世界最大規模の自転車ブランドであるジャイアントが新作ロードシューズ"SURGE PRO"をリリース。ブランド史上最軽量を実現したレーシングスペックのシューズをインプレッションする。



ジャイアント SURGE PRO(ガンメタル)ジャイアント SURGE PRO(ガンメタル) photo:Michinari TAKAGI
幅広いラインアップを誇るスポーツバイク以外にも、サイクルジャージやシューズなどのウェア、ライトやポンプなどのアクセサリーも手掛ける総合ブランドであるジャイアント。そのアパレルラインアップにフラッグシップシューズとなる"SURGE PRO"が追加された。

ジャイアントのシューズを特徴づけるのが、独特なデザインの"ExoBeam"テクノロジーを採用したアウトソール。中央部を細長いフィン状とすることでねじれ方向への柔軟性を持たせ、ペダリングパワーの伝達効率を最大化しつつ自然なペダリングモーションを引き出すことを目的とした設計だ。

今回の"SURGE PRO"は、そのExoBeamテクノロジーを更にブラッシュアップすることで、よりパワー伝達効率を向上させている。従来1本だった中央部のフィンを2列へと倍増させた新型デュアルビームプレートによって、より安定感のあるペダリングを実現した。

レーザーカットを使用した通気口レーザーカットを使用した通気口 photo:Gakuto Fujiwara
BOA Li2を搭載BOA Li2を搭載 photo:Gakuto Fujiwara
ダイニーマ繊維を採用した独自のワイヤーダイニーマ繊維を採用した独自のワイヤー photo:Gakuto Fujiwara
この"ExoBeam"アウトソールとならび、ジャイアントシューズの高い性能を担保するのが、"ExoWrap"テクノロジーを採用したアッパーだ。足裏の土踏まず部分から足全体を360度包み込む構造により、快適なフィット感と高いホールド力を実現。さらに、人間工学に基づいてデザインされたヒールカップ部にはサメ肌のような素材を配置することで踵の浮き上がりを防止する。

アッパーは可能な限り縫製を廃し、接着工法を採用することで軽量かつしなやかな履き心地を実現。表面にはポリウレタンコーティングが施され、シューズとしては避けられない擦れなどに対する耐久性を確保しつつ、レーザーカットによる通気口を配置することで夏場でも快適な靴内環境を実現する。

様々な工夫が施されたアッパーに、BOAのフラッグシップモデルであるLi2を搭載。空力性能に優れるコンパクトで低スタックなダイヤルデザインと、細やかかつ直感的なフィッティング性能を両立した。

パワー伝達に優れる新型デュアルビームプレートを備えた「ExoBeam」テクノロジーを採用パワー伝達に優れる新型デュアルビームプレートを備えた「ExoBeam」テクノロジーを採用 photo:Gakuto Fujiwara
踵にはズレを防ぐ鮫肌素材を採用踵にはズレを防ぐ鮫肌素材を採用 photo:Gakuto Fujiwaraアウトソールは軽量で高剛性なカーボンファイバー製アウトソールは軽量で高剛性なカーボンファイバー製 photo:Gakuto Fujiwara

インソールはHigh、Mid、Lowと3種類の高さに変更できるアーチサポートが用意され、個々人の足底形状に合わせた調整が行える。素材としては、バクテリアによる臭いの発生を抑えるTransTexturaPlusを採用する。優れた吸汗速乾性によって、シューズ内の蒸れを抑え、快適さをキープしてくれるだろう。

SURGE PROのラインアップは、ガンメタルとホワイトのレギュラーカラーと、数量限定のクロマフレアの3色展開。サイズは40~45で、41.5から44.5まではハーフサイズが用意されている。価格は41,800円(税込)。



―編集部インプレッション

ダイレクトな踏み心地でスプリントしやすいSURGE PROダイレクトな踏み心地でスプリントしやすいSURGE PRO photo:Gakuto Fujiwara
ジャイアント SURGE PROはUCIワールドチーム「バイクエクスチェンジ・ジェイコ」のサイモン・イェーツ(イギリス)など、トッププロたちが使っているフラッグシップモデルで、今回インプレッションを担当するCW編集部の高木も注目していたシューズ。

私が普段のレースやライドで履いているシューズはシマノ S-PHYRE RC9の42サイズ。モデルによって異なるが、スペシャライズドやジロ、DMTの場合では42~43サイズの範囲でサイズを選択している。今回のSURGE PROでは42サイズがちょうど良いサイズであった。

つま先と踵はワイドな印象つま先と踵はワイドな印象 photo:Gakuto Fujiwara
自分の足型は少し幅広め。幅広といっても、シディのMEGAやシマノのEサイズといった、いわゆるワイドモデルを選ぶほどではなく、ワイド気味のラストを採用するシューズブランドの通常モデルがしっくりくる。

SURGE PROは他のブランドのロードシューズと比較すると、ノーマルモデルとワイドモデルの中間に位置するようなフィット感で、どちらかというとワイドモデル寄りと感じるほどつま先部分に余裕のある造り。ヒール部もゆったりとしたサイズ感で、踵を締め付けるようなストレスはゼロ。

BOA Li2はサイドに細かく凹凸があるため操作しやすいBOA Li2はサイドに細かく凹凸があるため操作しやすい photo:Gakuto Fujiwara
クロージャーシステムには多くのブランドのハイエンドシューズに搭載されているBOA Li2が装着されている。細やかな調整を可能とするLi2ダイヤルには3種類のダイヤルデザインがあるが、サイドに細かく凹凸がある"DIAL A"を採用しており、操作感も良好だ。また、伸びが少なく軽量なダイニーマ繊維を採用したケーブルが使用されているのポイント。もちろん性能面のメリットもあるが、見た目にもオリジナリティを主張している。

ダイニーマのワイヤーはシューズ内側のアッパーに接続しており、包み込むようなフィット感を実現するダイニーマのワイヤーはシューズ内側のアッパーに接続しており、包み込むようなフィット感を実現する
更に面白いのが、クロージャ―の締め付ける方向が互い違いになっていることで、つま先のベルクロが外から内側に、つま先側のBOAダイヤルが内から外に、足首側のBOAダイヤルが外から内に、それぞれテンションを掛けるような造りとなっているのだが、この工夫が独特のフィット感に繋がっているように感じる。

アッパーの構造もユニークで、タンに見えるレイヤー(今回のシューズでは黒い部分)は土踏まずから繋がっているため、土踏まず側のアッパーは二重構造になっている。つま先側のBOAワイヤーは外側のアッパーに開けられた穴を通って内側のレイヤーへと接続されており、ダイヤルを締め込んでいくにつれて足を包み込むようなフィット感を与えてくれる。360°足を包み込むようにホールドするというExoWrapテクノロジーとは、このアッパーの構造とクロージャ―の配置によって実現されているのだろう。

高さ調整可能なアーチサポートが用意される高さ調整可能なアーチサポートが用意される photo:Gakuto Fujiwara
フィッティングに対するこだわりは付属のインソールからも窺える。低いアーチ向けのLowインソールに加え、土踏まず部のパッドを交換できるHigh/Midインソールという2枚が付属し、計3種類の高さから最適なものを選べる。今回は3種類を全て試したところ、Midのアーチサポートが最も違和感なく使用することができた。

実際に乗車してみても、このExoWrapテクノロジーの恩恵は感じられる。伸びの少ないダイニーマ繊維が高いホールド感を発揮しつつも、しなやかなアッパーがわずかに動くことで足首の動きを阻害せず、軽快かつスムーズなペダリングが可能。履いた際には広めに感じられたつま先の空間も、しっかりと指を広げて踏ん張ることが出来るため、スプリントやアタックといった高出力時に対応しやすいのも好印象。

優れたフィット感で引き足が使いやすい優れたフィット感で引き足が使いやすい photo:Gakuto Fujiwara
この剛と柔を程よくミックスすることによって高い性能を生み出すというコンセプトは、アッパーだけでなくアウトソールにも感じられる部分だ。クリート部と踵部の間に2本の梁を通したような特徴的なデザインのアウトソールが、一体どういった踏み心地になるのか。正直想像もつかなかったのだが、いざ踏んでみれば非常に自然なフィーリングに仕上がっている。

自然なフィーリングでスプリントできる剛性感に仕上がったアウトソール自然なフィーリングでスプリントできる剛性感に仕上がったアウトソール photo:Gakuto Fujiwara
ダイレクトかつパワー伝達に優れているのは間違いないのだが、超高剛性なアウトソールを採用するレーシングモデルにありがちな過剰な硬さではなく、自然に踏み切ることが出来るのだ。ペダルに力を伝えるクリート取り付けエリアには高い剛性を与える一方で、ロール方向への捻じれにはしなやかに追従することで足への負担を軽減しているのだろう。

流石、UCIワールドツアーの選手と共同開発されたシューズだけある。200kmを越えるような長距離のレースの中、勝負所で仕掛けるためにはただガチガチに硬いだけのシューズよりも、疲労を抑えつつ高いペダリング効率を誇るSURGE PROはアドバンテージになるだろう。

ガンメタルは他のウェアにも合わせやすく使い勝手も良さそうだガンメタルは他のウェアにも合わせやすく使い勝手も良さそうだ photo:Gakuto Fujiwara
まさに実戦の中で鍛えられたシューズであると改めて確認させられたが、このペダリング効率を損なわず、適度に逃がしを作ることで足への負担を抑えるという特性は、決してレーサーのためだけでなく、ロングライドを楽しむ多くのサイクリストにとっても恩恵のあるものだとも感じる。今のシューズが硬すぎる、あるいは柔らかすぎると感じている方は、ぜひ一度足を通してみてほしい。

「ExoWrap」を採用し、土踏まずのサポートをしてくれる「ExoWrap」を採用し、土踏まずのサポートをしてくれる photo:Gakuto Fujiwara


ジャイアント SURGE PRO
サイズ:40、41、41.5、42、42.5、43、43.5、44、44.5、45
カラー:ガンメタル、ホワイト、クロマフレア(数量限定)
重量:231g(サイズ:42)
価格:41,800円(税込)
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