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パナレーサーから完全新作となるロードタイヤ"AGXERO(エージーゼロ)"が登場。好評を博したPanaracer AGILESTをゼロから再構築し、次世代パナレーサータイヤの基準点として生まれ変わったレーシングモデルの真価をパナレーサー開発陣の言葉から解き明かしていこう。

「ROADゼロ革命」。前作を超えるため、全てをゼロベースで再構築したAGXERO

Panaracer AGILESTから4年。満を持してリリースされたパナレーサーの次世代レーシングタイヤとなるAGXERO photo:Naoki Yasuoka

2022年にリリースされ、衝撃を持って迎えられたPanaracer AGILEST。それまでパナレーサーのレーシングロードタイヤとして君臨してきたRACE EVOシリーズに終止符を打ち、激動するロードバイクの機材環境、レースシーンのトレンドに合わせた最先端のレーシングタイヤとして、乾坤一擲の勝負を挑んだ意欲作だった。

その結果は、既に多くの読者が知るところ。パナレーサーのフラッグシップタイヤとして、そしてトップTierのレーシングタイヤとして、その座を確固たるものとしたPanaracer AGILEST。ほぼ時を同じくして変更されたブランドカラーとあわせ、新生パナレーサーを象徴する名作となった。

しかし、機材は常に進化を求められ続けるもの。パナレーサーは、その成功に胡坐をかくことなく、開発の手を緩めることは無かった。「ROAD再定義」を謳いパナレーサーロードタイヤの方向性を大きく転換した前作の登場から4年、その後継となるべく生み出されたのがAGXERO。「ROADゼロ革命」をテーマに掲げる次世代モデルだ。

パナレーサー技術開発部の吉岡拓也さん。「ありがたいことに、選手達はPanaracer AGILESTの性能に満足してくれていました。ただ開発陣としては、要望を吸い出す難しさでもありました」と、開発当初を振り返る photo:Naoki Yasuoka

「前作をリリースしてすぐ、AGXEROの開発はスタートしました。宇都宮ブリッツェンをはじめ、サポートするチームからタイヤに関する要望をヒアリングしたところ『特に不満が無い』という意見が多かったんです。嬉しい反面、新作の開発という側面では困りましたね(笑)」と語るのは、AGXEROの開発に深く携わり、チームとのコミュニケーションを担った吉岡さん。

そこで前作のベクトルを受け継ぎつつ、その性能を底上げし、メリットを最大化する方向に開発方針を定めたという。「どんなに細かなことでも改善の芽になると思って、選手たちと対話を重ねていきました。その中で出てきた要素の一つが、トレッドパターンでした」。

選手の要望から生まれた独自のトレッドパターン

AGXEROのトレッドにはパターンが描かれている。前作との違いとして最も外観的に分かりやすい部分だ。 photo:Naoki Yasuoka

スリックだったPanaracer AGILEST(※チューブラーを除く)と異なり、AGXEROにはトレッドパターンが刻まれている。センター部分はスリックとしつつ、ショルダー部には縦方向へのグルーブ(溝)をベースに"E"をモチーフとしたパターンを等間隔に配置する。

「トレッドパターンをつけても、定量的に優位な数値としては計測されないんです。グリップの絶対値というのは、理論上ではスリックタイヤに軍配が上がる」と吉岡さん。それが故に前作はスリックだったとも。しかし一方で、パターンをつけることのメリットもあるという。「まず見た目の安心感。そして、滑り出す感覚が掴みやすくなるという意見もありました」。

では、どういったパターンが望ましいのか。ブリッツェンのメンバーと意見交換を重ね、パナレーサーの技術開発部の検証を経て、無数の可能性の中から一つの方向性が見えてきた。

実戦からのフィードバックによりタイヤをブラッシュアップする宇都宮ブリッツェンの選手達。特にトレッドパターンのデザインには大きな影響を与えたとも。 photo:Naoki Yasuoka

「ブリッツェンのメンバーと検討したパターンが社内の試験においても高評価だったんです。これまでスリックでも排水の意味では変わらないでも変わらないと言ってきたのですが、このパターンと新コンパウンドの組み合わせが社内試験でも非常に評価が高く、実際にテストした選手にもメリットを感じてもらえました」と吉岡さん。

そう、この新たなトレッドパターンのポテンシャルを引き出すのがAGXEROのためにゼロから開発された新コンパウンド「ZSG AGILE-X」だ。

軽やかな走りはそのまま、耐パンク性能を6%向上。相克を乗り越える新コンパウンド「ZSG AGILE-X」

新開発のZSG AGILE-Xコンパウンドを搭載する photo:Naoki Yasuoka


「ゼロ・スリップ・グリップ」のイニシャルに由来するZSGコンパウンドは、パナレーサーの誇る高性能レーシングコンパウンド。その最新作となるのが、AGXEROのために開発されたZSG AGILE-Xだ。

「コンパウンドは多くの原料の組み合わせ。膨大な選択肢から求める性能を実現するために、試行錯誤を重ねました」と語る吉岡さん。 photo:Naoki Yasuoka
実は、AGXEROのトレッドは前作よりも分厚くなっているのだという。その理由について、「AGILESTの走行性能自体に、選手たちからは不満がほぼ無かったんです。そこで、AGXEROではその性能を維持しつつ、耐パンク性やロングライフ性能を向上させることを目標としました」と吉岡さん。

トレッドの厚みは耐久性に直結することは誰もが直感的に分かることだ。一方で、トレッドを分厚くすると重量面では不利になる。そして、それ以上に転がり抵抗が悪化する要因ともなる。各社のTT用タイヤのトレッドは非常に薄く、耐パンクブレーカーも搭載していないものが多いのは、それだけタイヤのしなやかさが転がり抵抗に与える影響が大きいことの証明でもある。

しかし、AGXEROは前作と同等の転がり抵抗を実現しつつより厚みのあるトレッドを搭載している。その不可能を可能とするのが、ZSG AGILE-Xなのだ。

「コンパウンドというのは何種類もの原材料を配合して作りあげるものなのですが、その組み合わせは膨大。その中から求める性能を実現するための配合を突き止める必要があります」無限とも思える選択肢から答えを導き出すことが出来るのは、パナレーサーが自社でコンパウンドを製造する数少ない自転車用タイヤメーカーであるから。積み重ねてきた経験と技術が、求める理想へと繋がっている。

そして、AGXEROでは貫通パンクへの耐久性を向上させるために、GRAVELKINGの技術を用いた耐パンクベルトを搭載している。前作と比較して6%の耐パンク性能向上を実現したというが、この変更もコンパウンド開発に影響を与えている。

新たな耐パンクベルトを採用し、耐貫通パンク性能を6%向上させた photo:Naoki Yasuoka

「ゴム単体としての性能とタイヤとしての性能が異なるという場合もあります。ケーシングや耐パンクベルトとの組み合わせによって、ガラリと性格が変わることも珍しくありません」と吉岡さんは語る。実際、開発時には良好な試験結果を出したコンパウンドを搭載したテストタイヤが選手達からNGを出されることもあったのだとか。

4年の開発期間の中で試験装置もアップデートされ、様々な要素を検証可能になったという。しかし、最終的に判断基準となるのはあくまで人間の感覚だと、吉岡さんは言う。

選手達との緊密なコミュニケーションを経て生み出されたAGXERO。国産レーシングタイヤの新基準となるレーシングタイヤが誕生した。 (c)パナレーサー

「選手たちと直接コンタクト出来るだけの関係を築けたのは大きいです。メカニックやマネージャー経由のフィードバックだと、ネガティブな部分がフィルターされてしまう。スポンサーなので(笑)。でも、開発陣としてはそのフィルターが掛かる前の生の声が聞きたいんです」

ライダーのホンネを、開発現場へと正しく届ける。そうして生まれたAGXEROは、レーシングタイヤとして次世代のスタンダードを示す一本となるはずだ。

クリンチャーとTLRから展開開始 AGXEROラインアップ

TLRとCL、ブラックとアンバーカラーを揃える photo:Naoki Yasuoka

パナレーサーのタイヤと言えば、オリジナルモデルに加え、軽量なLIGHT、耐久性重視のDUROといったバリエーションが同時に発表されてきた。

だが、今回のAGXEROに関しては当面オリジナルモデルのみの展開となり、それらのバリエーションモデルはPanaracer AGILESTシリーズが継続となる。

パナレーサーロードタイヤの中でAGXEROはオールラウンドレーシングタイヤに位置づけられる (c)パナレーサー

AGXEROに用意されるのは、クリンチャーとTLRの2モデル。サイズはISO準拠となり、25C、28C、30Cの3種類を揃える。レーシーな印象のブラックサイドと、トラディショナルなイメージのアンバーサイドの2カラー展開だ。価格はクリンチャーが7,920円、TLRが9,020円(共に税込)。

AGXERO:前作の走りはそのままに、耐貫通パンク性能を6%向上

パナレーサー AGXERO クリンチャー photo:Naoki Yasuoka

サイズと重量700x25C(220g)、700x28C(230g)、700x30C(260g)
サイドカラーブラック、アンバー
税込参考価格7,920円

AGXERO TLR:新世代パナレーサーレーシングタイヤの中核となるチューブレスレディタイヤ

パナレーサー AGXERO TLR photo:Naoki Yasuoka

サイズと重量700x25C(250g)、700x28C(270g)、700x30C(300g)
サイドカラーブラック、アンバー
税込参考価格9,020円
提供:パナーレーサー/制作:シクロワイアード編集部