パリ・シャンゼリゼ通りで繰り広げられた集団スプリントを、初出場のヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)が制覇。チームメイトと横一列でフィニッシュしたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)が大会連覇を達成した。



凱旋門に向かってシャンゼリゼ通りを駆け上がる photo:CorVos

7月23日(日)サンカンタン・アン・イヴリーヌ〜パリ・シャンゼリゼ image:A.S.O.
第21ステージ サンカンタン・アン・イヴリーヌ〜パリ・シャンゼリゼ 115.1km image:A.S.O.


3週間に渡り行われた第110回ツール・ド・フランスは、48年連続でパリ・シャンゼリゼにて千秋楽を迎えた。総距離3,404kmの長旅を締めくくるスタート地点は、2024年パリ五輪の舞台でもあるヴェロドロームとフランス自転車競技連盟の本部が置かれるサンカンタン・アン・イヴリーヌ。そこから選手一向はパリ市街を目指して37kmのパレード走行を楽しみ、凱旋門やコンコルド広場、ルモニエトンネルを含むお馴染みの6.8kmコースを8周する。

そして最後は「スプリンターの世界選手権」と呼ばれる集団スプリント。マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を纏うヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)の区間5勝目はもちろん、山岳を乗り越えたディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)やツール最終レースとなるペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)らの競演が注目された。

そして150名の選手たちがパリ郊外のサンカンタン・アン・イヴリーヌを16時40分に出発すると、総合敢闘賞に輝いたヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が飛び出す。4日連続となるファーストアタックを見事に決めた元アワーレコードホルダーが集団に下がっていくと、グランツール最終日恒例のパレード走行が始まった。

総合敢闘賞を獲得したヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)がこの日もファーストアタック photo:CorVos

マイヨヴェール、マイヨジョーヌ、マイヨブラン、マイヨアポワの4賞ジャージが並ぶ photo:CorVos

マイヨジョーヌの凱旋レースという意味合いにふさわしく、前日に2年連続となる総合優勝を実質的に決めたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)が集団先頭に出てフォトタイム。その横にはこの日が最後のマイヨブラン(ヤングライダー賞ジャージ)姿となるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が並び、マイヨヴェールのフィリプセン、マイヨアポワ(山岳賞ジャージ)のジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)も横一列で花の都パリに向けて走り出した。

その後はヴィンゲゴーの総合優勝に加え、区間3勝を飾ったデンマーク出身の選手たちが並ぶ。続いて各国ナショナルチャンピオンジャージを着用した選手たちや、今年も圧倒的なチーム力を発揮したユンボ・ヴィスマがシャンパンを傾けるお馴染みのシーンも。そしてナータン・ファンホーイドンク(ベルギー)は第17ステージでレースを去り、無事第二子の誕生に立ち会うことのできたワウト・ファンアールト(ベルギー)のゼッケン6番を掲げた。

恒例のシャンパンを受け取りポーズをとるユンボ・ヴィスマ photo:CorVos

凱旋門を通過する150名の選手たち photo:CorVos

チッコーネが残り72.3km地点にある4級山岳をトップ通過してマイヨアポワに花を添える。そしてパリ郊外をぐるっとスローペースで走った選手たちが、ユンボ・ヴィスマを先頭にしてシャンゼリゼ周回コースに到着。ルーヴル美術館のルーヴル・ピラミッドを周りフィニッシュラインを通過し、最終日の戦いの火蓋が切られた。

パスカル・エインコールン(オランダ、ロット・デスティニー)の加速から逃げを目指す選手たちがアタックを繰り返し、ポガチャルも単独先頭に出て見せ場を作る。マークするファンホーイドンクを伴ったポガチャルの強力な逃げはしばし続き、集団に大きな差をつけた。しかしこれは集団が引き戻し、代わりにチームにスプリンターのいないサイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)とネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)、フレデリック・フリソン(ベルギー、ロット・デスティニー)の3名が逃げグループを形成した。

ユンボ・ヴィスマを先頭にパリの周回コースに突入した photo:CorVos

サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)ら3名が逃げを打つ photo:CorVos

ファンホーイドンクのマークを受けるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

その後も母国のスター選手であるジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)やゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)などのアタックもありながら、全てがプロトンに引き戻され集団はひと塊に。そしてジェイコ・アルウラーが先頭で残り3km地点を通過し、ヴィンゲゴーらユンボ・ヴィスマの選手たちが笑顔で集団から遅れていった。

続いてマッズ・ピーダスン(デンマーク)を擁するリドル・トレックが先頭で人数を固め、その後ろに今大会スプリントステージ4勝のアルペシン・ドゥクーニンクがつく。そして残り1.2km地点で再びポガチャルがマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)のために先頭に出た。

スプリンターを擁するDSM・フィルメニッヒなどが集団前方に人数を集める photo:CorVos

リードアウトでレース終盤にも見せ場を作ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

フラムルージュ(残り1km)を先頭で通過したポガチャルが遅れていき、そのスピードに一列棒状となった集団が最終ストレートになだれ込む。混沌とした中でマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が、残り450mから後ろにフィリプセンを従えリードアウトを開始。そして残り200mでファンデルプールがその役割を終える直前に、フィリプセンの後ろからディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)が踏み始めた。

フィリプセンが冷静にフルーネウェーヘンの背後を取り、その横からピーダスンがスプリントを開始する。先頭に立ったフルーネウェーヘンとピーダスンのスピードが伸び悩むなか、フィリプセンと逆方向から番手を上げたヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)が同時に先頭に出る。

そして両者がハンドルを投げてフィニッシュラインを通過。ガッツポーズなきシャンゼリゼ決戦は、暫くの後メーウスに勝利が告げられた。

ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)を先頭にスプリントを繰り広げられる photo:CorVos

ハンドルを投げたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)とヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

勝利を告げられ、チームメイトと喜ぶヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

同じベルギー出身のフィリプセンに対し、僅差でツール初勝利を掴んだメーウス。「キャリア最良の日となった。これまで見せることができなかった力を、ようやく今日発揮することができた。全てが上手くいったよ。最後に勝利という役割を果たすことができ、とても誇りに思っている」と喜ぶ。

また「ダニー(ファンポッペル)とマルコ(ハラー)が僕を適切なタイミングで良い位置へと導いてくれた。そしてピーダスンの背後を取り、完璧なタイミングでスプリントができた。この喜びを表現する言葉が見つからないよ」とレースを振り返った。

メーウスはオランダと国境を面するベルギー北部ロンメル出身の25歳。初出場となった今大会ではエーススプリンターを任されたメーウスが、その責務をこれ以上ない最高の舞台で全うした。

敗れながらも区間4勝とマイヨヴェール獲得という大成功に終わったフィリプセンは2位。3位には、こちらもピーダスンとの僅差でフルーネウェーヘンが入っている。

チームメイトと共に3週間に渡る戦いを終えたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

終盤にリードアウトを見せたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がピースサインを作りフィニッシュ photo:CorVos
家族と共に総合優勝を喜ぶヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos


そして総合優勝はチームメイトと横一列でフィニッシュしたヴィンゲゴーの手に。シャンゼリゼの表彰台でデンマーク国歌を聴いたヴィンゲゴーは、マイクを手に「この優勝はチームメイトがいなければ不可能で、今夜は皆と素敵なディナーと共に祝いたい。出場した選手たちやスタッフ、また3週間戦いを繰り広げたライバルたちにも感謝を伝えたい。また来年ここで戦おう。そして最後に、僕を支えてくれた2人の家族(ガールフレンドと娘)に感謝したい」と優勝者インタビューで語った。

また、2024年はパリ五輪の影響で最終フィニッシュ地点が南仏のニースとなるため、次回ツールがパリ・シャンゼリゼで終着するのは2年後の2025年大会となる。

選手たちの詳細なコメントは別記事にてお伝えします。

初出場のツールでパリ決戦を制したヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

4賞ジャージが表彰台に並ぶ photo:CorVos

ツール・ド・フランス2023総合表彰台:2位タデイ・ポガチャル、1位ヨナス・ヴィンゲゴー、3位アダム・イェーツ photo:CorVos

選手やスタッフ全員で表彰台に上がり、大会連覇とチーム総合での優勝を祝ったユンボ・ヴィスマ photo:CorVos
ツール・ド・フランス2023第21ステージ
1位 ヨルディ・メーウス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) 2:56:13
2位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)
4位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
5位 ケース・ボル(オランダ、アスタナ・カザフスタン)
6位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
7位 ブライアン・コカール(フランス、コフィディス)
8位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリングチーム)
9位 コービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)
10位 ルーカ・モッツァート(イタリア、アルケア・サムシック)
11位 ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) 82:05:42
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +7:29
3位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) +10:56
4位 サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) +12:23
5位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +13:17
6位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +13:27
7位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +14:44
8位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) +16:09
9位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) +23:08
10位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) +26:30
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) 377pts
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 258pts
3位 ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) 203pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) 106pts
2位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) 92pts
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) 89pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 82:13:11
2位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +5:48
3位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) +8:40
チーム総合成績
1位 ユンボ・ヴィスマ 247:19:41
2位 UAEチームエミレーツ +13:49
3位 イネオス・グレナディアーズ +27:38
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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