レースだけど、レースだけじゃない。東海シクロクロスのiRCカップには、初参加でも溶け込める「あたたかさ」がある。そんな安心感と温度のあるホスピタリティが、会場の良い空気をつくっている。9年目を迎えたiRCカップを、現地で取材してきた。
今シーズンもiRCカップに行ってきた。iRC TIREの井上ゴム工業が冠スポンサーを務め、東海シクロクロスシリーズの中でもすっかりお馴染みとなった一戦で、2016年に始まった大会は今年で9回目を迎えた。

インフルエンサーの今田イマオさんとYUKARIさんがシクロクロスに初挑戦! photo:So Isobe 
前日土曜日にはキッズやビギナー、ステップアップを目指したい人向けの講習会を開催。東海シクロクロスのオーガナイザーを務める蜂須賀智也さんが講師に photo:So Isobe

蜂須賀さんが繰り返していたのは「コースウォークをすること」。これ、見過ごされがちだけど、とっても大事ですよね! photo:So Isobe

家族と仲間と。良い感じです photo:So Isobe 
蜂須賀さんの息子さんで、ジュニアのトップ選手である巧真さんがお手本のバニーホップ photo:So Isobe

応援(と飛び入り講師)に筧五郎さんが乱入。太鼓は五郎さんお馴染みのスタイル photo:So Isobe 
あれ、バイクの持ち方、結構サマになってますね! photo:So Isobe
毎年のことながら、会場に着いてまず感じるのは、肩肘張らずに過ごせる雰囲気だ。iRCを初め、今ではすっかり名古屋の有名喫茶店になったBUCYO COFFEE、そしてMC由紀夫さんのマイクパフォーマンス。おなじみのセットが揃うと、一気に「東海シクロクロスにやってきたぞ!」という感じになる。初めて訪れる人でもウェルカムな安心感と、どことなくローカルでいい空気感が東海シクロクロスには流れている。
東海シクロクロスのルーツは、前身となる「平田シクロクロス」にある。そこからAJOCC公認レースとなり、シリーズとして歩み始めて10年。関西や関東、信州の各シリーズとも異なる、東海地方ならではの仲間意識が年月をかけてこの空気感を作り上げてきた。どこか地域のお祭り的な親密さがあるのは、その積み重ねゆえだろう。
iRCや、シクロクロスバイクでお馴染みの「ギザロ」を発売するフカヤなど、地元の自転車関連企業が東海シクロクロス各戦の冠スポンサーを務めることからも分かるとおり、「自分たちで自転車文化を盛り上げよう」という意識が、自然と大会の隅々にまで行き渡っているように感じる。

会場にはIRCタイヤの首脳陣も。「皆さんが楽しそうで何よりです」とのお言葉(ありがたいですね!) photo:So Isobe 
東海クロスといえばBUCYO COFFEE。今回はiRCのふるまいでお昼ご飯+ドリンクが無料です(!) photo:So Isobe

朝一番のキッズ+女子ビギナーレースがスタート photo:So Isobe

初レースに挑んだYUKARIさん。「めっちゃ怖かったけど、今日はほとんど乗っていけて楽しかったです!」とのこと。詳しくはグラベルハックで photo:So Isobe 
レースを楽しむ今田イマオさん。最後はパンクさせてしまったようで残念..! photo:So Isobe
今回のiRCカップの舞台となったのは、これまで通り初心者・入門者向けのMTBパークとして知られる「東郷ケッターパーク」。東海シクロクロスのオーガナイザーを務めるハッチこと蜂須賀智也さん自身が作り上げた林間コースはコンパクトで、実際に走ってみると想像以上にテクニカルだ。木々の間を縫うように続くシングルトラックはアップダウンが続き、ライン取りでリズムが大きく変わるコーナーの連続。スピードだけではどうにもならず、「自転車を操る」というシクロクロスの本質が問われるものだ。
MTBコースと聞くと、シクロクロスにはちょっと過激では??と思われるものの、ここはビギナーウェルカムの東海クロスらしいコース設定。ロックセクションは皆無で、怖さが先に立つようなセクションは抑えられていて、初めての参加者でももう一周走りたくなる絶妙なバランス感。テクニック自慢の選手なら有利にレースを走れるし、レースでありながら、体験としての楽しさを大切にしているように感じる。

緩やかな林間に作られた東郷ケッターパーク。テクニカルで面白いコース設定 photo:So Isobe

会場は蜂須賀智也さん自身が作り上げた「東郷ケッターパーク」 photo:So Isobe 
この地が長篠の戦いの舞台となったことを示す「家康本陣地」の石碑 photo:So Isobe
前日土曜日には蜂須賀さんが講師を務めるビギナー&キッズ対象のキッズスクールが行われ、今回レースを初めて走る人や走り方が分からないという人でも安全にレースを楽しめるようなサポート体制が用意されている。これもiRCの「みんなに安全に、楽しくレースを走ってもらいたい」という思いから毎年開催されているものだ。
それに何より、iRCカップを語る上で欠かせないのが、タイヤメーカーがフルサポートするからこその安心感だ。会場には巨大なiRCテントが立ち並び、空気圧の相談からタイヤトラブルの対応まで、「困ったらとりあえずここに来れば何とかなる」という拠点として機能している。iRCカップならではの特典としてBUCYO COFFEEのランチが振る舞われるなど、ホスピタリティの厚さは他のレースと一線を画しているのだ。

iRCテントでは瀬古遥加さんによる講習会も。かつてはBMXで日本を代表して走っていた凄い人です photo:So Isobe

iRCテントではタイヤトラブル対応。タイヤメーカー主催の大会だけに大きな安心感 photo:So Isobe 
iRCサポートのBMXライダー、丹野夏波と籔田寿衣さんも参戦 photo:So Isobe

国内シクロクロスのムーブメントを支え、今も進化するiRCのSERACシリーズ photo:So Isobe 
リドレーもブース出展。トレンド全部盛りのグラベルバイク、ASTR RSが自慢です photo:So Isobe
実際に会場では「こんなに雰囲気のいい大会、なかなかないですよね」「参加するだけでお得な気分になる」「関東から初めて来たけど、すごく居心地がいい」という声を何度も耳にした。競技レベルや地域を越えて、人が集まり、また来たいと思わせる力が、確かにここにはある。
実際、各カテゴリーでは熱いレースが繰り広げられた。男子の最高峰カテゴリーであるME1では、蜂須賀さんの息子さんで、ジュニアでJCF強化指定選手にも選ばれている蜂須賀巧真(BUCYO COFFEE/Urban Deer Cycling Team)が40分限りのオープン参加ながらぶっちぎりでフィニッシュ。
蜂須賀がレースから降りたあとは、翌週の全日本選手権のシングルスピード部門で2位に入ることとなる三宗広歩(TEAM TAMAGAWA)が「本当はもう少し重いギアでも良かったかもしれない」と語りつつ、他選手を引き離して勝利した。1+2カテゴリー混走の女子レースでは、WE2に出場したBMXレーシングのトップ選手である丹野夏波と籔田寿衣(ともにIRC TIRE)が流石の脚とテクニックでWE1勢を全員抜き去ってワンツーフィニッシュをメイク。マスターズでも東海クロスといえば!の筧兄弟がぶっちぎりワンツー勝利で会場を沸かせたのだった。

WE1+2の先頭争い。バチバチです photo:So Isobe

流石のテクニックで独走優勝した丹野夏波(iRC TIRE)さん photo:So Isobe 
この日も筧五郎さんの太鼓が鳴り響きます(あれ、この後レースでは...??) photo:So Isobe

丹野夏波さんと籔田寿衣さん(ともにIRC TIRE)はWE2でワンツーフィニッシュ photo:So Isobe 
WE1優勝は関谷加津子さん(SHIDO-WORKS)。一緒に関東から遠征してきた仲間と📸 photo:So Isobe
なぜiRCはここまで深くレースに関わるのか。その答えは、とてもシンプルで、そして誠実だった。タイヤ開発に深く関わり、お馴染みのSERAC(シラク)シリーズを生み出した山田浩志さんから返ってきた答えは「東海のユーザーさんに、ウチは育ててもらったと思っているんです。だから、恩返しがしたい」というもの。
iRCカップの始まりは2016年。iRC創設90周年の節目に、第1回大会が開催された。「イベントをやるから参加してください、という一方的なものにはしたくなかった。参加した人に“参加してよかった”と思ってもらえる大会にしたかったんです」。その思いは、9年が経った今も変わらない。むしろ、東海クロスのオーガナイザーやBUCYO COFFEEをはじめ、多くの人の支えによって、より強く、太くなっている。

最高峰のME1がスタート。勢いが違います photo:So Isobe

最後尾から一瞬で先頭に立ち、そのままフィニッシュした(ジュニア選手なので40分限りのオープン参加)蜂須賀巧真(BUCYO COFFEE/Urban Deer Cycling Team) photo:So Isobe 
ME1を走るかつての全日本王者、大原満さん。上手い人って走りに無駄がないんです photo:So Isobe

ME1表彰式。優勝はシングルスピードで走った三宗広歩(TEAM TAMAGAWA) photo:So Isobe
「正直、やってて良かったなあって思います。来年はiRCが創設100周年で、iRCカップも10周年。自分たちだけじゃ絶対にできない。関わってくれている皆さんに、ただただ感謝ですね」。
東海シクロクロスが持つあたたかさは、偶然生まれたものではない。レースを続け、支え、育ててきた人たちの思いが、コースや会場の空気に染み込んでいる。その一端を、iRCカップは確かに担っている。レースだからもちろん成績はつくけれど、勝ち負けだけではない。速さだけでもない。自転車に乗る楽しさとや、集うことの喜びをまっすぐに感じられる場所。関西からも関東からも訪れやすい、ウェルカムで、なんだかとっても居心地のいいレース。iRCカップは、今年も変わらず、そんなレースだった。

蜂須賀巧真(BUCYO COFFEE/Urban Deer Cycling Team)と家族、仲間たち photo:So Isobe 
レースが終わった後も、広場で自転車鬼ごっこ。こういう雰囲気、とっても良い photo:So Isobe

どこかローカルでいつもウェルカム。東海クロス特有の雰囲気が心地良いのです photo:So Isobe
text:So Isobe
今シーズンもiRCカップに行ってきた。iRC TIREの井上ゴム工業が冠スポンサーを務め、東海シクロクロスシリーズの中でもすっかりお馴染みとなった一戦で、2016年に始まった大会は今年で9回目を迎えた。







毎年のことながら、会場に着いてまず感じるのは、肩肘張らずに過ごせる雰囲気だ。iRCを初め、今ではすっかり名古屋の有名喫茶店になったBUCYO COFFEE、そしてMC由紀夫さんのマイクパフォーマンス。おなじみのセットが揃うと、一気に「東海シクロクロスにやってきたぞ!」という感じになる。初めて訪れる人でもウェルカムな安心感と、どことなくローカルでいい空気感が東海シクロクロスには流れている。
東海シクロクロスのルーツは、前身となる「平田シクロクロス」にある。そこからAJOCC公認レースとなり、シリーズとして歩み始めて10年。関西や関東、信州の各シリーズとも異なる、東海地方ならではの仲間意識が年月をかけてこの空気感を作り上げてきた。どこか地域のお祭り的な親密さがあるのは、その積み重ねゆえだろう。
iRCや、シクロクロスバイクでお馴染みの「ギザロ」を発売するフカヤなど、地元の自転車関連企業が東海シクロクロス各戦の冠スポンサーを務めることからも分かるとおり、「自分たちで自転車文化を盛り上げよう」という意識が、自然と大会の隅々にまで行き渡っているように感じる。





今回のiRCカップの舞台となったのは、これまで通り初心者・入門者向けのMTBパークとして知られる「東郷ケッターパーク」。東海シクロクロスのオーガナイザーを務めるハッチこと蜂須賀智也さん自身が作り上げた林間コースはコンパクトで、実際に走ってみると想像以上にテクニカルだ。木々の間を縫うように続くシングルトラックはアップダウンが続き、ライン取りでリズムが大きく変わるコーナーの連続。スピードだけではどうにもならず、「自転車を操る」というシクロクロスの本質が問われるものだ。
MTBコースと聞くと、シクロクロスにはちょっと過激では??と思われるものの、ここはビギナーウェルカムの東海クロスらしいコース設定。ロックセクションは皆無で、怖さが先に立つようなセクションは抑えられていて、初めての参加者でももう一周走りたくなる絶妙なバランス感。テクニック自慢の選手なら有利にレースを走れるし、レースでありながら、体験としての楽しさを大切にしているように感じる。



前日土曜日には蜂須賀さんが講師を務めるビギナー&キッズ対象のキッズスクールが行われ、今回レースを初めて走る人や走り方が分からないという人でも安全にレースを楽しめるようなサポート体制が用意されている。これもiRCの「みんなに安全に、楽しくレースを走ってもらいたい」という思いから毎年開催されているものだ。
それに何より、iRCカップを語る上で欠かせないのが、タイヤメーカーがフルサポートするからこその安心感だ。会場には巨大なiRCテントが立ち並び、空気圧の相談からタイヤトラブルの対応まで、「困ったらとりあえずここに来れば何とかなる」という拠点として機能している。iRCカップならではの特典としてBUCYO COFFEEのランチが振る舞われるなど、ホスピタリティの厚さは他のレースと一線を画しているのだ。





実際に会場では「こんなに雰囲気のいい大会、なかなかないですよね」「参加するだけでお得な気分になる」「関東から初めて来たけど、すごく居心地がいい」という声を何度も耳にした。競技レベルや地域を越えて、人が集まり、また来たいと思わせる力が、確かにここにはある。
実際、各カテゴリーでは熱いレースが繰り広げられた。男子の最高峰カテゴリーであるME1では、蜂須賀さんの息子さんで、ジュニアでJCF強化指定選手にも選ばれている蜂須賀巧真(BUCYO COFFEE/Urban Deer Cycling Team)が40分限りのオープン参加ながらぶっちぎりでフィニッシュ。
蜂須賀がレースから降りたあとは、翌週の全日本選手権のシングルスピード部門で2位に入ることとなる三宗広歩(TEAM TAMAGAWA)が「本当はもう少し重いギアでも良かったかもしれない」と語りつつ、他選手を引き離して勝利した。1+2カテゴリー混走の女子レースでは、WE2に出場したBMXレーシングのトップ選手である丹野夏波と籔田寿衣(ともにIRC TIRE)が流石の脚とテクニックでWE1勢を全員抜き去ってワンツーフィニッシュをメイク。マスターズでも東海クロスといえば!の筧兄弟がぶっちぎりワンツー勝利で会場を沸かせたのだった。





なぜiRCはここまで深くレースに関わるのか。その答えは、とてもシンプルで、そして誠実だった。タイヤ開発に深く関わり、お馴染みのSERAC(シラク)シリーズを生み出した山田浩志さんから返ってきた答えは「東海のユーザーさんに、ウチは育ててもらったと思っているんです。だから、恩返しがしたい」というもの。
iRCカップの始まりは2016年。iRC創設90周年の節目に、第1回大会が開催された。「イベントをやるから参加してください、という一方的なものにはしたくなかった。参加した人に“参加してよかった”と思ってもらえる大会にしたかったんです」。その思いは、9年が経った今も変わらない。むしろ、東海クロスのオーガナイザーやBUCYO COFFEEをはじめ、多くの人の支えによって、より強く、太くなっている。




「正直、やってて良かったなあって思います。来年はiRCが創設100周年で、iRCカップも10周年。自分たちだけじゃ絶対にできない。関わってくれている皆さんに、ただただ感謝ですね」。
東海シクロクロスが持つあたたかさは、偶然生まれたものではない。レースを続け、支え、育ててきた人たちの思いが、コースや会場の空気に染み込んでいる。その一端を、iRCカップは確かに担っている。レースだからもちろん成績はつくけれど、勝ち負けだけではない。速さだけでもない。自転車に乗る楽しさとや、集うことの喜びをまっすぐに感じられる場所。関西からも関東からも訪れやすい、ウェルカムで、なんだかとっても居心地のいいレース。iRCカップは、今年も変わらず、そんなレースだった。



text:So Isobe
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