フカヤがオリジナルブランド”ギザロ”の誕生30周年の節目にリリースした限定モデルのGA-30。アルミ製ロードバイクに電動変速コンポーネントのシマノ105 DI2を搭載し、他にはない完成車に仕上げている。エントリーグレードのフレームに電動変速を採用した理由など、企画担当者の言葉と共に紹介しよう。



ギザロ GA-30

ダボスでネオ・スポルティーフやネオ・ランドナーといった新たなサイクリングスタイルを提案し、ギザロで人気のGE-110やGX-110を発表してきたフカヤ。この数年で注目されるバイクを開発した総合部品問屋が用意した最新作は、アルミロードバイクのGA-30だ。

GA-30はカーボンロードを仮想敵とするような、軽量ハイエンドアルミバイクではない。しかし、シマノ105 DI2を搭載し、アフォーダブルなエントリーグレードでもない。この独特なポジションに位置するバイクの開発意図をフカヤの担当者のコメントと共に紐解く。

その背景には、フカヤが自転車パーツ問屋であり、自転車ブランドを主力としていないという認識がある。「我々問屋は海外で起こっていることの情報整理と、日本の市場にマッチした物をユーザーや販売店に供給することが重要だ」と担当者は述べる。

バテッドしたチューブで構成されている

フカヤの「ネオ」シリーズとGA-30

先述した内容は、輸入総代理を務めているブランドと日本のニーズを擦り合わせることはもちろん、ダボスが先行して送り出してきた「ネオ」シリーズが体現してきたことだ。フカヤは北米を中心に隆盛するグラベルムーブメントに対し、一口にグラベルと言っても多様な遊び方が存在することを深く理解し、それぞれの遊び方に適した自転車をダボスブランドとして用意することで、ユーザーにグラベル的なサイクリングスタイルを提案した。

ギザロ GA-30も欧米ブランドと日本の市場を鑑みて企画されたモデルだ。「欧米各社のバイクもコストパフォーマンスは良いので、そこと肩を並べるようなバイクとしては企画していません。今作は日本のユーザーの皆様が困っている部分や、欧米各社がカバーしていないスペックや価格、サイズ展開を意識しました」と担当者は説明する。

ダウンチューブのボトルケージ台座は3アイレット仕様だ
フォークはカーボン製とされている



GA-30の特徴と、シマノ105 DI2を搭載した意図
その上で今回企画されたGA-30は、ギザロというブランドについて顧みた原点回帰となるバイクとなったという。その原点とは、ヨーロッパのハイブランドが隆盛を極めた30年ほど前のロードバイクブーム。それらのブランドが高嶺の花とも言える存在で、手を伸ばしやすい存在としてギザロを展開した頃と今を重ね合わせ、原点回帰というテーマに沿って新型バイクを開発した。

つまりGA-30は他ブランドでは展開されていないニッチを攻めたハイコストパフォーマンスバイクを目指して作られた。確かに、スペックや価格を精査していくとその狙う立ち位置が浮かび上がってくる。例えば、サイズ展開。XS(400)からM(480)までに設定されており、背が低い方向けバイクであるという意図が伝わってくる。

アセンブルされるコンポーネントは電動変速のシマノ105 DI2だ

そして、シマノ105 DI2を搭載して約30万円(税込)と言う価格設定も目をひく内容だ。電動変速コンポーネントを搭載する完成車としては価格が抑えられており、DI2搭載バイクというカテゴリーでは他の追随を許さないコストパフォーマンスを発揮する。対してシマノ105(機械式)を搭載したカーボンバイクとは同価格帯となる。

つまり、GA-30がカーボンロードもしくは軽量アルミロードとして企画されていればもっと高価格であっただろうし、機械式シマノ105を選択していればもっと低価格に出来た。空いたニッチをつき、シマノ105 DI2を採用したことには明確な意図がある。その一つはフカヤはシマノの販売代理店でもあること、そして新型の電動変速の恩恵を受けられるユーザーに届けるためだ。

ご存知の通りDURA-ACEはプログレードのハイエンドであり、ULTEGRAはそこに迫るホビーレーサーに適したモデルだ。シマノ105はレーシングコンポーネントの入門機であり、ハイパフォーマンスな変速性能を多くの人に提供するために存在している。そんなシマノ105グレードが電動変速へと昇華されるまでは、上位グレードよりも長い年月を要したが、ついにシマノは電動変速の恩恵をこのグレードまで波及させた。

DI2の小ぶりなSTIレバーは手の小さな方にアドバンテージがある

「電動変速になることで操作性が飛躍的に向上するので、楽に扱えるようになります。STIレバーもコンパクトになるので、手の小さな方や小柄な方であれば特にその恩恵を受けやすくなるので、身長150cmの方でも乗れるXSサイズから展開しています」とフカヤの担当者は語る。

非常にコンパクトなDI2のSTIレバーが、手の小さな方にメリットがあるとは従来から言われてきたこと。そして、シマノ105グレードにDI2がラインアップされたことで、その上質な体験がぐっと身近になっている。それを多くの人に届けるためにGA-30が用意されたと言っても過言ではない。

ブランドバッジはシートチューブに備えられている

ダウンチューブ裏にアイレットが設けられている

GA-30が想定するサイクリングシーン

GA-30ではどのようなサイクリングを想定しているのか。「今作はオールロードとして位置付けており、クリテリウムレースにも出られるポテンシャルはありますし、太いタイヤを履けば快適なサイクリングを楽しんでもらえます」という。

企画当初としては、人気のGEエンデュランスロードのアルミ版もアイデアとして存在していたという。しかし、販売店からの意見もヒアリングしていくうちに、今求められているのはエンデュランスではないという結論に。プロトタイプに設けられていたトップチューブのアイレットもあえて排除し、GEのように長距離・長時間に機能を割り当てたバイクではないというアピールをしている。

ジオメトリーもGE-110とは異なっている。顕著に表れている部分はヘッドチューブ長とスタックだ。GA-30は低スタックに作られており、ハンドルポジションを低く設定可能で、レーサーが好むような深い前傾姿勢でも違和感のないポジションで乗ることができる。「極端にジオメトリーで色を出していないことが特徴ではあります。ユーザーが乗りたいように乗れるように作っています」と担当者氏が語るように、あくまでロードバイクのスタンダードを行く設計とされているのだ。

「ロードバイクを始めるにあたって、自分がどのように遊びたいか明確ではない方でも選べるバイクとして企画していますし、その方がゆくゆく自分の好みの遊び方が見つかったとしても対応できます」という。老舗のフカヤだからこそ全国各地に取り扱い店舗が数多く存在し、入手性の高さと相まって選びやすい一台になっているはずだ。

パーツ類はリッチーなど名だたるブランドが採用されている

タイヤはグッドイヤーのEAGLE SPORTがアセンブルされている

搭載するパーツ類もあえてリッチーなどのブランドで固めているのだとか。企画段階ではノーブランド品を採用し価格を下げることも検討していたが、ブランド品であっても価格を抑えて提供できることや、購入時には搭載パーツブランドのことを知らなくても今後のアップグレードの時の選択肢にしてほしいという想いからリッチーなどを選んでいるという。そして、それらのブランドはGA-30を購入したショップであれば、同じ店舗で購入できるメリットもある。

アセンブルされるパーツによる満足感だけではなく、フレーム自体のカラーリングにもこだわっている。塗装にラメが含まれており、太陽光の加減によってキラキラと輝くことが特徴。これはWEB上の写真や屋内では再現しきれないため、乗っている本人だけがこだわりのカラーを満喫できるようになっている。

スポーツバイクらしい加速感を楽しめる

今回のGA-30の撮影に際してシクロワイアード編集部の藤原が試乗も行った。そこで気づいたのは、スポーツバイクに乗ることの純粋な楽しさだ。シクロワイアードに勤めているとフラッグシップのカーボンロードに試乗する機会は珍しくなく、各ブランドの最新バイクの走りを体験しているため、フラットな目線で評価しようと思っても、どうしても膨大な開発費がかけられたフラッグシップの印象に引っ張られてしまう。

対してGA-30はアルミ製であり、ホイールもノーブランドモデルが装着されている。確かに重量による影響は感じるが、「どうせ重いんでしょ」というネガティブな先入観と舐めた考えは吹き飛ばされるくらいロードバイクらしい加速感とスピード感がGA-30にはある。

反応は素直で力を込めればそれ相応にバイクが応えてくれるので、ダンシングでいつまでも加速させ続けたくなる。フラッグシップの走りなど上を見始めるとキリがなくなるが、ロードバイクの楽しさは間違いなく存在している。

ギア比がワイドなおかげで走れる場所は幅広い

完成車にアセンブルされるギアは前が50-34Tで、後ろが11-34Tという最小1:1のギア比を実現している。この設定であれば激坂もチャレンジしやすいし、もし18%以上の壁に挑みたい場合、シマノ105であれば11-36Tのスプロケットに変更することもできる。このギア比による行動範囲の広さはスポーツバイク初心者にとっては心強い味方となるはずだ。

このリアスプロケットのワイドな設定のおかげで、今回のテストではアウターローで坂を踏み切ることができたのもアドバンテージだ。さらに、シンクロシフトを設定しておけば、自動的にフロント変速してくれるのもDI2の魅力。初めてシマノの電動変速に触れる方はショップスタッフに相談すれば、機械式にはない深い世界に触れることができる。そこもGA-30で楽しんでもらえればと思う。



ギザロ GA-30
フレーム:GHISALLO オリジナルアロイフレーム(AL6061)
フロントフォーク:フルカーボンフォークコラム未カット
フレーム重量:約1,434g(塗装済み、ハンガーのみ付属、XSサイズ)
フォーク重量:約398g(塗装済み、コラム未カット実測)
カラー:AURORA GRAY(オーロラグレー)
サイズ:XS(400)、S(440)、M(480)
価格:297,000円(税込)

text:Gakuto Fujiwara
パーツ ブランド 製品名
フレーム GHISALLO アルミフレーム&カーボンフォーク
ハンドル RITCHEY BAR RL1 BAQUIANO 40CM(全サイズ400㎜)
ステム RITCHEY STEM RL1 4-AXIS 90MM/31.8MM(XS:80mm)
バーテープ Deda ELEMENTI バーテープ 1400 BLK
シートポスト RITCHEY SEATPOST RL1 2-BOLT 400MM/27.2MM
サドル RITCHEY SADDLE RL1 STREEM BLACK
ホイール GHISALLO オリジナルロードホイール(リムフラップ付属)
タイヤ GOODYEAR Eagle Sport Tube Type 700x30 Blk
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