先頭通過。来季Q36.5プロサイクリング移籍が発表されているエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)も入った追走では、ピーダスンがトップを取り15ポイントを加算。なおプロトンは引き続きヴィスマがハイペースで牽引し、追走集団を捕捉。先頭では背中を痛めたランダが遅れ、ブイトラゴが単独先頭に立った。
しかしブイトラゴも2度目のビベロの頂上手前で吸収され、総合上位による精鋭集団からジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)が加速する。だがヴィンゲゴーらは離れず、隊列は再びヴィスマのコントロールに戻る。そして頂上通過の直後、チーム無線を通じて「このステージに勝者は設けず、フィニッシュ手前3km地点で総合タイムを計測する」との通達が選手に伝えられた。
その理由はフィニッシュ地点でのデモ抗議があり、安全確保が困難と判断されたため。今大会は第5ステージのチームタイムトライアルでも、パレスチナの国旗を掲げたデモ隊が、イスラエル・プレミアテックを妨げる事態があった。

3級山岳ピケ峠で人数が絞られていく photo:A.S.O.

最終山岳でアタックしたトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) photo:CorVos
カンペナールツが集団先頭でスローダウンを促し、下りと平坦で登りで遅れた選手が続々合流した。そして暫定のフィニッシュ地点となった残り3kmへ向け、いよいよ最終3級山岳ピケ峠(距離2.3km/平均8.8%)に突入する。
勾配17%に達する区間で、集団先頭に立ったのは総合4位のトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)だった。スピードを上げるとヴィンゲゴーらライバルを引き離す。一方でマイペースのヴィンゲゴーは頂上直後に追いつき、ピドコックと共に残り3km地点を通過。ヴィンゲゴーは直後に脚を緩めチームメイトの合流を待つ一方、ピドコックはそのまま警備隊とデモ隊が対峙するフィニッシュ地点へ向かった。

残り3km地点を通過し、チームバスに向かう総合上位の選手たち photo:CorVos
残り3km地点を先頭通過し、アルメイダらから10秒を奪ったヴィンゲゴー。「今日、誕生日を迎えた息子のためにも勝ちたかった。危険を感じることはなかったが、1度目のフィニッシュ地点を通過したとき、何かが起きていることは分かった。レースがニュートラルとなったことを聞いた後、再び集中するのに少し苦労した。その後ピドコックがアタックし、それに反応して2人で前へと進んだ」と、混沌のレースを振り返った。
一方、勝利の可能性を逃したピドコックは「この失望を言葉にすることは難しい。今日は自分の日だと思っていた。残り3km地点がフィニッシュになることは知っていたが、それがどこかは分からなかった。でもブエルタは僕らの安全を確保するべく、できる限りを尽くしたと思う。政治的なことには言及したくないし、トラブルにも巻き込まれたくない」とコメントしている。



9月3日(水)第11ステージ
ビルバオ〜ビルバオ 157.4km(丘陵)
獲得標高差 3,185m

前日ステージにマイヨロホを取り戻したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)を先頭にレースはスタート。この日も序盤から逃げ狙いのアタックが相次ぐなか、1つ目の3級山岳の頂上手前でマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)とジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が飛び出す。頂上は2日連続の逃げとなったニコラウが先頭通過したが、下りでピーダスンが加速し、単独先頭に立った。


マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るピーダスンには、メイン集団からマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)とオールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)が合流する。先頭3名は協調して続く2つの3級山岳をクリアしたものの、プロトンを先導するヴィスマ・リースアバイクがタイトにペースを管理し、タイムギャップは2分を超えない。
続く3級山岳モルガ(距離8.2km/平均3.5%)に入ると直後にソレルが加速。登坂耐性がありながらもスプリンタータイプのピーダスンとアウラールを振り落とす。バスクにフィニッシュした2022年大会に15km独走勝利を決め、本人も「もう一度ここで勝ちたいが、難しいだろう」とレース前に語っていたソレル。ここにルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が追いつくが、残り59kmでプロトンに吸収され、レースは振り出しに戻った。
やがて計2度登坂する2級山岳ビベロ(距離4.2km/平均8.3%)の1度目へ。ビルバオから南東約25kmのムルギア出身であるミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)が飛び出し、そこにブエルタ通算2勝のサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)が合流する。先頭2名は周回の1度目のフィニッシュラインを通過。プロトンからはピーダスンがアタックし、お目付け役のヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)ら6名が追走集団を形成した。


中間スプリントはランダが先頭通過。来季Q36.5プロサイクリング移籍が発表されているエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)も入った追走では、ピーダスンがトップを取り15ポイントを加算。なおプロトンは引き続きヴィスマがハイペースで牽引し、追走集団を捕捉。先頭では背中を痛めたランダが遅れ、ブイトラゴが単独先頭に立った。
しかしブイトラゴも2度目のビベロの頂上手前で吸収され、総合上位による精鋭集団からジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)が加速する。だがヴィンゲゴーらは離れず、隊列は再びヴィスマのコントロールに戻る。そして頂上通過の直後、チーム無線を通じて「このステージに勝者は設けず、フィニッシュ手前3km地点で総合タイムを計測する」との通達が選手に伝えられた。
その理由はフィニッシュ地点でのデモ抗議があり、安全確保が困難と判断されたため。今大会は第5ステージのチームタイムトライアルでも、パレスチナの国旗を掲げたデモ隊が、イスラエル・プレミアテックを妨げる事態があった。


カンペナールツが集団先頭でスローダウンを促し、下りと平坦で登りで遅れた選手が続々合流した。そして暫定のフィニッシュ地点となった残り3kmへ向け、いよいよ最終3級山岳ピケ峠(距離2.3km/平均8.8%)に突入する。
勾配17%に達する区間で、集団先頭に立ったのは総合4位のトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)だった。スピードを上げるとヴィンゲゴーらライバルを引き離す。一方でマイペースのヴィンゲゴーは頂上直後に追いつき、ピドコックと共に残り3km地点を通過。ヴィンゲゴーは直後に脚を緩めチームメイトの合流を待つ一方、ピドコックはそのまま警備隊とデモ隊が対峙するフィニッシュ地点へ向かった。

残り3km地点を先頭通過し、アルメイダらから10秒を奪ったヴィンゲゴー。「今日、誕生日を迎えた息子のためにも勝ちたかった。危険を感じることはなかったが、1度目のフィニッシュ地点を通過したとき、何かが起きていることは分かった。レースがニュートラルとなったことを聞いた後、再び集中するのに少し苦労した。その後ピドコックがアタックし、それに反応して2人で前へと進んだ」と、混沌のレースを振り返った。
一方、勝利の可能性を逃したピドコックは「この失望を言葉にすることは難しい。今日は自分の日だと思っていた。残り3km地点がフィニッシュになることは知っていたが、それがどこかは分からなかった。でもブエルタは僕らの安全を確保するべく、できる限りを尽くしたと思う。政治的なことには言及したくないし、トラブルにも巻き込まれたくない」とコメントしている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第11ステージ(残り3km地点の通過順)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | |
2位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | |
3位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:10 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | |
5位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
6位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | |
7位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | +0:24 |
8位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | |
9位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
10位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 41:14:02 |
2位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +0:50 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | +0:56 |
4位 | トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:06 |
5位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +2:17 |
6位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +2:26 |
7位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +2:30 |
8位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +2:33 |
9位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +2:44 |
10位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +3:11 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 135pts |
2位 | イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) | 111pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 105pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) | 46pts |
2位 | ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 25pts |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) | 20pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 41:16:46 |
2位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +0:27 |
3位 | ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +1:50 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツXRG | 122:51:44 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +6:04 |
3位 | XDSアスタナ | +23:01 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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