昨夜の暗闇ディナーから一夜明け、刺すような日差しが降り注ぐインドネシアの朝を迎えた。日本からマレーシア、マレーシアからインドネシア・パダンへと、1時間ずつ時差があるので、ここ2日間、私の1日は25時間あるため、ちょっと得した気分で目覚めることができた。

階段の下でアップをする鈴木謙一。暑さで汗が噴き出る階段の下でアップをする鈴木謙一。暑さで汗が噴き出る (c)Sonoko.Tanakaインドネシアの民族衣装。オープニングセレモニーを待つインドネシアの民族衣装。オープニングセレモニーを待つ (c)Sonoko.Tanaka


さて、今日から始まるツール・ド・シンカラ2010。初日は15.8kmのチームタイムトライアルだ。昨年2位の悔しさを味わった愛三工業レーシングチームが狙うのは、もう優勝しかない!

コースは海沿いの道からスタートし、街中を通ってスタートに戻る大きな周回コース。海沿いの道では海をバックに写真が撮れるかな…? なんてあたりを見回すと、朝の晴れわたった真っ青な空から一転、怪しいグレーの雲が頭の上に広がっていた。そして風がビュービュー吹いている...。

暗い雲×風の組み合わせにろくなコトはない。カメラのレインカバーを握りしめて、会場へ急いで向かうと、ポツポツと恐れていたものが降り始めた。そして瞬く間にスコールのような激しい雨に変わった。

急に降り出した南国の雨。昨年大会では雨は降らなかったと言うが……急に降り出した南国の雨。昨年大会では雨は降らなかったと言うが…… (c)Sonoko.Tanaka

雨が弱まるのを待つAZADユニバーシティチーム(イラン)雨が弱まるのを待つAZADユニバーシティチーム(イラン) (c)Sonoko.Tanaka大雨のため、オープニングセレモニーに引き続き、レースの開始時間も20分ほど遅くなった。スタート時間になっても最初のチームがスタートする気配がなく、確認したところ20分遅れとのこと。あらら……。でも、ここはインドネシア。チームはこのような事態も当然想定内だ。

強豪イラン2チームが最後のトリとなり、愛三チームの出走順は、後ろから3番目。「狙うは優勝!」というチーム。さぞかしナーバスなスタートになるのかと思いきや、スタート前になって「どういう並びで行きましょう?」そんな会話が聞こえてきた。肝心なことのようにも感じるが、話し合わなくてもチームメンバーの頭の中にはおおよその順番が決まっているのだろう。

1走はペースを作るのが上手な綾部、自分の番まで脚を回すことができ、先頭になる回数が1番少なくなる5走にはエースの鈴木をと、スムーズに順番が決まり、スタートのカウントダウンで、選手たちの表情が極限まで引き締まった。

スタート台で選手たちを見送り、ゴール地点に移動すると、一度止んだ雨が、またしても強烈に打ち付けてきた。沿道にいた観客たちが一斉に屋根の下に避難を終えた頃、見慣れたブルーの一行がゴールをめざし猛スピードで突進してくる。

雨の中を必死に走る愛三工業レーシング。残り3kmから3人で走った雨の中を必死に走る愛三工業レーシング。残り3kmから3人で走った (c)Sonoko.Tanaka

雨に濡れてゴールした愛三チームのメンバー雨に濡れてゴールした愛三チームのメンバー (c)Sonoko.Tanakaファインダー越しに、人数が減っているのがわかる。誰がいないのか視界を遮る雨で確認できなかったが、この時点のゴールタイムは残り2チームを残して暫定3位。

しばらくすると品川と綾部が遅れてゴールに戻ってきた。残り5kmで綾部が、残り3kmで品川が遅れ、3選手で残り3kmを走りきってのゴールだった。
「いまの状態でのベストは出し切れた」と話す品川。「酸欠のような症状で走っていて息苦しく、頭が真っ白になりました……」と、明らかに体調の悪そうな綾部。心配に感じたが、レース後の2人の表情は明るかった。とくに綾部は「心拍が上がりきったし、ひどい状態を過ぎたから明日からは回復しそう。今日、タイム差がついてしまった分、自分の役割がしっかりできました。明日から頑張れそうです!」と前向きなコメントを残した。

結果的に、後続2チームが上位に入り、愛三チームは5位となった。トップのタブリッズ・ペトロケミカルチーム(イラン)とのタイム差は1分6秒。

ステージ優勝を果たしたタブリッズ・ペトロケミカルチームステージ優勝を果たしたタブリッズ・ペトロケミカルチーム (c)Sonoko.Tanaka傘をさしながらの第1ステージ表彰式 傘をさしながらの第1ステージ表彰式  (c)Sonoko.Tanaka



リーダージャージを着るミズバニ・ガダール(イラン)。35才のベテラン選手リーダージャージを着るミズバニ・ガダール(イラン)。35才のベテラン選手 (c)Sonoko.Tanaka明日の午後は、どのチームも最重要視している上りゴールのステージになる。ここでこのタイム差挽回を任されているのが、エースの鈴木だ。「山では一気に順位がひっくり返る可能性は十分にある。イランが中心になってコントロールしてくるだろうけど、勝負のかかるタイミングを見逃さずに動きたいですね。今日走った感じは悪くないです」と話す。

雨のタイムトライアルをもっともいい調子で走れていたのは別府。「もっとペースを上げようと思って先頭を牽いたらみんな離れてしまった。思ったより他の選手に脚がなかったのが正直な印象です。みんながツアー・オブ・ジャパンを走っているあいだ、トレーニングしていたせいかフレッシュだし、今日も最初から余裕がありました。1分6秒は、想定していた以上に大きな差と感じています。調子がいいのはわかったので、状況によっては自分も勝負に出たいですね!」と笑顔をみせる。そして田中監督は、最後3人になりながら、5位でフィニッシュし「最低限はクリアできた」と冷静に話す。

さぁ、レースは始まったばかり。明日からイランチームを始め、強豪選手が大きく動き出すだろう。天気予報は晴れ。いよいよ灼熱の山岳が参加者の前に立ちはだかる!

プレスのランチはケンタッキー。正直辛いものだけのインドネシア料理よりホッとするプレスのランチはケンタッキー。正直辛いものだけのインドネシア料理よりホッとする (c)Sonoko.Tanaka雨の日は、小さなビニール袋を頭に被るのがインドネシア流雨の日は、小さなビニール袋を頭に被るのがインドネシア流 (c)Sonoko.Tanaka



photo&text:SonokoTANAKA