2年連続の悪夢を回避。精鋭グループからアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が独走勝利を決め、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が第80回パリ〜ニース総合優勝に輝いた。



雨に濡れながらスタートを待つフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)雨に濡れながらスタートを待つフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
パリ〜ニース2022第8ステージパリ〜ニース2022第8ステージ photo:A.S.O.寒空ながら晴天続きのパリ〜ニースだったが、最終日はあいにくの雨。アームウォーマーやレインジャケットを着込んでスタートした89名のうち、フィニッシュラインにたどり着いたのは僅か59名のという悪条件のタフレースが繰り広げられた。

最終第8ステージは終着点ニースを発着する115.6kmに2級山岳×3つ、1級山岳×2つが詰め込まれた山岳ステージ。後半にかけて1級山岳ペイユ峠(6.6km/6.9%)と1級山岳エズ峠(6.1km/7.6%)を越え、テクニカルな下りをこなしニースに帰着するコースだ。

レースは序盤からポイント賞ジャージを着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が早速ハイペースで牽引を始めたため、逃げる選手は現れなかった。そのため既に山岳ポイントで大きくリードを得ていたヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマ・エフデジ)が山岳賞獲得を確定。総合8位につけるピエール・ラトゥール(フランス、トタルエネルジー)はメカトラにより遅れ、その後の登りでスピードの上がったプロトンに追いつくことはできなかった。

序盤からワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が集団先頭を引いた序盤からワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が集団先頭を引いた photo:CorVos
レース中盤、1級山岳ペイユ峠の登りが始まると、ログリッチから1分遅れの総合3位につけるダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)が動く。連日アシストとして好走するオマール・フライレ(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)のペースアップからマルティネスがアタックすると、この動きで連日働き通しのユンボ・ヴィズマアシスト陣が崩壊。ログリッチ、ファンアールト、Sイェーツ、ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)の5名による先鋭グループが形成された。

残り35km地点の中間スプリントをイェーツがトップ通過して-3秒を稼いだ直後にマルティネスの後輪がパンク。マルティネスは1分後方で追走する集団に合流したものの、優勝争いから脱落した。

フィニッシュまで19kmを残した1級山岳エズ峠で、キンタナのアタックを潰したイエーツが一拍を置いて自ら仕掛ける。この動きに対し、勝利した前日の疲れが残っているためか「万全の状態ではなかった」というログリッチが反応できず、アシストとして残ったファンアールトとともにマイペース走法に切り替えた。

後輪パンクの不運に見舞われたダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)後輪パンクの不運に見舞われたダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
1級山岳エズ峠でアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)1級山岳エズ峠でアタックしたサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:CorVos
ログリッチから47秒遅れの総合2位につけるイエーツが頂上を通過する頃には、キンタナが脱落した追走のログリッチとファンアールトの差は25秒まで拡大。ステージ優勝には-10秒のボーナスタイムが与えられるため、37秒差以内のフィニッシュを目指してファンアールトの牽引でログリッチが猛追する。

登りで得たリードを使いながら、テクニカルな下りをこなしたイエーツは、大会3年振りのニースにトップでたどり着いた。昨年大会で落車し、目の前で総合優勝を逃したログリッチは、ファンアールトに先導されながら9秒遅れでフィニッシュラインに到着。昨年悪夢を振り這う、フランスで初のステージレース総合優勝を決めた。

イエーツをワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が先導して追走するイエーツをワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)が先導して追走する photo:CorVos
今シーズン初勝利を挙げたサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)今シーズン初勝利を挙げたサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:CorVos
「とてもタフなステージだった。調子は良くなかったものの、僕には何でもできるワウトがいた。緊張を強いられる最後だったものの、僕たちは目標を達成することができた。総合優勝ができて嬉しいし、何よりも安心したよ」と、安堵の表情を浮かべたログリッチは喜びを語った。

そんなログリッチを焦らせ、ステージ優勝を射止めたイエーツは「総合優勝には届かないと思っていたので、今日はステージ優勝だけを狙っていた。47秒差をひっくり返すには大きなリスクのある攻撃が必要だからね。エズ峠でキンタナが良いテンポで登り、ログリッチとファンアールトとスプリントはしたくなかったので仕掛けた。どうなるか分からなかったがトライした。作戦なんてなかったよ」と笑顔で語る。今大会のイエーツは第4ステージの個人タイムトライアルで好走し、登りでも持ち前の強さを見せるなど出場予定のジロ・デ・イタリアに向けて好調を見せている。

ステージ優勝し、総合でも2位に入ったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)ステージ優勝し、総合でも2位に入ったサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:CorVos
昨年の雪辱を晴らす総合優勝を挙げたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)昨年の雪辱を晴らす総合優勝を挙げたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVosマイヨヴェールを獲得したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)マイヨヴェールを獲得したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

ログリッチの総合優勝に貢献しながら、マイヨヴェールを獲得したファンアールト。「できるだけ長くプリモシュ(ログリッチ)のそばにいるように走った。難しい瞬間もありながら、最後はフィニッシュに向かって全力で踏み込むだけだった。僕の目標であるグリーンジャージを獲得できたとともに、プリモシュが総合優勝を掴んだことに興奮しているよ」と、今年のツール・ド・フランスでポイント賞を目指すと宣言しているファンアールトは語った。

パリ〜ニース2022第7ステージ結果
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) 2:52:59
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 0:09
3位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
4位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 1:44
5位 アスビャアン・クラーウアナスン(デンマーク、チームDSM)
6位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマ・エフデジ)
7位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン)
8位 アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
9位 ワウト・プールス(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 ヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス)
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 29:19:15
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) 0:29
3位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 2:37
4位 アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 3:29
5位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) 3:43
6位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス) 3:51
7位 ヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス) 4:52
8位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 5:43
9位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) 5:48
10位 オレリアン・パレパントル(フランス、AG2Rシトロエン) 6:32
その他の特別賞
ポイント賞 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマ・エフデジ)
ヤングライダー賞 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos