2020/10/11(日) - 16:40
サーヴェロ・オールラウンドロードのバリューモデル、"R"シリーズをインプレッション。これまでR3とR2という2モデルが用意されてきたミドルグレードを1本化した、サーヴェロバイクラインアップのコアとなる一台の真価を問う。
サーヴェロ R series (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ロードレースやトライアスロンの世界において、高いパフォーマンスを求めるシリアスなアスリートたちから厚い支持を受けてきたカナディアンバイクブランド、サーヴェロ。アイアンマンでの使用率ナンバーワンを誇るだけあって、TTバイクやエアロロードのイメージが強い同社だが、その高い技術力は山岳バイクにも活かされている。
現在"S"シリーズと呼ばれるエアロロードがSoloistと名乗っていた時代から、一貫してラインアップされ続けてきた軽量オールラウンダーが今回インプレッションする"R"シリーズだ。
初代R3から受け継がれる極細シートステー
重量と剛性、空力性能を兼ね備えるスクーオーバルマックス形状のダウンチューブ
オーソドックスな形状のフロントフォーク サイズ毎にオフセットが細かく用意される
2003年にデビューしたラグドカーボンモデルR2.5を皮切りに、カーボンモノコックバイク"R3"を2005年に送り出す。チームCSCのカルロス・サストレ(スペイン)と共に2008年のツール・ド・フランス制覇に貢献したR3は、パワー伝達に優れたマッシブなダウンチューブ&チェーンステーに、快適性とトラクションを向上させる極細のシートステーという画期的なデザインで、のちのオールラウンドバイクのトレンドを決定づける先進的な一台だった。
その後、R3で確立したデザインに磨きを掛けながら、その時々の最新技術を取り入れつつモデルチェンジを重ね、2017年にはエアロロードのSシリーズで蓄積したエアロダイナミクスに関するテクノロジーを導入。軽量バイクでありながら、平坦でも後れを取ることのない真のオールラウンダーへと進化した。
トップチューブにはRシリーズのロゴが入る
ハンドル周りはサーヴェロオリジナルのパーツがアセンブルされる
シートステーからトップチューブにかけては薄く扁平したデザイン
タイヤクリアランスは余裕を持った設計である程度の太いタイヤにも対応する
昨年までは、プロユースモデルとなる"R5"、中核モデルとなる"R3"、R3と同形状のモールドを使用しつつカーボングレードを調整することで、より手の届きやすい価格とした"R2"の3グレード展開とされていたが、2021モデルでは、R3とR2を統合し"R"シリーズとして一本化することが発表された。
フレームデザインに変更は無いが、リムブレーキ仕様が廃止されディスクブレーキオンリーのラインアップへと整理された。ディスクブレーキへと完全移行するブランドが多い中、サーヴェロもその流れに乗った形となる。
ディスクブレーキオンリーモデルらしく、専用のカーボンレイアップを施されており、強大な制動力をしっかりと受け止める剛性を確保。一方で、Rシリーズの身上ともいえる軽やかなヒルクライム性能を実現するため、非常に緻密な剛性バランスの調整が施されているという。
BBはサーヴェロ独自のBBrightを採用
チェーンステーは太めでしっかりとペダリングパワーを後輪に伝達する
歴代Rシリーズの特徴でもあるシンプルなフレームワークは今作でも健在。扱いやすさに優れた真円形状と高い剛性感をもたらす角形の良いところを組み合わせつつ、更にはエアロダイナミクスを改善した「スクオーバルマックス」形状によって、あらゆるシーンで速さを発揮する性能を手に入れた。
Rシリーズのアイデンティティでもある極細シートステーは最新モデルにも受け継がれており、高い快適性と荒れた路面をもしっかりとらえるトラクション性能を発揮する。BBにはサーヴェロ独自のBBrightを用い、優れたパワー伝達効率を誇る点も変わりない。
また、作りこまれたジオメトリーも近年のサーヴェロバイクの魅力の一つ。深めのBBドロップと長めのホイールベースによって優れた安定感をもたらすとともに、フレームサイズ毎にフォークオフセットを変更することでトレイル量を統一し、サイズ間のハンドリングフィールのばらつきを解消している。
ノーマルな丸形のシートポストを採用する
ダウンチューブ上部からケーブルを内装する
ヘッドチューブは中央がくぼむ砂時計型のシェイプ
トレンドとなるケーブルフル内装には対応せず、ダウンチューブ上部からケーブルをフレームに内装する。一方、ハンドルやステム、シートポスト、シートクランプといった各パーツは汎用規格とされており、使い慣れた形状のモデルを使用可能。ポジションの調整幅も広く、かつ容易となっているため、ポジションが固まっていない初中級者はもちろん、シーズン中に乗り込むにつれてアグレッシブなポジションに変更したい上級者などにも嬉しい仕様となっている。
今回インプレッションするのは、機械式アルテグラで組み上げられた完成車。ホイールはDTスイスの32mmハイトのアルミリムモデル、タイヤはヴィットリアのRubino Pro TLRを組み合わせている。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「扱いやすいバランスの良さと軽さが際立つオールラウンダー」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
「扱いやすいバランスの良さと軽さが際立つオールラウンダー」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
とにかく軽くて掛かりの良さが際立つバイクですね、漕ぎ出した瞬間から進みの良さを感じられて、わかりやすく気持ちいい。ディスクブレーキロードにありがちな、つま先だけに妙な硬さを感じるような剛性感ではなくて、全体的なバランスが良く調えられているので、非常に扱いやすい。
ダウンチューブのボリュームもありますし、BB周辺もしっかりとした剛性感があってパワーをしっかり掛けても受け止めてくれますね。ハイエンドではないとのことですが、僕のようにある程度レーシーに乗る人にもいいでしょうし、一方でビギナーの方でも踏めないようなことは無い、ちょうどいいところを衝いていると感じました。多くの人に受け入れられる剛性感だと思います。
「レーシーなフィーリングを楽しむことができるので、乗り方の幅を広げたいという人にはピッタリ」成毛千尋(アルディナサイクラリー) しっかりした剛性感と車重の軽さが相まって、加減速が多いシチュエーションが主戦場のバイクですね。登りでも平坦でも、一定ペースで淡々と走るようなスタイルではなく、積極的にアタックを仕掛けたり、クリテリウムのようにコーナーの度に上げ下げが生まれるような走り方がしっくりくると思います。
逆にいえば、一定ペースを刻んで高速で巡航するようなシチュエーションであれば他のバイク、特にエアロロード系のほうが楽に走ることは出来ると思います。ただ、加速勝負となる短距離のスプリントであれば掛かりの良さでこのバイクを選びたいですね。そこは得意とする走り方やコース次第というところでしょう。
踏んだ時の反応もそうなのですが、ハンドリングに関しても非常に素直ですね。下りでもイメージ通りのラインを通せます。今回の試乗車は機械式コンポーネントで組まれていましたが、ケーブルのせいで左右のどちらかにハンドルが押されるようなことも無かったのは地味な点ですが評価すべきポイントでしょう。
加えて、快適性に関しても非常に高いレベルとなっているのも特筆すべき点です。チューブドとは思えないレベルの振動吸収性で、すこし荒れ気味の路面を走っても身体にダメージが溜まりづらく、100㎞、200㎞と走っても問題ないでしょう。おそらく細身のシートステーがかなり効いているのだと思います。
非常に快適かつ安定感に優れた乗り味で、これならプロがクラシックレースで選んでいるのもこのバイクだというのも納得感がありますね。ヘッドアングルが寝気味のジオメトリだし、BBドロップも深いので低重心な感覚が強めですね。
これまでロングライドメインで、エンデュランスバイクを選ばれてきた人にもぜひオススメしたいバイクですね。並みのエンデュランスロードに匹敵する乗り心地を持ちながらも、レーシーなフィーリングを楽しむことができるので、乗り方の幅を広げたいという人にはピッタリでしょう。もちろんレースユースにも十分対応できますし、長距離でアップダウンが多いレースであれば大きなアドバンテージになるバイクだと思います。
「バネ感のある踏み味で脚を残せるヒルクライムレーサー」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
歴代のサーヴェロRシリーズに共通するバネ感のある踏み心地をこのバイクにもしっかり感じました。一漕ぎ目からレースバイクらしい軽さがあって、そこはCaledniaとは明確に違う部分です。
「バネ感のある踏み味で脚を残せるヒルクライムレーサー」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
強く踏み込むとリアバックがしなってからグワンッと戻してくるような、サーヴェロならではの感覚があります。フロントトライアングルでしっかりとパワーを受け止めつつ、リアを意図的にウィップさせることで、後ろから押されるようなフィーリングを演出しているのではないでしょうか。
いわゆるヒルクライムバイクと聞いて想像するような打てば響くような乾いた硬さではないです。そういったバイクと比べると、加速が必要なシーンでは一瞬テンポロスを感じるかもしれませんが、そのあとにググッと伸びていくような進み方ですね。
そのタメのおかげもあってか、意外に脚にも優しいんです。重めのギアでダンシングでグイグイと踏み込んでいくようなペダリングでも、しっかりと奥で踏ん張って受け止めてくれるので、最後まで踏んでいけるし繋ぎやすい。
ですから、長距離のヒルクライムには最高の相棒だと思います。硬すぎるバイクは短い登りでは速いですが、長い登りではダメージが大きくてペースコントロールがシビアです。一方、このバイクだったら割とがむしゃらに踏んでいても自然と脚をセーブしてくれる。自分のペースを最後まで維持しやすいので、結果的にタイムが縮まると思います。
「速く走りたい、タイムを縮めたい、という人にこそフィットする一台」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
基本的にはレースユースを念頭に置いたバイクだと思いますので、速く走りたい、タイムを縮めたい、という人にこそフィットする一台だと思います。ハンドリングにもそれは現れていて、集団の中での自由自在に動けるような、クイックでキレのあるステアリングで、いかにもレースバイクといった味付け。
ですから、組み合わせるホイールも、出来るだけ軽いホイールが良いですよね。35mmくらいのカーボンホイールで、重量の軽いものをアセンブルすれば更に走りは良くなるはず。チューブレスにして転がりを軽くするというアプローチもいいと思います。ついでにリアのローターを140mmにして、更に軽量化を目指してもいいでしょう。
とにかく速く走りたい人にこそピッタリのバイクです。ヒルクライムが好きで、乗鞍とか富士ヒルといったイベントに年に何戦も出場するような人、STRAVAのKOMやPRを更新することに楽しみを感じる人にオススメしたいですね。
サーヴェロ R series (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ Rシリーズ
フォーク:Cervélo All-Carbon
シートポスト:Cervélo Carbon SP19
ホイール:DT Swiss P1800 32 Spline
タイヤ:Vittoria Rubino Pro TLR G 25c
サドル:Fizik Vento Argo R5
サイズ:48、51、54、56
カラー:グレー/レッド
価格:485,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
成毛千尋(アルディナサイクラリー) 成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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ロードレースやトライアスロンの世界において、高いパフォーマンスを求めるシリアスなアスリートたちから厚い支持を受けてきたカナディアンバイクブランド、サーヴェロ。アイアンマンでの使用率ナンバーワンを誇るだけあって、TTバイクやエアロロードのイメージが強い同社だが、その高い技術力は山岳バイクにも活かされている。
現在"S"シリーズと呼ばれるエアロロードがSoloistと名乗っていた時代から、一貫してラインアップされ続けてきた軽量オールラウンダーが今回インプレッションする"R"シリーズだ。
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2003年にデビューしたラグドカーボンモデルR2.5を皮切りに、カーボンモノコックバイク"R3"を2005年に送り出す。チームCSCのカルロス・サストレ(スペイン)と共に2008年のツール・ド・フランス制覇に貢献したR3は、パワー伝達に優れたマッシブなダウンチューブ&チェーンステーに、快適性とトラクションを向上させる極細のシートステーという画期的なデザインで、のちのオールラウンドバイクのトレンドを決定づける先進的な一台だった。
その後、R3で確立したデザインに磨きを掛けながら、その時々の最新技術を取り入れつつモデルチェンジを重ね、2017年にはエアロロードのSシリーズで蓄積したエアロダイナミクスに関するテクノロジーを導入。軽量バイクでありながら、平坦でも後れを取ることのない真のオールラウンダーへと進化した。
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昨年までは、プロユースモデルとなる"R5"、中核モデルとなる"R3"、R3と同形状のモールドを使用しつつカーボングレードを調整することで、より手の届きやすい価格とした"R2"の3グレード展開とされていたが、2021モデルでは、R3とR2を統合し"R"シリーズとして一本化することが発表された。
フレームデザインに変更は無いが、リムブレーキ仕様が廃止されディスクブレーキオンリーのラインアップへと整理された。ディスクブレーキへと完全移行するブランドが多い中、サーヴェロもその流れに乗った形となる。
ディスクブレーキオンリーモデルらしく、専用のカーボンレイアップを施されており、強大な制動力をしっかりと受け止める剛性を確保。一方で、Rシリーズの身上ともいえる軽やかなヒルクライム性能を実現するため、非常に緻密な剛性バランスの調整が施されているという。
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歴代Rシリーズの特徴でもあるシンプルなフレームワークは今作でも健在。扱いやすさに優れた真円形状と高い剛性感をもたらす角形の良いところを組み合わせつつ、更にはエアロダイナミクスを改善した「スクオーバルマックス」形状によって、あらゆるシーンで速さを発揮する性能を手に入れた。
Rシリーズのアイデンティティでもある極細シートステーは最新モデルにも受け継がれており、高い快適性と荒れた路面をもしっかりとらえるトラクション性能を発揮する。BBにはサーヴェロ独自のBBrightを用い、優れたパワー伝達効率を誇る点も変わりない。
また、作りこまれたジオメトリーも近年のサーヴェロバイクの魅力の一つ。深めのBBドロップと長めのホイールベースによって優れた安定感をもたらすとともに、フレームサイズ毎にフォークオフセットを変更することでトレイル量を統一し、サイズ間のハンドリングフィールのばらつきを解消している。
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トレンドとなるケーブルフル内装には対応せず、ダウンチューブ上部からケーブルをフレームに内装する。一方、ハンドルやステム、シートポスト、シートクランプといった各パーツは汎用規格とされており、使い慣れた形状のモデルを使用可能。ポジションの調整幅も広く、かつ容易となっているため、ポジションが固まっていない初中級者はもちろん、シーズン中に乗り込むにつれてアグレッシブなポジションに変更したい上級者などにも嬉しい仕様となっている。
今回インプレッションするのは、機械式アルテグラで組み上げられた完成車。ホイールはDTスイスの32mmハイトのアルミリムモデル、タイヤはヴィットリアのRubino Pro TLRを組み合わせている。それではインプレッションに移ろう。
― インプレッション
「扱いやすいバランスの良さと軽さが際立つオールラウンダー」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
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とにかく軽くて掛かりの良さが際立つバイクですね、漕ぎ出した瞬間から進みの良さを感じられて、わかりやすく気持ちいい。ディスクブレーキロードにありがちな、つま先だけに妙な硬さを感じるような剛性感ではなくて、全体的なバランスが良く調えられているので、非常に扱いやすい。
ダウンチューブのボリュームもありますし、BB周辺もしっかりとした剛性感があってパワーをしっかり掛けても受け止めてくれますね。ハイエンドではないとのことですが、僕のようにある程度レーシーに乗る人にもいいでしょうし、一方でビギナーの方でも踏めないようなことは無い、ちょうどいいところを衝いていると感じました。多くの人に受け入れられる剛性感だと思います。
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逆にいえば、一定ペースを刻んで高速で巡航するようなシチュエーションであれば他のバイク、特にエアロロード系のほうが楽に走ることは出来ると思います。ただ、加速勝負となる短距離のスプリントであれば掛かりの良さでこのバイクを選びたいですね。そこは得意とする走り方やコース次第というところでしょう。
踏んだ時の反応もそうなのですが、ハンドリングに関しても非常に素直ですね。下りでもイメージ通りのラインを通せます。今回の試乗車は機械式コンポーネントで組まれていましたが、ケーブルのせいで左右のどちらかにハンドルが押されるようなことも無かったのは地味な点ですが評価すべきポイントでしょう。
加えて、快適性に関しても非常に高いレベルとなっているのも特筆すべき点です。チューブドとは思えないレベルの振動吸収性で、すこし荒れ気味の路面を走っても身体にダメージが溜まりづらく、100㎞、200㎞と走っても問題ないでしょう。おそらく細身のシートステーがかなり効いているのだと思います。
非常に快適かつ安定感に優れた乗り味で、これならプロがクラシックレースで選んでいるのもこのバイクだというのも納得感がありますね。ヘッドアングルが寝気味のジオメトリだし、BBドロップも深いので低重心な感覚が強めですね。
これまでロングライドメインで、エンデュランスバイクを選ばれてきた人にもぜひオススメしたいバイクですね。並みのエンデュランスロードに匹敵する乗り心地を持ちながらも、レーシーなフィーリングを楽しむことができるので、乗り方の幅を広げたいという人にはピッタリでしょう。もちろんレースユースにも十分対応できますし、長距離でアップダウンが多いレースであれば大きなアドバンテージになるバイクだと思います。
「バネ感のある踏み味で脚を残せるヒルクライムレーサー」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
歴代のサーヴェロRシリーズに共通するバネ感のある踏み心地をこのバイクにもしっかり感じました。一漕ぎ目からレースバイクらしい軽さがあって、そこはCaledniaとは明確に違う部分です。
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強く踏み込むとリアバックがしなってからグワンッと戻してくるような、サーヴェロならではの感覚があります。フロントトライアングルでしっかりとパワーを受け止めつつ、リアを意図的にウィップさせることで、後ろから押されるようなフィーリングを演出しているのではないでしょうか。
いわゆるヒルクライムバイクと聞いて想像するような打てば響くような乾いた硬さではないです。そういったバイクと比べると、加速が必要なシーンでは一瞬テンポロスを感じるかもしれませんが、そのあとにググッと伸びていくような進み方ですね。
そのタメのおかげもあってか、意外に脚にも優しいんです。重めのギアでダンシングでグイグイと踏み込んでいくようなペダリングでも、しっかりと奥で踏ん張って受け止めてくれるので、最後まで踏んでいけるし繋ぎやすい。
ですから、長距離のヒルクライムには最高の相棒だと思います。硬すぎるバイクは短い登りでは速いですが、長い登りではダメージが大きくてペースコントロールがシビアです。一方、このバイクだったら割とがむしゃらに踏んでいても自然と脚をセーブしてくれる。自分のペースを最後まで維持しやすいので、結果的にタイムが縮まると思います。
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基本的にはレースユースを念頭に置いたバイクだと思いますので、速く走りたい、タイムを縮めたい、という人にこそフィットする一台だと思います。ハンドリングにもそれは現れていて、集団の中での自由自在に動けるような、クイックでキレのあるステアリングで、いかにもレースバイクといった味付け。
ですから、組み合わせるホイールも、出来るだけ軽いホイールが良いですよね。35mmくらいのカーボンホイールで、重量の軽いものをアセンブルすれば更に走りは良くなるはず。チューブレスにして転がりを軽くするというアプローチもいいと思います。ついでにリアのローターを140mmにして、更に軽量化を目指してもいいでしょう。
とにかく速く走りたい人にこそピッタリのバイクです。ヒルクライムが好きで、乗鞍とか富士ヒルといったイベントに年に何戦も出場するような人、STRAVAのKOMやPRを更新することに楽しみを感じる人にオススメしたいですね。
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サーヴェロ Rシリーズ
フォーク:Cervélo All-Carbon
シートポスト:Cervélo Carbon SP19
ホイール:DT Swiss P1800 32 Spline
タイヤ:Vittoria Rubino Pro TLR G 25c
サドル:Fizik Vento Argo R5
サイズ:48、51、54、56
カラー:グレー/レッド
価格:485,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
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埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
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東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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