2022/05/12(木) - 10:00
スペシャライズドが展開するホイールブランドのロヴァールがロードレーシングモデルのRAPIDEおよびALPINISTのモデルチェンジを発表。カーボンレイアップを見直すことで、高い安全性を確保できたため、チューブレスへ正式対応したという第2世代のRAPIDE CLX IIとALPINIST CLX II、ALPINIST CL IIを紹介しよう。
2020年にスペシャライズドが発表したロヴァールのRAPIDEとALPINIST。51/60mmリムハイトで1,400gをマークするオールラウンドモデル"Rapide CLX"と、1,248gというブランド史上最軽量のクライミングモデル"Alpinist CLX"を筆頭に掲げたラインアップは、多くのライダーから支持を集めてきた。
実際、2020~2021シーズンにかけて、この2モデルが残してきた戦績は華々しいものがある。ワールドツアーにおいて155勝を挙げ、他のどのホイールよりも多くの実績を上げてきたという。過酷なパヴェのモニュメントや3週間を戦うグランツール、そして世界選手権など、RAPIDEとALPINISTが掴んだ栄光は「世界最速のホイール」と称するのに不足の無いものといえるだろう。
一方で、そんなレーシングホイールにも一つだけウィークポイントが存在していた。それがチューブレスタイヤ非対応という点だ。デビュー当時、ロヴァールはその理由を「チューブレスに対応するために増加する重量とチューブレスタイヤによるメリットが釣り合っていないため」としていた。
転がり抵抗の軽さや優れた耐パンク性など、様々なメリットがあるチューブレスシステムに対応しないという判断は当時大きな衝撃を与えたものの、その後の2年間でロヴァールが残した実績は否定的な声を静めるに十分なものでもあった。
とはいえ、スペシャライズドはチューブレスの可能性を諦めていたわけではなかった。それは、チューブレスタイヤをラインアップしていたことからも察せられることでもあり、また実際のところ、初代RAPIDEとALPINISTは当初チューブレスレディホイールとして開発されていたともいう。
テストホイールを破壊したサガン 更なる安全性強化のためにチューブレス対応が見送りに
前作がクリンチャーモデルとして発売された経緯には、トップスター選手であるペテル・サガンが関わっている。2019年の12月、チューブレスタイヤを装着したALPINIST CLXをテスト中、サガンはラウンドアバウトを飛び越える際に縁石にホイールをヒット。テストホイールのリムにクラックが入り、タイヤが外れてしまった。
この事件を受け、ロヴァールの開発チームがサガンの壊したホイールを検査したところ、リムベッドに入った小さな亀裂がホイール全体の破損に繋がり、タイヤの脱落に繋がったと結論づけた。ただ、チューブを入れて運用した場合には、チューブレスよりも圧力が分散されるために、損傷度合いが低くなり、同じ状況でも安全に停車できることが分かったという。
とはいえチューブレスモデルとして世に送りだすには、既存のチューブレスシステムの約2倍の耐衝撃性を持たせ、万が一リムに亀裂が入ったとしてもタイヤが外れることなく停止可能な安全性を実現するべきだと、開発チームは判断した。
しかし、この判断のもと2020シーズンでは既存のCLXシリーズを供給するという旨をサポートチームに伝えたところ、チーム側からはたとえクリンチャーであってもRAPIDEとALPINISTをレースで使いたいという要望を受けたのだという。
チームとしては、この2種のホイールとスペシャライズドのTURBOクリンチャーを組み合わせることが、軽くかつエアロ、そして安全面でも問題がない最高の組み合わせであり、最速の選択だった。彼らの強い要望に応える形で、スペシャライズドはRAPIDEとALPINISTをチューブド仕様で提供することを決めたという。
チューブレス対応のため、厳格な安全テストを実施 150種類のレイアップをテスト
そして、この2年間、クリンチャーモデルのRAPIDEとALPINISTが快進撃を続ける裏で、絶対的な安全性を確保するためのテストと開発が続けられてきた。UCIが定めた既存の40ジュール落下テストだけでなく、独自のテスト方式を開発。
ホイールに40ジュールから70ジュールのエネルギーを加えた角型と丸形の打撃材をそれぞれ落下させることで耐久性を計測。ちなみに、81kgのライダーが32km/hで高さ5cmのスチール角材に進入したときの衝撃が29ジュールであり、70ジュールともなるとハンドルから手が弾かれるレベルの衝撃だという。
このテストに対し、60ジュールで丸形材をヒットしても破損せず、70ジュールで丸形材をヒットした際に、たとえリムが破損してもそれ以上クラックを広げず、タイヤをリムに収めたまま安全に停止できることを目標として、新ホイールは開発された。
この目標を達成するため、スペシャライズドはRAPIDEとALPINIST合わせて150種類のレイアップを試行錯誤し、1000本以上のホイールを試験機で破壊したという。その結果、優れた評価を得ていたリムの断面形状自体には一切手を加えることなく重量増を最小限に抑え、安全性を高めチューブレス化を果たしたのが、第二世代のRAPIDE&ALPINISTだ。
完成された速さ RAPIDE CLX II
エアロロードホイールのRapide CLX II は、初代の優れたエアロ性能はもちろん確保したまま、チューブレスの転がり抵抗の軽さを手に入れ、世界最速のホイールの座をゆるぎないものに。
セット重量は1,505gと前作から100gほど増加しているが、チューブレスのメリットが勝る範囲と言えるのではないだろうか。おそらく2年前の時点では、より多くの重量増が避けえなかったのだろう。最高峰のエアロ性能と、転がり抵抗の軽さを実現しつつ、山岳コースにも対応するオールラウンドな1本に仕上げられている。
チューブレス化にあたってリムの外形寸法を変更し、タイヤビードに1.4mmの余裕を持たせることで作業性も向上。ライド途中でパンクしても対応しやすい設計となっている。また、新たにSINCセラミックベアリングと、最新のDTスイスEXPフリーを搭載した新型のAeroFlangeハブを採用し、回転性能の向上と軽量化を果たしている。
ALPINIST CLX II&ALPINIST CL II チューブレス化でライドをさらなる高みへ
一方で、Alpinist IIは上位モデルのCLXが1,250gと重量増は4gにとどめられ、セカンドグレードのCLに至っては1,365gと重量増加無しというスペックに。RAPIDEと同様、フックドのチューブレスリムはタイヤビードに1.4mmの余裕がある設計で、良好な作業性を実現。
CLXには新開発のLightAFハブが与えられ、前作のハブから50gの軽量化を達成し、チューブレス対応による重量増を相殺。DTスイスの新しいEXPフリーとSINCセラミックベアリングによって、スムースな回転と優れた耐久性を実現しているという。これらの努力により、前作の軽さはそのままに、チューブレスタイヤのメリットを受けることが可能となり、よりその登坂性能に磨きをかけている。
また、RAPIDEとALPINISTともにリムの耐久性が向上しているため、耐荷重の数値も更新されている。以前は109kgであった耐荷重制限が125kgにアップデート。大柄なライダーでも安心して使用できるホイールとしても進化している。
価格はRAPIDE CLX IIがフロント148,500円、リア 203,500円。ALPINIST CLX IIがフロント143,000円、リア 198,000円、ALPINIST CL IIがフロント88,000円、リア 126,000円(全て税込)。
ロヴァール RAPIDE CLX II
リム:フロント リムハイト51mm、外幅35mm/リア リムハイト60mm、外幅30mm/内幅は前後とも21mm、チューブレスレディ
カラー:2色(Satin Carbon/Gloss Black、Satin Carbon/Gloss White)
重量:1505グラム(リムテープとバルブを含むと1520グラム)
ハブ:AeroFlangeハブ、DT Swiss EXP インターナル、SINC セラミックベアリング
スポーク:DTSwiss エアロライトスポーク、フロント18本/リア24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110 PSI
耐荷重:125kg
価格:フロント148,500円、リア 203,500円 (税込)
ロヴァール ALPINIST CLX II
リム:リムハイト33mm/内幅21mm、チューブレスレディ
カラー:2色(Satin Carbon/Gloss Black、Satin Carbon/Gloss White)
重量:1250グラム(リムテープとバルブを含むと1265グラム)
ハブ:LFD ハブ、DTSwiss EXP インターナル、SINC セラミックベアリング
スポーク:DTSwiss エアロライトスポーク、フロント21本/リア24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110 PSI
耐荷重:125kg
価格:フロント143,000円、リア 198,000円 (税込)
ロヴァールALPINIST CL II
リム:Alpinist CLXと共用
カラー:1色(Satin Carbon/Gloss Black)
重量:1360グラム(リムテープとバルブを含むと1375グラム)
ハブ:DT Swiss 350、DT Swissシールドカートリッジベアリング
スポーク:DT Swiss Competition Raceストレートプル、フロント21本/リア24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110 PSI
耐荷重:125kg
価格:フロント88,000円、リア 126,000円(税込)
2020年にスペシャライズドが発表したロヴァールのRAPIDEとALPINIST。51/60mmリムハイトで1,400gをマークするオールラウンドモデル"Rapide CLX"と、1,248gというブランド史上最軽量のクライミングモデル"Alpinist CLX"を筆頭に掲げたラインアップは、多くのライダーから支持を集めてきた。
実際、2020~2021シーズンにかけて、この2モデルが残してきた戦績は華々しいものがある。ワールドツアーにおいて155勝を挙げ、他のどのホイールよりも多くの実績を上げてきたという。過酷なパヴェのモニュメントや3週間を戦うグランツール、そして世界選手権など、RAPIDEとALPINISTが掴んだ栄光は「世界最速のホイール」と称するのに不足の無いものといえるだろう。
一方で、そんなレーシングホイールにも一つだけウィークポイントが存在していた。それがチューブレスタイヤ非対応という点だ。デビュー当時、ロヴァールはその理由を「チューブレスに対応するために増加する重量とチューブレスタイヤによるメリットが釣り合っていないため」としていた。
転がり抵抗の軽さや優れた耐パンク性など、様々なメリットがあるチューブレスシステムに対応しないという判断は当時大きな衝撃を与えたものの、その後の2年間でロヴァールが残した実績は否定的な声を静めるに十分なものでもあった。
とはいえ、スペシャライズドはチューブレスの可能性を諦めていたわけではなかった。それは、チューブレスタイヤをラインアップしていたことからも察せられることでもあり、また実際のところ、初代RAPIDEとALPINISTは当初チューブレスレディホイールとして開発されていたともいう。
テストホイールを破壊したサガン 更なる安全性強化のためにチューブレス対応が見送りに
前作がクリンチャーモデルとして発売された経緯には、トップスター選手であるペテル・サガンが関わっている。2019年の12月、チューブレスタイヤを装着したALPINIST CLXをテスト中、サガンはラウンドアバウトを飛び越える際に縁石にホイールをヒット。テストホイールのリムにクラックが入り、タイヤが外れてしまった。
この事件を受け、ロヴァールの開発チームがサガンの壊したホイールを検査したところ、リムベッドに入った小さな亀裂がホイール全体の破損に繋がり、タイヤの脱落に繋がったと結論づけた。ただ、チューブを入れて運用した場合には、チューブレスよりも圧力が分散されるために、損傷度合いが低くなり、同じ状況でも安全に停車できることが分かったという。
とはいえチューブレスモデルとして世に送りだすには、既存のチューブレスシステムの約2倍の耐衝撃性を持たせ、万が一リムに亀裂が入ったとしてもタイヤが外れることなく停止可能な安全性を実現するべきだと、開発チームは判断した。
しかし、この判断のもと2020シーズンでは既存のCLXシリーズを供給するという旨をサポートチームに伝えたところ、チーム側からはたとえクリンチャーであってもRAPIDEとALPINISTをレースで使いたいという要望を受けたのだという。
チームとしては、この2種のホイールとスペシャライズドのTURBOクリンチャーを組み合わせることが、軽くかつエアロ、そして安全面でも問題がない最高の組み合わせであり、最速の選択だった。彼らの強い要望に応える形で、スペシャライズドはRAPIDEとALPINISTをチューブド仕様で提供することを決めたという。
チューブレス対応のため、厳格な安全テストを実施 150種類のレイアップをテスト
そして、この2年間、クリンチャーモデルのRAPIDEとALPINISTが快進撃を続ける裏で、絶対的な安全性を確保するためのテストと開発が続けられてきた。UCIが定めた既存の40ジュール落下テストだけでなく、独自のテスト方式を開発。
ホイールに40ジュールから70ジュールのエネルギーを加えた角型と丸形の打撃材をそれぞれ落下させることで耐久性を計測。ちなみに、81kgのライダーが32km/hで高さ5cmのスチール角材に進入したときの衝撃が29ジュールであり、70ジュールともなるとハンドルから手が弾かれるレベルの衝撃だという。
このテストに対し、60ジュールで丸形材をヒットしても破損せず、70ジュールで丸形材をヒットした際に、たとえリムが破損してもそれ以上クラックを広げず、タイヤをリムに収めたまま安全に停止できることを目標として、新ホイールは開発された。
この目標を達成するため、スペシャライズドはRAPIDEとALPINIST合わせて150種類のレイアップを試行錯誤し、1000本以上のホイールを試験機で破壊したという。その結果、優れた評価を得ていたリムの断面形状自体には一切手を加えることなく重量増を最小限に抑え、安全性を高めチューブレス化を果たしたのが、第二世代のRAPIDE&ALPINISTだ。
完成された速さ RAPIDE CLX II
エアロロードホイールのRapide CLX II は、初代の優れたエアロ性能はもちろん確保したまま、チューブレスの転がり抵抗の軽さを手に入れ、世界最速のホイールの座をゆるぎないものに。
セット重量は1,505gと前作から100gほど増加しているが、チューブレスのメリットが勝る範囲と言えるのではないだろうか。おそらく2年前の時点では、より多くの重量増が避けえなかったのだろう。最高峰のエアロ性能と、転がり抵抗の軽さを実現しつつ、山岳コースにも対応するオールラウンドな1本に仕上げられている。
チューブレス化にあたってリムの外形寸法を変更し、タイヤビードに1.4mmの余裕を持たせることで作業性も向上。ライド途中でパンクしても対応しやすい設計となっている。また、新たにSINCセラミックベアリングと、最新のDTスイスEXPフリーを搭載した新型のAeroFlangeハブを採用し、回転性能の向上と軽量化を果たしている。
ALPINIST CLX II&ALPINIST CL II チューブレス化でライドをさらなる高みへ
一方で、Alpinist IIは上位モデルのCLXが1,250gと重量増は4gにとどめられ、セカンドグレードのCLに至っては1,365gと重量増加無しというスペックに。RAPIDEと同様、フックドのチューブレスリムはタイヤビードに1.4mmの余裕がある設計で、良好な作業性を実現。
CLXには新開発のLightAFハブが与えられ、前作のハブから50gの軽量化を達成し、チューブレス対応による重量増を相殺。DTスイスの新しいEXPフリーとSINCセラミックベアリングによって、スムースな回転と優れた耐久性を実現しているという。これらの努力により、前作の軽さはそのままに、チューブレスタイヤのメリットを受けることが可能となり、よりその登坂性能に磨きをかけている。
また、RAPIDEとALPINISTともにリムの耐久性が向上しているため、耐荷重の数値も更新されている。以前は109kgであった耐荷重制限が125kgにアップデート。大柄なライダーでも安心して使用できるホイールとしても進化している。
価格はRAPIDE CLX IIがフロント148,500円、リア 203,500円。ALPINIST CLX IIがフロント143,000円、リア 198,000円、ALPINIST CL IIがフロント88,000円、リア 126,000円(全て税込)。
ロヴァール RAPIDE CLX II
リム:フロント リムハイト51mm、外幅35mm/リア リムハイト60mm、外幅30mm/内幅は前後とも21mm、チューブレスレディ
カラー:2色(Satin Carbon/Gloss Black、Satin Carbon/Gloss White)
重量:1505グラム(リムテープとバルブを含むと1520グラム)
ハブ:AeroFlangeハブ、DT Swiss EXP インターナル、SINC セラミックベアリング
スポーク:DTSwiss エアロライトスポーク、フロント18本/リア24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110 PSI
耐荷重:125kg
価格:フロント148,500円、リア 203,500円 (税込)
ロヴァール ALPINIST CLX II
リム:リムハイト33mm/内幅21mm、チューブレスレディ
カラー:2色(Satin Carbon/Gloss Black、Satin Carbon/Gloss White)
重量:1250グラム(リムテープとバルブを含むと1265グラム)
ハブ:LFD ハブ、DTSwiss EXP インターナル、SINC セラミックベアリング
スポーク:DTSwiss エアロライトスポーク、フロント21本/リア24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110 PSI
耐荷重:125kg
価格:フロント143,000円、リア 198,000円 (税込)
ロヴァールALPINIST CL II
リム:Alpinist CLXと共用
カラー:1色(Satin Carbon/Gloss Black)
重量:1360グラム(リムテープとバルブを含むと1375グラム)
ハブ:DT Swiss 350、DT Swissシールドカートリッジベアリング
スポーク:DT Swiss Competition Raceストレートプル、フロント21本/リア24本
最大空気圧:26mm タイヤのチューブレス仕様で110 PSI
耐荷重:125kg
価格:フロント88,000円、リア 126,000円(税込)
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