マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)の今季初対決となったUCIシクロクロスW杯第5戦は、世界王者ファンデルプールが独走勝利。女子はルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック)がW杯4連勝を決めた。



UCIシクロクロスワールドカップ第5戦の舞台となったのは、ベルギー第2の都市であるアントワープ。例年のコースが改修され、マイナーチェンジが施されたものの、コース最大の特徴であるそれぞれ約100mの2つのサンドセクションは健在。曇り空のなか、各カテゴリーのレースが行われていった。

男子エリート:世界王者ファンデルプールが圧巻の独走

2周目から先頭に立ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

その中でも最大の注目を集めたのは男子エリート。現世界王者マチュー・ファンデルプールが1週間前の第4戦でシーズン初戦を勝利で飾り、そこに最大のライバルであるワウト・ファンアールトが今季初戦として加わったことで、両者の“今季初対決”が実現したからだ。ファンアールトはチーム合宿を経て、ファンデルプールよりも1週間遅いシーズンデビューとなった。

また日本からは全日本選手権で4連覇を達成した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)をはじめ、オランダを拠点とするウォータスレイ所属の梶鉄輝と遠藤紘介、岡山優太の計4名が世界の強豪たちに挑んだ。

ファンデルプールとファンアールトは共に3列目からのスタートとなり、1周目は集団落車などもありながら、ローレンス・スウェーク(ベルギー)などクレラン・コレンドンの選手たちが先頭でパックを形成。しかしアルカンシエルを着用するファンデルプールが徐々に番手を上げていき、先頭に立つとそのまま独走態勢を築く。「いくつかのミスを冒してしまった」とレース後に語り、一度は後続に追いつかれたファンデルプールだったが、2周目以降は加速を繰り返し、再び独走に持ち込んだ。

7位も前向きなコメントを残したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

一方、追走集団ではファンアールトが「表彰台のチャンスはあったように見えたが、パンクで後退してしまった」と語る通り後退。スウェークが2位集団から抜け出したが、世界王者にふさわしい堂々の走りをするファンデルプールに追いつくには至らなかった。

そしてファンデルプールが8周回となったレースを1時間1分24秒でフィニッシュ。スウェークは24秒遅れの2位、3位はエミエル・フェルストリンゲ(ベルギー、クレラン・コレンドン)。「脚の状態は良いレベルにある。テクニカル面ではまだやるべきことがあり、今後数週間で改善したい」と語るファンアールトは51秒遅れの7位だった。

「良いレースだったが、砂区間で僕が最速だったとは思わない。いくつかミスを冒してしまったからね。だけど脚のコンディションは先週よりも大分良くなっている。再び勝つことができて嬉しいよ」と、勝者インタビューで答えたファンデルプール。これでシーズンデビューから2戦2勝。2024年1月21日に優勝を逃してから、連勝記録を13連勝に伸ばした。

1週間前に続き、シーズンインから2連勝したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:UCI

世界王者の力を示したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:UCI

日本勢最高位は81位の遠藤で、5列目でスタートした織田はメカニカルトラブルに見舞われ、1周半で無念のリタイア。「煮えきらない初戦になってしまいましたが、調子は悪くないと思うので3日後のZolder(W杯6戦)に備えます!」と自身のブログに綴っている。



女子エリート:ブラントがアルバラードを退けW杯4連勝

序盤で積極的な走りが光ったインへ・ファンデルヘイデン(オランダ、クレラン・コレンドン) photo:CorVos

世界選手権で3連覇中だったフェム・ファンエンペル(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が無期限の休養を発表した女子エリート。優勝したのは、36歳のベテランであるルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック)だった。

序盤は今季の欧州王者であるインへ・ファンデルヘイデン(オランダ、クレラン・コレンドン)とアニック・ファンアルフェン(オランダ、セブンレーシング)の26歳コンビが先頭パックを形成。ファンデルヘイデンの転倒によりファンアルフェンが独走態勢で1周目を終える。しかしその後ファンデルヘイデンら後続が追いつき、再び混戦に持ち込まれた。

他の選手がバイクを押しながら越える急坂ではオランダ王者プック・ピーテルセ(フェニックス・ドゥクーニンク)が乗車のままクリア。見せ場を作るシーンもありながらも、全6周回の4周目でブラントがトップに立つと、そのハイペースにはセイリンデルカルメン・アルバラード(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)しか食らいつくことができなかった。

先頭の2名はトップを守りながら周回を重ね、最終ストレートに持ち込まれた戦いをブラントが制した。

最終ストレートでアルバラードを退けたルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック) photo:UCI

W杯4連勝を決めたルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック) photo:UCI

10月のシーズンインからこれで13戦11勝と高い勝率を誇っているブラント。ワールドカップでもこれで4連勝となり、2021年以来となるシクロクロス世界選手権制覇へ向けて弾みをつけた。
UCIシクロクロスワールドカップ2025-2026 第5戦 男子エリート結果
1位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) 1:01:24
2位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:24
3位 エミエル・フェルストリンゲ(ベルギー、クレラン・コレンドン) +0:33
4位 ピム・ロンハール(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) +0:35
5位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:36
6位 ティボール・デルフロッソ(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:39
7位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:51
8位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ) +1:19
9位 メース・ヘンドリクス1(オランダ、ヘイゾマット・キューブ) +1:30
10位 ヨラン・ワイシュール(ベルギー、クレラン・コレンドン) +1:44
81位 遠藤紘介(オランダベース/ウォータスレイ)
82位 岡山優太(オランダベース/ウォータスレイ)
83位 梶鉄輝(オランダベース/ウォータスレイ)
DNF 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)
UCIシクロクロスワールドカップ2025-2026 第5戦 女子エリート結果
1位 ルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック) 53:48
2位 セイリンデルカルメン・アルバラード(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:02
3位 アニック・ファンアルフェン(オランダ、セブンレーシング) +0:16
4位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:23
5位 クリスティナ・ゼマノヴァ(チェコ) +0:24
6位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)
7位 サラ・カサソラ(イタリア、クレラン・コレンドン) +0:30
8位 インへ・ファンデルヘイデン(オランダ、クレラン・コレンドン) +1:01
9位 マノン・バッカー(オランダ、クレラン・コレンドン) +1:13
10位 レオニー・ベントフェルド(オランダ、パウェルスサウゼン・アルテスインダストリーバウ) +1:25
photo:UCI