2023/08/29(火) - 08:10
大会3日目にして早くも山頂フィニッシュが登場した第78回ブエルタ・ア・エスパーニャ。前回覇者レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が勝利と共にマイヨロホを獲得し、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が遅れて総合タイムを失った。
8月28日(月)第3ステージ
スリア〜アリンサル(アンドラ) 158.5km(山岳/山頂フィニッシュ
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは第3ステージにして早くも山岳フィニッシュが登場した。その舞台となるのはスペインとフランスの間に挟まれた小国のアンドラ。新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)をはじめ多くの選手たちが居を構える場所だ。
選手たちは3日連続でカタルーニャ州をスタートし、一路ピレネー山脈を目指し北上。107.1km地点からアンドラに入国し、中間スプリントの通過直後から1級山岳オルディノ(距離17.3km/平均7.7%)に臨む。その後、約12kmの急勾配ダウンヒルを経ていよいよフィニッシュの待つ1級山岳アリンサル(距離8.3km/平均7.7%)を登坂。勾配4.9%と緩やかに始まるこの登りは徐々に勾配を増していき、残り3km地点から13%まで跳ね上がる。
2日連続で路面を濡らした雨が上がり、この日は晴天に恵まれた。既に棄権した2名を除く174名の選手たちが出発地点であるスリアに集い、真っ赤なマイヨロホを纏ったアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)を先頭にスタート。序盤から逃げを目指した激しいアタック合戦が繰り広げられ、最初の1時間を平均50km/hのハイスピードで展開した末、9名の逃げグループが形成された。
バーレーン・ヴィクトリアスは逃げに今年のジロ・デ・イタリアで総合4位に入ったダミアーノ・カルーゾ(イタリア)とヤシャ・ズッタリン(ドイツ)を送り、他にもピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)やレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)ら有力クライマーが揃う。メイン集団は序盤からリーダーチームであるEFエデュケーション・イージーポストが牽引したものの、途中からユンボ・ヴィスマやスーダル・クイックステップに先導を譲った。
心配された風の影響もなく、逃げとプロトンの差は最大5分差から徐々に縮まっていく。スペインからアンドラに入国した残り50km地点でその差は3分半。そして1級山岳オルディノ(距離17.3km/平均7.7%)に突入すると逃げ集団は崩壊し、カルーゾとケムナ、エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー)の3名に絞られた。
プロトンでは初日のチームタイムトライアルを制したDSM・フィルメニッヒがペースを上げ、マイヨロホを着るピッコロが遅れていく。オルディノの頂上手前で飛び出したロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)によるアタックは決まらず、1分33秒のリードを得る逃げはセプルベダが頂上を先頭で通過。山岳賞ジャージを引き寄せたセプルベダだったがパンクの不運に見舞われ、逃げはカルーゾとケムナの2人となった。
前日の雨によりウェットとドライが入り交じる約12kmの下りでは、UAEチームエミレーツが先頭に人数を集め逃げとのタイム差を縮めていく。そしていよいよ1級山岳アリンサル(距離8.3km/平均7.7%)に突入。下りで縮小したタイム差を登りで1分40秒まで再度拡がるなか、ケムナは2度に渡る加速でカルーゾを引き離すことに成功した。
ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)に牽引役が回ってくるとプロトンの人数は一気に絞られ、残り2kmを切った地点でカルーゾを吸収。その直後にフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が加速し、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がこれを引き戻す。そしてユンボ・ヴィスマからはヴィンゲゴーでもログリッチでもなく、セップ・クス(アメリカ)がアタックを仕掛けた。
急激に上がったペースにゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が遅れ、エガン・ベルナル(コロンビア)のアシストによってトーマスはマイペース走法に切り替える。マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)がクスを引き戻した集団は逃げ続けたケムナを捉え、その後加速したソレルのアタックも決まらない。
そして15名程度の先頭集団のまま残り1km地点を通過し、フィニッシュ手前300mでエヴェネプールが先んじて加速。ヴィンゲゴーやアユソ、ログリッチら強豪の追走を振り切ったエヴェネプールが、胸を叩きながら1級山岳アリンサルを制覇した。
大会3日目を制しマイヨロホを獲得したエヴェネプール。しかしフィニッシュ直後のコーナーを曲がり切れず、その先に並んでいた記者と衝突。落車して右のこめかみを切り、流血するトラブルが発生した。
開幕初日からプロトンを代表してコースの安全性を訴え、レース主催者へ苦言を呈していたエヴェネプールは「フィニッシュ後の直線路が50mしかなかった。これで(コースの安全性を求めるのは)3日連続なので憤りを感じている」とコメント。一方、勝利については「チャンスを待つ完璧な戦略だった。最終山岳での調子は良く、最後のスプリントも脚に力を感じた。この勝利がとても嬉しいよ。今日は逃げが勝つと思っていたが集団が逃げを捉えた。そして監督のクラース・ロデウィックに”勝利を目指して集中しろ”と言われ、脚に力があったので踏み込んだんだ」と語っている。
総合優勝の候補に挙げられる選手たちが上位でフィニッシュするなか、ベルナルに牽引されたトーマスは23位でフィニッシュ。「懸命に踏み込んだのだが、結果的に酷い日になってしまった」と語りながらも、トップから47秒遅れとタイムロスを最小限に抑えたている。
8月28日(月)第3ステージ
スリア〜アリンサル(アンドラ) 158.5km(山岳/山頂フィニッシュ
第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは第3ステージにして早くも山岳フィニッシュが登場した。その舞台となるのはスペインとフランスの間に挟まれた小国のアンドラ。新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)をはじめ多くの選手たちが居を構える場所だ。
選手たちは3日連続でカタルーニャ州をスタートし、一路ピレネー山脈を目指し北上。107.1km地点からアンドラに入国し、中間スプリントの通過直後から1級山岳オルディノ(距離17.3km/平均7.7%)に臨む。その後、約12kmの急勾配ダウンヒルを経ていよいよフィニッシュの待つ1級山岳アリンサル(距離8.3km/平均7.7%)を登坂。勾配4.9%と緩やかに始まるこの登りは徐々に勾配を増していき、残り3km地点から13%まで跳ね上がる。
2日連続で路面を濡らした雨が上がり、この日は晴天に恵まれた。既に棄権した2名を除く174名の選手たちが出発地点であるスリアに集い、真っ赤なマイヨロホを纏ったアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)を先頭にスタート。序盤から逃げを目指した激しいアタック合戦が繰り広げられ、最初の1時間を平均50km/hのハイスピードで展開した末、9名の逃げグループが形成された。
バーレーン・ヴィクトリアスは逃げに今年のジロ・デ・イタリアで総合4位に入ったダミアーノ・カルーゾ(イタリア)とヤシャ・ズッタリン(ドイツ)を送り、他にもピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)やレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)ら有力クライマーが揃う。メイン集団は序盤からリーダーチームであるEFエデュケーション・イージーポストが牽引したものの、途中からユンボ・ヴィスマやスーダル・クイックステップに先導を譲った。
心配された風の影響もなく、逃げとプロトンの差は最大5分差から徐々に縮まっていく。スペインからアンドラに入国した残り50km地点でその差は3分半。そして1級山岳オルディノ(距離17.3km/平均7.7%)に突入すると逃げ集団は崩壊し、カルーゾとケムナ、エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー)の3名に絞られた。
プロトンでは初日のチームタイムトライアルを制したDSM・フィルメニッヒがペースを上げ、マイヨロホを着るピッコロが遅れていく。オルディノの頂上手前で飛び出したロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ)によるアタックは決まらず、1分33秒のリードを得る逃げはセプルベダが頂上を先頭で通過。山岳賞ジャージを引き寄せたセプルベダだったがパンクの不運に見舞われ、逃げはカルーゾとケムナの2人となった。
前日の雨によりウェットとドライが入り交じる約12kmの下りでは、UAEチームエミレーツが先頭に人数を集め逃げとのタイム差を縮めていく。そしていよいよ1級山岳アリンサル(距離8.3km/平均7.7%)に突入。下りで縮小したタイム差を登りで1分40秒まで再度拡がるなか、ケムナは2度に渡る加速でカルーゾを引き離すことに成功した。
ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)に牽引役が回ってくるとプロトンの人数は一気に絞られ、残り2kmを切った地点でカルーゾを吸収。その直後にフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)が加速し、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がこれを引き戻す。そしてユンボ・ヴィスマからはヴィンゲゴーでもログリッチでもなく、セップ・クス(アメリカ)がアタックを仕掛けた。
急激に上がったペースにゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が遅れ、エガン・ベルナル(コロンビア)のアシストによってトーマスはマイペース走法に切り替える。マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)がクスを引き戻した集団は逃げ続けたケムナを捉え、その後加速したソレルのアタックも決まらない。
そして15名程度の先頭集団のまま残り1km地点を通過し、フィニッシュ手前300mでエヴェネプールが先んじて加速。ヴィンゲゴーやアユソ、ログリッチら強豪の追走を振り切ったエヴェネプールが、胸を叩きながら1級山岳アリンサルを制覇した。
大会3日目を制しマイヨロホを獲得したエヴェネプール。しかしフィニッシュ直後のコーナーを曲がり切れず、その先に並んでいた記者と衝突。落車して右のこめかみを切り、流血するトラブルが発生した。
開幕初日からプロトンを代表してコースの安全性を訴え、レース主催者へ苦言を呈していたエヴェネプールは「フィニッシュ後の直線路が50mしかなかった。これで(コースの安全性を求めるのは)3日連続なので憤りを感じている」とコメント。一方、勝利については「チャンスを待つ完璧な戦略だった。最終山岳での調子は良く、最後のスプリントも脚に力を感じた。この勝利がとても嬉しいよ。今日は逃げが勝つと思っていたが集団が逃げを捉えた。そして監督のクラース・ロデウィックに”勝利を目指して集中しろ”と言われ、脚に力があったので踏み込んだんだ」と語っている。
総合優勝の候補に挙げられる選手たちが上位でフィニッシュするなか、ベルナルに牽引されたトーマスは23位でフィニッシュ。「懸命に踏み込んだのだが、結果的に酷い日になってしまった」と語りながらも、トップから47秒遅れとタイムロスを最小限に抑えたている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第3ステージ結果
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 4:15:39 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:01 |
3位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
5位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
7位 | レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) | |
8位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
11位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
12位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | +0:10 |
13位 | ステフ・クラス(ベルギー、トタルエネルジー) | +0:13 |
14位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | |
23位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:47 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 8:43:11 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +0:05 |
3位 | レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) | +0:11 |
4位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) | +0:31 |
5位 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:33 |
6位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | ロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ) | +0:35 |
8位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | +0:37 |
10位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2Rシトロエン) | 42pts |
2位 | アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) | 30pts |
3位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 25pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 10pts |
2位 | エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー) | 10pts |
3位 | マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | 6pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 8:43:11 |
2位 | レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) | +0:11 |
3位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) | +0:33 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィスマ | 25:35:20 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +0:05 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +0:32 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
Amazon.co.jp