CONTENTS

フレンチリビエラの山岳コースで新型Propelをテスト

新型プロペルのテストライドが行われたフランス・ニース近郊。フレンチリビエラと呼ばれる丘陵地特有の地形をしている photo:Sterling Lorence/GIANT
オーストラリアチャンピオンのマッケンジー・クープランドが乗る、特別カラーのEnviliv photo:Yufta Omata


ニース周辺らしい石造りの街並み。風情のある旧市街を最新バイクで駆け抜けた photo:Sterling Lorence/GIANT

新型Propel(プロペル)のメディアキャンプ2日目は終日のテストライド。日本を経つ前からこれが憂鬱だった。フランスの田舎道を走れるのは嬉しいが、88kmで獲得標高1700mは中々登るコース。海外のメディアキャンプに集うジャーナリストはみな健脚揃いなのが常で、鍛錬不足の身には気が重い。だいたいなぜエアロロードバイクのテストライドが、こんな山の中で行われるんだ。

フランス南部の大都市ニースは2024年のツールのグランフィナーレとなったことが記憶に新しい。最終日前日のクイヨル峠は1級山頂フィニッシュだったし、パリ〜ニースでお馴染みのエズ峠も難関山岳だ。フレンチ・リビエラと呼ばれる地中海沿いのエリアは、少し内陸に行くと山道だらけなのである。そりゃあ、お隣モナコに住むタデイ・ポガチャルも練習環境には事欠かないだろう。

早く走りたいと思わせる、いいバイク

ただ、テストライド当日になるとアンニュイな気分は消え失せ、早く走りたい気持ちになっているのだった。その前日の午前にプレゼンテーションを聴講した後の午後は、バイクに慣れるためのウェルカムライドが催された。ジャーナリストとジャイアントのスタッフで集団を作って、40kmほどのライドに出てみると、どうにもバイクの調子がいい。足が無いなりに、バイクが進んでくれる感覚があった。南仏らしく気候も穏やかで、なぜパリ〜ニースが「太陽へのレース」と呼ばれるかを実感した。

テストライド前日のウェルカムライドは40kmほどだったが、このバイクの走りやすさに感銘。素直なバイク、というのが第一印象だった。

テストライド前日のウェルカムライドは40kmほどだったが、このバイクの走りやすさに感銘。素直なバイク、というのが第一印象だった photo:Sterling Lorence/GIANT

脚力に自信がなくとも、早くまた走りたいと思わせてくれるバイクは、いいバイクだ。Propelという、自転車界の巨人ジャイアントが誇るレーススペックバイクがそう思わせることに若干の違和を覚えるが、プレゼンテーションでの「快適なバイクこそ速い」という言葉を思い出す。

その真意をプロダクトディレクターのニクソン・ファン氏に問うと、

「以前は、より剛性の高いバイクほど速いと考えていました。ペダリングの剛性に加え、より優れたコントロールのためにはフロント剛性が優れている必要があるんです。しかし近年はコンプライアンス(柔軟性・快適性)を重要視しています。路面の振動を吸収することが大事なのです。というのも、ライダーが自転車をコントロールするために減速する必要がなく、コーナリングや走行中のスピードを維持し、さらに加速することさえ可能になるからです」

と言う。確かに、路面からの跳ね上げがキツく下りコーナーの度に膨らんでしまうバイクよりも、挙動が安定していてブレーキレバーを握る時間が少ないほうが総合的に速い、という理屈はわかる。どうにも第2世代Propelの「硬いは速い」という呪縛が脳裏につきまとうが、すでにPropelは第3世代でこの呪いを解いていたのだった。第4世代Propelはさらに快適なバイクは速いという方向性を突き詰めている。

フォーククラウンからヘッドチューブのつなぎ部分は今回の新型にあたって剛性感を見直した部分のひとつだという photo:DamienRosso/GIANT
狭い街路でもちょっとした取り回しの良さが光り、バイクをコントロールしやすい photo:DamienRosso/GIANT


登坂でその懐の深さを実感

テストライド当日の朝は、曇り空。これから登るというヴァンス峠の先は霧に包まれている。長い登坂なので無理せず、ペースの合うメンバーとグループになり登っていく。バイクは軽く、軽めのギアでケイデンス高めのペダリングでもスルスルと進む感覚がある。とはいえ5km以上の長い上り坂なので、一人また一人と次第にグループの人数が減っていく。早々に離脱してマイペース走行でもいいのだが、やっぱり自分に余裕がない時のほうがバイクの素性は掴みやすいので、頑張って着いていくことにする。

大集団のまま峠道へ入っていく。予測していたがペースは落ちることなく、集団の人数は減っていくのだった photo:DamienRosso/GIANT

いかにも鼻呼吸ですよと言わんばかりに前から聞こえる会話が恨めしいが、こちらは息も絶え絶え。限界2歩くらい手前のペースで、ペダリングが雑になってきた。こういう時、ちょっと昔のエアロロードだと途端に進まなくなるのだが、Propelは「まだまだ頑張れるよ」と背中を押してくれるかのように粘ってくれる。雑な入力に対して、少し溜めを作ってくれるような感覚があったのだ。これはシートポスト周辺の剛性感のおかげではないだろうか。以前に乗ったDEFY(https://www.cyclowired.jp/microsite/node/386991)のD-Fuseシートポストを思わせる溜め感。好印象だ。

空力面・重量面でのアドバンテージをもたらす新開発の一体型ハンドル「コンタクトSLRエアロ」はわずかなベンドが握りやすい。また、今作からはキャップと同形状のスペーサーを上積みできるようになっている photo:DamienRosso/GIANT

スリムさが目立つインテグレーテッドシートポストと後ろ三角。またBB部分も剛性感の調整がはかられ、快適性の確保を目指した photo:DamienRosso/GIANT
途中までは女子オーストラリアチャンピオンのマッケンジー・クープランド選手(リブアルウラー・ジェイコ)にひたすら食らいつく。ペダリングが綺麗 photo:Yufta Omata


登りでもうひとつ印象が良かったのはコンタクトSLR エアロのハンドルバーだ。適度なカーブのおかげで上ハン部分の握りも心地よい。

勾配7%弱、およそ10kmの登坂を終えてみて、この上りのプロフィールであればバイクに足りない部分が全く無いのだった。多くのアマチュアライダーの目標となっている富士ヒルクライムにも良いだろう。タイムが出せそうな気がする。

ヨーロッパの峠らしい長いダウンヒル。エアロが効いていて一瞬でスピードが上がるが安定感はある。コーナーリングもいい。このあたりは新しいCADEXのMAX50ホイールとフレームの足回りの剛性感がいい塩梅なのだろう。

CADEX MAX50は軽いがしっかりとしている。フレーム・タイヤとの相性だろうか嫌な硬さは感じなかった。下りではあっというまにスピードが上がる photo:Sterling Lorence/GIANT

そういえば、CADEXのホイールにも硬いという先入観があったが、この日走りながらイヤな突き上げや振動を拾った記憶がない。結構道は荒れていたのだが、ライドの終盤になっても身体に疲れが蓄積していないのは驚いた。「持続可能なスピード」というプレゼンの文句が頭をよぎる。走り続けることができれば、結果的に速くなるという理屈もある。

このようにトップスピードというよりもむしろ快適だという印象が強く残った新型Propel。想像していた乗り味と大きく異なっていたので面食らったが、なるほどなぜこの山間のエリアでこのバイクのテストライドが設定されたかがよくわかる。

緩やかな下りと上り区間では集団でダブルペースラインを組んで快走。一時、レースの集団内にいるようだった。3列目より後ろにいたらほとんどペダリングしなくていいほど。バイクの空力性能は高い。

あらゆるライダーのために存在するブランドによる、エアロロード

緩やかな下りと上り区間では集団でダブルペースラインを組んで快走。一時、レースの集団内にいるようだった。3列目より後ろにいたらほとんどペダリングしなくていいほど。バイクの空力性能は高い photo:Sterling Lorence/GIANT

第2世代Propelもやはりフランスでお披露目がされたという。その際はマニクール・サーキット、すなわちモータースポーツの聖地で、いかに空力に優れた速いバイクかというアピールがなされたのだった。

しかしこの第4世代Propelで山岳ライドを終えてみると、いかに軽量で空力に優れたバイクが総合的に速いかが体感される。とりわけ私のようなレース志向ではないが、自分で設定したいいテンポで走り続けたいライダーにとっては速く、快適だった。ジャイアントは今回のプレゼンで、「プロはもちろんだが、あらゆるライダーのために存在するブランド」であることを強調した。このPropelも、「週末に走るライダーにも恩恵のあるもの」として設計したことが明言されている。

どんなライドにも使えるエアロロードだった。あまり格好いい呼び方ではないが、「みんなのエアロロードバイク」だと思った photo:Yufta Omata

はっきり言って、これ一台で私のロードライドは完結する。日々のファストライド、日をまたぐようなロングライド、年に一度のヒルクライムレース、あるいは好戦的なメンバーとのグループライド……。今日各社がリリースしているトップエンドのエアロロードバイクは多かれ少なかれこの境地に達しているが、私の経験した中ではキャニオンのエアロロードはより重心が低く安定感のある走り心地で、スペシャライズドのターマックSL8はより軽快さが際立つ印象だ。Propelはその中間に位置し、極めてニュートラルな味付けだ。

ポール・ダブルによる新型Propel インプレッション

テストライドにはプロ選手2名が帯同。オーストラリアチャンピオンのマッケンジー・クープランド(左、リブアルウラー・ジェイコ)とポール・ダブル(イギリス、ジェイコアルウラー) photo:Sterling Lorence/GIANT

とはいえ、プロユースのバイクでもあるPropelのインプレッションだから、プロライダーの言葉も聞いておくべきだろう。昨年からジェイコ・アルウラーに所属するポール・ダブル(イギリス)は、身長171cm、56kgのクライマー。昨年はワールドツアーのツアー・オブ・グワンシーならび1クラスのスロバキアで総合優勝を遂げている。そんな彼は、チームきってのTCR派であることでも知られるが、この新しいPropelをどう感じたのだろうか。

「一年中同じバイクに乗り続けたかったので、TCRに乗り続けていたんです。それもなんとなく乗り始めたという理由だけで、これまでPropelには乗ったことがありませんでした。今日初めて乗ってみて、明らかに速いし乗り心地もいいですね……TCRと同じだけの快適性があるなら、2026年シーズンは間違いなくこのバイクに乗ると思います」

一方で彼のチームメイトの印象にも耳を傾ける価値はあるかもしれない。「チームメイトの中には前のPropelの方が速いと言っていた人もいました」。これはコンプライアンスの向上が、パワー系ライダーにはロスに感じられるということかもしれない。ジェイコには大柄で屈強な選手が多くいるからそれは不思議ではない。ただ、開発陣がプレゼンしたように、快適なバイクほど速い、という進化の方向性がバイクにおいて実現していることを示してもいる。結果的に速いかどうかは、ジェイコチームの今シーズンの結果が証明してくれるだろう。

TCR派だったダブルも「2026年は間違いなくこのバイクに乗る」と太鼓判 photo:Sterling Lorence/GIANT

「昨年のジロの経験は、自分のキャリアに深みをもたらしました。今年もジロに行くか、あるいはブエルタを目指すか、チームと協議の真っ最中なんです」と語るダブルが、この山岳ステージレースでPropelを駆るならば、それは体格に親しみを覚える多くの日本人ライダーにとってもジャイアントの最速バイクが何か、という答えになりそうだ。
提供:ジャイアント・ジャパン
Text: Yufta Omata
Photo: Damien Rosso & Lorence Sterling /GIANT