テクニカルな下りから小集団スプリントに持ち込まれたツール・ド・フランス・ファム第5ステージで、キンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル)が勝利。フォレリングらを退け、アフリカ出身の選手として史上初となるツール区間優勝を果たした。



アクチュアルスタートを待つ、レースディレクターのマリオン・ルース氏 photo:A.S.O.

ツール・ド・フランス・ファム第5ステージの舞台は、今大会の最長距離である165.8kmのコース。東に向かう一行はジョネイ・マリニー・フュテュロスコープからゲレを目指し、その大部分は平坦路。しかし、残り約36kmからは4級山岳が2つ、そして1つのに3級山岳が設定され、フィニッシュ地点はテクニカルな下りを経た先にある。

第3ステージに続き、今大会2度目のエスケープを決めたアリソン・ジャクソン(カナダ、EFオートリー・キャノンデール)を含む逃げ集団は5名。モビスターを中心に牽引するメイン集団では、20歳のマリオン・ビュネル(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)らが落車に巻き込まれる場面も。しかし幸い大きな怪我には繋がらず、逃げとプロトンのタイム差は4分弱まで拡がった。

アリソン・ジャクソン(カナダ、EFオートリー・キャノンデール)を含む逃げ集団は5名 photo:CorVos

第3ステージにマイヨジョーヌを着用したキンバリー・ルコート(モーリシャス)で勝負したいAGインシュランス・スーダルや、逃げに選手を送っているUAEチームADQもプロトンの牽引に加わると、一気に逃げとのタイム差は縮まっていく。ジャクソンが中間スプリントを先頭通過し、メイン集団ではマイヨヴェール(ポイント賞)を着るロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム)がランキング2位のマリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)を退け、11ポイントを獲得した。

丘陵地帯に入ると、逃げ集団はジャクソンを含む3名に絞られ、2つめの4級山岳(残り25.4km)でブローディー・チャップマン(オーストラリア、UAEチームADQ)がアタック。一方、フェニックス・ドゥクーニンクの牽引するプロトンがハイペースで牽引すると、ウィーベスらスプリンターが次々と遅れ、この日の優勝候補にも挙げられた世界王者、ロッテ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム)も集団から脱落した。

最後まで粘ったブローディー・チャップマン(オーストラリア、UAEチームADQ)も捉えられた photo:A.S.O.

チャップマンが先頭で粘るなか、人数の絞られた追走集団では散発的なアタックが続く。最終3級山岳でチャップマンを吸収した集団からは、頂上手前1.6km地点でルコートが仕掛けた。これによってフォスは遅れ、先頭はデミ・フォレリング(オランダ、FDJスエズ)やカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)など総合上位勢を含む7名に絞られた。

フォスら追走を振り切った先頭集団は、そのままフラムルージュ(残り1km)を通過。精鋭集団のなかでも最もスプリントが得意なルコートが踏み込むと、そのスピードには猛追したフォレリングも届かず、モーリシャス王者がガッツポーズと共にフィニッシュラインを通過した。

小集団スプリントを制したキンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

初勝利と共に、マイヨジョーヌを取り戻したキンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル) photo:A.S.O.

勝利を確信してガッツポーズするのが早すぎたため、ハンドルを投げたフォレリングと僅差の勝利となったルコート。「僅差でも勝利は勝利。今度はフィニッシュラインを越えるまで踏み続けたい。夫が心臓発作を起こさないためにもね(笑)」とジョークで勝利を喜ぶ。今年4月のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ・ファムでも小集団スプリントを制したルコートは今年、29歳にしてキャリアハイの活躍を見せている。

フォスが33秒遅れでフィニッシュしたため、ルコートはマイヨジョーヌを奪還。アフリカ出身の選手として史上初となるツール区間優勝に華を添えた。

なお、レース序盤に発生した落車により、元世界王者でスプリンターのエリーザ・バルサモ(イタリア、リドル・トレック)がリタイア。またパリ五輪ロードの金メダリスト、クリステン・フォークナー(アメリカ、EFオートリー・キャノンデール)も体調不良のためレースを去っている。

ツール・ド・フランス・ファム2025第5ステージ結果
1位 キンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル) 3:54:07
2位 デミ・フォレリング(オランダ、FDJスエズ)
3位 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス・プロタイム)
4位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)
5位 ポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)
6位 サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル)
7位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)
8位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:33
9位 エリーズ・シャベイ(スイス、FDJ・スエズ)
10位 ドミニカ・ヴウォダルチク(ポーランド、UAEチームADQ)
個人総合成績(マイヨジョーヌ)
1位 キンバリー・ルコート(モーリシャス、AGインシュランス・スーダル) 15:07:14
2位 ポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、ヴィスマ・リースアバイク) +0:18
3位 デミ・フォレリング(オランダ、FDJスエズ) +0:23
4位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム・ゾンダクリプト) +0:24
5位 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス・プロタイム) +0:27
6位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:37
7位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:45
8位 サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) +0:55
9位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +1:04
10位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、EFオートリー・キャノンデール) +1:16
その他の特別賞
山岳賞 エリーズ・シャベイ(スイス、FDJ・スエズ)
ポイント賞 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム)
ヤングライダー賞 ジュリー・ベゴ(フランス、コフィディス)
チーム総合成績 FDJ・スエズ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.