2024/03/25(月) - 18:24
ワイドリムへとモデルチェンジしたマヴィックの新型ALL ROAD SLと流行のオールロードバイクの組み合わせで、舗装路もグラベルも両方楽しむ走りかたのセッティングを探ってみた。タイヤチョイス次第でオン&オフ両対応の今流オールロードなら、走れる領域と楽しさが更に拡がる。
オールロード、あるいはグラベルロードの登場によってボーダーレスな楽しみ方が広がってきた。32Cといったワイドタイヤを使うことができるロードバイクが増えたことで、オンロード、グラベル、そしてバイクパッキングにと、道を選ばずよりコンフォートに走れることで、サイクリストの走るフィールドは広がりつつある。
ある程度ラフな道を走ることを可能にするバイクに乗れば、もっと自然の懐に入り込んでいける。スキーに例えれば、管理されたゲレンデを飛び出してバックカントリーに出るようなもの。そこに待っているのは見知らぬ新たな世界だ。
太めのタイヤ、それに適したワイドリムのホイール。それらに適した設計のオールロードバイクがトレンドを後押しする。
よりワイドなタイヤとのマッチングを向上させたオールロードホイールを紹介しよう。ホイールブランドの雄マヴィックが手掛けるALL ROADシリーズは、舗装路からグラベルまで対応する懐の広さが特徴だ。
今季、アルミ製モデルのALL ROAD SLおよびSが、よりワイド化するタイヤのトレンドに合わせたアップデートを受けてモデルチェンジ。前作ではリム内幅22mmで最大50mm幅のタイヤに対応していたのに対し、新型ではリム内幅を25mmに拡大。最大60mm幅のタイヤを受け入れるキャパシティを手に入れた。
スペックアップしたアルミリムは、マヴィックの誇る"ISM4D"とされ、まるでハイドロフォームで成形されたような滑らかな切削によって必要十分な剛性と強度を確保しつつ軽量化を実現した。
ニップルを直接リムにねじ込むFOREテクノロジーも採用される。リム内側にニップルホールが存在しないため、リムテープ不要でチューブレスタイヤを運用できる。作業性の良さに定評あるUSTリム、そしてフックレスデザインによってタイヤの密着性を高め、低気圧での運用を可能とした。
そして、傷や衝撃からの高い保護性能を実現したBlack Shield ダブルコーティング仕上げのリムは、これまでの2倍に及ぶ耐久性を実現している。
ハブには新世代マヴィックを象徴するInfinityハブを使用。優れた伝達効率とメンテナンス性を誇るインスタントドライブ360や、独自のオートベアリングプリロード機構であるQRM AUTOの組合せによって、優れた剛性と耐久性、そして扱いやすさを実現した。ワイド化によって前作より重量は少し増加しているが、ALL ROAD SL前後セットで1,655gと十分軽量に仕上げられている。
今回は新型ALL ROAD SLホイールを、ロードとグラベルの両方それぞれで使う場合のセットアップを探ってみた。インプレと併せてぜひオールロードライドの楽しみ方のヒントにして欲しい。
32Cタイヤとの組み合わせでロード&ライトグラベルを走るオールロードな楽しみ方
今回のテストライドにはワイドタイヤクリアランスを備えたエンデュランスロード、キャノンデールSYNAPSEを選んだ。少しリラックスしたアップライトなジオメトリーをもち、35Cタイヤをセットすることができ、センサーでライトが自動点灯するスマートセンスシステムを搭載、日常のコミューティング(通勤・通学)から軽めのグラベルライドまでをこなせるモデルだ。
最新のロードレースタイヤが28Cを標準に、30Cも使用される状況に落ち着きつつある今、非レース派のオンロードサイクリング用のタイヤには30Cや32Cが選ばれるようになってきた。好みによって個人差はあるが、より路面に気を遣わずに走れる32Cはオススメの太さだ。
今回選んだタイヤはパナレーサーAGILEST DURO TLR 32。タフさで人気のチューブレスレディタイヤで、耐パンク性が高く、悪コンディション下のライドや軽いグラベルならそのままこなせてしまうだろう。
ALL ROAD SLへのタイヤの取り付けにはタイヤレバーも不要で、フロアポンプだけでビードも上げることができた。チューブレスロードタイヤの取り付け・セットアップは苦労することがあるが、総じてタイヤは太いほど簡単になる傾向があり、32Cの太さならビード上げに苦労することは稀だろう。
空気圧の設定に関しては、かつてマヴィック独自のアプリ「My MAVIC」があったが、現在はリニューアルのため使用できなくなっており、今回はスラムAXSアプリを使用してみた。筆者の体重61kgの場合、アプリの推奨値はF:3.05、 R:3.25BAR。試乗してみて少し硬さを感じたので、0.1下げてF:2.95、R:3.15BARで乗り心地も転がりも非常に良い感じになった。
パナレーサーでは現状とくにアプリ等は用意していないため、タイヤメーカーなど各社からリリースされているアプリをいくつか試してお気に入りのものを見つけるのが空気圧設定の近道だ。なお上の数値はパナレーサー社内のテスト結果ともほぼ一致している「適正な値」とのことだった。
32Cタイヤで約3BARの空気圧は、リム内幅21mmのホイールにセットした値と比較すれば0.4BARほど低くなっている。これがリム内幅25mmの効果で、ワイドリムになったぶん空気量が増し、快適に走れることを意味する。これは乗り心地がフワフワするということではなく、路面の凹凸から衝撃を受けた際のタイヤ変形量が大きくなることで、衝撃をいなす能力が上がること。微振動をより吸収してくれることで、ロス無く良く転がることを意味している。
理屈はともあれ、32Cタイヤでのオンロードツーリングは快適で走りが気持ちいい。タイヤとリムが太くなったぶん少し重量は増えるものの、レース的な走りでないならそれをデメリットとして感じることは無く、むしろ良い点が際立ってくる。
フックレス採用のワイドリムにセットした32Cタイヤのサイド部は自然な立ち上がりを見せる。内幅22mmだった前作ALLROADより3mm広がったが、そのぶんタイヤサイドには「しっかり感」が出て、コーナリングでヨレなくなる。タイヤがしっかり路面を掴んでいる感じが高まるため安心感はより大きくなる。
タイヤのしなやかさ、グリップ、路面追従性などの性能を楽しみながら走れるため、チューブレスで乗るのがもっともオススメだ。リム打ちパンクがほぼ無くなり、小さなパンクの際にはシーラントが自己修復してくれる。
ALLROAD前モデルに比べ、今作ではよりタイヤを組み付けやすく、外しやすいチューニングも施されたという。また純正チューブレスバルブはエア漏れが無く耐久性が高いことで定評があったが、改良されてリムから抜き取りやすくなり、万が一の「シーラントが修復できないパンク」の際にチューブに差し替えやすくなった。
グラベルタイヤをセットしてオフロードライドを楽しむ
ここからのパートは本格的なグラベルライドの走り方ではなく、ロードバイクで時にはグラベルも走ってみたいと考える人にこそ読んで欲しい「ロードメイン、ライトグラベル入門編」だ。
トレックDOMANE、スペシャライズドROUBAIX、キャノンデールSYNAPSEなどに代表される「どこでも走れる」ことをモットーにした「オールロード」が人気だ。そして世界的にはグラベルライドが流行して、北米ではグラベルレースがロードレースの人気を超えるという事態も起こっている。
ディスクブレーキ採用と共にロードバイクのタイヤクリアランスも徐々に広がり、太くて多少のオフロードならこなせてしまうタフなタイヤも増えてきた。「グラベルロードを買うほどじゃない」というロードバイク乗りの人でも「少しなら流行りの未舗装路を走ってみたい」と思っている人は多いだろう。
オールロードバイクで気をつけたいのは使用可能なタイヤ幅だ。とくにオンロードメインに設計されたバイクであれば、取り付けることができる最大タイヤ幅がそれほど太くないというケースがある。具体的にはカタログに「最大38Cまで」と記載されていても、フロントにW(ダブル)仕様チェーンホイールを装備した場合に最大タイヤ幅が35C程度になるといったバイクがある。主に後輪側タイヤがFディレイラーやチェーンステイに干渉するため、フロントよりは細身のタイヤをセットしなくてはいけない場合があるのだ。
最大タイヤ幅とは一般的にフレームとタイヤサイドの間隔に4mmの余裕があることが条件とされる。ホイールを嵌めてみてタイヤとチェーンステイがギリギリ擦らなくても、走るとホイールが左右に振れることでフレーム内部に擦れてしまうケースがあるのだ。
今回テストバイクにしたキャノンデールSYNAPSEの場合は、公称タイヤ最大幅が35Cで、フロントに40Cタイヤ、リアに35Cタイヤまでが取り付けられる最大タイヤ幅だった。リアに40CをセットするとFディレイラーにタイヤが当たるため使用することができなかった。使用できる実際のタイヤ幅にはこうした制約があることに留意してタイヤ太さを選んで欲しい。カタログではわからない情報のため、実際のところ現物合わせになるケースだからプロショップにバイクを持ち込んで相談してみよう。
今回グラベルライド用にチョイスしたのはパナレーサーの新型GRAVELKING X1 TLRだ。F:40、R:35C=フロント太め、リア細めのセッティングは、前輪と後輪の役割の違いに着目すれば、主に前輪でギャップを乗り越え、後輪は駆動力を地面に伝えるという意味では理にも適っている。
空気圧は1.6〜2BARの範囲で調整してみた。ロード用メインで設計されたフレームが振動吸収性には優れていない場合、タイヤ側の空気圧を低めにすることで乗り心地を確保したいところだ。しかしガレた岩場などでのパンクのリスクを減らしたい場合は気持ち高めに。オフロードライドへ行く割合が高いほどチューブ使用は避け、チューブレスで使用したい。
インプレッション総評 「 ALL ROAD SLをオン&オフで使ってみて」
ALL ROAD SLは、オンorオフロード両方のタイヤのセットアップが極めて簡単で、ビード上げも簡単だった。リムテープも無いためテープ由来のエア漏れ等のトラブルは起こらないのが安心だ。タイヤとの相性もあるだろうが、今回は外しやすさもあり、交換はとても素早く楽にできた。新ETRTO規格を採用した最近のタイヤを選べば、相性問題で苦労することはまず無いだろう。
前後セットで1,655gというホイール重量はカーボンホイールと比べれば重く感じてしまうだろうが、重くなりがちなワイドリムを採用してこの重量に収めているのは驚異的で、アルミホイールでこのスペックを達成できる技術は他に類を見ないもの。
そして何よりチューブレスタイヤをセットした際の転がりの良さと軽い走りは特筆モノで、横剛性が高く、加速もいい。しかしカーボンリムのような硬さを感じない。上位モデルと共通のID360ハブのかかりは良く、エアロスポークも空気抵抗が少なく、強い。妥協したスペックは無く、ホイールは重量ではなく性能のバランスが大事というのを実感できる。121,000円(税込)という価格で最高のアルミ・フラッグシップホイールが手に入るプライスパフォーマンスの高さが ALL ROAD SLの魅力だ。
メンテナンス編
最新のID360ハブを共通で採用したマヴィックのホイールはメンテンナンスが工具無しで簡単にできることが特徴だ。走行1,000kmごとに行うことが目安として推奨されているが、雨中走行や水を使用する洗車をした際などにも行うと良いだろう。
フリーハブは工具を使用することなく、手だけで簡単に抜き取ることができる。カセットスプロケットを取り付けたままのほうがやりやすく、外側に引っぱるようにするだけで簡単に外せる。
フリーラチェットに塗布するグリスは1回使い切り量の1.5g分包の専用品が用意されており、必ずそれを使用する。一般的な他製品グリスをすると粘度が適さず、ラチェットが正常に回転しなくなるので注意だ。
塗布作業は綿棒等で行うと良い。作業手順はマヴィック公式のYoutubeで解説されているので観てから行うと確実だ。専用グリスにはフリーの分解図も付属しているので組付けにも迷うことがない。クリーニング&グリスアップを行ったハブは音色良くスムーズに軽く回転するようになる。内部の汚れが酷い時やサビが出ている場合はプロショップに持ち込んで作業してもらうと良いが、基本は誰でもセルフでできる簡単な作業だ。
マヴィック ALL ROAD SL
リム素材:マクスタル
リム内幅:25mm
リム高さ:22mm
適合タイヤ:30〜64mm
重量:1,655g
価格:121,000円(税込)
テスター 綾野 真/ ロード、グラベル、MTBライドすべてを楽しむシクロワイアード編集長。オールロードライドへの研究に余念がなく、マヴィック製ホイールはALL ROAD前作、KSYRIUM SL、COSMIC SLR32を愛用中のマヴィックファンだ。グラベルロードの愛車はFサス付きのジャイアントREVOLT-Xだが、4月にはChapter2 KAHAも増車予定。6月には3度目のアンバウンドグラベルに出場予定だ。
オールロード、あるいはグラベルロードの登場によってボーダーレスな楽しみ方が広がってきた。32Cといったワイドタイヤを使うことができるロードバイクが増えたことで、オンロード、グラベル、そしてバイクパッキングにと、道を選ばずよりコンフォートに走れることで、サイクリストの走るフィールドは広がりつつある。
ある程度ラフな道を走ることを可能にするバイクに乗れば、もっと自然の懐に入り込んでいける。スキーに例えれば、管理されたゲレンデを飛び出してバックカントリーに出るようなもの。そこに待っているのは見知らぬ新たな世界だ。
太めのタイヤ、それに適したワイドリムのホイール。それらに適した設計のオールロードバイクがトレンドを後押しする。
よりワイドなタイヤとのマッチングを向上させたオールロードホイールを紹介しよう。ホイールブランドの雄マヴィックが手掛けるALL ROADシリーズは、舗装路からグラベルまで対応する懐の広さが特徴だ。
今季、アルミ製モデルのALL ROAD SLおよびSが、よりワイド化するタイヤのトレンドに合わせたアップデートを受けてモデルチェンジ。前作ではリム内幅22mmで最大50mm幅のタイヤに対応していたのに対し、新型ではリム内幅を25mmに拡大。最大60mm幅のタイヤを受け入れるキャパシティを手に入れた。
スペックアップしたアルミリムは、マヴィックの誇る"ISM4D"とされ、まるでハイドロフォームで成形されたような滑らかな切削によって必要十分な剛性と強度を確保しつつ軽量化を実現した。
ニップルを直接リムにねじ込むFOREテクノロジーも採用される。リム内側にニップルホールが存在しないため、リムテープ不要でチューブレスタイヤを運用できる。作業性の良さに定評あるUSTリム、そしてフックレスデザインによってタイヤの密着性を高め、低気圧での運用を可能とした。
そして、傷や衝撃からの高い保護性能を実現したBlack Shield ダブルコーティング仕上げのリムは、これまでの2倍に及ぶ耐久性を実現している。
ハブには新世代マヴィックを象徴するInfinityハブを使用。優れた伝達効率とメンテナンス性を誇るインスタントドライブ360や、独自のオートベアリングプリロード機構であるQRM AUTOの組合せによって、優れた剛性と耐久性、そして扱いやすさを実現した。ワイド化によって前作より重量は少し増加しているが、ALL ROAD SL前後セットで1,655gと十分軽量に仕上げられている。
今回は新型ALL ROAD SLホイールを、ロードとグラベルの両方それぞれで使う場合のセットアップを探ってみた。インプレと併せてぜひオールロードライドの楽しみ方のヒントにして欲しい。
32Cタイヤとの組み合わせでロード&ライトグラベルを走るオールロードな楽しみ方
今回のテストライドにはワイドタイヤクリアランスを備えたエンデュランスロード、キャノンデールSYNAPSEを選んだ。少しリラックスしたアップライトなジオメトリーをもち、35Cタイヤをセットすることができ、センサーでライトが自動点灯するスマートセンスシステムを搭載、日常のコミューティング(通勤・通学)から軽めのグラベルライドまでをこなせるモデルだ。
最新のロードレースタイヤが28Cを標準に、30Cも使用される状況に落ち着きつつある今、非レース派のオンロードサイクリング用のタイヤには30Cや32Cが選ばれるようになってきた。好みによって個人差はあるが、より路面に気を遣わずに走れる32Cはオススメの太さだ。
今回選んだタイヤはパナレーサーAGILEST DURO TLR 32。タフさで人気のチューブレスレディタイヤで、耐パンク性が高く、悪コンディション下のライドや軽いグラベルならそのままこなせてしまうだろう。
ALL ROAD SLへのタイヤの取り付けにはタイヤレバーも不要で、フロアポンプだけでビードも上げることができた。チューブレスロードタイヤの取り付け・セットアップは苦労することがあるが、総じてタイヤは太いほど簡単になる傾向があり、32Cの太さならビード上げに苦労することは稀だろう。
空気圧の設定に関しては、かつてマヴィック独自のアプリ「My MAVIC」があったが、現在はリニューアルのため使用できなくなっており、今回はスラムAXSアプリを使用してみた。筆者の体重61kgの場合、アプリの推奨値はF:3.05、 R:3.25BAR。試乗してみて少し硬さを感じたので、0.1下げてF:2.95、R:3.15BARで乗り心地も転がりも非常に良い感じになった。
パナレーサーでは現状とくにアプリ等は用意していないため、タイヤメーカーなど各社からリリースされているアプリをいくつか試してお気に入りのものを見つけるのが空気圧設定の近道だ。なお上の数値はパナレーサー社内のテスト結果ともほぼ一致している「適正な値」とのことだった。
32Cタイヤで約3BARの空気圧は、リム内幅21mmのホイールにセットした値と比較すれば0.4BARほど低くなっている。これがリム内幅25mmの効果で、ワイドリムになったぶん空気量が増し、快適に走れることを意味する。これは乗り心地がフワフワするということではなく、路面の凹凸から衝撃を受けた際のタイヤ変形量が大きくなることで、衝撃をいなす能力が上がること。微振動をより吸収してくれることで、ロス無く良く転がることを意味している。
理屈はともあれ、32Cタイヤでのオンロードツーリングは快適で走りが気持ちいい。タイヤとリムが太くなったぶん少し重量は増えるものの、レース的な走りでないならそれをデメリットとして感じることは無く、むしろ良い点が際立ってくる。
フックレス採用のワイドリムにセットした32Cタイヤのサイド部は自然な立ち上がりを見せる。内幅22mmだった前作ALLROADより3mm広がったが、そのぶんタイヤサイドには「しっかり感」が出て、コーナリングでヨレなくなる。タイヤがしっかり路面を掴んでいる感じが高まるため安心感はより大きくなる。
タイヤのしなやかさ、グリップ、路面追従性などの性能を楽しみながら走れるため、チューブレスで乗るのがもっともオススメだ。リム打ちパンクがほぼ無くなり、小さなパンクの際にはシーラントが自己修復してくれる。
ALLROAD前モデルに比べ、今作ではよりタイヤを組み付けやすく、外しやすいチューニングも施されたという。また純正チューブレスバルブはエア漏れが無く耐久性が高いことで定評があったが、改良されてリムから抜き取りやすくなり、万が一の「シーラントが修復できないパンク」の際にチューブに差し替えやすくなった。
グラベルタイヤをセットしてオフロードライドを楽しむ
ここからのパートは本格的なグラベルライドの走り方ではなく、ロードバイクで時にはグラベルも走ってみたいと考える人にこそ読んで欲しい「ロードメイン、ライトグラベル入門編」だ。
トレックDOMANE、スペシャライズドROUBAIX、キャノンデールSYNAPSEなどに代表される「どこでも走れる」ことをモットーにした「オールロード」が人気だ。そして世界的にはグラベルライドが流行して、北米ではグラベルレースがロードレースの人気を超えるという事態も起こっている。
ディスクブレーキ採用と共にロードバイクのタイヤクリアランスも徐々に広がり、太くて多少のオフロードならこなせてしまうタフなタイヤも増えてきた。「グラベルロードを買うほどじゃない」というロードバイク乗りの人でも「少しなら流行りの未舗装路を走ってみたい」と思っている人は多いだろう。
オールロードバイクで気をつけたいのは使用可能なタイヤ幅だ。とくにオンロードメインに設計されたバイクであれば、取り付けることができる最大タイヤ幅がそれほど太くないというケースがある。具体的にはカタログに「最大38Cまで」と記載されていても、フロントにW(ダブル)仕様チェーンホイールを装備した場合に最大タイヤ幅が35C程度になるといったバイクがある。主に後輪側タイヤがFディレイラーやチェーンステイに干渉するため、フロントよりは細身のタイヤをセットしなくてはいけない場合があるのだ。
最大タイヤ幅とは一般的にフレームとタイヤサイドの間隔に4mmの余裕があることが条件とされる。ホイールを嵌めてみてタイヤとチェーンステイがギリギリ擦らなくても、走るとホイールが左右に振れることでフレーム内部に擦れてしまうケースがあるのだ。
今回テストバイクにしたキャノンデールSYNAPSEの場合は、公称タイヤ最大幅が35Cで、フロントに40Cタイヤ、リアに35Cタイヤまでが取り付けられる最大タイヤ幅だった。リアに40CをセットするとFディレイラーにタイヤが当たるため使用することができなかった。使用できる実際のタイヤ幅にはこうした制約があることに留意してタイヤ太さを選んで欲しい。カタログではわからない情報のため、実際のところ現物合わせになるケースだからプロショップにバイクを持ち込んで相談してみよう。
今回グラベルライド用にチョイスしたのはパナレーサーの新型GRAVELKING X1 TLRだ。F:40、R:35C=フロント太め、リア細めのセッティングは、前輪と後輪の役割の違いに着目すれば、主に前輪でギャップを乗り越え、後輪は駆動力を地面に伝えるという意味では理にも適っている。
空気圧は1.6〜2BARの範囲で調整してみた。ロード用メインで設計されたフレームが振動吸収性には優れていない場合、タイヤ側の空気圧を低めにすることで乗り心地を確保したいところだ。しかしガレた岩場などでのパンクのリスクを減らしたい場合は気持ち高めに。オフロードライドへ行く割合が高いほどチューブ使用は避け、チューブレスで使用したい。
インプレッション総評 「 ALL ROAD SLをオン&オフで使ってみて」
ALL ROAD SLは、オンorオフロード両方のタイヤのセットアップが極めて簡単で、ビード上げも簡単だった。リムテープも無いためテープ由来のエア漏れ等のトラブルは起こらないのが安心だ。タイヤとの相性もあるだろうが、今回は外しやすさもあり、交換はとても素早く楽にできた。新ETRTO規格を採用した最近のタイヤを選べば、相性問題で苦労することはまず無いだろう。
前後セットで1,655gというホイール重量はカーボンホイールと比べれば重く感じてしまうだろうが、重くなりがちなワイドリムを採用してこの重量に収めているのは驚異的で、アルミホイールでこのスペックを達成できる技術は他に類を見ないもの。
そして何よりチューブレスタイヤをセットした際の転がりの良さと軽い走りは特筆モノで、横剛性が高く、加速もいい。しかしカーボンリムのような硬さを感じない。上位モデルと共通のID360ハブのかかりは良く、エアロスポークも空気抵抗が少なく、強い。妥協したスペックは無く、ホイールは重量ではなく性能のバランスが大事というのを実感できる。121,000円(税込)という価格で最高のアルミ・フラッグシップホイールが手に入るプライスパフォーマンスの高さが ALL ROAD SLの魅力だ。
メンテナンス編
最新のID360ハブを共通で採用したマヴィックのホイールはメンテンナンスが工具無しで簡単にできることが特徴だ。走行1,000kmごとに行うことが目安として推奨されているが、雨中走行や水を使用する洗車をした際などにも行うと良いだろう。
フリーハブは工具を使用することなく、手だけで簡単に抜き取ることができる。カセットスプロケットを取り付けたままのほうがやりやすく、外側に引っぱるようにするだけで簡単に外せる。
フリーラチェットに塗布するグリスは1回使い切り量の1.5g分包の専用品が用意されており、必ずそれを使用する。一般的な他製品グリスをすると粘度が適さず、ラチェットが正常に回転しなくなるので注意だ。
塗布作業は綿棒等で行うと良い。作業手順はマヴィック公式のYoutubeで解説されているので観てから行うと確実だ。専用グリスにはフリーの分解図も付属しているので組付けにも迷うことがない。クリーニング&グリスアップを行ったハブは音色良くスムーズに軽く回転するようになる。内部の汚れが酷い時やサビが出ている場合はプロショップに持ち込んで作業してもらうと良いが、基本は誰でもセルフでできる簡単な作業だ。
マヴィック ALL ROAD SL
リム素材:マクスタル
リム内幅:25mm
リム高さ:22mm
適合タイヤ:30〜64mm
重量:1,655g
価格:121,000円(税込)
テスター 綾野 真/ ロード、グラベル、MTBライドすべてを楽しむシクロワイアード編集長。オールロードライドへの研究に余念がなく、マヴィック製ホイールはALL ROAD前作、KSYRIUM SL、COSMIC SLR32を愛用中のマヴィックファンだ。グラベルロードの愛車はFサス付きのジャイアントREVOLT-Xだが、4月にはChapter2 KAHAも増車予定。6月には3度目のアンバウンドグラベルに出場予定だ。
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