2023/09/18(月) - 09:00
今年最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャがスペインの首都マドリードで閉幕。エヴェネプールやガンナと共に逃げたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が勝利し、セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)が自身初となる総合優勝に輝いた。
9月17日(日)第21ステージ
サルスエラ競馬場〜マドリード 101.1km(平坦)
3週間に及ぶ戦いの末、選手たちはスペインの首都マドリードにたどり着いた。第78回ブエルタ・ア・エスパーニャの最終日は2年連続でマドリード市街地を巡る平坦ステージ。後輩に合計9周回する5.8kmはヘアピンカーブを含む鋭角コーナーが連続するテクニカルなコースで、ツール・ド・フランスのシャンゼリゼと同様にスプリントバトルが予想されたレースは、今大会を象徴するようなサプライズな展開となった。
スタート地点であるサルスエラ競馬場に集結したのは、8名から最終的に3名まで人数の減ったジェイコ・アルウラーを含む148名の選手たち。真っ赤なマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)や前日に21回目の誕生日を迎えたヤングライダー賞ジャージのフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)など4賞ジャージを先頭に、午後17時19分にスタートが切られた。
パレード走行が始まった集団後方で早速フォトセッションを行ったのは、黒地にジロ・デ・イタリアのピンク、ツール・ド・フランスの黄色、そしてブエルタの赤のストライプの入る特別ジャージを纏ったユンボ・ヴィスマ。またバイクのフロントフォークにも3大グランツールのカラーが入り、ディラン・ファンバーレ(オランダ)は大会期間中に交通事故を起こし、昏睡状態から意識の戻ったナータン・ファンホーイドンク(ベルギー)の名前入りTシャツを着てメッセージを送った。
その後はジロを制したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)とツールで連覇を達成したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)に挟まれたクスら3名が横並びに。今シーズン限りで引退するため最後のブエルタ、そして最後のグランツールを走るルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)などが笑顔でカメラに手を振り、オフィシャルカーやメディカルカーに乗った運営スタッフたちもスパークリングワインで3週間の仕事を労う。
そしてユンボ・ヴィスマの先導する集団が合計9周する大観衆の待つマドリードの5.8kmコースに入り、最終第21ステージが本格的に幕開け。カーデン・グローブス(オーストラリア)で区間3勝目を狙うアルペシン・ドゥクーニンクが牽引を始まると、一気にレーススピードが上がり、同時にプロトンの緊張感も高まっていった。
残り46.4km地点に設定された中間スプリントをグローブスが先頭通過して、マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)獲得のため20点を加算する。そして直後にペースの緩んだ集団から、ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツとレナード・ケムナのドイツ人コンビがアタック。それに第15ステージで10年振りのグランツール区間優勝を掴んだルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が追従し、3名がレース先頭に立った。
全員が今年のグランツールで逃げ切り勝利を飾っている強力な逃げグループに対し、スプリントに持ち込みたいアルペシンやDSM・フィルメニッヒ、イネオス・グレナディアーズなどが30秒差で追いかける。すると残り38km地点で、マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が飛び出した。
この時点でエヴェネプールとグローブスのポイント差は39点。またステージ優勝者には最大80点が与えられるため、グローブスはポイント賞を守るべく自らエヴェネプールを追いかける。この動きにはフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)も反応し、チームメイトであるキム・ハイドゥク(ドイツ)とオマール・フライレ(スペイン)も食らいついたが、あまりのハイペースに2人は脱落。そして後続の3名(エヴェネプール、グローブス、ガンナ)が先頭の3名に合流を果たした。
第20ステージで逃げた6名
レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
ニコ・デンツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
一時38秒まで拡大したリードを、EFエデュケーション・イージーポストや2年連続の最終日勝利を目指すUAEチームエミレーツが中心に縮めにかかる。しかし現タイムトライアル世界王者のエヴェネプールと、同大会で2位だったガンナがペースを作る先頭との差は思うように縮まらず、危機感を覚えたメイン集団は更にグルパマFDJやコフィディス、ロット・デスティニーなどが牽引に選手を送った。
盟友ガンナのためにゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やアンテルマルシェなどが上手くプロトンのローテーションをかき乱し、先頭は13秒のリードでラストラップの鐘を聞く。タイム差がさほど変わらないまま距離だけが減っていき、フラムルージュ(残り1km地点)でその差は約6秒。しかし先頭の6名はフィニッシュを目前にして牽制したため、バーレーン・ヴィクトリアスの牽引する後続が残り500m地点を前に追いついた。
だが諦めないエヴェネプールが加速し、それにグローブスやケムナなどが即座に反応する。結果的にリードアウトのような形になったエヴェネプールの背後から、グローブスがスプリントを開始。マイヨプントスのトップスピードにエヴェネプールが離され、ガンナの追い上げを退けたグローブスが、先頭でフィニッシュラインを通過した。
集団スプリントではなく、逃げに乗り、自らの力で区間3勝目を飾ったグローブス。「今日はステージ優勝とポイント賞ジャージの保持を目標に臨んだ。逃げ切りからの勝利はもちろん狙っていなかった。だがレムコ(エヴェネプール)が勝利を狙ってくると思ったので、飛び出した彼を追ったんだ。レムコのスプリントが結果的に良いリードアウトとなったよ」と勝利を振り返り、そしてグローブスは表彰式にてオーストラリア人初となるマイヨプントスに袖を通した。
そしてプロトン後方では一人のリタイア者も出さなかった8名のユンボ・ヴィスマが、マイヨロホを着るクスを真ん中にフィニッシュ。その瞬間、クスの自身初となるブエルタ・ア・エスパーニャの総合優勝が決まった。
日の落ちたマドリードで行われた表彰式で、マイヨロホ獲得を喜んだクス。「まるでおとぎ話のよう。プリモシュがイタリアで、ヨナスがフランスで優勝を掴んだ。そしてここスペインでの総合優勝を目指していたが、まさか僕がここに勝者として立つなんて想像もしていなかった。だがある地点からそれが可能だと思い始め、日に日に強さと自信が増していった。この3週間で僕の背中に羽が生えたよ。ヨナスやプリモシュ、チームの皆に感謝する。これを僕は一生涯忘れない。僕らは歴史を作ったんだ」と語った。
チーム総合成績に加えて総合トップ3を独占したユンボ・ヴィスマ。これで同一シーズンで3大グランツールの全てを総合優勝するという史上初の偉業を達成した。
ブエルタを終えた選手たちの詳細コメントは、別記事にてお伝えします。
9月17日(日)第21ステージ
サルスエラ競馬場〜マドリード 101.1km(平坦)
3週間に及ぶ戦いの末、選手たちはスペインの首都マドリードにたどり着いた。第78回ブエルタ・ア・エスパーニャの最終日は2年連続でマドリード市街地を巡る平坦ステージ。後輩に合計9周回する5.8kmはヘアピンカーブを含む鋭角コーナーが連続するテクニカルなコースで、ツール・ド・フランスのシャンゼリゼと同様にスプリントバトルが予想されたレースは、今大会を象徴するようなサプライズな展開となった。
スタート地点であるサルスエラ競馬場に集結したのは、8名から最終的に3名まで人数の減ったジェイコ・アルウラーを含む148名の選手たち。真っ赤なマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)や前日に21回目の誕生日を迎えたヤングライダー賞ジャージのフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)など4賞ジャージを先頭に、午後17時19分にスタートが切られた。
パレード走行が始まった集団後方で早速フォトセッションを行ったのは、黒地にジロ・デ・イタリアのピンク、ツール・ド・フランスの黄色、そしてブエルタの赤のストライプの入る特別ジャージを纏ったユンボ・ヴィスマ。またバイクのフロントフォークにも3大グランツールのカラーが入り、ディラン・ファンバーレ(オランダ)は大会期間中に交通事故を起こし、昏睡状態から意識の戻ったナータン・ファンホーイドンク(ベルギー)の名前入りTシャツを着てメッセージを送った。
その後はジロを制したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)とツールで連覇を達成したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)に挟まれたクスら3名が横並びに。今シーズン限りで引退するため最後のブエルタ、そして最後のグランツールを走るルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)などが笑顔でカメラに手を振り、オフィシャルカーやメディカルカーに乗った運営スタッフたちもスパークリングワインで3週間の仕事を労う。
そしてユンボ・ヴィスマの先導する集団が合計9周する大観衆の待つマドリードの5.8kmコースに入り、最終第21ステージが本格的に幕開け。カーデン・グローブス(オーストラリア)で区間3勝目を狙うアルペシン・ドゥクーニンクが牽引を始まると、一気にレーススピードが上がり、同時にプロトンの緊張感も高まっていった。
残り46.4km地点に設定された中間スプリントをグローブスが先頭通過して、マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)獲得のため20点を加算する。そして直後にペースの緩んだ集団から、ボーラ・ハンスグローエのニコ・デンツとレナード・ケムナのドイツ人コンビがアタック。それに第15ステージで10年振りのグランツール区間優勝を掴んだルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が追従し、3名がレース先頭に立った。
全員が今年のグランツールで逃げ切り勝利を飾っている強力な逃げグループに対し、スプリントに持ち込みたいアルペシンやDSM・フィルメニッヒ、イネオス・グレナディアーズなどが30秒差で追いかける。すると残り38km地点で、マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が飛び出した。
この時点でエヴェネプールとグローブスのポイント差は39点。またステージ優勝者には最大80点が与えられるため、グローブスはポイント賞を守るべく自らエヴェネプールを追いかける。この動きにはフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)も反応し、チームメイトであるキム・ハイドゥク(ドイツ)とオマール・フライレ(スペイン)も食らいついたが、あまりのハイペースに2人は脱落。そして後続の3名(エヴェネプール、グローブス、ガンナ)が先頭の3名に合流を果たした。
第20ステージで逃げた6名
レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)
ニコ・デンツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
一時38秒まで拡大したリードを、EFエデュケーション・イージーポストや2年連続の最終日勝利を目指すUAEチームエミレーツが中心に縮めにかかる。しかし現タイムトライアル世界王者のエヴェネプールと、同大会で2位だったガンナがペースを作る先頭との差は思うように縮まらず、危機感を覚えたメイン集団は更にグルパマFDJやコフィディス、ロット・デスティニーなどが牽引に選手を送った。
盟友ガンナのためにゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やアンテルマルシェなどが上手くプロトンのローテーションをかき乱し、先頭は13秒のリードでラストラップの鐘を聞く。タイム差がさほど変わらないまま距離だけが減っていき、フラムルージュ(残り1km地点)でその差は約6秒。しかし先頭の6名はフィニッシュを目前にして牽制したため、バーレーン・ヴィクトリアスの牽引する後続が残り500m地点を前に追いついた。
だが諦めないエヴェネプールが加速し、それにグローブスやケムナなどが即座に反応する。結果的にリードアウトのような形になったエヴェネプールの背後から、グローブスがスプリントを開始。マイヨプントスのトップスピードにエヴェネプールが離され、ガンナの追い上げを退けたグローブスが、先頭でフィニッシュラインを通過した。
集団スプリントではなく、逃げに乗り、自らの力で区間3勝目を飾ったグローブス。「今日はステージ優勝とポイント賞ジャージの保持を目標に臨んだ。逃げ切りからの勝利はもちろん狙っていなかった。だがレムコ(エヴェネプール)が勝利を狙ってくると思ったので、飛び出した彼を追ったんだ。レムコのスプリントが結果的に良いリードアウトとなったよ」と勝利を振り返り、そしてグローブスは表彰式にてオーストラリア人初となるマイヨプントスに袖を通した。
そしてプロトン後方では一人のリタイア者も出さなかった8名のユンボ・ヴィスマが、マイヨロホを着るクスを真ん中にフィニッシュ。その瞬間、クスの自身初となるブエルタ・ア・エスパーニャの総合優勝が決まった。
日の落ちたマドリードで行われた表彰式で、マイヨロホ獲得を喜んだクス。「まるでおとぎ話のよう。プリモシュがイタリアで、ヨナスがフランスで優勝を掴んだ。そしてここスペインでの総合優勝を目指していたが、まさか僕がここに勝者として立つなんて想像もしていなかった。だがある地点からそれが可能だと思い始め、日に日に強さと自信が増していった。この3週間で僕の背中に羽が生えたよ。ヨナスやプリモシュ、チームの皆に感謝する。これを僕は一生涯忘れない。僕らは歴史を作ったんだ」と語った。
チーム総合成績に加えて総合トップ3を独占したユンボ・ヴィスマ。これで同一シーズンで3大グランツールの全てを総合優勝するという史上初の偉業を達成した。
ブエルタを終えた選手たちの詳細コメントは、別記事にてお伝えします。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第21ステージ
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 2:24:13 |
2位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | |
3位 | ニコ・デンツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
4位 | ユーゴ・パージュ(フランス、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | |
5位 | イバン・ガルシア(スペイン、モビスター) | |
6位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | |
7位 | マライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
8位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | |
9位 | ドリス・ファンヘステル(ベルギー、トタルエネルジー) | |
10位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 76:48:21 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:17 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:08 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +3:18 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +3:37 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +4:14 |
7位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +7:53 |
8位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +8:00 |
9位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +10:08 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +11:38 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 315pts |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 236pts |
3位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 167pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 135pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 51pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | 39pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 76:51:39 |
2位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +4:42 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +6:50 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 229:42:26 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +20:49 |
3位 | UAEチームエミレーツ | +32:54 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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