2024/03/02(土) - 13:30
iRCが数量限定でリリースしたMTBタイヤ、"TANKEN GEKKOTA"をインプレッション。モーターサイクルのエンデューロ競技用に開発された低反発コンパウンドを採用し、超ハイグリップを発揮するユニークなスペシャルタイヤを様々な状況のトレイルで使い込んだ。
iRCがリリースした”TANKEN GEKKOTA”は、過酷な地形を走るモーターサイクルのエンデューロ競技に用いられ、そのカテゴリーでは圧倒的なシェアを誇るという超ソフトタイヤ「GEKKOTA」のコンパウンドを活用した特別なMTBエンデューロ向けタイヤだ。
英語で「ヤモリ」を意味するGEKKOTA(ゲコタ)という名前が示す通り、そのコンパウンドは木の根や濡れた岩肌でもグリップ力を発揮。また滑りにくいというだけではなく、衝撃を受けた際に弾かれにくく、木の根が連続するようなセクションでもコントロールを失いにくい性能がMTBタイヤにもたらされた。
従来のTANKENの追加モデルとして数量限定にて登場したTANKEN GEKKOTA。ノブ形状は同一ながらコンパウンドが置き換えられただけではなく、サイドやビード上部のフィラー補強によってサイドカットやリム打ちパンクに対しての耐性を獲得。この補強によって剛性も向上しており、ソフトコンパウンドとのバランスが整えられている。
また国内トップライダーにしてマウンテンバイクとオートバイの両方で活躍する内嶋亮さんも開発テストに参加。TANKEN GEKKOTAについて内嶋さんは「日本の土質は、世界の中でも非常に滑りやすく硬いと言われます。その難しい路面に合わせコンパウンド、タイヤ剛性を整えたのがTANKEN GEKKOTA。特に富士見パノラマや白馬岩岳でゲレンデダウンヒルを楽しむ方にはおすすめです」とコメントする。
サイズラインアップは27.5インチ用が2.6インチ幅(1185g)と2.8インチ幅(1295g)の2種類、29インチ用が2.3インチ幅(1200g)、2.6インチ幅(1245g)の2種類で、計4種類が揃う。発売以来人気を博するTANKEN GEKKOTAを、三重県いなべ市のオガワサイクル店主・小川雅広さんがトレイルで使い込んだインプレッションをお届けする。
インプレッション
トレイルでオールマイティに使い勝手の良かったiRC TANKENに、ハイグリップでガミーなコンパウンドを採用したTANKEN GEKKOTA。標準のTANKENでもグリップは良かったのですが、ウェットコンディションのエンデューロやダウンヒルレースでも通用するくらいハイグリップなタイヤが欲しいという要望に応えるべく登場しました。
トレッドを手で触っただけでコンパウンドの柔らかさを感じとれます。柔らかく、粘着性のあるノブは押せばたやすく変形して、手の方に黒いゴムの汚れが付着するぐらい。
今回は29x2.6サイズでテスト。バイクはeMTBのLEVO SL EXPERT(GEN1)、体重80kgで20PSI(1.37bar)が使いこんでのベストな空気圧でした。
センターブロックは大きく、そこまで密ではないので落ち葉が敷き詰められたようなルーズオーバーな路面でもしっかりノブが刺さってグリップしてくれます。サイドノブもやや高めですが、バイクを倒しこんでいった時の感触はニュートラル。不自然に引っ掛かることもなく、ストレス無く倒しこめます。これは標準TANKENでもとくに癖は感じなかったので、TANKENの基本性能と言えるでしょう。
また、このGEKKOTAのサイドノブがキャンバーでとても良い仕事をして、キャンバー下に流れ落ちることなく真っ直ぐ抜けられます。かなり雑に荷重しても路面を掴むようにグリップしてくれるのは本当に頼もしい。そしてGEKOTAのコンパウンドが活きるのはやはりロック(岩)やルーツ(根っこ)セクション。滑ったり流れやすかったりする状況できっちりとラインを外さずトレースでき、ブレーキングしてもしっかりと減速・停止できます。
カット断面と構造図を見る限りはそこまで分厚いケーシングではありませんが、柔らかすぎず、腰砕け感はありません。この辺りも標準のTANKENと同様です。
GEKKOTAにはビード部にPRS(PINCH FLAT RESISTANT SYSTEM)と呼ばれるリム打ちパンク防止のレイヤーが追加されて耐パンク性能が強化されています。これはハイグリップになってよりハードな環境で使用されることを考慮してのことでしょう。標準TANKENも脆いタイヤではありませんが、一度だけリム打ちでビード脇に孔を開けたことがあったので、これは嬉しいアップデートです。
ブレーキングについて、しっかりと減速・停止できると前述しましたが、ハイスピードからの急減速の際に前輪への荷重が甘い状態でブレーキレバーを強く握りすぎるとハイグリップが仇となってチャタリング(バタつき)が起きやすいと感じました。なので後輪への荷重に集中しすぎない、じんわりとレバーを引くといった丁寧なブレーキング技術が肝要となります。
標準TANKENも乗り心地は悪くないタイヤでしたが、GEKKOTAはそれを上回っています。これは低反発コンパウンドが効いているのでしょう。高め空気圧にありがちなハイスピード時のタイヤの弾かれが少ないです。
体重のわりに空気圧低めセッティングを好む私は、タイヤの太さも十分にあったので18PSI(1.24BAR)でスタートしたのですが、このタイヤであればGEKKOTA任せに空気圧を上げて乗った方が快適と判断して20PSI(1.37bar)に落ち着きました。29x2.3であればもう少し高めのセッティングが良いと思います。
29x2.6で1,245gの重量は他社のハイグリップタイヤと比較すると同等かやや軽めくらいですが、平坦路を転がすと数値以上に重たく感じます。
GEKKOTAは柔らかいだけではなく粘着性のあるコンパウンドのお陰か、アスファルトに散らばった小石や砂粒を巻き上げ、フェンダーを付けているとそれを弾いてカリカリと音が鳴り続けます。後方を走るライダー曰く「砂や木の葉、枝などがたくさん飛んでくる」とのこと。
一般的なグラビティ向けハイグリップタイヤはベースレイヤーに硬めのコンパウンドを敷き、その上にソフトコンパウンドを被せてグリップ力と転がり性能を両立するという積層構造ものが多いのですが、このGEKKOTAのノブは低反発コンパウンド一層というシンプルな構造。転がりの軽さとトレードオフでグリップ力と乗り心地の良さを高めています。
ベースレイヤー無しの一層構造トレッドというのは、減っても減っても金太郎飴のごとく低反発コンパウンドが露出してくると考えると、常にハイグリップが維持されるという点においてはメリットであると言えそうです。
気になるタイヤの摩耗具合については、約1か月使用した時点で後輪のノブに成型時のパーテーションが確認されなくなりました。ですので減りは早めだと思います。時間経過とコンパウンドの摩耗、劣化具合については引き続き要観察となります。
今回はeMTBに装着して性能評価をしたのですが、パワーさえ担保できればこのタイヤはオフロードのシングルトラックの登坂性能が抜群に良いです。かなりの急勾配でロックやルーツがあるセクションでもスリップすることなく、モリモリとトラクションが掛かります。この辺りは流石はオートバイのハードエンデューロで使用されているタイヤといっていいでしょう。
強烈なハイグリップタイヤですので、フォークやホイールの剛性、ブレーキのストッピングパワーなどによっても評価は変わると思いますが、オフロードのダウンヒルに苦手意識がある方は試しに前輪だけでも装着してみると走りに安心感を与えてくれると思います。テクニックに自信のある方であれば、少し難易度の高いチャレンジラインに挑戦してみようという気にさせてくれるのではないでしょうか。前輪にGEKKOTA、後輪に標準TANKENという組み合わせで使うなら、グリップ性能、ローリング性能、耐摩耗性で隙が無くなるとも思いました。
テスト期間中に大雪の日がありましたので半日ほど雪の中を乗り回してみましたが、オートバイのハードエンデューロで使われているだけあって撥水性能が良く、しっかりと雪がキレていました。この辺が苦手なタイヤだと雪だるま状態になります。そして低温にも強く、雪の中で乗り回してもコンパウンドのしなやかさは損なわれませんでした。
個人的にはこのGEKKOTAを前後輪に装着して、カナダのウィスラーのトレイルに無数に点在する急勾配のロングスラブ(一枚岩)に挑戦してみたいな、と思いました。そうした難しい状況で絶対に武器になるはず。
シーズンインしてMTBパークがオープンした際には富士見パノラマや白馬岩岳のようなハイスピードコースの硬く締まった路面での挙動もぜひ観測してみたいところです。
iRC TIRE TANKEN GEKKOTA TLR(タンケン ゲコタ チューブレスレディ)
ビード:アラミド
サイズ(重量):27.5x2.6(1,185g)、27.5x2.8(1,295g)、29x2.3(1,200g)、29x2.6(1,245g)
価格:9,350円(税込)
小川雅広さん(オガワサイクル)
三重県員弁郡の自転車店「オガワサイクル」の店主。学生時代はツーリングに励み日本一周も達成。現在はMTBのトレイルライドが趣味で、たまにドロップハンドルも握る。ライド以外に山道普請やトレイル造りなどの環境整備活動のほかMTBの普及、インストラクション活動にも精を出す。昨年はMTB店長仲間たちとカナダに遠征して本場ウィスラーでのトレイルライドを楽しんだ。体重80kg、身長178cm。
オガワサイクル
iRCがリリースした”TANKEN GEKKOTA”は、過酷な地形を走るモーターサイクルのエンデューロ競技に用いられ、そのカテゴリーでは圧倒的なシェアを誇るという超ソフトタイヤ「GEKKOTA」のコンパウンドを活用した特別なMTBエンデューロ向けタイヤだ。
英語で「ヤモリ」を意味するGEKKOTA(ゲコタ)という名前が示す通り、そのコンパウンドは木の根や濡れた岩肌でもグリップ力を発揮。また滑りにくいというだけではなく、衝撃を受けた際に弾かれにくく、木の根が連続するようなセクションでもコントロールを失いにくい性能がMTBタイヤにもたらされた。
従来のTANKENの追加モデルとして数量限定にて登場したTANKEN GEKKOTA。ノブ形状は同一ながらコンパウンドが置き換えられただけではなく、サイドやビード上部のフィラー補強によってサイドカットやリム打ちパンクに対しての耐性を獲得。この補強によって剛性も向上しており、ソフトコンパウンドとのバランスが整えられている。
また国内トップライダーにしてマウンテンバイクとオートバイの両方で活躍する内嶋亮さんも開発テストに参加。TANKEN GEKKOTAについて内嶋さんは「日本の土質は、世界の中でも非常に滑りやすく硬いと言われます。その難しい路面に合わせコンパウンド、タイヤ剛性を整えたのがTANKEN GEKKOTA。特に富士見パノラマや白馬岩岳でゲレンデダウンヒルを楽しむ方にはおすすめです」とコメントする。
サイズラインアップは27.5インチ用が2.6インチ幅(1185g)と2.8インチ幅(1295g)の2種類、29インチ用が2.3インチ幅(1200g)、2.6インチ幅(1245g)の2種類で、計4種類が揃う。発売以来人気を博するTANKEN GEKKOTAを、三重県いなべ市のオガワサイクル店主・小川雅広さんがトレイルで使い込んだインプレッションをお届けする。
インプレッション
トレイルでオールマイティに使い勝手の良かったiRC TANKENに、ハイグリップでガミーなコンパウンドを採用したTANKEN GEKKOTA。標準のTANKENでもグリップは良かったのですが、ウェットコンディションのエンデューロやダウンヒルレースでも通用するくらいハイグリップなタイヤが欲しいという要望に応えるべく登場しました。
トレッドを手で触っただけでコンパウンドの柔らかさを感じとれます。柔らかく、粘着性のあるノブは押せばたやすく変形して、手の方に黒いゴムの汚れが付着するぐらい。
今回は29x2.6サイズでテスト。バイクはeMTBのLEVO SL EXPERT(GEN1)、体重80kgで20PSI(1.37bar)が使いこんでのベストな空気圧でした。
センターブロックは大きく、そこまで密ではないので落ち葉が敷き詰められたようなルーズオーバーな路面でもしっかりノブが刺さってグリップしてくれます。サイドノブもやや高めですが、バイクを倒しこんでいった時の感触はニュートラル。不自然に引っ掛かることもなく、ストレス無く倒しこめます。これは標準TANKENでもとくに癖は感じなかったので、TANKENの基本性能と言えるでしょう。
また、このGEKKOTAのサイドノブがキャンバーでとても良い仕事をして、キャンバー下に流れ落ちることなく真っ直ぐ抜けられます。かなり雑に荷重しても路面を掴むようにグリップしてくれるのは本当に頼もしい。そしてGEKOTAのコンパウンドが活きるのはやはりロック(岩)やルーツ(根っこ)セクション。滑ったり流れやすかったりする状況できっちりとラインを外さずトレースでき、ブレーキングしてもしっかりと減速・停止できます。
カット断面と構造図を見る限りはそこまで分厚いケーシングではありませんが、柔らかすぎず、腰砕け感はありません。この辺りも標準のTANKENと同様です。
GEKKOTAにはビード部にPRS(PINCH FLAT RESISTANT SYSTEM)と呼ばれるリム打ちパンク防止のレイヤーが追加されて耐パンク性能が強化されています。これはハイグリップになってよりハードな環境で使用されることを考慮してのことでしょう。標準TANKENも脆いタイヤではありませんが、一度だけリム打ちでビード脇に孔を開けたことがあったので、これは嬉しいアップデートです。
ブレーキングについて、しっかりと減速・停止できると前述しましたが、ハイスピードからの急減速の際に前輪への荷重が甘い状態でブレーキレバーを強く握りすぎるとハイグリップが仇となってチャタリング(バタつき)が起きやすいと感じました。なので後輪への荷重に集中しすぎない、じんわりとレバーを引くといった丁寧なブレーキング技術が肝要となります。
標準TANKENも乗り心地は悪くないタイヤでしたが、GEKKOTAはそれを上回っています。これは低反発コンパウンドが効いているのでしょう。高め空気圧にありがちなハイスピード時のタイヤの弾かれが少ないです。
体重のわりに空気圧低めセッティングを好む私は、タイヤの太さも十分にあったので18PSI(1.24BAR)でスタートしたのですが、このタイヤであればGEKKOTA任せに空気圧を上げて乗った方が快適と判断して20PSI(1.37bar)に落ち着きました。29x2.3であればもう少し高めのセッティングが良いと思います。
29x2.6で1,245gの重量は他社のハイグリップタイヤと比較すると同等かやや軽めくらいですが、平坦路を転がすと数値以上に重たく感じます。
GEKKOTAは柔らかいだけではなく粘着性のあるコンパウンドのお陰か、アスファルトに散らばった小石や砂粒を巻き上げ、フェンダーを付けているとそれを弾いてカリカリと音が鳴り続けます。後方を走るライダー曰く「砂や木の葉、枝などがたくさん飛んでくる」とのこと。
一般的なグラビティ向けハイグリップタイヤはベースレイヤーに硬めのコンパウンドを敷き、その上にソフトコンパウンドを被せてグリップ力と転がり性能を両立するという積層構造ものが多いのですが、このGEKKOTAのノブは低反発コンパウンド一層というシンプルな構造。転がりの軽さとトレードオフでグリップ力と乗り心地の良さを高めています。
ベースレイヤー無しの一層構造トレッドというのは、減っても減っても金太郎飴のごとく低反発コンパウンドが露出してくると考えると、常にハイグリップが維持されるという点においてはメリットであると言えそうです。
気になるタイヤの摩耗具合については、約1か月使用した時点で後輪のノブに成型時のパーテーションが確認されなくなりました。ですので減りは早めだと思います。時間経過とコンパウンドの摩耗、劣化具合については引き続き要観察となります。
今回はeMTBに装着して性能評価をしたのですが、パワーさえ担保できればこのタイヤはオフロードのシングルトラックの登坂性能が抜群に良いです。かなりの急勾配でロックやルーツがあるセクションでもスリップすることなく、モリモリとトラクションが掛かります。この辺りは流石はオートバイのハードエンデューロで使用されているタイヤといっていいでしょう。
強烈なハイグリップタイヤですので、フォークやホイールの剛性、ブレーキのストッピングパワーなどによっても評価は変わると思いますが、オフロードのダウンヒルに苦手意識がある方は試しに前輪だけでも装着してみると走りに安心感を与えてくれると思います。テクニックに自信のある方であれば、少し難易度の高いチャレンジラインに挑戦してみようという気にさせてくれるのではないでしょうか。前輪にGEKKOTA、後輪に標準TANKENという組み合わせで使うなら、グリップ性能、ローリング性能、耐摩耗性で隙が無くなるとも思いました。
テスト期間中に大雪の日がありましたので半日ほど雪の中を乗り回してみましたが、オートバイのハードエンデューロで使われているだけあって撥水性能が良く、しっかりと雪がキレていました。この辺が苦手なタイヤだと雪だるま状態になります。そして低温にも強く、雪の中で乗り回してもコンパウンドのしなやかさは損なわれませんでした。
個人的にはこのGEKKOTAを前後輪に装着して、カナダのウィスラーのトレイルに無数に点在する急勾配のロングスラブ(一枚岩)に挑戦してみたいな、と思いました。そうした難しい状況で絶対に武器になるはず。
シーズンインしてMTBパークがオープンした際には富士見パノラマや白馬岩岳のようなハイスピードコースの硬く締まった路面での挙動もぜひ観測してみたいところです。
iRC TIRE TANKEN GEKKOTA TLR(タンケン ゲコタ チューブレスレディ)
ビード:アラミド
サイズ(重量):27.5x2.6(1,185g)、27.5x2.8(1,295g)、29x2.3(1,200g)、29x2.6(1,245g)
価格:9,350円(税込)
小川雅広さん(オガワサイクル)
三重県員弁郡の自転車店「オガワサイクル」の店主。学生時代はツーリングに励み日本一周も達成。現在はMTBのトレイルライドが趣味で、たまにドロップハンドルも握る。ライド以外に山道普請やトレイル造りなどの環境整備活動のほかMTBの普及、インストラクション活動にも精を出す。昨年はMTB店長仲間たちとカナダに遠征して本場ウィスラーでのトレイルライドを楽しんだ。体重80kg、身長178cm。
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