2010/07/24(土) - 05:09
クォータはカーボン時代を受けて2001年にスタートした、イタリアのシンテマ社が手がける新進気鋭のフレームブランドだ。まだ歴史こそ浅いが、イタリアンデザインならではの高い造形美と先進のカーボンテクノロジーで人気を上げている。
クォータ KHARMA photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
クォータのラインナップの中でも、エントリーグレードに相当するモデルがこのKHARMA(カルマ)だ。エントリーグレードとはいえ、カーボン専業メーカーといえるクォータが手がけたバイクは、随所にこだわりを見せる凝った作りが特徴だ。フレームの細部を見ていくと、このバイクを現すディテールが数多く見受けられる。
見た目にも大きなインパクトを放つ幅広いダウンチューブは、平面を基調とした直線的な形状ながら、断面形状を明確に三角形とすることで剛性を確保している。また両端は幅広いままヘッドとBBに繋がり、ともに大きなボリュームをもった造形を見せている。
直線的な形状のダウンチューブとは反対に、凝った造形を見せるのがトップチューブだ。基本的には逆三角形をベースとしながらも、緩いカーブを付けながら下側が絞り込まれる形状となっている。大きな力の掛かるヘッドに近づくに従い下側の絞り込みもきつくなり、同時に上下の幅も増して断面積を大きくとる工夫がされる。
トップチューブ後ろ側のシートチューブと合流する部分は、ガゼットのようなフィン形状を作りエアロ効果と剛性確保を目指したフォルムを見せる。
複雑な形状を見せるトップチューブの下側
ダウンチューブは直線的な形状を見せる
そしてこのバイクで最も目を引くのが、特徴的なシートチューブ周辺。断面形状を翼断面として前後に扁平で幅広いシートチューブは、空気をスムーズに後方へ導くことに貢献する。幅広のシートチューブのリアホイール周辺は、タイヤ形状に合わせて切り取られ、まるでTTバイクのようなエアロフォルムを実現している。
驚いたのは翼断面形状のシートチューブと同じ形状を持つ、カーボン製の専用シートピラーが付属することだ。自転車にとってライダーの股下にあたる、シートピラーからチューブの接合部分に掛けての部分は、バイクの空気抵抗に大きく影響を及ぼすことで知られている。
その影響を最小限とするために、KHARMAはシートチューブと同様の翼断面形状をしたカーボンピラーを、わざわざ専用品で装備している。ここで思い出して欲しいのは、このバイクが決してハイエンドモデルではないということである。このクラスのモデルにもこんな凝った仕様を取り入れることは、ある意味クォータというブランドのバイクへのこだわりが判る部分といえる。
フォロンとフォークも途中から幅が変化する凝った形状を見せる
徹底したエアロ形状を見せるシートチューブ
シートステーは大きく湾曲する
結果としてシートチューブと同形状で続くその外観は、まるで最近のハイエンドモデルに用いられる、シートチューブがピラーを兼ねたインテグラルシートポストのようにも見える。しかし実際には一回り細いシートポストをチューブに差し込んで使うノーマルタイプ。このタイプの方が重量は増えるが、調整幅が広く取れるメリットがある。
このように完全な専用形状をもつカーボンモノコックフレームは、トップチューブがシートチューブに向かって4cmだけ下がる、軽いスローピング形状を採用。表層は、大きな格子模様が特徴的な12Kカーボンで仕上げられる。
BB周りも十分なボリュームを確保して剛性に貢献する
緩やかなカーブを描くトップチューブがこのバイクをスマートに見せる
剛性とエアロ性能にこだわった設計を随所に織り込みながらも、ゆるやかなカーブを描くトップチューブや、そこからキレイに続くダウンチューブの造形など、決して無骨に見えない有機的なフォルムを見せるのは、やはりイタリアンブランドならではのもの。
今回インプレを行なったのは、クォータ KHARMA アルテグラというグレードのモデルで、メインコンポにシマノアルテグラコンパクトクランクを装備、ホイールセットはマビック・アクシウムがセットされる。この他に、105のコンパクトクランクを装備した“KHARMA105”もラインナップされ、こちらはホイールがフルクラム レーシング7となる。また、クォータ KHARMAには“KHARMA レディー”という女性モデルも用意され、こちらに装備されるパーツはKHARMA105と基本的に同じだ。
ヘッドサイズは上下ともに1-1/8”
エアロ形状のシートピラーはノーマルタイプ。2本のイモネジで固定する
エアロ形状がよく判るリアからのアングル。シートチューブの薄さが判る
この力強い中にも有機的なフォルムを見せるクォータ KHARMA。
こだわりのエアロフォルムを持つこのイタリアンバイクを、2人のインプレライダーはどう評価したのだろうか?早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「平坦で勝負するような戦闘的なバイクに仕上げると面白い」 鈴木祐一(Rise Ride)
「平坦で勝負するような戦闘的なバイクに仕上げると面白い」 鈴木祐一 イタリアンバイクらしく直進安定性が高いことが印象的。見た目のエアロフォルムを裏切らない性格が走りにも現れているようだ。ヒルクライムよりも平坦路をスピードを上げて走る方が、このバイクのターゲットといえるだろう。
そんな味付けを活かすため、もしロードレースで使うならアップダウンの少ない平坦なステージや、レース中に勝負を仕掛ける場合も、平地でアタックを仕掛ける方がこのバイクには向いている印象だ。
ハンドリングは安定性が高いので、安心してコーナーを攻められる。今まで下りやコーナーを苦手としている人にとっては安心感が高くて、扱いやすいフィーリングが得られると思う。
バイク全体の挙動もスピードを出すことで、安定感が増す傾向が強くなると感じた。そういった意味でも、平地を高速で走る高速巡航バイクとして、スピードの緩急が激しい走りよりも、一定スピードを最も得意とするハイスピードバイクという印象が残った。
だからといって登りがダメなわけではなくて、平地での評価が高いため比べると登りでの特徴が少ないということ。それにバイクの重心が低く感じるので、ペダリングはダンシングでガンガン踏むというよりも、この低重心設計を活かすようにシッティングの方が向いているだろう。
このバイクの一番の特徴はやっぱり平坦での走りが活きることだと思う。そういった特性を活かして、例えばホイールをハイトの高いディープリムに変更したり、簡易的なものでもいいのでDHバーを付けてみるとか、平地で勝負するような戦闘的なバイクに仕上げると、より個性が際立って面白いバイクになりそうな予感がする。
「実はオールマイティにどこでも楽しめるバイク」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
「実はオールマイティにどこでも楽しめるバイク」 三上和志 まず見た目のエアロフォルムがやる気にさせる。それにグランツールに出場していることもあって勢いを感じるブランドでもある。でもこれだけボリュームのあるフレーム形状ながら、乗ったときの堅さや重さを感じないのは流石。
ペダリングは回転数を上げるよりも、踏んでいく乗り方の方が合っていると感じた。ダンシングでキビキビ走るというよりも、シッティングでギアを掛けて伸びやかさを生む走りを心がけた方が気持ち良く進む印象が強い。戦闘的な見た目に反して、決して堅いバイクではないので踏んでいく乗り方をしても、堅さに負けていわゆる“足にくる”ということは少ないと思う。
ハンドリングは安定志向ということもあって、そういう意味では、平地を一定速度で巡航するような走りが好きな方に薦めたいバイクといえる。でも潔いエアロフォルムをしていながら、そこだけに特化したようなことはなくて、決して“高速域専用”のバイクではない。
まるでTTバイクのような見た目ながら、重くはなくヒルクライムでも十分に使える軽さも持ち合わせている。そのため、例えば軽量なディープリムを履かせて、見た目は凄いTTバイクっぽいのに、実はオールマイティにどこでも楽しめるバイクというアレンジも可能な懐の広さを感じた。
完成車のパーツ類は、ハンドル&ステムはデダ、サドルはサンマルコ、ホイールはマビックと、全てのパーツがそれぞれの分野の一流ブランドでまとめられているので、全体のパッケージングはとてもよくまとまっていて安心できる。やはりグランツールにも出場しているブランドのKOUTAだけあって、プロっぽい正統派のパーツチョイスといえる。
このままでも十分に優れた性能を発揮するパーツ構成だけど、あえて個性的なカスタムを楽しむのも面白いかもしれない。例えば特徴的なエアロフォルム引き出すようなカスタムを加えれば、注目を浴びることだろう。そんな楽しみを与えてくれるバイクだと思う。でも乗り味はすごくオーソドックスなバイクなので、安心してほしい。
クォータ KHARMA photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
KUOTA KHARMA ULTEGRA(クォータ KHARMA アルテグラ)
フレーム:カーボンモノコックフレーム
フォーク:カーボンフォーク Integral OverSize
重量:1,140g(フレーム単体)
カラー:ホワイト/レッド
サイズ:465、485、515、545、565
メインコンポ:ULTEGRAコンパクトクランク仕様
ホイール:MAVIC AKSIUM
ハンドル/ステム:Deda
ピラー/サドル:KUOTA
タイヤ:KUOTAオリジナル
完成車価格:299,800円(税込)
インプレライダーのプロフィール
鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
三上 和志 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
text&edit :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO
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クォータのラインナップの中でも、エントリーグレードに相当するモデルがこのKHARMA(カルマ)だ。エントリーグレードとはいえ、カーボン専業メーカーといえるクォータが手がけたバイクは、随所にこだわりを見せる凝った作りが特徴だ。フレームの細部を見ていくと、このバイクを現すディテールが数多く見受けられる。
見た目にも大きなインパクトを放つ幅広いダウンチューブは、平面を基調とした直線的な形状ながら、断面形状を明確に三角形とすることで剛性を確保している。また両端は幅広いままヘッドとBBに繋がり、ともに大きなボリュームをもった造形を見せている。
直線的な形状のダウンチューブとは反対に、凝った造形を見せるのがトップチューブだ。基本的には逆三角形をベースとしながらも、緩いカーブを付けながら下側が絞り込まれる形状となっている。大きな力の掛かるヘッドに近づくに従い下側の絞り込みもきつくなり、同時に上下の幅も増して断面積を大きくとる工夫がされる。
トップチューブ後ろ側のシートチューブと合流する部分は、ガゼットのようなフィン形状を作りエアロ効果と剛性確保を目指したフォルムを見せる。
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そしてこのバイクで最も目を引くのが、特徴的なシートチューブ周辺。断面形状を翼断面として前後に扁平で幅広いシートチューブは、空気をスムーズに後方へ導くことに貢献する。幅広のシートチューブのリアホイール周辺は、タイヤ形状に合わせて切り取られ、まるでTTバイクのようなエアロフォルムを実現している。
驚いたのは翼断面形状のシートチューブと同じ形状を持つ、カーボン製の専用シートピラーが付属することだ。自転車にとってライダーの股下にあたる、シートピラーからチューブの接合部分に掛けての部分は、バイクの空気抵抗に大きく影響を及ぼすことで知られている。
その影響を最小限とするために、KHARMAはシートチューブと同様の翼断面形状をしたカーボンピラーを、わざわざ専用品で装備している。ここで思い出して欲しいのは、このバイクが決してハイエンドモデルではないということである。このクラスのモデルにもこんな凝った仕様を取り入れることは、ある意味クォータというブランドのバイクへのこだわりが判る部分といえる。
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このように完全な専用形状をもつカーボンモノコックフレームは、トップチューブがシートチューブに向かって4cmだけ下がる、軽いスローピング形状を採用。表層は、大きな格子模様が特徴的な12Kカーボンで仕上げられる。
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今回インプレを行なったのは、クォータ KHARMA アルテグラというグレードのモデルで、メインコンポにシマノアルテグラコンパクトクランクを装備、ホイールセットはマビック・アクシウムがセットされる。この他に、105のコンパクトクランクを装備した“KHARMA105”もラインナップされ、こちらはホイールがフルクラム レーシング7となる。また、クォータ KHARMAには“KHARMA レディー”という女性モデルも用意され、こちらに装備されるパーツはKHARMA105と基本的に同じだ。
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この力強い中にも有機的なフォルムを見せるクォータ KHARMA。
こだわりのエアロフォルムを持つこのイタリアンバイクを、2人のインプレライダーはどう評価したのだろうか?早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「平坦で勝負するような戦闘的なバイクに仕上げると面白い」 鈴木祐一(Rise Ride)
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そんな味付けを活かすため、もしロードレースで使うならアップダウンの少ない平坦なステージや、レース中に勝負を仕掛ける場合も、平地でアタックを仕掛ける方がこのバイクには向いている印象だ。
ハンドリングは安定性が高いので、安心してコーナーを攻められる。今まで下りやコーナーを苦手としている人にとっては安心感が高くて、扱いやすいフィーリングが得られると思う。
バイク全体の挙動もスピードを出すことで、安定感が増す傾向が強くなると感じた。そういった意味でも、平地を高速で走る高速巡航バイクとして、スピードの緩急が激しい走りよりも、一定スピードを最も得意とするハイスピードバイクという印象が残った。
だからといって登りがダメなわけではなくて、平地での評価が高いため比べると登りでの特徴が少ないということ。それにバイクの重心が低く感じるので、ペダリングはダンシングでガンガン踏むというよりも、この低重心設計を活かすようにシッティングの方が向いているだろう。
このバイクの一番の特徴はやっぱり平坦での走りが活きることだと思う。そういった特性を活かして、例えばホイールをハイトの高いディープリムに変更したり、簡易的なものでもいいのでDHバーを付けてみるとか、平地で勝負するような戦闘的なバイクに仕上げると、より個性が際立って面白いバイクになりそうな予感がする。
「実はオールマイティにどこでも楽しめるバイク」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
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ハンドリングは安定志向ということもあって、そういう意味では、平地を一定速度で巡航するような走りが好きな方に薦めたいバイクといえる。でも潔いエアロフォルムをしていながら、そこだけに特化したようなことはなくて、決して“高速域専用”のバイクではない。
まるでTTバイクのような見た目ながら、重くはなくヒルクライムでも十分に使える軽さも持ち合わせている。そのため、例えば軽量なディープリムを履かせて、見た目は凄いTTバイクっぽいのに、実はオールマイティにどこでも楽しめるバイクというアレンジも可能な懐の広さを感じた。
完成車のパーツ類は、ハンドル&ステムはデダ、サドルはサンマルコ、ホイールはマビックと、全てのパーツがそれぞれの分野の一流ブランドでまとめられているので、全体のパッケージングはとてもよくまとまっていて安心できる。やはりグランツールにも出場しているブランドのKOUTAだけあって、プロっぽい正統派のパーツチョイスといえる。
このままでも十分に優れた性能を発揮するパーツ構成だけど、あえて個性的なカスタムを楽しむのも面白いかもしれない。例えば特徴的なエアロフォルム引き出すようなカスタムを加えれば、注目を浴びることだろう。そんな楽しみを与えてくれるバイクだと思う。でも乗り味はすごくオーソドックスなバイクなので、安心してほしい。
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KUOTA KHARMA ULTEGRA(クォータ KHARMA アルテグラ)
フレーム:カーボンモノコックフレーム
フォーク:カーボンフォーク Integral OverSize
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カラー:ホワイト/レッド
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メインコンポ:ULTEGRAコンパクトクランク仕様
ホイール:MAVIC AKSIUM
ハンドル/ステム:Deda
ピラー/サドル:KUOTA
タイヤ:KUOTAオリジナル
完成車価格:299,800円(税込)
インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
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埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
text&edit :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO
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