2021/01/31(日) - 15:16
ドイツの総合バイクブランド・キューブから、エアロロードとして一新された"LITENING C:68X"をインプレッション。今シーズンよりワールドツアーを戦うアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオのメインバイクとなる一台の実力に迫る。
キューブ LITENING C:68X PRO (c)Makoto AYANO/cyclowired.jp
ドイツ東部、チェコとの国境にほど近いヴァルダースーホフに拠点を置くキューブ。ロードバイクに限らず、MTBやE-BIKEといったスポーツバイク全般、更にはシティ/アーバンバイクに加え、アパレルや各種パーツ類を取り扱う一大総合ブランドとして、ドイツでは大きな存在感を放つブランドだ。
1993年創業のジャーマンブランドは、ここ数年レースシーンでも徐々にプレゼンスを高めてきた。プロコンチネンタルチームであったワンティ・グループゴベールのバイクサプライヤーとして緊密な協力体制を築き、2016年のアムステルゴールドレースにおけるエンリーコ・ガスパロット(イタリア)の勝利やワイルドカードによるツール・ド・フランスへの参戦など、着実に存在感を増してきた。
専用のエアロピラーを装備する
エアロロードらしいボリューミーなダウンチューブ
ストレートかつエアロ形状のフロントフォーク
そして、共に歩み続けたチームは今シーズンよりアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオとしてついにワールドチームへと昇格。ワールドツアーを主戦場とすることとなった選手らがメインバイクとして用いるのが、キューブのエアロロード LITENING C:68Xだ。
2019年のツール・ド・フランスでデビューしたLITENING C:68Xは、ブランド初となるエアロディスクレーサーだ。山岳向けオールラウンダーであったLITENINGのシリーズ名を受継ぎつつも、その内容を大きく転換し、現代レーシングバイクのトレンドであるエアロオールラウンダーとして生まれ変わった。
トップカバーとツライチになるトップチューブ
専用のエアロバーステムによってケーブルフル内装を実現
ダイレクトマウントのRDハンガーを採用
装着しやすさのために先端をテーパーさせたスルーアクスルを採用
ブランド初となるエアロロードとはいうものの、既にTTバイクであるAERIUMシリーズの開発において蓄積していた膨大なデータやノウハウを活用することで、LITENING C:68Xは一線級のエアロダイナミクスを獲得している。
設計及び試作段階の全工程で風洞実験を実施、そしてその結果を分析し改善するCFD解析によってLITENING C:68Xはデザインされている。ボリュームあるカムテールデザインのダウンチューブや、専用エアロピラー、空気を切り裂くような鋭い造形のシートチューブやドロップドシートステーなど、エアロロードとして寸分の隙も無い設計だ。
角ばった形状のBB周りのデザイン
シートチューブももちろんカムテール形状になっている
最先端のエアロロードとしてはスタンダードとなったケーブルフル内装にももちろん対応。専用のコックピットシステムを使用することで、ケーブルを一切露出することなく組み上げることを可能としている。可能な限り乱流の発生を抑制するため、トップチューブと一体化したようなデザインのエアロトップキャップも採用されている。
更に、ディスクブレーキの採用とそれに伴うフォーククラウン設計の最適化によって、ヘッドチューブからフォーク周辺の前方投影面積を最小限に抑えることに成功している。これらの設計により、前作から30%以上の空気抵抗削減を果たしたという。
この新型バイクにキューブが与えたのはエアロダイナミクスだけではなく、フレームを形作る素材に関しても一新されている。これまで用いられてきたC:68カーボンをベースに、繊維の方向を正確にコントロールすることでフレームの各部位に必要とされる剛性や強度、柔軟性をピンポイントに与えることを可能とした"C:68X"カーボンテクノロジーこそが、新モデルの核となっている。
シートクランプは後ろから押さえるタイプだ
ヘッドチューブはくびれた形状で前方投影面積を抑える
フォークブレードも後端をカットアウトしたカムテールデザイン
6種類のカーボンファイバーを正確無比にコントロールし作り上げられる、この新たな"C:68X"カーボンによって、LITENING C:68Xはインテグレートされたデザインと大幅な空力性能の向上を果たしつつ、重量増加を抑えながら、より快適な乗り心地と高いペダリング効率を実現したという。
工業大国ドイツらしいエンジニアリングをベースに生み出されたLITENING C:68X。今回インプレッションするのは、シマノ ULTEGRA DI2で組み上げられた”LITENING C:68X PRO”。ホイールにはキューブの展開するアクセサリーブランド"Newmen"の32mmハイトカーボンモデルであるEvolution SL R.32がセットアップされた一台だ。それでは早速インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「硬くて速い。その分スキルも求められるハイエンドレーサー」錦織大祐(フォーチュンバイク)
「硬くて速い。その分スキルも求められるハイエンドレーサー」 錦織大祐(フォーチュンバイク)
端的に言うと、速くて硬いピュアレーサーですね。とはいっても中身が詰まった重さを感じる硬さではなく、ハイエンドカーボンが構造を支えている軽快感があるので、意外に低速域からでもスムーズに伸びていってくれます。平坦メインのスピードレースにはうってつけでしょう。
こういったレーシングバイクって、得意な速度域がはっきりしているものが多いですよね。低速域では重く感じたり。一方で、このバイクはゼロスタートから40km/hを越える高速域まで気持ちよく繋がりやすい。
ただ、その分ペダリングに関してのスイートスポットは狭めで、綺麗に縦に踏むことを要求されます。回すというよりも、脚を上下にブレずに動かすようなペダリングが出来れば、とてもスムーズにスピードが乗っていくんですよ。
最近はペダリングに対して懐の深いバイクを評価する傾向が強いですが、個人的にはこういった主張が強くてコンセプトがはっきりしたバイクは好きですね。しっかりフレームと対話することで、その良さを引き出す、というのも自転車の大切な楽しみ方だと思います。
「ゼロスタートから40km/hを越える高速域までスムーズに繋がりやすい」 錦織大祐(フォーチュンバイク)
登りに関しては、ルックスからも想像できる通り得意とは言えないですね。登りもこなせる、くらいのニュアンスでしょうか。BB周辺の剛性が高く、踏んだり回したりとリズムを変えて登っていきづらい。ペダリングが限られてくると、同じ筋肉ばかりが疲労してしまうので長い登りは辛いですね。
逆に、集団で勢いに乗せて登っていくような短めの緩斜面は全然問題ないですし、例えば鈴鹿やもてぎなどで行われるサーキットエンデューロなどで不利になるようなことは無いですね。
ヘッドを中心に、フォークからダウンチューブ、BBに至るまで、がっしりと作られているので、コーナーリングでも撓みづらいですしブレーキもしっかりと受け止めてくれる。直進安定性は高いのですが、車体を切り返すようなコーナーでもステアリングに重さを感じることはありませんでした。
低速からのスピードの繋がりも良いですし、多少のアップダウンを集団でこなしつつ、スプリントで決着をつけるような高速クリテリウムからロードレースでは、ドンピシャでハマるシチュエーションも大いにありますね。
そういったシーンを考えると、意外にホイールも35~40mm程度のミドルハイトで、ある程度の空力と低速からの立ち上がりを両立するようなモデルが良いかもしれません。このシルエットなので「もう少し深いホイールが良いのだろうな」とも思いましたが、総合的な性能や具体的なシチュエーションを考えると、空力はフレームに任せてしまって、ホイールで細やかなライディングフィールを調整するのが良いと思います。
「スプリンターにベストマッチするスピード重視のレーシングバイク」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
「スプリンターにベストマッチするスピード重視のレーシングバイク」 小西真澄(ワイズロードお茶の水)
とてもソリッドで硬質な乗り味のレーシングバイクですね。尖ったエアロ形状も相まって、当たり前のようにスピードが伸びていく。平坦でスプリントした時の伸びは一級品で、多分あっさり50km/hは越えていたんじゃないかと思います。平地を主戦場とするスプリンターにとってはこの上ない武器になりそうなバイクですね。
一方、ある意味見た目通りといいますか、登りはそこまで得意ではないですね。全体の剛性が高く、トルクをかけてダンシングをした際に踏み切れないような硬さがあるので、一日中登って、下ってを繰り返すようなコースでは疲れてしまいそうですね。ただ、もっと脚力のある人であればむしろ気持ちよく登れるでしょう。
踏んだ際の剛性自体は硬いのですが、乗り心地自体はそんなに悪いというわけではありません。リアトライアングルが上手く突き上げを逃がしてくれるので、腰へのダメージはかなり抑えられていますね。とはいえ、あまり路面の悪いところよりは綺麗に整えられたコースのほうがこのバイクには向いていると思いますね。
「ドイツブランドの質実剛健さを体現したようなバイク」 小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ステアリングも直進安定性が強めなので、ヘアピンが連続するようなテクニカルなクリテリウムよりもサーキットエンデューロなどでこそ本領を発揮できるでしょう。加速への反応性、高速での伸びという武器を活かして、ラストのスプリントで勝負をかけるような展開に持ち込めれば最高ですね。
昨今のエアロロードらしく、ケーブルフル内装システムを採用していますが、ハンドルの切れ角が狭めなのは少し気になりました。もちろん走っている分には全く問題ないのですが、スタンディングスティルを良く用いる人は少し気をつけてる必要があります。
今回の試乗車ではリムハイト高めのアルミホイールがついてきたのですが、このスペックで7.8kgというのはかなり軽めだと思います。50mm程度のカーボンディープに履き替えれば、平地の伸びや掛かりは更に良くなるでしょうし、登りの重さも解消されるでしょう。
総じてハイレベルなレーサー、それもしっかりスプリントができるようなライダーにこそ乗ってみてほしいバイクですね。週末だけ走るホビーライダーではなく、どちらかと言えば毎週コンスタントにレースに出場しているような人に向いていると思います。
レーシングバイクとしてみれば、電動油圧アルテグラの完成車で65万円という価格は妥当なプライシングだと思いますね。ドイツブランドの質実剛健さを体現したようなバイクですから、脚があってそういった雰囲気に魅力を感じる方にこそ乗ってほしいですね。
キューブ LITENING C:68X PRO (c)Makoto AYANO/cyclowired.jp
キューブ LITENING C:68X PRO
フレーム:C:68X, Carbon Technology, Litening C:68X Aero, Integrated Cable Routing, Flat Mount Disc
サイズ:50、52、54、56、58、60
コンポーネント:Shimano Ultegra Di2, 11-32T, 50x34T
カラー:カーボンホワイト
ホイールセット:Newmen Evolution SL R.32
重量:7.8kg
価格:674,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
小西真澄(ワイズロードお茶の水) 小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
CWレコメンドショップページ
ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
![キューブ LITENING C:68X PRO](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/01-impre2020dec-499.jpg)
ドイツ東部、チェコとの国境にほど近いヴァルダースーホフに拠点を置くキューブ。ロードバイクに限らず、MTBやE-BIKEといったスポーツバイク全般、更にはシティ/アーバンバイクに加え、アパレルや各種パーツ類を取り扱う一大総合ブランドとして、ドイツでは大きな存在感を放つブランドだ。
1993年創業のジャーマンブランドは、ここ数年レースシーンでも徐々にプレゼンスを高めてきた。プロコンチネンタルチームであったワンティ・グループゴベールのバイクサプライヤーとして緊密な協力体制を築き、2016年のアムステルゴールドレースにおけるエンリーコ・ガスパロット(イタリア)の勝利やワイルドカードによるツール・ド・フランスへの参戦など、着実に存在感を増してきた。
![専用のエアロピラーを装備する](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/02-impre2020dec-539.jpg)
![エアロロードらしいボリューミーなダウンチューブ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/03-impre2020dec-557.jpg)
![ストレートかつエアロ形状のフロントフォーク](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/04-impre2020dec-513.jpg)
そして、共に歩み続けたチームは今シーズンよりアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオとしてついにワールドチームへと昇格。ワールドツアーを主戦場とすることとなった選手らがメインバイクとして用いるのが、キューブのエアロロード LITENING C:68Xだ。
2019年のツール・ド・フランスでデビューしたLITENING C:68Xは、ブランド初となるエアロディスクレーサーだ。山岳向けオールラウンダーであったLITENINGのシリーズ名を受継ぎつつも、その内容を大きく転換し、現代レーシングバイクのトレンドであるエアロオールラウンダーとして生まれ変わった。
![トップカバーとツライチになるトップチューブ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/05-impre2020dec-538.jpg)
![専用のエアロバーステムによってケーブルフル内装を実現](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/06-impre2020dec-502.jpg)
![ダイレクトマウントのRDハンガーを採用](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/07-impre2020dec-529.jpg)
![装着しやすさのために先端をテーパーさせたスルーアクスルを採用](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/08-impre2020dec-516.jpg)
ブランド初となるエアロロードとはいうものの、既にTTバイクであるAERIUMシリーズの開発において蓄積していた膨大なデータやノウハウを活用することで、LITENING C:68Xは一線級のエアロダイナミクスを獲得している。
設計及び試作段階の全工程で風洞実験を実施、そしてその結果を分析し改善するCFD解析によってLITENING C:68Xはデザインされている。ボリュームあるカムテールデザインのダウンチューブや、専用エアロピラー、空気を切り裂くような鋭い造形のシートチューブやドロップドシートステーなど、エアロロードとして寸分の隙も無い設計だ。
![角ばった形状のBB周りのデザイン](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/09-impre2020dec-569.jpg)
![シートチューブももちろんカムテール形状になっている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/10-impre2020dec-554.jpg)
最先端のエアロロードとしてはスタンダードとなったケーブルフル内装にももちろん対応。専用のコックピットシステムを使用することで、ケーブルを一切露出することなく組み上げることを可能としている。可能な限り乱流の発生を抑制するため、トップチューブと一体化したようなデザインのエアロトップキャップも採用されている。
更に、ディスクブレーキの採用とそれに伴うフォーククラウン設計の最適化によって、ヘッドチューブからフォーク周辺の前方投影面積を最小限に抑えることに成功している。これらの設計により、前作から30%以上の空気抵抗削減を果たしたという。
この新型バイクにキューブが与えたのはエアロダイナミクスだけではなく、フレームを形作る素材に関しても一新されている。これまで用いられてきたC:68カーボンをベースに、繊維の方向を正確にコントロールすることでフレームの各部位に必要とされる剛性や強度、柔軟性をピンポイントに与えることを可能とした"C:68X"カーボンテクノロジーこそが、新モデルの核となっている。
![シートクランプは後ろから押さえるタイプだ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/11-impre2020dec-524.jpg)
![ヘッドチューブはくびれた形状で前方投影面積を抑える](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/12-impre2020dec-547.jpg)
![フォークブレードも後端をカットアウトしたカムテールデザイン](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/13-impre2020dec-561.jpg)
6種類のカーボンファイバーを正確無比にコントロールし作り上げられる、この新たな"C:68X"カーボンによって、LITENING C:68Xはインテグレートされたデザインと大幅な空力性能の向上を果たしつつ、重量増加を抑えながら、より快適な乗り心地と高いペダリング効率を実現したという。
工業大国ドイツらしいエンジニアリングをベースに生み出されたLITENING C:68X。今回インプレッションするのは、シマノ ULTEGRA DI2で組み上げられた”LITENING C:68X PRO”。ホイールにはキューブの展開するアクセサリーブランド"Newmen"の32mmハイトカーボンモデルであるEvolution SL R.32がセットアップされた一台だ。それでは早速インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「硬くて速い。その分スキルも求められるハイエンドレーサー」錦織大祐(フォーチュンバイク)
![「硬くて速い。その分スキルも求められるハイエンドレーサー」 錦織大祐(フォーチュンバイク)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/14-impre2020dec-836.jpg)
端的に言うと、速くて硬いピュアレーサーですね。とはいっても中身が詰まった重さを感じる硬さではなく、ハイエンドカーボンが構造を支えている軽快感があるので、意外に低速域からでもスムーズに伸びていってくれます。平坦メインのスピードレースにはうってつけでしょう。
こういったレーシングバイクって、得意な速度域がはっきりしているものが多いですよね。低速域では重く感じたり。一方で、このバイクはゼロスタートから40km/hを越える高速域まで気持ちよく繋がりやすい。
ただ、その分ペダリングに関してのスイートスポットは狭めで、綺麗に縦に踏むことを要求されます。回すというよりも、脚を上下にブレずに動かすようなペダリングが出来れば、とてもスムーズにスピードが乗っていくんですよ。
最近はペダリングに対して懐の深いバイクを評価する傾向が強いですが、個人的にはこういった主張が強くてコンセプトがはっきりしたバイクは好きですね。しっかりフレームと対話することで、その良さを引き出す、というのも自転車の大切な楽しみ方だと思います。
![「ゼロスタートから40km/hを越える高速域までスムーズに繋がりやすい」 錦織大祐(フォーチュンバイク)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/15-impre2020dec-828.jpg)
登りに関しては、ルックスからも想像できる通り得意とは言えないですね。登りもこなせる、くらいのニュアンスでしょうか。BB周辺の剛性が高く、踏んだり回したりとリズムを変えて登っていきづらい。ペダリングが限られてくると、同じ筋肉ばかりが疲労してしまうので長い登りは辛いですね。
逆に、集団で勢いに乗せて登っていくような短めの緩斜面は全然問題ないですし、例えば鈴鹿やもてぎなどで行われるサーキットエンデューロなどで不利になるようなことは無いですね。
ヘッドを中心に、フォークからダウンチューブ、BBに至るまで、がっしりと作られているので、コーナーリングでも撓みづらいですしブレーキもしっかりと受け止めてくれる。直進安定性は高いのですが、車体を切り返すようなコーナーでもステアリングに重さを感じることはありませんでした。
低速からのスピードの繋がりも良いですし、多少のアップダウンを集団でこなしつつ、スプリントで決着をつけるような高速クリテリウムからロードレースでは、ドンピシャでハマるシチュエーションも大いにありますね。
そういったシーンを考えると、意外にホイールも35~40mm程度のミドルハイトで、ある程度の空力と低速からの立ち上がりを両立するようなモデルが良いかもしれません。このシルエットなので「もう少し深いホイールが良いのだろうな」とも思いましたが、総合的な性能や具体的なシチュエーションを考えると、空力はフレームに任せてしまって、ホイールで細やかなライディングフィールを調整するのが良いと思います。
「スプリンターにベストマッチするスピード重視のレーシングバイク」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
![「スプリンターにベストマッチするスピード重視のレーシングバイク」 小西真澄(ワイズロードお茶の水)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/16-impre2020dec-812.jpg)
とてもソリッドで硬質な乗り味のレーシングバイクですね。尖ったエアロ形状も相まって、当たり前のようにスピードが伸びていく。平坦でスプリントした時の伸びは一級品で、多分あっさり50km/hは越えていたんじゃないかと思います。平地を主戦場とするスプリンターにとってはこの上ない武器になりそうなバイクですね。
一方、ある意味見た目通りといいますか、登りはそこまで得意ではないですね。全体の剛性が高く、トルクをかけてダンシングをした際に踏み切れないような硬さがあるので、一日中登って、下ってを繰り返すようなコースでは疲れてしまいそうですね。ただ、もっと脚力のある人であればむしろ気持ちよく登れるでしょう。
踏んだ際の剛性自体は硬いのですが、乗り心地自体はそんなに悪いというわけではありません。リアトライアングルが上手く突き上げを逃がしてくれるので、腰へのダメージはかなり抑えられていますね。とはいえ、あまり路面の悪いところよりは綺麗に整えられたコースのほうがこのバイクには向いていると思いますね。
![「ドイツブランドの質実剛健さを体現したようなバイク」 小西真澄(ワイズロードお茶の水)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/17-impre2020dec-821.jpg)
ステアリングも直進安定性が強めなので、ヘアピンが連続するようなテクニカルなクリテリウムよりもサーキットエンデューロなどでこそ本領を発揮できるでしょう。加速への反応性、高速での伸びという武器を活かして、ラストのスプリントで勝負をかけるような展開に持ち込めれば最高ですね。
昨今のエアロロードらしく、ケーブルフル内装システムを採用していますが、ハンドルの切れ角が狭めなのは少し気になりました。もちろん走っている分には全く問題ないのですが、スタンディングスティルを良く用いる人は少し気をつけてる必要があります。
今回の試乗車ではリムハイト高めのアルミホイールがついてきたのですが、このスペックで7.8kgというのはかなり軽めだと思います。50mm程度のカーボンディープに履き替えれば、平地の伸びや掛かりは更に良くなるでしょうし、登りの重さも解消されるでしょう。
総じてハイレベルなレーサー、それもしっかりスプリントができるようなライダーにこそ乗ってみてほしいバイクですね。週末だけ走るホビーライダーではなく、どちらかと言えば毎週コンスタントにレースに出場しているような人に向いていると思います。
レーシングバイクとしてみれば、電動油圧アルテグラの完成車で65万円という価格は妥当なプライシングだと思いますね。ドイツブランドの質実剛健さを体現したようなバイクですから、脚があってそういった雰囲気に魅力を感じる方にこそ乗ってほしいですね。
![キューブ LITENING C:68X PRO](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/25/18-impre2020dec-549.jpg)
キューブ LITENING C:68X PRO
フレーム:C:68X, Carbon Technology, Litening C:68X Aero, Integrated Cable Routing, Flat Mount Disc
サイズ:50、52、54、56、58、60
コンポーネント:Shimano Ultegra Di2, 11-32T, 50x34T
カラー:カーボンホワイト
ホイールセット:Newmen Evolution SL R.32
重量:7.8kg
価格:674,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
![錦織大祐(フォーチュンバイク)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/05/25/impre2016_5-532.jpg)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
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フォーチュンバイク HP
![小西真澄(ワイズロードお茶の水)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/07/19-impre2020dec-673.jpg)
ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。
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ワイズロードお茶の水HP
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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