2024/01/25(木) - 18:30
「ついにここまで来たと実感しています」。ひときわ鮮やかなEFエデュケーション・イージーポストのジャージに身を包んだ留目夕陽の姿はマヨルカ島にあった。一軍メンバーと共に過ごしたキャンプの模様と共に、現地でのシーズンイン直前インタビューを紹介します。
EFエデュケーション・イージーポストがチームキャンプを行ったのは地中海に浮かぶマヨルカ島。スペイン本土から空路で1時間ほどと近く、暖かな海風によって冬でも極めて温暖だ。島の多くは平原だが、北西部には標高1,000mオーバーのトラムンターナ山脈が連なり、美しい海に面したアップダウンは絶景かつ最良のトレーニングフィールド。伝統的に多くのプロチームがこの島で冬場のトレーニングキャンプを開催し、コンディションを上げてシーズンインに繋げてきた。
ワールドチーム入りを果たし、名実ともに”トッププロ選手”となった留目夕陽は、このマヨルカ島で開催されたチームキャンプに参加した。期間は2週間で、そのメニューにはシーズンインレースであるチャレンジ・マヨルカも含まれる。正月を過ごした日本から直接マヨルカ入りし、オーストラリアでのツアー・ダウンアンダー参加組を除くチームメイトたちと到着翌朝から早速乗り込みを重ねた。留目がチームと行動するのは昨年末の全体合宿に続いて2回目のことだという。
「ついにここまで来た」
「胸に入ったワールドツアーのロゴを見ると気合が入りますね。ついにここまで来たんだと実感しています」。アクセントに黄色を加え、昨年よりもずっと華やかな印象になったピンクジャージに袖を通した留目は言う。21歳でのワールドチーム加入は別府と並ぶ日本人選手最年少であり、"最も注目すべき若手選手"は、勝負の年と捉えていた2023年を過ごした末にトップチームへの切符を手に入れた。
「一昨年まで学業優先でしたし、1年半は休学してデベロップメントチームで走りました(2022年5月からEFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチームに所属)。ほかの選手たちよりも早く、トントン拍子でここまで来れたと言う実感はあります。世界選手権(2022年のU23タイムトライアルで21位、2023年同23位)とラヴニール(登坂TTでステージ13位)である程度目立つ走りができたのは大きかったと思いますね」。
「でも、本当は1年契約にしたかったんです」と留目は言葉を続ける。もし選手活動が上手くいかなくとも1年だったらすぐ日本に戻れるし、休学中の大学生活にも戻れる。夢はグランツールを含む長い欧州キャリアの構築だが、常にプランBを用意しておくことで、必要以上にプレッシャーを感じないようにしているという。
「もうパスタとパンだけで大丈夫ですが、もし日本食が恋しくなったらバルセロナに行けばいいし、レースが無い期間には日本に戻ってもいい。”絶対こっちにい続けなきゃダメ”という考えもありません。ある程度心の余裕を持たないと潰れてしまうと思います。少し前まで別府さんと中根さんがいたチームだし、今も坂本さん(坂本拓也マッサー)と南野さん(南野求メカニック)がいる。選手層も国際色豊かだし、馴染みやすい雰囲気があるのは良いですね」。
チャレンジ・マヨルカでシーズンイン ロマンディとエシュボルンでワールドツアーレースデビュー
留目のレーススケジュールは、先述したようにチャレンジマヨルカを初戦とし、ポルトガルとイタリアのワンデーレースを走ってから4月にフランスでステージレースに出場。続けて4月後半のツール・ド・ロマンディと5月頭のエシュボルン・フランクフルトでワールドツアーデビューを飾るというタフなもの。中でも初戦のマヨルカは「これからの自分にとって一番大切なもの」と位置付けている。
「そこで何もできずにDNFだったりしたら、その後のスケジュールも多分変わってしまいます。逆に走れるなら信頼を得られる。だから初戦から全力でぶつかりたいですね」と留目。これまでの結果が示す通り、独走力と登坂力は自分でも把握する強みであり、ルーキーの中でのパワーウェイトレシオは負けていないと自負する。一方でヨーロッパ選手に比べ、圧倒的に経験値が足りていないとも。
「若い時からヨーロッパで活動している選手に比べるとその差は歴然です。ただデベロップメントで1年半走ったことで、日本では経験できないレースのノウハウや、集団内の位置取り、それにもちろん出力、さらには英語力も上がりました。歳を重ねるごとに自分が選手として伸びていることは感じます」。
2022年末に話を聞いた時から、留目は絶えず同じ日本人選手であり、ワールドチーム最年長選手の一人となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)へのリスペクトを口にしてきた。フィジカルはもちろんのこと、彼自身がプロトンから得る信頼も含めて。
「やっぱり(新城)ユキヤさんがコンスタントに大きなレースに出ているのは、しっかりした信頼を得ているからなんですよね。突然メンバーにトラブルが出て、”明後日からグランツール走れるか”って聞かれた時に、すぐOKを即答できるような。ユキヤさんは若い時にフランスのステージレースで勝ったりと、そもそもフィジカルもレース勘も強いので、僕もそうなりたい。小さなレースでいいから勝ちたいし、少なくともトップ10には入りたいと思います」。
「プレッシャーを力に変えて期待に応えたい」
初戦となるチャレンジ・マヨルカは、UCI.1クラスのワンデーレースが5日間連なるレースシリーズ。ステージレースとは違い出場選手が入れ替わることで知られ、留目はヒュー・カーシー(イギリス)やミケル・ヴァルグレン(デンマーク)らと共に山岳レースをメインに走ることとなる。
留目が1週間のトレーニングキャンプで重ねた距離は、リカバリーデーも含めてトータル891km。走行時間は27時間21分に及び、TSSは合計1252に及んでいる。4分、12分走のタイムトライアルや、重たいギアで登坂をこなしたりと、様々なメニューをこなしながらいよいよ目前に迫った初戦に向けてコンディションを整えた。
「まだレースがスタートしてないのでどれだけ走れるか分からないし、今は不安の方が大きいですね。そもそも昨年とはレースのレベルも選手層も段違いです。でも、そのプレッシャーを力に変えてチームの期待に応えたいと思います。最初からアグレッシブに走りたいと思います」。
text&photo:So Isobe
EFエデュケーション・イージーポストがチームキャンプを行ったのは地中海に浮かぶマヨルカ島。スペイン本土から空路で1時間ほどと近く、暖かな海風によって冬でも極めて温暖だ。島の多くは平原だが、北西部には標高1,000mオーバーのトラムンターナ山脈が連なり、美しい海に面したアップダウンは絶景かつ最良のトレーニングフィールド。伝統的に多くのプロチームがこの島で冬場のトレーニングキャンプを開催し、コンディションを上げてシーズンインに繋げてきた。
ワールドチーム入りを果たし、名実ともに”トッププロ選手”となった留目夕陽は、このマヨルカ島で開催されたチームキャンプに参加した。期間は2週間で、そのメニューにはシーズンインレースであるチャレンジ・マヨルカも含まれる。正月を過ごした日本から直接マヨルカ入りし、オーストラリアでのツアー・ダウンアンダー参加組を除くチームメイトたちと到着翌朝から早速乗り込みを重ねた。留目がチームと行動するのは昨年末の全体合宿に続いて2回目のことだという。
「ついにここまで来た」
「胸に入ったワールドツアーのロゴを見ると気合が入りますね。ついにここまで来たんだと実感しています」。アクセントに黄色を加え、昨年よりもずっと華やかな印象になったピンクジャージに袖を通した留目は言う。21歳でのワールドチーム加入は別府と並ぶ日本人選手最年少であり、"最も注目すべき若手選手"は、勝負の年と捉えていた2023年を過ごした末にトップチームへの切符を手に入れた。
「一昨年まで学業優先でしたし、1年半は休学してデベロップメントチームで走りました(2022年5月からEFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチームに所属)。ほかの選手たちよりも早く、トントン拍子でここまで来れたと言う実感はあります。世界選手権(2022年のU23タイムトライアルで21位、2023年同23位)とラヴニール(登坂TTでステージ13位)である程度目立つ走りができたのは大きかったと思いますね」。
「でも、本当は1年契約にしたかったんです」と留目は言葉を続ける。もし選手活動が上手くいかなくとも1年だったらすぐ日本に戻れるし、休学中の大学生活にも戻れる。夢はグランツールを含む長い欧州キャリアの構築だが、常にプランBを用意しておくことで、必要以上にプレッシャーを感じないようにしているという。
「もうパスタとパンだけで大丈夫ですが、もし日本食が恋しくなったらバルセロナに行けばいいし、レースが無い期間には日本に戻ってもいい。”絶対こっちにい続けなきゃダメ”という考えもありません。ある程度心の余裕を持たないと潰れてしまうと思います。少し前まで別府さんと中根さんがいたチームだし、今も坂本さん(坂本拓也マッサー)と南野さん(南野求メカニック)がいる。選手層も国際色豊かだし、馴染みやすい雰囲気があるのは良いですね」。
チャレンジ・マヨルカでシーズンイン ロマンディとエシュボルンでワールドツアーレースデビュー
留目のレーススケジュールは、先述したようにチャレンジマヨルカを初戦とし、ポルトガルとイタリアのワンデーレースを走ってから4月にフランスでステージレースに出場。続けて4月後半のツール・ド・ロマンディと5月頭のエシュボルン・フランクフルトでワールドツアーデビューを飾るというタフなもの。中でも初戦のマヨルカは「これからの自分にとって一番大切なもの」と位置付けている。
「そこで何もできずにDNFだったりしたら、その後のスケジュールも多分変わってしまいます。逆に走れるなら信頼を得られる。だから初戦から全力でぶつかりたいですね」と留目。これまでの結果が示す通り、独走力と登坂力は自分でも把握する強みであり、ルーキーの中でのパワーウェイトレシオは負けていないと自負する。一方でヨーロッパ選手に比べ、圧倒的に経験値が足りていないとも。
「若い時からヨーロッパで活動している選手に比べるとその差は歴然です。ただデベロップメントで1年半走ったことで、日本では経験できないレースのノウハウや、集団内の位置取り、それにもちろん出力、さらには英語力も上がりました。歳を重ねるごとに自分が選手として伸びていることは感じます」。
2022年末に話を聞いた時から、留目は絶えず同じ日本人選手であり、ワールドチーム最年長選手の一人となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)へのリスペクトを口にしてきた。フィジカルはもちろんのこと、彼自身がプロトンから得る信頼も含めて。
「やっぱり(新城)ユキヤさんがコンスタントに大きなレースに出ているのは、しっかりした信頼を得ているからなんですよね。突然メンバーにトラブルが出て、”明後日からグランツール走れるか”って聞かれた時に、すぐOKを即答できるような。ユキヤさんは若い時にフランスのステージレースで勝ったりと、そもそもフィジカルもレース勘も強いので、僕もそうなりたい。小さなレースでいいから勝ちたいし、少なくともトップ10には入りたいと思います」。
「プレッシャーを力に変えて期待に応えたい」
初戦となるチャレンジ・マヨルカは、UCI.1クラスのワンデーレースが5日間連なるレースシリーズ。ステージレースとは違い出場選手が入れ替わることで知られ、留目はヒュー・カーシー(イギリス)やミケル・ヴァルグレン(デンマーク)らと共に山岳レースをメインに走ることとなる。
留目が1週間のトレーニングキャンプで重ねた距離は、リカバリーデーも含めてトータル891km。走行時間は27時間21分に及び、TSSは合計1252に及んでいる。4分、12分走のタイムトライアルや、重たいギアで登坂をこなしたりと、様々なメニューをこなしながらいよいよ目前に迫った初戦に向けてコンディションを整えた。
「まだレースがスタートしてないのでどれだけ走れるか分からないし、今は不安の方が大きいですね。そもそも昨年とはレースのレベルも選手層も段違いです。でも、そのプレッシャーを力に変えてチームの期待に応えたいと思います。最初からアグレッシブに走りたいと思います」。
text&photo:So Isobe
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