2023/04/01(土) - 16:10
アイウェアやヘルメットをバーレーン・ヴィクトリアスに供給するルディプロジェクト。そのフラグシップモデルかつ、世界最高峰のレースのために開発されたオールラウンドヘルメット、EGOSをテストした。
ツアー・ダウンアンダーでフィル・バウハウスやぺリョ・ビルバオが勝利を挙げ、2023年シーズンを良い形で滑り出したバーレーン・ヴィクトリアス。彼らが今年レースで使用しているヘルメットは、長年チームをサポートし続けるルディプロジェクトのNYTRON、EGOSという2種類だ。
NYTRONは2022年のミラノ〜サンレモで独走優勝を果たしたマテイ・モホリッチが着用していた姿を目にしたサイクリストも多いはず。対して、EGOSはその年のツール・ド・フランスで実戦投入されたルディプロジェクトの最新フラッグシップモデル。近年は大型のベンチレーションホールが採用されることが多い中、細い通気口を幾つも並べたトラディショナルな雰囲気を感じさせる見た目が特徴的な一作だ。
このベンチレーションホールはただ並べられているだけではなく、ヘルメットに当たった風が内部へと導かれるように計算されている。例えば、ヘルメット前方から見て中央に配置されたラインは左右のラインと比較して内側に入り込んでおり、その左右のラインも隔てられたベンチレーションホールのチャネルのような設計が風を通気口に導く。また前頭部の最も外側に配置された矢印型の通気口も前方を向いており、シェルが風を遮りにくい作りになっている。
他にもヘルメット内側の額部分にはエアフレームを設け、シェルと頭部の間に空間を生み出すことで通気性を確保。ヘルメット内部はデュアルデンシティー構造によって密度の異なる2種類のEPSフォームが配置されているが、そのEPSフォームが切り替わる部分にも空間を用意することで、ヘルメット内の熱気をその空間へと逃がしてくれる。
エアチャネルを通った熱は、NYTRONに通ずるような造形の後部排気口やサイド部分の通気口からヘルメット外へと排出される。EGOSの後部は大きな通気孔ではないものの、開口部の向きや形状が徹底的に設計されているため、高いベンチレーション性能を期待できる。
安全面では先述した2種類のEPSフォームを使うデュアルデンシティー構造がその性能向上を担う。頭頂部分に密度の異なるフォームを配置し、ヘルメットに衝撃が加わった際にインパクトを吸収することを狙っている。これによって回転衝撃に対する評価を行う「WG11」というテストをクリアする、安全性の高いヘルメットを実現した。また、この構造によって軽量化も果たされており、Sサイズで230gとなっている。
このヘルメットの特徴は、フィドロック製のマグネットバックルが採用されていること。近年フィドロックのバックルをスライドさせて外すスナップモデルを採用するブランドが増えているが、EGOSで用いられるのはフック式。これにより確かな固定力を実現。しかし一般的なバックルとも、フィドロックのポピュラーなモデルとも作業方法が異なるため、使いこなすには少し慣れが必要かもしれない。
サイズはS(230g)、M(250g)、L(280g)という3種類。カラー展開はブラック、ホワイト、コスミックブルーという3種類。価格は29,700円(税込)だ。
―インプレッション by 高木三千成(シクロワイアード編集部)
EGOSはどのような速度域でも快適さを感じられるモデル。ダクトの数が多いだけあり、低速域でもヘルメット内に風がしっかりと入り込む感覚がありながら、高速になればなるほど風が気持ちよく抜けていく印象を受けた。バーレーン・ヴィクトリアスの選手たちがレースで使うモデルだが、速度域問わず快適に過ごせることを考えると、ホビーライダーにもマッチするだろう。
通気性を高めている部分として顕著に感じられるのは、エアフレームと呼ばれる額部分の柔軟な樹脂パーツだった。同時に試したNYTRONは額部分に風の通り道が用意されていなかったため、EGOSでは額部分のクーリング性能による快適性がより一層感じられた。熱を持ちやすい額を効果的に冷やすことで、快適性の高いヘルメットを実現している。
近年のヘルメットは内部のチャネルを深く作り、そこに風を流すことで通気性を確保している。しかし、EGOSは頭を風がなでていくような通気性ではなく、細かく開けられたベンチレーションホールからヘルメット内に入る風の量を増やし、前頭部にあたる風で快適さを実現してるような印象だ。そのため風が後方へと流れるような感覚は薄い。
EGOSのシェル外側のEPSフォームにはチャネルが設けられているものの、風の流れを感じにくいのはデュアルデンシティー構造によって内側のフォームが蓋されている作りとなっているためだろう。しかし、この2つのフォームの間には隙間が設けられているため、風や熱の通り道は十分確保されている。感覚として風が流れていないように感じるが、実際は細かな風の通り道が設計されていることで、ヘルメット内に熱がこもらない快適性が備わっている。
エアロダイナミクス面ではNYTRONに軍配は上がるものの、十分空力性能が考えられているヘルメットであり、これからの季節で重要になってくる通気性を考えると、EGOSの方がバランスが整えられている。軽量ヒルクライム系よりは平地で優位性のあるエアロ性能が優れているため、EGOSはバランス型という印象だ。
フィット面では典型的丸型頭で、カブトであればS/M、カスクではMサイズのヘルメットを着用する私、高木からするとEGOSは横幅が狭めで欧州の卵形という印象だ。NYTRONでは横幅がゆとりがあったため、同じルディプロジェクトでもシェルの形状は異なるようだ。それでもEGOSのMサイズは少し深めで、自分の頭に合う形状だった。
他に類を見ないバックルは、やはり操作に少し慣れが必要。構造を理解していないと最初は外しにくいが、仕組みさえわかってしまえば作業は非常にスムーズだ。マグネットのおかげで片手で作業でき、バックル同士を近づけさえすれば自動的に固定されるのはむしろ使いやすい。アジャスターのダイヤルもグリップする作りとなっていたりと、細かい部分も作り込まれているヘルメットだ。
プロ向けに開発されたモデルではあるものの、非常に優れた快適性を備えたEGOS。レーサーだけではなく、週末サイクリングを楽しむホビーライダーにもマッチする懐の広いモデルのため、ぜひとも一度試着してその性能を確かめてもらいたい。
ルディプロジェクト EGOS
サイズ:S、M、L
重 量:230g(S)、250g(M)、280g(L)
カラー:ブラック、ホワイト、コスミックブルー
価格:29,700円(税込)
impression:Michinari Takagi
text:Gakuto Fujiwara
ツアー・ダウンアンダーでフィル・バウハウスやぺリョ・ビルバオが勝利を挙げ、2023年シーズンを良い形で滑り出したバーレーン・ヴィクトリアス。彼らが今年レースで使用しているヘルメットは、長年チームをサポートし続けるルディプロジェクトのNYTRON、EGOSという2種類だ。
NYTRONは2022年のミラノ〜サンレモで独走優勝を果たしたマテイ・モホリッチが着用していた姿を目にしたサイクリストも多いはず。対して、EGOSはその年のツール・ド・フランスで実戦投入されたルディプロジェクトの最新フラッグシップモデル。近年は大型のベンチレーションホールが採用されることが多い中、細い通気口を幾つも並べたトラディショナルな雰囲気を感じさせる見た目が特徴的な一作だ。
このベンチレーションホールはただ並べられているだけではなく、ヘルメットに当たった風が内部へと導かれるように計算されている。例えば、ヘルメット前方から見て中央に配置されたラインは左右のラインと比較して内側に入り込んでおり、その左右のラインも隔てられたベンチレーションホールのチャネルのような設計が風を通気口に導く。また前頭部の最も外側に配置された矢印型の通気口も前方を向いており、シェルが風を遮りにくい作りになっている。
他にもヘルメット内側の額部分にはエアフレームを設け、シェルと頭部の間に空間を生み出すことで通気性を確保。ヘルメット内部はデュアルデンシティー構造によって密度の異なる2種類のEPSフォームが配置されているが、そのEPSフォームが切り替わる部分にも空間を用意することで、ヘルメット内の熱気をその空間へと逃がしてくれる。
エアチャネルを通った熱は、NYTRONに通ずるような造形の後部排気口やサイド部分の通気口からヘルメット外へと排出される。EGOSの後部は大きな通気孔ではないものの、開口部の向きや形状が徹底的に設計されているため、高いベンチレーション性能を期待できる。
安全面では先述した2種類のEPSフォームを使うデュアルデンシティー構造がその性能向上を担う。頭頂部分に密度の異なるフォームを配置し、ヘルメットに衝撃が加わった際にインパクトを吸収することを狙っている。これによって回転衝撃に対する評価を行う「WG11」というテストをクリアする、安全性の高いヘルメットを実現した。また、この構造によって軽量化も果たされており、Sサイズで230gとなっている。
このヘルメットの特徴は、フィドロック製のマグネットバックルが採用されていること。近年フィドロックのバックルをスライドさせて外すスナップモデルを採用するブランドが増えているが、EGOSで用いられるのはフック式。これにより確かな固定力を実現。しかし一般的なバックルとも、フィドロックのポピュラーなモデルとも作業方法が異なるため、使いこなすには少し慣れが必要かもしれない。
サイズはS(230g)、M(250g)、L(280g)という3種類。カラー展開はブラック、ホワイト、コスミックブルーという3種類。価格は29,700円(税込)だ。
―インプレッション by 高木三千成(シクロワイアード編集部)
EGOSはどのような速度域でも快適さを感じられるモデル。ダクトの数が多いだけあり、低速域でもヘルメット内に風がしっかりと入り込む感覚がありながら、高速になればなるほど風が気持ちよく抜けていく印象を受けた。バーレーン・ヴィクトリアスの選手たちがレースで使うモデルだが、速度域問わず快適に過ごせることを考えると、ホビーライダーにもマッチするだろう。
通気性を高めている部分として顕著に感じられるのは、エアフレームと呼ばれる額部分の柔軟な樹脂パーツだった。同時に試したNYTRONは額部分に風の通り道が用意されていなかったため、EGOSでは額部分のクーリング性能による快適性がより一層感じられた。熱を持ちやすい額を効果的に冷やすことで、快適性の高いヘルメットを実現している。
近年のヘルメットは内部のチャネルを深く作り、そこに風を流すことで通気性を確保している。しかし、EGOSは頭を風がなでていくような通気性ではなく、細かく開けられたベンチレーションホールからヘルメット内に入る風の量を増やし、前頭部にあたる風で快適さを実現してるような印象だ。そのため風が後方へと流れるような感覚は薄い。
EGOSのシェル外側のEPSフォームにはチャネルが設けられているものの、風の流れを感じにくいのはデュアルデンシティー構造によって内側のフォームが蓋されている作りとなっているためだろう。しかし、この2つのフォームの間には隙間が設けられているため、風や熱の通り道は十分確保されている。感覚として風が流れていないように感じるが、実際は細かな風の通り道が設計されていることで、ヘルメット内に熱がこもらない快適性が備わっている。
エアロダイナミクス面ではNYTRONに軍配は上がるものの、十分空力性能が考えられているヘルメットであり、これからの季節で重要になってくる通気性を考えると、EGOSの方がバランスが整えられている。軽量ヒルクライム系よりは平地で優位性のあるエアロ性能が優れているため、EGOSはバランス型という印象だ。
フィット面では典型的丸型頭で、カブトであればS/M、カスクではMサイズのヘルメットを着用する私、高木からするとEGOSは横幅が狭めで欧州の卵形という印象だ。NYTRONでは横幅がゆとりがあったため、同じルディプロジェクトでもシェルの形状は異なるようだ。それでもEGOSのMサイズは少し深めで、自分の頭に合う形状だった。
他に類を見ないバックルは、やはり操作に少し慣れが必要。構造を理解していないと最初は外しにくいが、仕組みさえわかってしまえば作業は非常にスムーズだ。マグネットのおかげで片手で作業でき、バックル同士を近づけさえすれば自動的に固定されるのはむしろ使いやすい。アジャスターのダイヤルもグリップする作りとなっていたりと、細かい部分も作り込まれているヘルメットだ。
プロ向けに開発されたモデルではあるものの、非常に優れた快適性を備えたEGOS。レーサーだけではなく、週末サイクリングを楽しむホビーライダーにもマッチする懐の広いモデルのため、ぜひとも一度試着してその性能を確かめてもらいたい。
ルディプロジェクト EGOS
サイズ:S、M、L
重 量:230g(S)、250g(M)、280g(L)
カラー:ブラック、ホワイト、コスミックブルー
価格:29,700円(税込)
impression:Michinari Takagi
text:Gakuto Fujiwara
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