2022/11/14(月) - 16:41
バンクーバーに拠点を構え、オフロード系バイクを中心に揃えるロッキーマウンテン。数々のマウンテンバイクが揃うラインアップから、Growler40をピックアップしよう。下り性能にフォーカスしたジオメトリーやパーツ構成が特徴のアルミハードテイルバイクをインプレッション。
1981年にマウンテンバイクのテストを開始して以来、子供からプロまで、あらゆるライダーにバイクを作り続けるロッキーマウンテン。MTBライドが盛んなノースバンクーバーとセントジョージズに拠点を構え、ライダー、トレイルビルダー、レーサーなどがライドを楽しめるようなバイク開発を行っているブランドだ。
北米はもちろん世界中のマウンテンバイカーが集うウィスラーをはじめ、至る所にトレイルが伸びるカナダのブランドだけあり、トレイルライド向けモデルのラインアップが充実していることが特徴だ。加えてフリーライド用やエンデューロレース用なども揃うのと同時に、フカヤレーシングのメンバーが使用するクロスカントリーモデルも揃う。
今回ピックアップするのは、ロッキーマウンテンの中心的存在トレイルモデルに用意されるGrowler(グロウラー)だ。同じトレイルカテゴリーに入るフルサスペンション仕様のInstinctに対して、Growlerはサスペンションフォークのみのハードテイルバイクとなっている。
Growlerがトレイルモデルたらしめる要素は、29×2.6インチタイヤを装着することを前提としたジオメトリー設計だ。セミファットと呼ばれるサイズのタイヤは接地面積が大きいことによる高いグリップ力、エアボリュームが大きいことによる高いクッション性が特徴であり、タイヤを活かせるダウンヒル能力を車体で確保する。
リアリジットのフレームで特徴的な部分は、64°に設定されたヘッドチューブアングルだ。ダウンヒルバイクに迫るかのような寝たヘッドチューブによってフロントタイヤが前方に位置することで直進安定性が高まり、同時に荒れた路面でもコントロール性を失いにくく、ハイスピードでのダウンヒルを実現する。
トレイルライドには登りも当然登場する。Growlerはシートチューブアングルが75°と立ちぎみに設定されており、ペダリングパワーがダイレクトに推進力へと繋がる設計だ。接地面積の広いタイヤは登りでもグリップ力を発揮し、トラクションが失われずに登り続けられるだろう。トレイルヘッドまでの上りや、トレイル中に登場する登りでも楽しくライドを続けられるはずだ。
もちろんGrowlerが魅力を発揮するのはトレイルライドのダウンヒルであり、搭載されるパーツにもそれが表れている。フロントフォークはSRサンツアーのRidon34 140mm、リムはWTB ST i30 TCS 2.0で、タイヤはWTBはVigilante(フロント)、Trail Boss(リア)という設定。装備されているハンドルバーも標準で800mmと超ワイドということも特徴だ。今回、試乗用に借り受けたバイクはタイヤにマキシスMINIONが前後にアセンブルされた本気仕様。試乗車のアセンブルからもGrowlerが下りにフォーカスしているバイクということがわかる。
アルミフレームのハードテイルで233,200円(税込)とこれからマウンテンバイクを始める方でも手を出しやすい価格設定も魅力だ。各地で新たに登場しているバイクパークからマウンテンバイクに挑戦したいという方にはピッタリだ。
―インプレッション
これは、確かにリアサスの無いエンデューロバイクだ。
昨今、各社が取り揃えている下り系ハードテイルというカテゴリーに、ロッキーマウンテンが投入したのが、このGROWLER。64°というヘッドアングルは、同カテゴリーの中でも最高レベルに寝た設定で、もはや一昔前のダウンヒルバイク並みの数値となっている。
そのヘッドアングルが生み出すのが、冒頭に述べたような素晴らしく安定感のあるダウンヒル性能。最近日本においても多くなりつつあるフロートレイルで、バームやパンプを活かしてテンポよく加速しつつ下っていくには最高の一台だ。
今回は、山梨県富士吉田市のふじてんリゾートへ持ち込み、テストを行ったが、120mmクラスのフルサスダウンカントリーバイク以上のキャパシティを感じる安定感がある。特に火山灰質で、ガレ場もほぼ無いスムーズな路面が特徴的なふじてんのコースと、GROWLERは好相性。
GROWLERは、斜度が急になればなるほど、スピードが上がれば上がるほど、その輝きを増す。フロントホイールがしっかりと前にある感覚は、上級者であればスピードの上限を高めてくれるだろうし、初心者であれば急こう配区間でも前転しづらいだろうという安心感に繋がるはず。高速でバンクを駆け抜けるような走り方が、GROWLERにはよく似合う。
安定感のあるフロント周りとは真逆に、しっかりとリアセンターが詰められたリアセクションは機敏な運動性能を演出してくれている。同じクラスのフルサスと比較すれば圧倒的に小回りも効くし、フロントも上げやすい。フレームの剛性感も非常に高く、バイクを倒してコーナーを攻めても、はたまたドロップオフの着地でも不安を感じるようなことはない。
ヘッドアングルは過激なまでに寝かされているのに反比例するように、シートチューブは最早垂直なのではないかと見まがうレベルの立ちっぷり。シッティングでペダルをこいでも、自然と体重をかけたペダリングとなるため、登りもしっかりこなせる。自走でのトレイルへのアプローチでも体力を温存できそうだ。ただ、基本的にはトレイルバイクであるため、クロスカントリー的な走りを求めるのであれば、他のバイクが選択肢に上がるだろう。
このバイクを検討する中で、気になるのはフルサスバイクとの比較だろう。リアサスペンションが無い分、後輪のトラクションコントロールはライダー頼みになるし、加重のタイミングもシビアになる。単純に、路面の凹凸もダイレクトに来るので、身体への負担も相応だ。いわゆる、自転車に助けられる部分というのは、確実に少なくなる。もちろん、その分フルサスバイクは価格も高くなるし、メンテナンスコストも増大するというデメリットもある。
裏返して言うと、自分のスキルが如実に反映されるという意味でもあり、技巧派のライダーやスキルアップを目指すライダーにとっては非常に魅力的な一台でもある。
フルサスバイクに比してネガティブな部分も、パーツセレクトによってある程度カバーすることも出来る。例えば足回り。GROWLERには最初から2.6インチというワイドタイヤが組み合わせられているが、タイヤインサートを組み合わせれば更に低圧での運用が可能となり、トラクションや乗り心地といった部分を改善することが出来るはず。また、カーボンハンドルやクッション性の高いグリップを装着しても良いだろう。
初期投資を抑えつつ、自分好みのパーツを組み合わせることで、オリジナリティの有るバイクへとカスタムしていく楽しみも味わえる。GROWLERのフレーム性能であれば、各社のハイエンドサスペンションを組み合わせても、その性能を持て余すということも無いだろう。むしろ、フレームの持つポテンシャルを最大限に引き出してくれそうだ。
また、他の下り系ハードテイルと比べるのであれば、GROWLERの先進性は頭一つ抜けているとも感じる。ハードテイルバイクではあるが、GROWLERは潔く下り性能を追求することで、想定しているフィールドで最も楽しめる乗り味に仕上げられている。一見過激にも見えるほどのジオメトリーだが、いざ走らせてみればその狙うところは明確。ハードテイルならではの軽さとダイレクト感を活かすことで登りにも対応しつつ、既存のどのハードテイルバイクよりも下りを楽しめるバイクとして設計されている。
あまりオフロードライドの経験も無く、初めてのMTBを考えているという方が、トレイルライド、時々ゲレンデ、というような楽しみ方を想定していて、かつ予算を抑えたい、というのであれば最有力候補にふさわしいバイクと言える。
オフロードの楽しみの虜になっても、パーツをアップグレードしつつ長く付き合っていけるバイクだろうし、たとえフルサスバイクを買い増したとしたとしても、GROWLERの持つハードテイルならではのダイレクト感は色あせることは無いはずで、その日の気分やフィールドで乗り分ける楽しみを味わえる。
既にフルサスバイクを所有しているライダーにとっても、遊びの幅を広げたり、スキルを磨いたりという面で魅力的なバイクでもある。XCレースを目的とするのでなければ、あらゆるシーンやコース、ライダーを満足させられる、バーサタイルバイクとして高い完成度を誇る一台だ。
ロッキーマウンテン Growler 40
フレーム:Rocky Mountain 6061 Alloy. Threaded BB. Boost 148mm. Tapered Zerostack Headtube. Dropper Post Compatible.
フォーク:Suntour Raidon 34 LOR Air Boost 140mm
コンポーネント:Shimano Deore 12spd
サイズ:S (157.5-170cm)、 M (167.5-177.5cm)、 L (175-188cm)
ホイール、タイヤサイズ:29×2.6インチ
カラー:Green/Pink、White/Black
価格:233,200円(税込)
impression:Nanoki Yasuoka
1981年にマウンテンバイクのテストを開始して以来、子供からプロまで、あらゆるライダーにバイクを作り続けるロッキーマウンテン。MTBライドが盛んなノースバンクーバーとセントジョージズに拠点を構え、ライダー、トレイルビルダー、レーサーなどがライドを楽しめるようなバイク開発を行っているブランドだ。
北米はもちろん世界中のマウンテンバイカーが集うウィスラーをはじめ、至る所にトレイルが伸びるカナダのブランドだけあり、トレイルライド向けモデルのラインアップが充実していることが特徴だ。加えてフリーライド用やエンデューロレース用なども揃うのと同時に、フカヤレーシングのメンバーが使用するクロスカントリーモデルも揃う。
今回ピックアップするのは、ロッキーマウンテンの中心的存在トレイルモデルに用意されるGrowler(グロウラー)だ。同じトレイルカテゴリーに入るフルサスペンション仕様のInstinctに対して、Growlerはサスペンションフォークのみのハードテイルバイクとなっている。
Growlerがトレイルモデルたらしめる要素は、29×2.6インチタイヤを装着することを前提としたジオメトリー設計だ。セミファットと呼ばれるサイズのタイヤは接地面積が大きいことによる高いグリップ力、エアボリュームが大きいことによる高いクッション性が特徴であり、タイヤを活かせるダウンヒル能力を車体で確保する。
リアリジットのフレームで特徴的な部分は、64°に設定されたヘッドチューブアングルだ。ダウンヒルバイクに迫るかのような寝たヘッドチューブによってフロントタイヤが前方に位置することで直進安定性が高まり、同時に荒れた路面でもコントロール性を失いにくく、ハイスピードでのダウンヒルを実現する。
トレイルライドには登りも当然登場する。Growlerはシートチューブアングルが75°と立ちぎみに設定されており、ペダリングパワーがダイレクトに推進力へと繋がる設計だ。接地面積の広いタイヤは登りでもグリップ力を発揮し、トラクションが失われずに登り続けられるだろう。トレイルヘッドまでの上りや、トレイル中に登場する登りでも楽しくライドを続けられるはずだ。
もちろんGrowlerが魅力を発揮するのはトレイルライドのダウンヒルであり、搭載されるパーツにもそれが表れている。フロントフォークはSRサンツアーのRidon34 140mm、リムはWTB ST i30 TCS 2.0で、タイヤはWTBはVigilante(フロント)、Trail Boss(リア)という設定。装備されているハンドルバーも標準で800mmと超ワイドということも特徴だ。今回、試乗用に借り受けたバイクはタイヤにマキシスMINIONが前後にアセンブルされた本気仕様。試乗車のアセンブルからもGrowlerが下りにフォーカスしているバイクということがわかる。
アルミフレームのハードテイルで233,200円(税込)とこれからマウンテンバイクを始める方でも手を出しやすい価格設定も魅力だ。各地で新たに登場しているバイクパークからマウンテンバイクに挑戦したいという方にはピッタリだ。
―インプレッション
これは、確かにリアサスの無いエンデューロバイクだ。
昨今、各社が取り揃えている下り系ハードテイルというカテゴリーに、ロッキーマウンテンが投入したのが、このGROWLER。64°というヘッドアングルは、同カテゴリーの中でも最高レベルに寝た設定で、もはや一昔前のダウンヒルバイク並みの数値となっている。
そのヘッドアングルが生み出すのが、冒頭に述べたような素晴らしく安定感のあるダウンヒル性能。最近日本においても多くなりつつあるフロートレイルで、バームやパンプを活かしてテンポよく加速しつつ下っていくには最高の一台だ。
今回は、山梨県富士吉田市のふじてんリゾートへ持ち込み、テストを行ったが、120mmクラスのフルサスダウンカントリーバイク以上のキャパシティを感じる安定感がある。特に火山灰質で、ガレ場もほぼ無いスムーズな路面が特徴的なふじてんのコースと、GROWLERは好相性。
GROWLERは、斜度が急になればなるほど、スピードが上がれば上がるほど、その輝きを増す。フロントホイールがしっかりと前にある感覚は、上級者であればスピードの上限を高めてくれるだろうし、初心者であれば急こう配区間でも前転しづらいだろうという安心感に繋がるはず。高速でバンクを駆け抜けるような走り方が、GROWLERにはよく似合う。
安定感のあるフロント周りとは真逆に、しっかりとリアセンターが詰められたリアセクションは機敏な運動性能を演出してくれている。同じクラスのフルサスと比較すれば圧倒的に小回りも効くし、フロントも上げやすい。フレームの剛性感も非常に高く、バイクを倒してコーナーを攻めても、はたまたドロップオフの着地でも不安を感じるようなことはない。
ヘッドアングルは過激なまでに寝かされているのに反比例するように、シートチューブは最早垂直なのではないかと見まがうレベルの立ちっぷり。シッティングでペダルをこいでも、自然と体重をかけたペダリングとなるため、登りもしっかりこなせる。自走でのトレイルへのアプローチでも体力を温存できそうだ。ただ、基本的にはトレイルバイクであるため、クロスカントリー的な走りを求めるのであれば、他のバイクが選択肢に上がるだろう。
このバイクを検討する中で、気になるのはフルサスバイクとの比較だろう。リアサスペンションが無い分、後輪のトラクションコントロールはライダー頼みになるし、加重のタイミングもシビアになる。単純に、路面の凹凸もダイレクトに来るので、身体への負担も相応だ。いわゆる、自転車に助けられる部分というのは、確実に少なくなる。もちろん、その分フルサスバイクは価格も高くなるし、メンテナンスコストも増大するというデメリットもある。
裏返して言うと、自分のスキルが如実に反映されるという意味でもあり、技巧派のライダーやスキルアップを目指すライダーにとっては非常に魅力的な一台でもある。
フルサスバイクに比してネガティブな部分も、パーツセレクトによってある程度カバーすることも出来る。例えば足回り。GROWLERには最初から2.6インチというワイドタイヤが組み合わせられているが、タイヤインサートを組み合わせれば更に低圧での運用が可能となり、トラクションや乗り心地といった部分を改善することが出来るはず。また、カーボンハンドルやクッション性の高いグリップを装着しても良いだろう。
初期投資を抑えつつ、自分好みのパーツを組み合わせることで、オリジナリティの有るバイクへとカスタムしていく楽しみも味わえる。GROWLERのフレーム性能であれば、各社のハイエンドサスペンションを組み合わせても、その性能を持て余すということも無いだろう。むしろ、フレームの持つポテンシャルを最大限に引き出してくれそうだ。
また、他の下り系ハードテイルと比べるのであれば、GROWLERの先進性は頭一つ抜けているとも感じる。ハードテイルバイクではあるが、GROWLERは潔く下り性能を追求することで、想定しているフィールドで最も楽しめる乗り味に仕上げられている。一見過激にも見えるほどのジオメトリーだが、いざ走らせてみればその狙うところは明確。ハードテイルならではの軽さとダイレクト感を活かすことで登りにも対応しつつ、既存のどのハードテイルバイクよりも下りを楽しめるバイクとして設計されている。
あまりオフロードライドの経験も無く、初めてのMTBを考えているという方が、トレイルライド、時々ゲレンデ、というような楽しみ方を想定していて、かつ予算を抑えたい、というのであれば最有力候補にふさわしいバイクと言える。
オフロードの楽しみの虜になっても、パーツをアップグレードしつつ長く付き合っていけるバイクだろうし、たとえフルサスバイクを買い増したとしたとしても、GROWLERの持つハードテイルならではのダイレクト感は色あせることは無いはずで、その日の気分やフィールドで乗り分ける楽しみを味わえる。
既にフルサスバイクを所有しているライダーにとっても、遊びの幅を広げたり、スキルを磨いたりという面で魅力的なバイクでもある。XCレースを目的とするのでなければ、あらゆるシーンやコース、ライダーを満足させられる、バーサタイルバイクとして高い完成度を誇る一台だ。
ロッキーマウンテン Growler 40
フレーム:Rocky Mountain 6061 Alloy. Threaded BB. Boost 148mm. Tapered Zerostack Headtube. Dropper Post Compatible.
フォーク:Suntour Raidon 34 LOR Air Boost 140mm
コンポーネント:Shimano Deore 12spd
サイズ:S (157.5-170cm)、 M (167.5-177.5cm)、 L (175-188cm)
ホイール、タイヤサイズ:29×2.6インチ
カラー:Green/Pink、White/Black
価格:233,200円(税込)
impression:Nanoki Yasuoka
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