2024/11/26(火) - 10:11
プロマウンテンアスリート 池田祐樹(TOPEAK ERGON)がニュージーランドのMTBトレイル事情を紹介する。MTB天国とも言えるロトルア周辺の”IMBA認定ゴールドレベル”のトレイルは素晴らしい環境で、学ぶべきシステムがいっぱいだ。
ニュージーランド・ロトルアの極上のトレイルを求めて世界中からマウンテンバイカーが集まってくる。MTBパークのトレイルはもちろん秀逸で、日本とはまた違ったコース上のルールなど私にとっても興味深い点がたくさんあったので、ぜひここで紹介したい。
ロトルアはMTBフリーライドの世界最高峰イベント「クランクワークス」や南半球最大のMTBイベント「Whaka100(レポート記事)」などが開催される地として有名だが、イベントに関係なく「ロトルアのトレイルに乗りたい」という純粋な理由だけで多くの人が集まるのだ。
ロトルアとその周辺にはいくつかトレイルシステムがあるが、5,600ヘクタール(東京ドーム約1191個分!)の圧倒的な広さと、総距離200kmを超えるトレイルを誇るのが、ロトルア南部にある「Whakarewarewa Mountain Bike Park(ワカレワレワ マウンテンバイクパーク)」だ。
ここは世界でわずか6か所しか認定されていない、国際マウンテンバイク協会(IMBA)認定のゴールドレベルのライドセンターでもある。
Red Bull TVはロトルアについて「もしマウンテンバイクの天国があるとしたら、きっとロトルアのような場所だろう」とコメントしている。
ワカレワレワの森は、樹齢100年を超える巨大な赤松(レッドウッド)が林立し、ニュージーランドを象徴するシダの群生地であり、ワラビーなどの野生動物も暮らし、とても美しい自然が広がっている。
土は火山性で水捌けがよく、泥になりにくい。そして、ロトルアの黒土はグリップが非常に良いことでマウンテンバイカーにはたまらない土質なのだ。冬は基本的に雪が降らないので、一年中ライドを楽しむことができる。
さらにこの広大なMTBパークへのアクセスはロトルアの町から10分とかからない近さと利便性も最高だ。
一番大きいアクセスポイントの「ワイパ」は駐車場も広く、トイレ・シャワーも完備。バイクショップ、レンタルバイク(eバイク多数あり)が併設され、トレイルの情報も気軽に聞くことができる。カフェレストランなどもあるのでライド前後の憩いの場としても最適なロケーションだ。
トレイルマップや詳細は「Ride Rotorua」や「TrailMapps: Rotorua」のアプリでも確認が可能だ。しかし私のおすすめは「Manky(マンキー)」という、ポケットに入れやすい布製地図。洗っても良いリユース可能素材でできている。ワイパもしくはレッドウッズのビジターセンターで購入可能で、価格はNZ$22.5。この売上はトレイルのメンテナンス資金に充てられるので、現地入りしたらぜひこのユニークなマップをゲットしてほしい。
下りをメインに楽しみたいという人に向けてシャトルサービスも充実していて、バイクと共に山の上のトレイルヘッドへと運んでくれる。毎日頻繁に運行しているので、ダウンヒル好きの方にはとくにおすすめだ。
Eバイクもおすすめで、この広大なトレイルシステムを効率よく楽しむにはとても便利だ。実際に私がライドしていてすれ違うライダーの多くが、年齢・性別関係なくEバイクでトレイルを楽しんでいた。
実際のコースにはさまざまなレベルに合うトレイルがあり、トレイルヘッド付近には家族連れや初心者、のんびりとサイクリングを楽しみたい方に適した起伏緩やかなトレイルが充実している。他にもUCI認定のBMXトラックや、初級・上級の2種類のパンプトラックもある。
一方で急斜面や難易度の高いトレイルもあり、クロスカントリーの上級者からフリーライド・ダウンヒルを楽しむ方にも満足できるコースが揃っている。
トレイルの入り口の看板に「グレード1〜5」などと難易度が表示してあるので、入る前に確認したい。グレード5が最難関で、大きなギャップやジャンプがあるダウンヒルトレイルとなっている。
看板には難易度以外にも、トレイル名、優先順位、入り口/出口専用、2WAYなどの情報が記載されていて、トレイル上での事故防止やマナーの啓蒙にも役立っている。
看板の記載でさらに驚いたのが、整備している団体名以外にもロトルアのスーパーマーケットの名前(Pack’nSave)もあり、トレイル整備のスポンサーをしているとのことだ。これを見るとPack’nSaveで思わず買い物したくなる。
ワイパにバイクショップを構えるMTBロトルアのウェブサイト はトレイル情報からシャトルサービスやスクールなどの情報も充実しているので、事前にチェックすることをお勧めする。
ニュージーランドのトレイル事情
日本とはまた違ったシステムでトレイルを維持・管理しているニュージーランド。とても興味深かったので、その一部をご紹介する。
トレイルは誰が管理しているの?
Rotorua Trails Trust(ロトルア・トレイル・トラスト)
ロトルアのトレイルを管理・保全している団体がRotorua Trails Trust(ロトルア・トレイル・トラスト)だ。以下、簡潔になるが運営の仕組みを紹介しよう。
公式ウェブサイト:https://www.rotoruatrailstrust.co.nz/index.php
運転資金
・会員制で寄付金を募る
・トレイル看板などオリジナルアイテムを購入することで寄付金となる
・スポンサー。MTB関係だけでなく、スーパーマーケット、カーディーラー、レストラン、保険会社、イベント会社、役所など、幅広いスポンサーが活動を支えている。
トレイルワーク
・トレイルを整備・造成する日を公開して、会員とボランティアで活動する
・定期的なパトロール
・ユーザーからのフィードバックフォームからトレイルの状況を把握し、日々トレイルを改善する
・SNSやHPでトレイルの状況、活動状況などを頻繁に報告
Facebookページでは頻繁に活動を報告しているので興味があればぜひチェックしてほしい。
https://www.facebook.com/RotoruaTrailsTrust
マウンテンバイクだけでなく、ハイカー、ランナー、乗馬用のトレイルすべてのトレイル管理を行なっている。
番外編
池田祐樹イチ推しのトレイル「レインボーマウンテン」を紹介
ロトルアは温泉が有名で、町でも硫黄の匂いが漂っているほど。ここではワカレワレワ MTBパーク以外での私のイチ推しトレイル「レインボーマウンテン」を紹介する。マウンテンバイクを乗った後にすぐに天然温泉に入れるコースだ。
レインボーマウンテン
距離:約8.5km
獲得標高:約466m
難易度:グレード4 (アドバンス)
温泉:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
STRAVA: https://www.strava.com/activities/12792672967
ロトルアから約30分、車で南下したところにある「レインボーマウンテン」。温泉の川が流れるKerosen Creekに車を止めて、時計回りでレインボーマウンテンの頂上を目指す。途中、Crater Lake(クレーターレイク)というエメラルドグリーンの湖を一望できる絶景スポットがある。少し寄り道になるが一見の価値あり!
ここから道は険しくなりグレード4の登りが続くが、頂上からの360度のパノラマ眺望は疲れを忘れさせるほど美しい。サンライズのタイミングで来るのもおすすめ。
下りは行きとは違う道で、MTB専用のTe Rangaトレイルで一気に下る。グレード4なのでテクニカルではあるが、よく作り込まれたトレイルなのでラインさえ選べば思ったよりも怖くはない。
ウハウハのダウンヒルを楽しんだら、いよいよ温泉タイム。車で着替えて、数分歩けば天然の温泉スポットが待っている。ここは川が温泉になっているとても珍しい秘湯スポット。誰もが自由に出入りできるので、水着は必須。水温は長めに浸かっていられる、ちょうど良い湯加減。入浴は無料。
ロトルアに来たら、マウンテンバイクと温泉のセットでぜひ楽しんで欲しい!
photo&text:Yuki Ikeda
池田祐樹(プロマウンテンアスリート) プロフィール
TOPEAK ERGON RACING TEAM USA 所属(MTB)
TEAM ALTRA所属(トレイルラン)
2011-2017年の7年間連続で、MTBマラソン世界選手権日本代表として参加。MTBの長距離、耐久レースの国内第一人者とされる。2019年からMTB競技のみならずトレイルランを本格的に始め、2種目のウルトラ競技(100マイルやステージレースなど)をトップレベルで戦う山の総合エンデュランスアスリート「マウンテンアスリート」の第一人者として活動中。
公式インスタグラムアカウント:https://www.instagram.com/yukiikeda/
公式ウェブサイト:https://yukiikeda.net/
ニュージーランド・ロトルアの極上のトレイルを求めて世界中からマウンテンバイカーが集まってくる。MTBパークのトレイルはもちろん秀逸で、日本とはまた違ったコース上のルールなど私にとっても興味深い点がたくさんあったので、ぜひここで紹介したい。
ロトルアはMTBフリーライドの世界最高峰イベント「クランクワークス」や南半球最大のMTBイベント「Whaka100(レポート記事)」などが開催される地として有名だが、イベントに関係なく「ロトルアのトレイルに乗りたい」という純粋な理由だけで多くの人が集まるのだ。
ロトルアとその周辺にはいくつかトレイルシステムがあるが、5,600ヘクタール(東京ドーム約1191個分!)の圧倒的な広さと、総距離200kmを超えるトレイルを誇るのが、ロトルア南部にある「Whakarewarewa Mountain Bike Park(ワカレワレワ マウンテンバイクパーク)」だ。
ここは世界でわずか6か所しか認定されていない、国際マウンテンバイク協会(IMBA)認定のゴールドレベルのライドセンターでもある。
Red Bull TVはロトルアについて「もしマウンテンバイクの天国があるとしたら、きっとロトルアのような場所だろう」とコメントしている。
ワカレワレワの森は、樹齢100年を超える巨大な赤松(レッドウッド)が林立し、ニュージーランドを象徴するシダの群生地であり、ワラビーなどの野生動物も暮らし、とても美しい自然が広がっている。
土は火山性で水捌けがよく、泥になりにくい。そして、ロトルアの黒土はグリップが非常に良いことでマウンテンバイカーにはたまらない土質なのだ。冬は基本的に雪が降らないので、一年中ライドを楽しむことができる。
さらにこの広大なMTBパークへのアクセスはロトルアの町から10分とかからない近さと利便性も最高だ。
一番大きいアクセスポイントの「ワイパ」は駐車場も広く、トイレ・シャワーも完備。バイクショップ、レンタルバイク(eバイク多数あり)が併設され、トレイルの情報も気軽に聞くことができる。カフェレストランなどもあるのでライド前後の憩いの場としても最適なロケーションだ。
トレイルマップや詳細は「Ride Rotorua」や「TrailMapps: Rotorua」のアプリでも確認が可能だ。しかし私のおすすめは「Manky(マンキー)」という、ポケットに入れやすい布製地図。洗っても良いリユース可能素材でできている。ワイパもしくはレッドウッズのビジターセンターで購入可能で、価格はNZ$22.5。この売上はトレイルのメンテナンス資金に充てられるので、現地入りしたらぜひこのユニークなマップをゲットしてほしい。
下りをメインに楽しみたいという人に向けてシャトルサービスも充実していて、バイクと共に山の上のトレイルヘッドへと運んでくれる。毎日頻繁に運行しているので、ダウンヒル好きの方にはとくにおすすめだ。
Eバイクもおすすめで、この広大なトレイルシステムを効率よく楽しむにはとても便利だ。実際に私がライドしていてすれ違うライダーの多くが、年齢・性別関係なくEバイクでトレイルを楽しんでいた。
実際のコースにはさまざまなレベルに合うトレイルがあり、トレイルヘッド付近には家族連れや初心者、のんびりとサイクリングを楽しみたい方に適した起伏緩やかなトレイルが充実している。他にもUCI認定のBMXトラックや、初級・上級の2種類のパンプトラックもある。
一方で急斜面や難易度の高いトレイルもあり、クロスカントリーの上級者からフリーライド・ダウンヒルを楽しむ方にも満足できるコースが揃っている。
トレイルの入り口の看板に「グレード1〜5」などと難易度が表示してあるので、入る前に確認したい。グレード5が最難関で、大きなギャップやジャンプがあるダウンヒルトレイルとなっている。
看板には難易度以外にも、トレイル名、優先順位、入り口/出口専用、2WAYなどの情報が記載されていて、トレイル上での事故防止やマナーの啓蒙にも役立っている。
看板の記載でさらに驚いたのが、整備している団体名以外にもロトルアのスーパーマーケットの名前(Pack’nSave)もあり、トレイル整備のスポンサーをしているとのことだ。これを見るとPack’nSaveで思わず買い物したくなる。
ワイパにバイクショップを構えるMTBロトルアのウェブサイト はトレイル情報からシャトルサービスやスクールなどの情報も充実しているので、事前にチェックすることをお勧めする。
ニュージーランドのトレイル事情
日本とはまた違ったシステムでトレイルを維持・管理しているニュージーランド。とても興味深かったので、その一部をご紹介する。
トレイルは誰が管理しているの?
Rotorua Trails Trust(ロトルア・トレイル・トラスト)
ロトルアのトレイルを管理・保全している団体がRotorua Trails Trust(ロトルア・トレイル・トラスト)だ。以下、簡潔になるが運営の仕組みを紹介しよう。
公式ウェブサイト:https://www.rotoruatrailstrust.co.nz/index.php
運転資金
・会員制で寄付金を募る
・トレイル看板などオリジナルアイテムを購入することで寄付金となる
・スポンサー。MTB関係だけでなく、スーパーマーケット、カーディーラー、レストラン、保険会社、イベント会社、役所など、幅広いスポンサーが活動を支えている。
トレイルワーク
・トレイルを整備・造成する日を公開して、会員とボランティアで活動する
・定期的なパトロール
・ユーザーからのフィードバックフォームからトレイルの状況を把握し、日々トレイルを改善する
・SNSやHPでトレイルの状況、活動状況などを頻繁に報告
Facebookページでは頻繁に活動を報告しているので興味があればぜひチェックしてほしい。
https://www.facebook.com/RotoruaTrailsTrust
マウンテンバイクだけでなく、ハイカー、ランナー、乗馬用のトレイルすべてのトレイル管理を行なっている。
番外編
池田祐樹イチ推しのトレイル「レインボーマウンテン」を紹介
ロトルアは温泉が有名で、町でも硫黄の匂いが漂っているほど。ここではワカレワレワ MTBパーク以外での私のイチ推しトレイル「レインボーマウンテン」を紹介する。マウンテンバイクを乗った後にすぐに天然温泉に入れるコースだ。
レインボーマウンテン
距離:約8.5km
獲得標高:約466m
難易度:グレード4 (アドバンス)
温泉:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
STRAVA: https://www.strava.com/activities/12792672967
ロトルアから約30分、車で南下したところにある「レインボーマウンテン」。温泉の川が流れるKerosen Creekに車を止めて、時計回りでレインボーマウンテンの頂上を目指す。途中、Crater Lake(クレーターレイク)というエメラルドグリーンの湖を一望できる絶景スポットがある。少し寄り道になるが一見の価値あり!
ここから道は険しくなりグレード4の登りが続くが、頂上からの360度のパノラマ眺望は疲れを忘れさせるほど美しい。サンライズのタイミングで来るのもおすすめ。
下りは行きとは違う道で、MTB専用のTe Rangaトレイルで一気に下る。グレード4なのでテクニカルではあるが、よく作り込まれたトレイルなのでラインさえ選べば思ったよりも怖くはない。
ウハウハのダウンヒルを楽しんだら、いよいよ温泉タイム。車で着替えて、数分歩けば天然の温泉スポットが待っている。ここは川が温泉になっているとても珍しい秘湯スポット。誰もが自由に出入りできるので、水着は必須。水温は長めに浸かっていられる、ちょうど良い湯加減。入浴は無料。
ロトルアに来たら、マウンテンバイクと温泉のセットでぜひ楽しんで欲しい!
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池田祐樹(プロマウンテンアスリート) プロフィール
TOPEAK ERGON RACING TEAM USA 所属(MTB)
TEAM ALTRA所属(トレイルラン)
2011-2017年の7年間連続で、MTBマラソン世界選手権日本代表として参加。MTBの長距離、耐久レースの国内第一人者とされる。2019年からMTB競技のみならずトレイルランを本格的に始め、2種目のウルトラ競技(100マイルやステージレースなど)をトップレベルで戦う山の総合エンデュランスアスリート「マウンテンアスリート」の第一人者として活動中。
公式インスタグラムアカウント:https://www.instagram.com/yukiikeda/
公式ウェブサイト:https://yukiikeda.net/
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