2023/09/16(土) - 08:30
優勝候補のグローブスが終盤の落車に巻き込まれたブエルタ第19ステージ。集団スプリントでアルベルト・ダイネーゼ(イタリア、DSM・フィルメニッヒ)がガンナらを抑え、自身初のブエルタ区間優勝を掴んだ。
9月15日(金)第19ステージ
ラ・バニエサ〜イスカル 177.1km(平坦)
2連続の山岳決戦を終えたブエルタ第3週目に、ようやくスプリンターの出番が回ってきた。タイムカットを免れたスプリンターたちはカスティーリャレオン州ラ・バニエサを出発。コース上には背の低い丘がいくつか登場するものの、前日の山岳を経た選手たちにとって真っ平らに感じるはず。心配された風も強くは吹き付けなかったため、大集団によるスプリントが予想された。
マイヨモンターニャが華麗に勝利を手に入れ、マイヨロホのチームに調和がもたらされた前日から一夜明け、体調不良で未出走のダミアン・トゥゼ(フランス、AG2Rシトロエン)を除く148名がスタート地点に集結。アクチュアルスタートが切られると、僅かな逃げ切りのチャンスに懸けたフランス人とチェコ人による4名が逃げグループを形成した。
第19ステージで逃げた4名
クレモン・ダヴィ(フランス、グルパマFDJ)
ポール・ラペラ(フランス、AG2Rシトロエン)
マティス・ルベール(フランス、アルケア・サムシック)
ミカル・シュレゲル(チェコ、カハルラル・セグロスRGA)
一方のメイン集団では序盤にマテウジュ・ゴヴェカル(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)やルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)らが落車。第12ステージでフアン・モラノ(コロンビア)に勝利をもたらしたオリヴェイラは身体を地面に打ち付けたものの、大きな怪我もなく無事に集団復帰を果たしている。
皆、今大会がブエルタデビューである4名は一時3分弱までのリードを得る。しかしアルペシン・ドゥクーニンクやUAEチームエミレーツがメイン集団の牽引に本腰を入れると、その差は2分前後まで縮小。そのためプロトンが逃げをコントロールする典型的なスプリントステージの展開となった。
緑色のポイント賞ジャージことマイヨプントスを着用し、この日の優勝候補筆頭であるカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)は集団の前方に位置を取る。連日の逃げからスプリントポイントを稼ぎ、36点差のランキング2位と迫るレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の存在を警戒しながらも、グローブスは距離を消化していった。
残り19.3km地点に設定された中間スプリントを前に、プロトンは次々と逃げの選手たちを吸収していく。しかし最後までダヴィが抵抗した結果、先頭で中間スプリントを通過。その僅かに後方ではグローブスが狙い通り集団のトップ(2位通過)を取り、チームメイトであるエドワルト・プランカールト(ベルギー)が3位通過でライバルのポイント獲得を阻止。エヴェネプールがスプリントへの意欲を見せなかったため、この時点でグローブスの最終的なマイヨプントス獲得がほぼ確実なものとなった。
その直後、終始集団前方に位置取っていたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)が飛び出す。だが他の協力を得られず踏み止め、今度は元U23ロード世界王者であるサムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)がアタック。しかしこれもアルペシン・ドゥクーニンクやイネオス・グレナディアーズの牽引するプロトンが、残り10km地点で引き戻した。
総合上位陣の安全を確保したいユンボ・ヴィスマやスプリントチームが入り乱れながら、プロトンはフィニッシュ地点の待つイスカルの市街地に突入する。幅の広いコースでは第5ステージで2位に入り、スプリントの才を開花させたフィリッポ・ガンナ(イタリア)のためにイネオス・グレナディアーズが積極的に集団先頭で牽引した。
更にマライン・ファンデンベルフ(オランダ)を擁するEFエデュケーション・イージーポストが猛スピードで番手を上げると、2番手を走っていたトビアス・バイヤー(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)と接触、落車する。
無傷のEFトレインが集団先頭に出る一方で、地面に叩きつけられたバイヤーは後方にいたDSM・フィルメニッヒのマックス・プール(イギリス)やショーン・フリン(イギリス)も巻き込む。更にカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)も落車こそ免れたものの、足止めを食らい勝負から脱落した。
この日最大の優勝候補が去った集団は、EFから先頭を奪い取ったキム・ハイドゥク(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)が先頭でリードアウト。そこから放たれたガンナがスプリントを開始し、迫るイバン・ガルシア(スペイン、モビスター)やダヴィデ・チモライ(イタリア、コフィディス)をそのトップスピードで抑え込む。
しかしガンナを上回るスピードを披露したアルベルト・ダイネーゼ(イタリア、DSM・フィルメニッヒ)がフィニッシュ手前で抜き去り、ガッツポーズで勝利を喜んだ。
ここまでのスプリントステージでは持ち前のスピードを活かせず、勝負に絡めていなかったダイネーゼ。第3週目にしてようやく掴んだブエルタ初勝利を「第2週目までのスプリントで悪かった所を皆で話し合った。今日は改善を加えた計画を、皆で完璧に遂行した。落車で何人かを失う不運はあったものの、そこまでは完璧な位置にいることができた。(最終ストレートは)向かい風だったのでガンナや他の選手たちが先にスプリントするなか、ずっとタイミングを窺っていた。この厳しいブエルタで勝つことができて本当に嬉しいよ。チームに感謝したい」と、25歳のダイネーゼは喜んだ。
今年のジロ・デ・イタリアでも区間優勝を挙げているダイネーゼ。来年はプロデビューから4年を過ごしたDSMを離れ、チューダー・プロサイクリングチームへの加入が決まっている。
またマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)など総合上位陣は、何事もなくフィニッシュしたため総合順位に変動はなし。そして翌日、10の3級山岳が登場し、獲得標高差4,270mに達するマイヨロホの最終決戦に臨む。
9月15日(金)第19ステージ
ラ・バニエサ〜イスカル 177.1km(平坦)
2連続の山岳決戦を終えたブエルタ第3週目に、ようやくスプリンターの出番が回ってきた。タイムカットを免れたスプリンターたちはカスティーリャレオン州ラ・バニエサを出発。コース上には背の低い丘がいくつか登場するものの、前日の山岳を経た選手たちにとって真っ平らに感じるはず。心配された風も強くは吹き付けなかったため、大集団によるスプリントが予想された。
マイヨモンターニャが華麗に勝利を手に入れ、マイヨロホのチームに調和がもたらされた前日から一夜明け、体調不良で未出走のダミアン・トゥゼ(フランス、AG2Rシトロエン)を除く148名がスタート地点に集結。アクチュアルスタートが切られると、僅かな逃げ切りのチャンスに懸けたフランス人とチェコ人による4名が逃げグループを形成した。
第19ステージで逃げた4名
クレモン・ダヴィ(フランス、グルパマFDJ)
ポール・ラペラ(フランス、AG2Rシトロエン)
マティス・ルベール(フランス、アルケア・サムシック)
ミカル・シュレゲル(チェコ、カハルラル・セグロスRGA)
一方のメイン集団では序盤にマテウジュ・ゴヴェカル(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)やルイ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)らが落車。第12ステージでフアン・モラノ(コロンビア)に勝利をもたらしたオリヴェイラは身体を地面に打ち付けたものの、大きな怪我もなく無事に集団復帰を果たしている。
皆、今大会がブエルタデビューである4名は一時3分弱までのリードを得る。しかしアルペシン・ドゥクーニンクやUAEチームエミレーツがメイン集団の牽引に本腰を入れると、その差は2分前後まで縮小。そのためプロトンが逃げをコントロールする典型的なスプリントステージの展開となった。
緑色のポイント賞ジャージことマイヨプントスを着用し、この日の優勝候補筆頭であるカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)は集団の前方に位置を取る。連日の逃げからスプリントポイントを稼ぎ、36点差のランキング2位と迫るレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の存在を警戒しながらも、グローブスは距離を消化していった。
残り19.3km地点に設定された中間スプリントを前に、プロトンは次々と逃げの選手たちを吸収していく。しかし最後までダヴィが抵抗した結果、先頭で中間スプリントを通過。その僅かに後方ではグローブスが狙い通り集団のトップ(2位通過)を取り、チームメイトであるエドワルト・プランカールト(ベルギー)が3位通過でライバルのポイント獲得を阻止。エヴェネプールがスプリントへの意欲を見せなかったため、この時点でグローブスの最終的なマイヨプントス獲得がほぼ確実なものとなった。
その直後、終始集団前方に位置取っていたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)が飛び出す。だが他の協力を得られず踏み止め、今度は元U23ロード世界王者であるサムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)がアタック。しかしこれもアルペシン・ドゥクーニンクやイネオス・グレナディアーズの牽引するプロトンが、残り10km地点で引き戻した。
総合上位陣の安全を確保したいユンボ・ヴィスマやスプリントチームが入り乱れながら、プロトンはフィニッシュ地点の待つイスカルの市街地に突入する。幅の広いコースでは第5ステージで2位に入り、スプリントの才を開花させたフィリッポ・ガンナ(イタリア)のためにイネオス・グレナディアーズが積極的に集団先頭で牽引した。
更にマライン・ファンデンベルフ(オランダ)を擁するEFエデュケーション・イージーポストが猛スピードで番手を上げると、2番手を走っていたトビアス・バイヤー(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)と接触、落車する。
無傷のEFトレインが集団先頭に出る一方で、地面に叩きつけられたバイヤーは後方にいたDSM・フィルメニッヒのマックス・プール(イギリス)やショーン・フリン(イギリス)も巻き込む。更にカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)も落車こそ免れたものの、足止めを食らい勝負から脱落した。
この日最大の優勝候補が去った集団は、EFから先頭を奪い取ったキム・ハイドゥク(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)が先頭でリードアウト。そこから放たれたガンナがスプリントを開始し、迫るイバン・ガルシア(スペイン、モビスター)やダヴィデ・チモライ(イタリア、コフィディス)をそのトップスピードで抑え込む。
しかしガンナを上回るスピードを披露したアルベルト・ダイネーゼ(イタリア、DSM・フィルメニッヒ)がフィニッシュ手前で抜き去り、ガッツポーズで勝利を喜んだ。
ここまでのスプリントステージでは持ち前のスピードを活かせず、勝負に絡めていなかったダイネーゼ。第3週目にしてようやく掴んだブエルタ初勝利を「第2週目までのスプリントで悪かった所を皆で話し合った。今日は改善を加えた計画を、皆で完璧に遂行した。落車で何人かを失う不運はあったものの、そこまでは完璧な位置にいることができた。(最終ストレートは)向かい風だったのでガンナや他の選手たちが先にスプリントするなか、ずっとタイミングを窺っていた。この厳しいブエルタで勝つことができて本当に嬉しいよ。チームに感謝したい」と、25歳のダイネーゼは喜んだ。
今年のジロ・デ・イタリアでも区間優勝を挙げているダイネーゼ。来年はプロデビューから4年を過ごしたDSMを離れ、チューダー・プロサイクリングチームへの加入が決まっている。
またマイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)など総合上位陣は、何事もなくフィニッシュしたため総合順位に変動はなし。そして翌日、10の3級山岳が登場し、獲得標高差4,270mに達するマイヨロホの最終決戦に臨む。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第19ステージ
1位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、DSM・フィルメニッヒ) | 3:42:09 |
2位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) | |
3位 | マライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
4位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、コフィディス) | |
5位 | イバン・ガルシア(スペイン、モビスター) | |
6位 | モーリス・バラーシュテット(ドイツ、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
7位 | ルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ) | |
8位 | ユーゴ・オフステテール(フランス、アルケア・サムシック) | |
9位 | フェルナンド・バルセロ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) | |
10位 | ヨナス・コッホ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 69:13:36 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:17 |
3位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +1:08 |
4位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +4:00 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:16 |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +4:30 |
7位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +7:37 |
8位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +8:35 |
9位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +10:20 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +12:20 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 228pts |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 192pts |
3位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 152pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 129pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | 51pts |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | 39pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 69:17:36 |
2位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +3:37 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +6:20 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 207:07:23 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +33:59 |
3位 | UAEチームエミレーツ | +36:27 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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