パナレーサーが満を持して送り出すレーシングタイヤの新定番「AGXERO(エージーゼロ)」。二編目は、開発に深く携わった宇都宮ブリッツェンの選手たちにインタビュー。国内屈指のプロライダーが語るAGXEROの魅力とは。

宇都宮ブリッツェンのチーム練に帯同。AGXEROを装着し実戦的なトレーニングを行った photo:Naoki Yasuoka
今回、CW編集部はオフシーズンの宇都宮ブリッツェンのチーム練習に帯同。ほぼ全員がAGXEROを装着し、もてぎ周辺のアップダウンを駆け抜ける選手達の表情は明るかった。新型タイヤが期待どおり、あるいはそれ以上の性能を発揮してくれているからだろう。
ドライではあるが、低温というタイヤにとっては厳しいコンディションの中で、多くのフィードバックを詰め込んだ新型タイヤを走らせた選手達。その中からAGXEROの開発に深くコミットした武山晃輔と谷順成、そして沢田時と岡篤志の4人に話を聞いた。

AGXEROの開発において深くコミットした4名。左から谷、武山、岡、沢田。 photo:Naoki Yasuoka
CW:ついに登場したAGXEROの開発には、ブリッツェンの皆さんが深く関わったとのことですが、どのような形だったのでしょう。
谷:開発初期には、まず今のタイヤ(Panaracer AGILEST)はどうですか、というところからでしたね。そこから改善点を提案すると、その声を反映したテストタイヤを作って持ってきてくれるんです。
そして、そのテストタイヤのフィードバックを伝えると、また新たなモデルを作ってくれる。僕たちの声を真剣に聞いてくれるという実感がありましたね。その結晶として生まれたAGXEROには、やっぱり思い入れがあります。レーサーとしての経験が反映されて、実際の製品として形になるというのは、やはり国内メーカーだからこそだと思います。

僕たちの要望を真剣に聞いてもらえた、と語る谷順成 photo:Naoki Yasuoka
武山:本格的に参加し始めたのは2年ほど前でしょうか。テストタイヤへのフィードバックを順次行っていく形だったのですが、期間はまちまちでしたね。かなり短いスパンの時もありましたし、中長期的なフィードバックを求められることもありました。
やりとりを重ねて、テストタイヤのバージョンが上がるたびに良いフィーリングがどんどん大きくなってきて、イメージを実現できる技術力には驚かされました。
CW:前作からの改善要望とは、具体的にはどういったものだったのでしょうか。

転がりも良く、登りでも好印象。高い評価を得た前作を更にブラッシュアップした photo:Naoki Yasuoka
沢田:正直、Panaracer AGILESTにこれといった不満点というのは無かったんです。凄く良いタイヤで、転がりも良いしグリップも問題なかったですし。
じゃあ後はなにか、という時にレインコンディションでももっと攻められるようなタイヤだったらいいな、という着眼点から、溝を入れるのはどうですか?と提案したんです。

武山は「トレッドパターンを入れたことで、よりしなやかさを感じられるようになった」と語る。 photo:Naoki Yasuoka
武山:チームの皆の総意として、トレッドパターンを入れるとゴムのしなやかさが出るんじゃないか、という意見があったんです。廣瀬GMが面白い表現をしていたんですが、寿司ネタの烏賊に隠し包丁を入れることで口当たりが良くなるのと同じだと。
溝を刻むことで、構造的な剛性をあえて弱める。パターンの列ごとに分離させることでブロックごとに動きが出るので、よりしなやかで柔らかくグリップしているように感じられるようになるだろうと。

廣瀬GMが「寿司ネタの隠し包丁」に例えるAGXEROのトレッドパターン photo:Naoki Yasuoka
岡:試験機の数値としては、溝の有無は影響しないという話もありましたけど、実際に乗った感覚は違うんですよね。
岡:そうですね。しなやかで、しっかりと路面を掴んでくれるような感覚があって、扱いやすさがぐんと増しました。

しなやかで路面をしっかりと掴んでくれる感覚が好印象だと岡は語る photo:Naoki Yasuoka
武山:ワイドタイヤが主流になって、グリップのアプローチも変わってきている部分があると思うんです。以前なら7気圧くらいがスタンダードだったので、グリップはコンパウンドの性能頼みな面が大きかった。
でも、今は4気圧前後でタイヤを少し潰しながら乗っていくようなセッティングがスタンダードじゃないですか。そうすると、コンパウンドの素材的な性能だけに頼るのではなくて、タイヤの構造全体でグリップを生み出せるしなやかな造りのほうがメリットが大きいはずです。コーナーも攻められるだけじゃなく、快適性も高まりますし。

快適でグリップの安定感も増し、耐久性にも優れている。それでいて走りの軽さは前作と同等だと選手らは言う。 photo:Naoki Yasuoka
沢田:それでいて前作から走りが重くなった、というようなことは一切無いのがAGXEROの良い所ですね。
谷:下りの重要性が高まっているので、安定してコーナーを攻められるタイヤというのは勝つためには必須の要素です。
実際、今のレース、例えばジャパンカップでは、古賀志の上りだけじゃ勝負が決まらない。いかに速く下れるかっていうのも大きな要素になっています。そしてこれは、ジャパンカップだけじゃなく、日本国内全てのレースで言えることなんです。

AGXEROは下りコーナーでも安心感を持って攻められるタイヤだと、選手らは口を揃える photo:Naoki Yasuoka
ただ、勝負が掛かっているからといって、一か八かでコーナーを突っ込むのはリスクですよね。でも、しっかりとコーナリング中にタイヤが地面を捉えているという感覚が自分の中にあるのであれば、それは運否天賦ではない。その安心感こそAGXEROの真骨頂だと思います。

メインモデルとなるAGXEROのみの展開となる photo:Naoki Yasuoka
CW:今回、AGXEROにはDUROやLIGHT、FASTといったモデルはまだ発表されていません。これらに関してはAGILESTシリーズでの展開となっていますが、実戦ではどういった使い分けとなりそうでしょうか。
沢田:AGXEROはかなりカバー範囲が広くて、万能に使えますね。なので、正直なところほとんどのレースはこれでこなせるんじゃないかと思います。AGXEROだけで今シーズン走れと言われても、チーム全員が納得できる出来栄えだと思います。

沢田は、「万能に使えるタイヤで、これ一本であらゆるレースに対応できる」とAGXEROに太鼓判を押す photo:Naoki Yasuoka
谷:タイムトライアルであれば、転がりの軽いAGILEST FASTが向いているでしょう。ですが、それ以外のロードレース全般に関して言えば、万能のAGXERO一択ですね。それくらい感触が良いです。
CW:ラインアップに関しては、チューブレスレディとクリンチャーが用意されていますが、それぞれ特徴はありますか?
武山:単純な走行性能だけならやはりチューブレスの方が高いですね。構造的な問題で、同じ転がりを得たいなら、クリンチャーは空気圧が10%くらいチューブレスよりも高くなります。なので、どうしても硬さが出てしまう部分があります。

AGXEROはしなやかになり、より嵌めやすくなったと、ブリッツェンの市原メカニック。選手、メカ共にそのしなやかさを高く評価する。 photo:Naoki Yasuoka
もちろん、クリンチャーのメリットもあります。パンクしてシーラントが機能しなかったときなどはチューブレスは面倒ですし、一般ユーザーが普通に運用するならクリンチャーの方が扱いやすい部分も大きい。パナレーサーには軽量なTPUチューブのPURPLE LITEもラインアップされていますし、チューブレスよりも軽く組めるというメリットもあると思います。
運用のしやすさに多少目をつぶってでも、性能を追いかけるならチューブレス、扱いやすさにもある程度比重を置くのであればクリンチャーを選ぶのが良いでしょうね。

パナレーサー AGXERO photo:Naoki Yasuoka
谷、武山、沢田、岡。国内屈指のレーサーが磨き上げたAGXERO

今回、CW編集部はオフシーズンの宇都宮ブリッツェンのチーム練習に帯同。ほぼ全員がAGXEROを装着し、もてぎ周辺のアップダウンを駆け抜ける選手達の表情は明るかった。新型タイヤが期待どおり、あるいはそれ以上の性能を発揮してくれているからだろう。
ドライではあるが、低温というタイヤにとっては厳しいコンディションの中で、多くのフィードバックを詰め込んだ新型タイヤを走らせた選手達。その中からAGXEROの開発に深くコミットした武山晃輔と谷順成、そして沢田時と岡篤志の4人に話を聞いた。
綿密なコミュニケーションから生まれたレーシングスペック

CW:ついに登場したAGXEROの開発には、ブリッツェンの皆さんが深く関わったとのことですが、どのような形だったのでしょう。
谷:開発初期には、まず今のタイヤ(Panaracer AGILEST)はどうですか、というところからでしたね。そこから改善点を提案すると、その声を反映したテストタイヤを作って持ってきてくれるんです。
そして、そのテストタイヤのフィードバックを伝えると、また新たなモデルを作ってくれる。僕たちの声を真剣に聞いてくれるという実感がありましたね。その結晶として生まれたAGXEROには、やっぱり思い入れがあります。レーサーとしての経験が反映されて、実際の製品として形になるというのは、やはり国内メーカーだからこそだと思います。

武山:本格的に参加し始めたのは2年ほど前でしょうか。テストタイヤへのフィードバックを順次行っていく形だったのですが、期間はまちまちでしたね。かなり短いスパンの時もありましたし、中長期的なフィードバックを求められることもありました。
やりとりを重ねて、テストタイヤのバージョンが上がるたびに良いフィーリングがどんどん大きくなってきて、イメージを実現できる技術力には驚かされました。
CW:前作からの改善要望とは、具体的にはどういったものだったのでしょうか。

沢田:正直、Panaracer AGILESTにこれといった不満点というのは無かったんです。凄く良いタイヤで、転がりも良いしグリップも問題なかったですし。
じゃあ後はなにか、という時にレインコンディションでももっと攻められるようなタイヤだったらいいな、という着眼点から、溝を入れるのはどうですか?と提案したんです。

武山:チームの皆の総意として、トレッドパターンを入れるとゴムのしなやかさが出るんじゃないか、という意見があったんです。廣瀬GMが面白い表現をしていたんですが、寿司ネタの烏賊に隠し包丁を入れることで口当たりが良くなるのと同じだと。
溝を刻むことで、構造的な剛性をあえて弱める。パターンの列ごとに分離させることでブロックごとに動きが出るので、よりしなやかで柔らかくグリップしているように感じられるようになるだろうと。

岡:試験機の数値としては、溝の有無は影響しないという話もありましたけど、実際に乗った感覚は違うんですよね。
実戦環境下でアドバンテージを生み出すしなやかさ
CW:前作と比較すると、乗り味としてはしなやかなフィーリングになっているということでしょうか?岡:そうですね。しなやかで、しっかりと路面を掴んでくれるような感覚があって、扱いやすさがぐんと増しました。

武山:ワイドタイヤが主流になって、グリップのアプローチも変わってきている部分があると思うんです。以前なら7気圧くらいがスタンダードだったので、グリップはコンパウンドの性能頼みな面が大きかった。
でも、今は4気圧前後でタイヤを少し潰しながら乗っていくようなセッティングがスタンダードじゃないですか。そうすると、コンパウンドの素材的な性能だけに頼るのではなくて、タイヤの構造全体でグリップを生み出せるしなやかな造りのほうがメリットが大きいはずです。コーナーも攻められるだけじゃなく、快適性も高まりますし。

沢田:それでいて前作から走りが重くなった、というようなことは一切無いのがAGXEROの良い所ですね。
谷:下りの重要性が高まっているので、安定してコーナーを攻められるタイヤというのは勝つためには必須の要素です。
実際、今のレース、例えばジャパンカップでは、古賀志の上りだけじゃ勝負が決まらない。いかに速く下れるかっていうのも大きな要素になっています。そしてこれは、ジャパンカップだけじゃなく、日本国内全てのレースで言えることなんです。

ただ、勝負が掛かっているからといって、一か八かでコーナーを突っ込むのはリスクですよね。でも、しっかりとコーナリング中にタイヤが地面を捉えているという感覚が自分の中にあるのであれば、それは運否天賦ではない。その安心感こそAGXEROの真骨頂だと思います。
ほぼ全てのレースをこれ一本で。ブリッツェン折り紙付きの万能タイヤ

CW:今回、AGXEROにはDUROやLIGHT、FASTといったモデルはまだ発表されていません。これらに関してはAGILESTシリーズでの展開となっていますが、実戦ではどういった使い分けとなりそうでしょうか。
沢田:AGXEROはかなりカバー範囲が広くて、万能に使えますね。なので、正直なところほとんどのレースはこれでこなせるんじゃないかと思います。AGXEROだけで今シーズン走れと言われても、チーム全員が納得できる出来栄えだと思います。

谷:タイムトライアルであれば、転がりの軽いAGILEST FASTが向いているでしょう。ですが、それ以外のロードレース全般に関して言えば、万能のAGXERO一択ですね。それくらい感触が良いです。
CW:ラインアップに関しては、チューブレスレディとクリンチャーが用意されていますが、それぞれ特徴はありますか?
武山:単純な走行性能だけならやはりチューブレスの方が高いですね。構造的な問題で、同じ転がりを得たいなら、クリンチャーは空気圧が10%くらいチューブレスよりも高くなります。なので、どうしても硬さが出てしまう部分があります。

もちろん、クリンチャーのメリットもあります。パンクしてシーラントが機能しなかったときなどはチューブレスは面倒ですし、一般ユーザーが普通に運用するならクリンチャーの方が扱いやすい部分も大きい。パナレーサーには軽量なTPUチューブのPURPLE LITEもラインアップされていますし、チューブレスよりも軽く組めるというメリットもあると思います。
運用のしやすさに多少目をつぶってでも、性能を追いかけるならチューブレス、扱いやすさにもある程度比重を置くのであればクリンチャーを選ぶのが良いでしょうね。

提供:パナレーサー/制作:シクロワイアード編集部