5月23日、スイス・グレンヘンのヴェロドロームでエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)がアワーレコードに挑戦。それまでの世界記録を849m上回る49.254kmで世界新記録を樹立した。



49.254kmという女子新記録を打ち立てたエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)49.254kmという女子新記録を打ち立てたエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Trek-Segafredo
35歳の現世界選手権個人TTチャンピオンが49kmの壁を破った。

「序盤は少し緊張していたけど何とか自分をコントロールできたと思う。最初の30分を1周18.1〜18.2秒という思い描いていたタイムで走ることができた。むしろ設定以上のペースだったので18.5秒を下回ることがなければ達成できると思っていた。全てのタイム計測が聞こえたわけじゃないけど、一度も18.5秒を下回らなかったはずだ」と、女子アワーレコードで世界記録を樹立したエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)は語った。

2014年にイェンス・フォイクト(ドイツ)が、2015年にローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)が当時の男子アワーレコード世界記録を更新したスイス・グレンヘンのヴェロドロームで行われたファンダイクのアワーレコード挑戦。ファンダイクが挑んだのは2021年2月にジョセリン・ローデン(イギリス、ウノエックス・プロサイクリングチーム)が樹立した48.405kmという記録だ。

ファンダイクが今回使用したのは、昨年の世界選手権個人TTを制したトレックのSpeed Conceptをトラック使用にカスタマイズした特別モデル。トレックはファンダイクがアワーレコード挑戦を決めた2021年12月よりSpeed Conceptの固定ギヤ化を含むカスタマイズを開始。急ピッチで仕上げられたバイクに58×14というギヤ比によって、見事世界記録を塗り替えた。

スイス・グレンヘンのヴェロドロームで行われたアワーレコード挑戦スイス・グレンヘンのヴェロドロームで行われたアワーレコード挑戦 photo:Trek-Segafredo
45分経過時点でローデンよりも55.8秒早いタイムで37kmを通過したファンダイク。だが「調子次第では後半にペースを更に上げる予定だった。そして45分経過時点で”よし、上げよう”と加速したのだが、逆に速度は落ちていった。そこからは時が経つのが本当に遅く感じられ、終わりに近づくにつれ視界もボヤけ、ライン取りも甘くなっていった」と語る。

「終わりの合図を聞いた瞬間はただただ嬉しかった。これが今日の私にできる最大限の結果で、記録を更新できて本当に嬉しい」。これまで2度(2013年、2021年)世界選手権個人タイムトライアルを制し、昨年は欧州選手権ロード王者にも輝いたファンダイクはそう喜びを表現した。

「トレックを始め、このプロジェクトに関わってくれた全ての人たちに感謝したい。走っている間は協力してくれたチームのことを考えていた。彼ら、彼女たちが掛けてくれた労力と時間に応えるべく、自分の持てる力の全てを注いだ。挑戦が終わったいま言えるのは”自転車は本当に楽しい”ということだ」。

歴代女子アワーレコード記録
エレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)49.254km
ジョセリン・ローデン(イギリス)48.405km
ヴィットリア・ブッシ(イタリア)48.007km
イヴリン・スティーヴンス(アメリカ)47.980km
ブライディー・オドネル(オーストラリア)46.882km

使用したのはトレック Speed Conceptで58×14のギヤ比をセレクト使用したのはトレック Speed Conceptで58×14のギヤ比をセレクト photo:Trek-Segafredo
49.254kmの新記録を樹立したエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)49.254kmの新記録を樹立したエレン・ファンダイク(オランダ、トレック・セガフレード)
今回の挑戦によって現世界TT王者がアワーレコード記録を保持することになったわけだが、伊ガゼッタは男子の現世界TT王者であるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が今年の8月23日(あるいは24日)に同じくアワーレコードに挑戦予定なのだと報道。自身初となるツール・ド・フランスへの出場を予定しているガンナは、その閉幕から1ヶ月後にヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)の持つ55.089kmの記録に挑む。

text:Sotaro.Arakawa

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