日本のタイヤブランド、iRCが手掛けるシクロクロスタイヤのSERACシリーズにタンカラーが新たにラインアップされた。編集部の高木がシクロクロスレースを通したインプレッションを実施していく。



iRC SERAC CX TLR(タンカラー) photo:Michinari TAKAGI

ロード用タイヤのFORMULAシリーズで知られる日本のタイヤブランド、iRC。ロード用タイヤのみならず、マウンテンバイク用のTANKENやグラベル用タイヤのBOKENシリーズ、BMXのタイヤなど、多種多様なタイヤをラインアップしている。

iRCのCXタイヤのロングセラーモデルであるSERAC CXシリーズ。前モデルのチューブレス仕様からチューブレスレディ仕様に切り替わり、スタンダード仕様は35g、クロスガード仕様は30gの軽量化を実現している。

フロントとリアはタイヤローテーションが決められている photo:Michinari TAKAGI

1インチ間に180本のナイロンコードを打ち込んだ180TPIのケーシングを採用し、チューブラーのような、しなやかな乗り心地を実現している。シーラントと併用することで空気保持レベルを大幅に高める、極薄軽量のエアシール層のマイクロゲージインナーを採用している。

リム打ち対策としてビードプロテクションが搭載されている。タイヤのビード部分をチェーファーで保護と強化した構造になっているため、高荷重が掛かった時にビード部分を護り、タイヤの損傷や摩耗を防いでくれる。

オールラウンドに使いやすいトレッドパターン photo:Michinari TAKAGI

ロングセラーモデルではあるが改めて、SERAC CXシリーズはSERAC CX EDGEとSERAC CX、SERAC CX MUDの3種類のトレッドパターンがラインアップされているため、コースや路面コンディションに合わせてタイヤ選択ができるのが特徴だ。

SERAC EDGEはヤスリ目のセンタートレッドで転がりが軽くハイスピードなコースに適したシクロクロス用チューブレスレディタイヤ。サイドノブがコーナーリング中のグリップ力を高めてくれる。

iRC SERAC CX EDGE photo:Michinari TAKAGI

SERAC CXは転がりの軽さやグリップ性能のバランスが取れているシクロクロス用チューブレスレディタイヤ。芝や土、泥など、あらゆる路面で総合的にグリップ性能を発揮し、SERACシリーズの定番モデルだ。

SERAC MUDはマッド路面や積雪路面で確実にトラクションがかかり、同時にサイドグリップも得られるトレッドパターンを採用。タイヤに荷重をかけてグリップを重視するライダーにとくにお勧めのモデルだ。

iRC SERAC CX MUD photo:Michinari TAKAGI

多種多様なバイクにマッチするタンカラー photo:Michinari TAKAGI

カラーは定番のブラックに加えて、トラディショナルなカラーリングのタンカラーが新たにラインアップに加わった。タイヤの性能に関してはブラックと同等のスペックとなっている。

フックレスホイールにも対応し、様々なブランドのホイールともマッチする。サイズはシクロクロスのレギュレーションでも決まっている33C以内の32Cのみがサイズ展開されている。価格はブラックが8,690円(税込)、タンカラーが9,460円(税込)となっている。それでは、編集部インプレッションに移っていこう。



―編集部インプレッション

大会会場でiRCスタッフさんによるタイヤ交換を見せてもらったが、非常にスムーズに交換が完了した photo:Michinari TAKAGI

今回はiRCのSERACシリーズCXタイヤを使用し、シクロクロス全日本選手権の男子エリートで10位入賞の経験があるCW編集部員の高木がインプレッションを担当していく。

iRCのシクロクロスタイヤはチューブレスレディ仕様に切り替わる前のチューブレス仕様のころからSERACシリーズを愛用している。チューブレスからチューブレスレディに切り替わると、チューブラーのようにタイヤのしなやかさが増した。

インサートを取り付けるiRCの山田さん photo:Michinari TAKAGI

タイヤの使い分けとしては芝区間や平坦が多い、茨城シクロクロスの土浦ステージや幕張クロス、砂区間があるお台場のシクロクロス東京や東海シクロクロスのワイルドネーチャーでセンタースリックに近い、ヤスリ目のSERAC EDGEを使用していた。比較的に平坦なハイスピードコースで使用することが多い。

一方、SERAC CX MUDはモデル名にあるように泥でもしっかりとトラクションが掛かってくれるグリップ重視のシクロクロスタイヤ。野辺山クロスの泥区間や関西クロスの琵琶湖などキャンバーが多いコースなど、雨や泥、雪などの悪天候のコンディションで、グリップ力やトラクションが必要なコースで活躍してくれる。

iRC SERAC CX TLRのタンカラーをテストしていく photo:Michinari TAKAGI

そして、SERAC CXは転がりの軽さやグリップ性能のバランスが取れているシクロクロス用チューブレスレディタイヤ。芝や土、泥など、あらゆる路面で総合的にグリップ性能を発揮し、SERACシリーズの一番万能なモデルだ。

上記のようにiRCタイヤのを使い分けてきた。今回はSERAC CXシリーズに新たに加わったタンカラーの万能なCXタイヤであるSERAC CX 700×32Cをインプレッションしていく。

タイヤの開発者である山田さんにSERAC CXを取り付けてもらった photo:Michinari TAKAGI

iRCブースでタイヤの開発者である山田さんにSERAC CXを取り付けてもらった。シーラントを30ml注入して、ビードをセンターに寄せて、エアーコンプレッサーでビードが上がっていく。自宅でも取り付けてみたが、フロアポンプだけでもビードは簡単に上げることができる。

開発者の山田さんは「大きくはスペックを変えたりはしていません。しかし、タンカラーを使っているシクロクロッサ―からは『チューブラーのようにしなやかになった』など、ポジティブな感想をもらうようになりました。製造時にトレッドとケーシングの結合速度が変わったり、チェーファーの位置が下がったりして、数字ではわからないのですが、乗り心地が変わった可能性もあります」とコメントをしていた。

「東海シクロクロス第3戦 東郷ケッターパーク iRC TIRE CUP」で実践導入 photo:Kikuzo

空気圧に関しては体重60kgに対して、チューブレス仕様の頃は空気圧は1.4~1.8barの空気圧の範囲内で調整をしているが、チューブレスレディ仕様になってからは、タイヤのしなやかが向上し、以前の空気圧だとタイヤのサイドが腰砕けになってしまうため、同じフィーリングにするために0.1barほど空気圧を上げるようにしている。

今回は「東海シクロクロス第3戦 東郷ケッターパーク iRC TIRE CUP」で実践導入をしていくことに。カテゴリーはME1に参戦していく。MTBシングルトラックに加え、根っこも多く存在しているため、インサートを入れて、1.6barにセッティング。

テストレースとして走るのは新東工業の敷地とMTBトレイルコースの「東郷ケッターパーク」が組み合わさった特設コース。特設コースの8割以上がMTBコースを利用したトレイルセクションで、スタート・ゴール地点を除けば、ハイスピードなダウンヒルと九十九折の連続コーナーのヒルクライムが続くテクニックを求められるコースだ。

バイクコントロールが難しい砂利の区間も操作しやすい photo:Kikuzo

テストレースとして走るのは新東工業の敷地とMTBトレイルコースの「東郷ケッターパーク」が組み合わさった特設コース。特設コースの8割以上がMTBコースを利用したトレイルセクションで、スタート・ゴール地点を除けば、ハイスピードなダウンヒルと九十九折の連続コーナーのヒルクライムが続くテクニックを求められるコースだ。

スタート・ゴール地点は大中小様々な石が敷き詰められ砂利の区間。砂利によってバイクが跳ねてバイクコントロールが難しい。フロントもリアもトラクションを要求されるようなセクションだが、タイヤのしなやかさのおかげで、落ち着いてバイクコントロールができる。

路面を捉え続けていくため、コーナーへの進入と脱出が速い photo:Kikuzo

SERAC CXのセンタートレッドがしっかりと路面を捉えてくれるため、あらゆる路面でトラクションが掛かる。特にコーナーの脱出時など加速感が良い印象に感じる。また、斜めのキャンバーのような路面でもサイドノブが路面を捉え続けてくれるため、安定感に繋がっている。シングルトラックでも安定した走りが特徴だ。

下りでは37kmの速度でシングルトラックを急降下していき、下った先にあるコーナーでフルブレーキングしながらコーナーリングしていったが、路面を捉え続けていくため、コーナーへの進入スピードと脱出スピードは速い領域で駆け抜けることができた。

滑りやすい登りの区間も、トラクションが掛かり難なくクリア photo:Kikuzo

登りのセクションには、落ち葉がある区間もあり滑りやすいコンディションでもあったが、、落ち葉の上に行ったとしても、路面を掻き出すように前に進んでくれるため、ホイールスピンなどなく、パワフルなペダリングを続けられた。

参戦したレースはiRC SERAC CX TLRを装着した副島が後続を大きく突き放し、独走優勝を飾った。私自身はiRCサポートを受けるキナンレーシングチームの畑中の5位に続き、6位でフルラップ完走でレースを終え、トップ10にはiRC SERAC CX TLRのタンカラーがほとんど独占する形となった。

ME1を制した副島達海(大阪産業大学)はiRC SERAC CXを使用 photo:Michinari TAKAGI
畑中勇介(キナンレーシングチーム)も新色のタンカラーで参戦し、5位でフィニッシュ photo:Michinari TAKAGI

MM1に参戦した山田 浩志さん(iRC TIRE)は11位でフィニッシュ photo:Michinari TAKAGI
MM1に参戦した橋川健さんはフルラップ完走 photo:Michinari TAKAGI


SERAC CXは転がりやすさ、グリップ感などあらゆる性能が求められるコースに適しているタイヤに感じている。私自身も3種類でタイヤ選択を悩んだ時はSERAC CXを選択するようにしている。また、前後共に同じモデルではなく、フロントはSERAC CX、リアはSERAC CX EDGEなど、フロントのグリップ力を増したい時など、フロントだけ使用する使い方も気に入っている。

タイヤの摩耗に関してはロングライフなモデルに感じる。私自身はオフロードコースまで舗装路を走り、様々なレースで使用してきたが、タイヤの山の残りもかなりあるため、1シーズンは持ってくれるだろう。

TLRにモデルチェンジして、タイヤの軽量化により、シケインでバイクを持ち上げやすくなった photo:Kikuzo

転がりが軽く平坦でもハイペースをキープできた photo:Kikuzo

シクロクロスでは、朝一のレースでは芝が生い茂る中を走るカテゴリーもあれば、自身が走るME1や男子エリートでは多くのカテゴリーがレースを終えた後の掘り返され、レコードラインも刻々と変わる特殊な競技だ。

もちろん、シクロクロスの会場で天候やコースコンディションが変わってしまい、会場でタイヤを付け替えていくなんてことは日常茶飯事だ。そんな状況下ではタイヤ選びが難しいところ。ドライタイヤやマッドタイヤ、ミックスタイヤなど、サブバイクやスペアホイールなどがあればすぐに入れ替えることができるが、そうもいかない状況下もあるはず。

シクロクロッサ―の相棒になる万能なシクロクロスタイヤ photo:Michinari TAKAGI

シクロクロスのレースは日本全国で行われているため、遠征がつきものだ。車の遠征であれば、スペアバイクやスペアホイールなどを持っていくことができるが、電車や飛行機で輪行すると、メインバイクのみで参戦することもある。そんな迷った時に選択肢となるのは"SERAC CX"。色んなCXレースに参戦したい、そんなシクロクロッサ―の相棒になる万能なシクロクロスタイヤだった。



iRC SERAC CX TLR
カラー:ブラック、タン
サイズ:700×32C
ビード:フォールディング
重量:345g
価格:8,690円(税込み、ブラック)、9,460円(税込、タン)

photo:Kikuzo & Michinari TAKAGI
text:Michinari TAKAGI
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