2024/03/03(日) - 09:15
距離と未舗装路区間が増えた第18回ストラーデビアンケで、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が2度目の制覇。ハイペースと豪雨により絞られた集団から残り81kmで飛び出し、優勝したポガチャルの独走劇をお伝えします。
自転車ロードレースとしては第18回目と歴史が浅いにもかかわらず、モニュメント(5大クラシック)に匹敵する人気が年々高まるストラーデビアンケ。イタリア中部のトスカーナ州シエナを発着地点とし、「白い道」と呼ばれる(未舗装路区間)を駆け抜けるワンデーレースが今年もやってきた。
今大会はレースの総距離が伸び(184km→215km)、未舗装路も2箇所増えた計15箇所に(63km→71km)。そのため総獲得標高差も3,100mから4,000mに迫り、難易度の上がったレースは現地時間11時15分にアクチュアルスタートを告げる旗が振られると、序盤から無数のアタックが繰り広げられた。
30歳を越えてもなお力を伸ばし続けるトムス・スクインシュ(ラトビア、リドル・トレック)ら7名が逃げ、この日最初の未舗装路区間ヴィドリッタの後に引き戻される。その後セクター3を過ぎ、ローソン・クラドック(アメリカ、ジェイコ・アルウラー)を含む5名の逃げグループが形成。一方のメイン集団は、このレース最大の優勝候補タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツがコントロールを担った。
最大2分半のタイム差を得た逃げ集団だったが、ニルス・ブルン(スイス、チューダー・プロサイクリング)やクラドックが未舗装路でのパンクの餌食に。そのため逃げは早々と引き戻され、雨粒が落ちてきた残り98km地点でクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)とマグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ)が仕掛ける。しかしこの動きをUAEが許さず、それに伴う急激なペースの上下によってプロトンは35名程度に絞り込まれた。
その後、星条旗が描かれたアメリカ王者ジャージを着るシモンズが2度目の仕掛け。本降りとなった雨のなか最大24秒差をつけたシモンズだったが、今度はイネオス・グレナディアーズがプロトンを動かし、勝負所のセクター8「モンテ・サンテ・マリエ(全長11.5km/残り84km)」の入口で吸収。そしてプロトンの先頭が再びUAEに代わり、牽引役もイサーク・デルトロ(メキシコ)からティム・ウェレンス(ベルギー)に移った。
例年なら白い土煙を巻き上げる路面は雨を含み、モンテ・サンテ・マリエに2つ設定された勾配18%の登りをウェレンスを先頭に登頂。2度目の急坂で先頭は8名まで絞られ、その下りからの登り返しでポガチャルが飛び出した。
2022年にもモンテ・サンテ・マリエで仕掛け、初優勝を飾ったポガチャル。しかしその時よりもフィニッシュまでの距離は約30km伸び、止んだとはいえ雨の影響で路面もスリッピーという状況。フィニッシュまで81km地点からの驚きのアタックにセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)やシモンズも追従することはできず、そしてその差は徐々に拡がっていった。
今年のアタック場所を聞かれ、レース前に「モンテ・サンテ・マリエだ」と答えた通り、難易度5つ星の未舗装路区間で仕掛けたポガチャル。それをマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)が単独で追いかけ、その後ろには17名の追走集団。しかしここまでレースを動かしていたシモンズが落車してリタイアした一方で、巻き込まれたチームメイトのスクインシュは追走集団への復帰を果たしている。
残り68kmでファンヒルスを捉えた頃に追走集団は21名まで人数が増え、イネオスは前回覇者トーマス・ピドコック(イギリス)を含め3名を残す。またヴィスマはクスやクリストフ・ラポルト(フランス)も4名を残すなか、集団後方にはデルトロとウェレンスが抑え役として脚を溜め、UAEが必勝体制を築いた。
難易度4つ星のセクター11「レ・トルフェ(残り41.9km)」に集った大観衆の中を登るポガチャルは、この時点で後続と3分半までリードを拡大する。そのため表彰台争いに切り替わった感のある追走集団では、昨年2位のヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)やラポルトが矢継ぎ早にアタック。そして一度集団内で脚の回復をしたファンヒルスが仕掛け、再び単独追走を開始した。
少し遅れてスクインシュがファンヒルスに合流し、先頭を行くポガチャルの3分差まで詰め寄る。しかしポガチャルは危なげなく最後の未舗装路区間群であるモンテキアーロ、そして今年から増えた2度目のコッレ・ピンツートをレ・トルフェをクリア。
シエナ旧市街の石畳坂を悠々とこなし、時折笑顔を見せたポガチャルは目抜き通りも通過。そして勝利の瞬間を一目見ようと駆けつけた大観衆のカンポ広場で、ポガチャルがフィニッシュラインに到達。黒色のフレームが土埃で白くなったバイクを掲げ、自身2度目となるストラーデビアンケの勝利を喜んだ。
宣言通りモンテ・サンテ・マリエで仕掛け、今シーズン初戦で81kmの独走を決めたポガチャル。「81km地点で仕掛けたのはレースがスタートからハイペースかつ、嵐のような雨によって先頭集団の人数が絞られたため。それにウェレンスが良いペースで集団にダメージを与えてくれたのでアタックしたんだ。1人になってからはフィニッシュまでの力配分に集中して走った。魅力的かつ人気の高いストラーデビアンケは、世界で最も難易度の高いレースの一つだよ」と語った。
その歓喜から2分44秒遅れでフィニッシュラインにやってきたのはスクインシュ。登りでファンヒルスを3秒引き離し、ラトビア人として20年振りにワールドツアーのワンデーレースで表彰台に立った。
ポガチャルや上位勢のコメントは別記事で紹介します。
自転車ロードレースとしては第18回目と歴史が浅いにもかかわらず、モニュメント(5大クラシック)に匹敵する人気が年々高まるストラーデビアンケ。イタリア中部のトスカーナ州シエナを発着地点とし、「白い道」と呼ばれる(未舗装路区間)を駆け抜けるワンデーレースが今年もやってきた。
今大会はレースの総距離が伸び(184km→215km)、未舗装路も2箇所増えた計15箇所に(63km→71km)。そのため総獲得標高差も3,100mから4,000mに迫り、難易度の上がったレースは現地時間11時15分にアクチュアルスタートを告げる旗が振られると、序盤から無数のアタックが繰り広げられた。
30歳を越えてもなお力を伸ばし続けるトムス・スクインシュ(ラトビア、リドル・トレック)ら7名が逃げ、この日最初の未舗装路区間ヴィドリッタの後に引き戻される。その後セクター3を過ぎ、ローソン・クラドック(アメリカ、ジェイコ・アルウラー)を含む5名の逃げグループが形成。一方のメイン集団は、このレース最大の優勝候補タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツがコントロールを担った。
最大2分半のタイム差を得た逃げ集団だったが、ニルス・ブルン(スイス、チューダー・プロサイクリング)やクラドックが未舗装路でのパンクの餌食に。そのため逃げは早々と引き戻され、雨粒が落ちてきた残り98km地点でクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)とマグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ)が仕掛ける。しかしこの動きをUAEが許さず、それに伴う急激なペースの上下によってプロトンは35名程度に絞り込まれた。
その後、星条旗が描かれたアメリカ王者ジャージを着るシモンズが2度目の仕掛け。本降りとなった雨のなか最大24秒差をつけたシモンズだったが、今度はイネオス・グレナディアーズがプロトンを動かし、勝負所のセクター8「モンテ・サンテ・マリエ(全長11.5km/残り84km)」の入口で吸収。そしてプロトンの先頭が再びUAEに代わり、牽引役もイサーク・デルトロ(メキシコ)からティム・ウェレンス(ベルギー)に移った。
例年なら白い土煙を巻き上げる路面は雨を含み、モンテ・サンテ・マリエに2つ設定された勾配18%の登りをウェレンスを先頭に登頂。2度目の急坂で先頭は8名まで絞られ、その下りからの登り返しでポガチャルが飛び出した。
2022年にもモンテ・サンテ・マリエで仕掛け、初優勝を飾ったポガチャル。しかしその時よりもフィニッシュまでの距離は約30km伸び、止んだとはいえ雨の影響で路面もスリッピーという状況。フィニッシュまで81km地点からの驚きのアタックにセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)やシモンズも追従することはできず、そしてその差は徐々に拡がっていった。
今年のアタック場所を聞かれ、レース前に「モンテ・サンテ・マリエだ」と答えた通り、難易度5つ星の未舗装路区間で仕掛けたポガチャル。それをマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)が単独で追いかけ、その後ろには17名の追走集団。しかしここまでレースを動かしていたシモンズが落車してリタイアした一方で、巻き込まれたチームメイトのスクインシュは追走集団への復帰を果たしている。
残り68kmでファンヒルスを捉えた頃に追走集団は21名まで人数が増え、イネオスは前回覇者トーマス・ピドコック(イギリス)を含め3名を残す。またヴィスマはクスやクリストフ・ラポルト(フランス)も4名を残すなか、集団後方にはデルトロとウェレンスが抑え役として脚を溜め、UAEが必勝体制を築いた。
難易度4つ星のセクター11「レ・トルフェ(残り41.9km)」に集った大観衆の中を登るポガチャルは、この時点で後続と3分半までリードを拡大する。そのため表彰台争いに切り替わった感のある追走集団では、昨年2位のヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ)やラポルトが矢継ぎ早にアタック。そして一度集団内で脚の回復をしたファンヒルスが仕掛け、再び単独追走を開始した。
少し遅れてスクインシュがファンヒルスに合流し、先頭を行くポガチャルの3分差まで詰め寄る。しかしポガチャルは危なげなく最後の未舗装路区間群であるモンテキアーロ、そして今年から増えた2度目のコッレ・ピンツートをレ・トルフェをクリア。
シエナ旧市街の石畳坂を悠々とこなし、時折笑顔を見せたポガチャルは目抜き通りも通過。そして勝利の瞬間を一目見ようと駆けつけた大観衆のカンポ広場で、ポガチャルがフィニッシュラインに到達。黒色のフレームが土埃で白くなったバイクを掲げ、自身2度目となるストラーデビアンケの勝利を喜んだ。
宣言通りモンテ・サンテ・マリエで仕掛け、今シーズン初戦で81kmの独走を決めたポガチャル。「81km地点で仕掛けたのはレースがスタートからハイペースかつ、嵐のような雨によって先頭集団の人数が絞られたため。それにウェレンスが良いペースで集団にダメージを与えてくれたのでアタックしたんだ。1人になってからはフィニッシュまでの力配分に集中して走った。魅力的かつ人気の高いストラーデビアンケは、世界で最も難易度の高いレースの一つだよ」と語った。
その歓喜から2分44秒遅れでフィニッシュラインにやってきたのはスクインシュ。登りでファンヒルスを3秒引き離し、ラトビア人として20年振りにワールドツアーのワンデーレースで表彰台に立った。
ポガチャルや上位勢のコメントは別記事で紹介します。
ストラーデビアンケ2024結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 5:19:45 |
2位 | トムス・スクインシュ(ラトビア、リドル・トレック) | +2:44 |
3位 | マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) | +2:47 |
4位 | トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +3:50 |
5位 | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:26 |
6位 | ブノワ・コスヌフロワ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +4:39 |
7位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、モビスター) | +4:41 |
8位 | レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) | +4:48 |
9位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | +4:49 |
10位 | クリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク) | +5:17 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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