強豪スプリンターが集結したエシュボルン・フランクフルトでヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が勝利。ベテラン勢を破り、自身初のWTワンデーレース制覇を遂げている。



強力メンバーを揃えるアルペシン・フェニックス強力メンバーを揃えるアルペシン・フェニックス photo:CorVos
世界選手権初日の個人タイムトライアルでフィリッポ・ガンナ(イタリア)が2年連続アルカンシエルを決めた一方、隣国ドイツでは同国で最も歴史の深いワンデーレース、エシュボルン・フランクフルト(UCIワールドツアー)が開催。5月1日から日程変更された「スプリンターの祭典」には、各チームから爆発力自慢の選手が顔を揃えた。

1チーム7人編成となる今大会には13のワールドチームと7のプロチームが参戦。コース途中に4回通過する山岳「マンモルスハイン」は距離2.3km/平均勾配7.6%とパンチ力が強めだが、最後の登坂からフィニッシュまで40km以上平坦路が続くためスプリンターによるバトルで決着するのが通例だ。

コロナ禍で中止となった昨年を挟み、2年ぶりの開催となった2021年大会には過去4度の優勝経験を持つアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)や、波に乗るヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)、クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)といった面々が参戦。9月18日に交通事故で逝去したクリスアンケル・セレンセン(デンマーク)に黙祷を捧げたのち、エシュボルンの街を出発した。

大勢の観客に見送られ、エシュボルンをスタートしていく大勢の観客に見送られ、エシュボルンをスタートしていく photo:CorVos
ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)や、女子チームに妹エマが所属するマティアス・ノルスゴー(デンマーク、モビスター)、エリック・レッセル(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング)ら5名が逃げ、平均41.7km/hで序盤の2時間を走行。メイン集団では残り100kmを切ると「登れるスプリンター」を抱えるチームが、ライバルの重量級スプリンターを振り落とすべくペースを上げていった。

その代名詞とも言えるマシューズのためにバイクエクスチェンジが登りでギアを上げ、フルーネウェーヘンはマイク・テウニッセン(オランダ)にエースの座を託して脱落。60kmを残した登坂区間で逃げグループを視界に捉えると、マシューズが自らアタックを繰り出した。

マシューズのアタックに同調したのはテウニッセンやディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)、シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)たち。45秒リードを維持したまま最後の「マンモルスハイン」をクリアした。

後半に生まれた逃げグループ中最後まで逃げたゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)後半に生まれた逃げグループ中最後まで逃げたゲオルク・ツィマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:CorVos
逃げる15名とUAEチームエミレーツが牽くメイン集団は暫く40秒差を維持していたものの、フィニッシュまで続く平坦区間に入ると状況はメイン集団有利に傾いた。タイム差をコントロールし、最後まで逃げ続けたメンバーを残り10km以内で吸収。マシューズの必勝態勢を保ち続けるバイクエクスチェンジのコントロールでフランクフルト市街地サーキットを駆け抜けた。

オーストラリアチームのペースメイクはサプライズアタックを封じこめたものの、同時にトレインを消耗させてしまった。どのチームもエーススプリンターとリードアウト役1〜2名という状況下でフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過し、勝負は絶対的なコントロールを担うチーム不在のまま、50名ほどの集団スプリントに持ち込まれた。

先行するジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)をヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)がパス先行するジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)をヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)がパス photo:CorVos
片腕を突き上げるヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)片腕を突き上げるヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
マシューズとルカ・メスゲツ(スロベニア、バイクエクスチェンジ)の連携が崩れた一方、フィリプセンはリードアウト役のアレクサンドル・クリーガー(ドイツ)に守られて2番目をキープ。ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)の踏み込みを確認し、絶妙にクリストフの進路を潰しながらフィリプセンが加速した。

デゲンコルプの背中を風除けに使い、もう一段加速したフィリプセンに敵う選手はいなかった。思うような進路を取れなかったクリストフたちを寄せ付けず、リードを保ち続けたフィリプセンが片腕を突き上げた。

乾杯するヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)たち乾杯するヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス)たち photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝を上げ、シーズン終盤戦に向けて再始動したフィリプセンが2日前のカンピエンスハップ・ファン・フラーンデレンに続く2連勝。パリ〜ルーベでマチュー・ファンデルプール(オランダ)をアシストし、その後のパリ〜ツールでエースを担う23歳がワールドツアーのワンデーレースで自身初勝利を射止めた。

エシュボルン・フランクフルト2021結果
1位 ヤスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 4:28:03
2位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)
3位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
4位 アンドレア・パスクァロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
5位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)
7位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
8位 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
9位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)
10位 フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
text:So Isobe

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