3枚のアルカンシェルを獲得したトラック世界選手権の日本代表チームが22日早朝に帰国。羽田空港で記者会見を開き、早速獲得したメダルとアルカンシェルを披露して喜びを語った。



羽田空港に到着した世界選手権代表メンバー photo:Satoru Kato
新聞社やテレビ局など多くの報道関係者が集まって行われた記者会見 photo:Satoru Kato


10月16日から20日まで、デンマークのコペンハーゲン・バレラップで開催されたトラックの世界選手権は、日本にとって史上最高の結果を残した。初日のチームスプリントでは、長迫吉拓、太田海也、小原佑太のチームが3位。2日目には男子ケイリンで山崎賢人、男子スクラッチで窪木一茂が優勝し、2枚のアルカンシェルをもたらした。3日目には女子スプリントで佐藤水菜が3位、最終日の5日目には女子ケイリンで佐藤水菜が優勝、男子スプリントで太田海也が3位となった。3種目でアルカンシェルと金メダル、3種目で銅メダルと、日本の自転車競技史上最高の結果を残した。

トラック世界選手権でメダルを獲得した日本代表メンバー(長迫吉拓は欠席) photo:Satoru Kato

羽田空港で行われた記者会見の冒頭、日本自転車競技連盟選手強化スーパーバイザーの中野浩一氏は、「ご存知の通りパリ五輪では色々あったので、これで少しはリベンジを果たせたと思う。今後も続けられるように、しっかり選手強化をしていきたい」と語った。

残念ながらチームスプリントメンバーの長迫吉拓は会見に出席出来なかったが、メダルを獲得した5名が喜びを語った。



ケイリン優勝 山崎賢人
「これをきかっけに競技も競輪も良い影響があれば良いなと思う」


37年ぶりにケイリン優勝を日本にもたらした山崎賢人(チーム楽天Kドリームス/JPCU長崎) photo:Satoru Kato

パリ五輪はリザーブだったので出られなかったけれど、五輪直前まで代表チームと練習して、五輪期間中はみんなが走っているところを映像で見て、東京五輪の新田祐大選手や若い選手らにも刺激をもらいながら世界選手権に向けて準備をしてきました。

緊張して体が硬くなって、予選はギリギリ勝ち上がった感じだったのでメダルを取るという気持ちではなかったが、目の前の1戦1戦に集中して走りました。決勝は冷静に展開を予想して、コーチのアドバイスを信じて目の前の一瞬に反応して力を出し切るしかないと思って走りました。スプリント10連覇を達成している中野浩一さんの偉業に少しでも近づけたかなと思うと光栄に思います。まだまだ遠く及んでいませんが。

男子ケイリンを制した山﨑賢人 photo:JCF

今回優勝出来たのは、僕以外のメンバーが強くて引っ張ってくれたのと、サポートや応援のおかげで千回に一回が出せた結果と思っています。まだ世界一は僕に見合ってないと思うし、これからもトレーニングはしっかりやらないといけないと思っています。自転車競技と競輪は分けて考えるようにと言われていますが、これをきっかけにどちらにも良い影響があって盛り上がってくれればと思います。



スクラッチ優勝 窪木一茂
「勝ちを確認したのはゴールしてから」


スクラッチで日本初の金メダルを獲得した窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング/JPCU福島) photo:Satoru Kato

期間中同部屋の山崎選手が直前のレースで優勝してくれて、自分のレースはどうでも良いと思えるくらい嬉しかったです。山崎選手が流れを作ってくれたことと、チームパーシュートで銅メダルを取れなかった想いがスクラッチに影響したのかなと思います。(チームパーシュートは3位決定戦に進むもDNFで4位)

男子スクラッチで優勝した窪木一茂 photo:JCF

ラストは独走しましたが、五輪やネイションズカップで自分1人でラップする展開を作っていたので、このペースで行けば逃げ切れると把握していました。その経験が今回活かせたと思います。勝ちを確認したのはゴールしてからでした。リードしていたのは分かっていたけれど、会場のテレビジョンに自分が映っていて『これは勝ったのか?』と確信できませんでした。

まだ世界に通用するスピードと持久力が求められているので、過ぎ去った4年間以上に今後の4年間は1日1日を大切にして練習を積み上げ、世界との差を縮めていきたいです。中距離種目でのメダルは初めてですが、自分だけの喜びではなく、これからの選手や中距離種目の若い選手達に良い影響を与えられたと思っています。



ケイリン優勝・スプリント3位 佐藤水菜
「この優勝は通過点」


スプリントで銅メダル、ケイリンで日本女子初の金メダルを獲得した佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス/JPCU神奈川) photo:Satoru Kato

山崎選手のケイリン優勝の瞬間をみんなで喜んで流れが来たと感じ、自分もしっかり頑張りたいと思いました。それでスプリントで銅メダルを取れて、やっぱりアルカンシェルを着たいと強く思って、4回目の挑戦で獲れて本当に良かったです。初の世界選で銀メダルを取って、翌年意気込んだけれど力及ばず、その翌年は空回りしてしまったので、今回は1レースごと集中して結果を出すことに重点を置きました。

後続を大きく引き離して圧勝した佐藤水菜 photo:UCI

スプリントで銅メダルを獲れて嬉しかった反面、ケイリンでも結果を求められると感じて苦手意識が出てしまいましたが、山崎選手に力をもらって自分も優勝するんだと前向きになれました。予選はギリギリになってしまったけれど、最後の決勝で一番良いパフォーマンスを出すことが出来ました。

強度の高い練習をたくさんして本番に臨む方がメンタル的にも肉体的にも良く調子が上がるのですが、パリ五輪後にそういう時間が取れなかったので不安はありました。でも五輪で支えてくれた人達に恩返しが出来なかったので、この世界選でしたいという気持ちでカバーしました。

結果は嬉しいけれど、この優勝は通過点と考えています。自分の力はまだまだだと思うので、この結果を胸に次のステップに進みたいです。



チームスプリント3位、スプリント3位 太田海也
「チームスプリントのメダルは個人種目に無い喜びを感じた」


チームスプリントとスプリントで銅メダルを獲得した太田海也(チーム楽天 Kドリームス/JPCU岡山) photo:Satoru Kato

パリ五輪ではメダルを取れず、どうやってみんなに感謝の気持ちを形にできるかを常に考えていました。競輪で結果を出すことはもちろんだけれど、競技の世界でもう一回メダルを取りたいと挑んで、山崎選手や窪木選手、佐藤選手が世界一になったのを見てすごく刺激を受けて、夜も眠れないくらいでした。スプリント3位決定戦に持ち込めて、自分もメダルを取れるという自信につながりました。チームスプリントでのメダルは個人種目に無い喜びがあると改めて感じました。

3位決定戦でニコラス・ポール(トリニダード・トバゴ)を破った太田海也 photo:UCI

五輪で結果を出せなかったので、一時自転車に乗ることがしんどくなって、競輪のオールスターを走ったり伊豆に戻って練習したりしても、自転車きついなと思う日と楽しいと思う日を繰り返していました。でもコーチやチームメイトに支えてもらいながら世界選手権を迎えられました。スプリントで優勝したハリー・ラブレイセン(オランダ)を倒したいと思っていましたが、力の差がまだまだありあした。これを来年以降にどう繋げていくのかが、今回の銅メダルの価値になると思っています。



チームスプリント3位 小原佑太
「次は個人種目でもメダルを取りたい」


チームスプリントで銅メダルを獲得した小原佑太(チーム楽天Kドリームス/JPCU青森) photo:Satoru Kato

今回の銅メダルは太田選手と長迫選手に助けられて取れたものと思っています。個人種目ではベスト8まで行けたけれどメダルには届きませんでした。チームスプリントは初日だったので、個人種目でみんながメダルをバンバン取って霞んでしまったので、次は個人種目でもメダルを獲れるように頑張りたいです。ありがたいことに同じ日本チームの中に世界チャンピオンが3人もいるので、彼らを目標にまずは追いつき追い越せの精神でいきます。

チームスプリント3位は日本史上初の快挙 photo:JCF

パリ五輪の選考期間が2年あって、そのストレスで体が参ってしまって調子を落としていました。世界選手権前には帯状疱疹が出てしまって、そのケアをしながらチームスタッフやコーチ、チームメイトに支えられて世界選手権を迎えることが出来ました。来年に向けて良いスタートが切れてたと思うし、メダルに乗ってくるものがあると思うので、また獲れるようになります。


text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, JCF, UCI

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