マイヨロホ争いに加えてブエルタ・ア・エスパーニャを盛り上げるのが3賞ジャージの争い。ポイント賞の「プントス」、山岳賞「モンターニャ」、そして2019年に新たに加わったヤングライダー賞「ビアンコ」の仕組みと有力候補を紹介します。



マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)

2019年、ポイント賞を獲得したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)2019年、ポイント賞を獲得したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsuji
プントスはスペイン語でポイントの意味。主にスプリンターを対象にしたポイント賞ジャージだ。ステージ上位15名と、中間スプリントポイント上位3名に与えられるポイントの積算により争われる。2009年にジャージカラーがツール・ド・フランスと同じグリーンに変更。ジャージスポンサーは2015年からツールのマイヨヴェールと同じ「シュコダ」が務めている。

獲得ポイントはステージ1位で25ポイント、2位20ポイント、3位16ポイント・・・15位1ポイント。中間スプリントポイントでは1位4ポイント、2位2ポイント、3位1ポイント。ツールとは異なり、平坦ステージでも山岳ステージでも一律同ポイントが与えられる。そのためスプリンターだけではなく、総合上位のオールラウンダーもポイント賞ランキングの上位に名を連ねるのが特徴。さらに、とにかく山がちなブエルタに設定された平坦ステージは3つもしくは4つしかない。そのためピュアスプリンターがマイヨプントスを獲得するためには毎日中間スプリントでポイントを稼ぐ走りが求められる。

「スプリンターの世界選手権」シャンゼリゼを制したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)「スプリンターの世界選手権」シャンゼリゼを制したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
フランスで緑色ジャージを獲得した男がスペインでも緑色ジャージを狙う。ツール最終日のパリ・シャンゼリゼでステージ2勝目を飾り、文句なしの走りでマイヨヴェールを獲得したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が2年連続でブエルタに出場する。初出場となった2019年大会ではステージ2勝を飾るとともにステージ2位を4回マーク。総合上位陣がひしめくポイント賞ランキングにおいて、スプリンターの中では断トツトップの3位という成績を収めた。

ベネットの元チームメイトで、今季ティレーノ〜アドリアティコで開幕2連勝を飾ったパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)も出場する。アッカーマンにとってこれが今季グランツール初戦。ベネットのドゥクーニンク・クイックステップとアッカーマンのボーラ・ハンスグローエがフィニッシュ手前で熾烈なリードアウト対決を繰り広げることになりそうだ。

最高75.2km/hで踏み込んだパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利最高75.2km/hで踏み込んだパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利 photo:CorVos
ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)やマッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)、マグナス・コルトニールセン(デンマーク、EFプロサイクリング)、ジョン・アベラストゥリ(スペイン、カハルーラル)らがこの二強に割って入ると見られる。
ブエルタ歴代ポイント賞獲得者
2019年 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
2018年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2017年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2016年 ファビオ・フェリーネ(イタリア)
2015年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2014年 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)
2013年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2012年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2011年 バウク・モレマ(オランダ)
2010年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2009年 アンドレ・グライペル(ドイツ)
2008年 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)
2007年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2006年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2005年  アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2004年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2003年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2002年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2001年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 フランク・ファンデンブロック(ベルギー)
1998年 ファブリツィオ・グイディ(イタリア)
1997年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1996年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1991年 ウーヴェ・ラーブ(ドイツ)
1990年 ウーヴェ・ラーブ(ドイツ)


マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)

2019年、山岳賞を獲得したジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール)2019年、山岳賞を獲得したジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji
モンターニャはスペイン語でマウンテンの意味。山岳の頂上通過順位に基づいて与えられるポイントの積算で争われる。ジャージデザインは青い水玉模様で、ジャージスポンサーは国営宝くじの「ロテリアス・イ・アプエスタス・デル・エスタド」。

これまで多くの山岳スペシャリストを輩出してきたクライマー大国スペイン。今年で開催75回目を迎えるブエルタで、実に49回にわたってスペイン人選手が山岳賞を獲得している。そのうち23回はスペイン人選手が山岳賞ランキングのトップスリーを独占した。

獲得ポイントは「シーマ・アルベルトフェルナンデス」に指定された第6ステージの超級山岳トゥールマレー峠先頭通過で20ポイント。 超級山岳先頭通過で15ポイント。以下、1級山岳先頭通過で10ポイント、2級山岳5ポイント、3級山岳3ポイント。

山岳賞争いは本命の総合争いの展開に左右されるため候補をズバリ言い当てにくい。どれだけ山岳に強いクライマーでも、チーム内に総合狙いのオールラウンダーがいる場合は自由な動きが許されない。ポイント賞同様、狙わずとも総合上位の選手の名前が山岳賞上位に並ぶ可能性が高い。

山岳賞ジャージのアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)がステージ優勝山岳賞ジャージのアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)がステージ優勝 photo:CorVos
2019年は第2ステージで山岳賞トップに立ったアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)が2週間にわたってマイヨモンターニャを着用したが、第16ステージで上位に絡んだジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール)が最終的に山岳賞を獲得している。現在ジロに出場中のブシャールがいない隙に、マドラソが前年度のリベンジを果たしたいと願っているはず。アージェードゥーゼールはツール山岳賞9位のナンズ・ピーターズ(フランス)や2016年山岳賞6位のアレクサンドル・ジェニエス(フランス)らが今年も山岳賞ランキング上位に絡んでくるだろう。

絶対的総合エースのいないケニー・エリッソンド(フランス、トレック・セガフレード)やシモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)らも、ステージ優勝を狙って逃げるうちに山岳ポイントを獲得することになるだろう。
ブエルタ歴代山岳賞獲得者
2019年 ジョフリー・ブシャール(フランス)
2018年 トーマス・デヘント(ベルギー)
2017年 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)
2016年 オマール・フライレ(スペイン)
2015年 オマール・フライレ(スペイン)
2014年 ルイスレオン・サンチェス(スペイン)
2013年 ニコラ・エデ(フランス)
2012年 サイモン・クラーク(オーストラリア)
2011年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2010年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2009年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2008年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 エゴイ・マルティネス(スペイン)
2005年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2004年 フェリックス・カルデナス(コロンビア)
2003年 フェリックス・カルデナス(コロンビア)
2002年 アイトール・オサ(スペイン)
2001年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
2000年 カルロス・サストレ(スペイン)
1999年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
1998年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
1997年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
1996年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 リュク・ルブラン(フランス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 カルロス・エルナンデス(スペイン)
1991年 ルイス・エレラ(コロンビア)
1990年 マルティン・ファルファン(コロンビア)


マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)

2019年、総合3位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がヤングライダー賞を獲得2019年、総合3位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がヤングライダー賞を獲得 photo:Kei Tsuji
長年グランツールの中で唯一ブエルタだけがコンビナーダ賞(複合賞)を採用してきたが、2019年、ついにジロとツールと同様ヤングライダー賞(新人賞)が新たに登場。ヤングライダー賞がコンビナーダ賞に取って代わる形となった。ジャージはコンビナーダ賞と同じ真っ白なデザインで、ジャージスポンサーは「フェニエ・エネルジア社」。実は2017年からヤングライダー賞は存在していたが、ジャージは設定されていなかった。

いわば将来のマイヨロホ候補が着用することになる若手の総合リーダージャージ。対象となるのは1995年1月1日以降に誕生した選手で、176名のうち59名がヤングライダー賞の対象となる。

アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) photo:CorVos
マイヨロホ候補でもあり、2018年ブエルタ総合2位、そしてツール総合5位のエンリク・マス(スペイン、モビスター)は戦歴を見る限り最もマイヨブランコに近い存在。次世代のスペインを背負って立つオールラウンダーは「師匠」アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)の教えを請う。

ジロを第2ステージでリタイアしたアレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン、アスタナ)はスペインの地で輝くことができるか。もちろん総合エースのアシストが最優先だが、ダニエル・マルティネス(EFプロサイクリング)やイバン・ソーサ(イネオス・グレナディアーズ)、サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・マクラーレン)といったコロンビアの若者たちにも注目したい。
ブエルタ歴代ヤングライダー賞獲得者
2019年 タデイ・ポガチャル(スロベニア)
2018年 エンリク・マス(スペイン)
2017年 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)
text:Kei Tsuji

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