2020/09/19(土) - 15:13
ピレリから新登場したロード用チューブレスレディタイヤ「P ZERO RACE TLR」をインプレッション。路面を滑らかに転がる軽い走行感、振動の角が取れた高い快適性、素早い切り返しが可能な操舵感が特徴的なレーシングタイヤに仕上がっている。
ピレリのロードタイヤと言えばクリンチャーモデルのP ZERO VELOが主力製品であり、そこに加えプロチームも使用するチューブラータイプもフラッグシップとして展開されているが、今回さらなるラインアップ拡充を図るべくチューブレスレディタイヤの「P ZERO RACE TLR」が新登場した。
タイヤサポートを行っているワールドチームのミッチェルトン・スコットとトレック・セガフレードの協力を得て開発されたという今作。プロライダーが満足する高い走行性能が与えられた、オールラウンドなピュアレーシングタイヤに仕上がっている。より低い転がり抵抗を追求した「P ZERO RACE TLR SL」と、耐パンク性能にも配慮した「P ZERO RACE TLR」という2モデルがラインアップする。
いずれも新開発されたSMART EVOコンパウンドを採用。特殊なシリカを配合することで性能を高めた従来のコンパウンドに、さらに3種類の高機能ポリマーを添加することで、ドライとウェット路面のどちらにおいてもグリップ力と低転がり抵抗という相反する性能を向上させたという。
また、チューブレスレディ専用に「TECHWALL ROAD」と呼ばれるケーシング構造を採用する。120tpiのケーシングをベースとし、トレッドとの間にパンク防止用の補強層を挟み込んだ作りとなっている。ノーマルのP ZERO RACE TLRにはトレッド中央部分にのみ耐パンク層を1枚追加しており、日頃のライドでも安心して使えるよう工夫されている。
各社のリムとのマッチングがシビアなチューブレスレディタイヤとあって、ETRTO規格に基づいた設計としていることも特徴。17C、19C、21Cという昨今のワイドリムに合うよう周長などが揃えられており、各サイズのリムに嵌めた際のタイヤ幅や外径も公表している。なお、フックレスリムには非対応とタイヤに印字されている。
また、体重別の推奨空気圧も出されており、快適性を重視するならフロントを0.3Bar低く、ウェットコンディションでは前後を0.3Bar低くするなど、タイヤを知り尽くした世界的なメーカーらしい細かなアドバイスもあるため、セッティング時にはぜひ参考にしてみてほしい。
レースレベルのパフォーマンスを重視したP ZERO RACE TLR SLは、転がり抵抗の低い縦溝が2本入ったのみのトレッドパターンとし、一方でP ZERO RACE TLRはショルダー部分に稲妻状のパターンを入れることでコーナーでのグリップや水はけを向上させるよう考えられている。
24C、26C、28Cという3サイズが共通ラインアップで、ノーマルモデルには30Cも用意される。価格はP ZERO RACE TLR SLが9,800円(税抜)、P ZERO RACE TLRが9,200円(税抜)だ。
― 編集部インプレッション
ピレリ初のレーシングチューブレスレディタイヤとして登場したP ZERO RACE TLR。今回、ノーマルモデルとSLモデルの2種(どちらも26C)を借り受け試乗を行った(体重55kgで空気圧は6Barを基本としテスト)。
ロードのチューブレスタイヤに関しては、マヴィック、IRC、コンチネンタル、ハッチンソン等を使用してきた筆者だが、それらと比べてもP ZERO RACE TLRは手で触った時のしなやかさが印象的。重量の軽さに貢献しているであろうトレッドの薄さが感じられ、スピードを追求したレーシングモデルだということがよく分かる。
そのしなやかさ故に、テストに使用したイーストンのホイールにも素手で簡単に嵌めることができた(特にSLは装着のしやすさが顕著だった)。空気を入れる際もフロアポンプでビードを上げることができたので、タイヤの精度も良く扱いには不便しないはず。チューブレスレディとあってシーラントの併用は必須だ(試しにシーラントを入れずに装着してみたが程なくして空気は抜けてしまった)。
乗り始めでまず感じたのがチューブレス特有の乗り心地の良さ。特に今作はモチモチとは言わないまでも柔らかな感触の乗り味に仕上がっており、路面からの振動を確実にカットしてくれている印象だ。硬いタイヤだとコツコツした衝撃が手に伝わるが、今作はさらに振動の角が取れた優しい乗り心地で、快適性は非常に高い。
その乗り味と反比例するかのように、スピードに乗った時の転がり感は至ってレーシー。路面の上を滑っていくかのような軽快なフィーリングがあり、レース向けな速さ重視のタイヤなのだと気づかせてくれる。重量で見た時に極端に軽いという訳ではないが、TT向けの超軽量タイヤを思わせるような軽い走りを見せてくれた。
転がりもそうだが、走りの挙動やハンドリングも異様に軽い。路面に張り付くようなタメ感が一切なくバイクが付いてくるような感覚で、操舵感はかなりクイックだ。左右への素早い切り返し、ダンシングでの振りやすさはピカイチで、そういった性格もレーシングタイヤらしさを助長していると感じた。
逆に言えば、路面への接地感は薄めでグリップに関しても心理的な不安感は若干あった。モータースポーツを知り尽くしたピレリとあって、断面形状を上手くコントロールすることでそういった軽さを与えているのかもしれない。もちろん私のようなホビーレベルのコーナリングでは攻め切ることはできず、グリップが抜けるようなことは皆無だった。
ただ、トラクションを稼ごうと5Barほどまで空気圧を落としてみると、乗り心地等は良くなるものの、このタイヤの旨味である転がり感が損なわれてしまい"コレジャナイ"感が出てしまった。このタイヤのキャラクターを考えれば、やはりより速く気持ち良く転がる走行感を重視したいところ。ピレリの製品ページでは体重別の推奨空気圧も示されているので、ぜひ参考にしてみてほしい。
ノーマルモデルとSLモデルを比較したときには、漕ぎ出しや加速時などスピードを上げ下げする場面でSLの軽さが際立った。単純に耐パンク層の有無に起因する重量差による違いなのだろう。トレッドパターンも両者で異なっているが、ドライな路面ではその差を感じ取ることはできなかった。
チューブレスレディタイヤとしては後発となったものの、他社ブランドと十分に渡り合える高い性能を感じられた今回のP ZERO RACE TLR。よりハイスピードな走りを追求するライダーにぜひ使って欲しい一品だ。(CW編集部:村田)
ピレリ P ZERO RACE TLR SL
サイズ:700x24C、700x26C、700x28C
重 量:230g(24C)、245g(26C)、275g(28C)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:SmartEVO Compound
アンチパンクチャー:TechWALL
価格:9,800円(税抜)
ピレリ P ZERO RACE TLR
サイズ:700x24C、700x26C、700x28C、700x30C
重 量:245g(24C)、270g(26C)、295g(28C)、320g(30C)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:SmartEVO Compound
アンチパンクチャー:TechWALL+
価格:9,200円(税抜)
ピレリのロードタイヤと言えばクリンチャーモデルのP ZERO VELOが主力製品であり、そこに加えプロチームも使用するチューブラータイプもフラッグシップとして展開されているが、今回さらなるラインアップ拡充を図るべくチューブレスレディタイヤの「P ZERO RACE TLR」が新登場した。
タイヤサポートを行っているワールドチームのミッチェルトン・スコットとトレック・セガフレードの協力を得て開発されたという今作。プロライダーが満足する高い走行性能が与えられた、オールラウンドなピュアレーシングタイヤに仕上がっている。より低い転がり抵抗を追求した「P ZERO RACE TLR SL」と、耐パンク性能にも配慮した「P ZERO RACE TLR」という2モデルがラインアップする。
いずれも新開発されたSMART EVOコンパウンドを採用。特殊なシリカを配合することで性能を高めた従来のコンパウンドに、さらに3種類の高機能ポリマーを添加することで、ドライとウェット路面のどちらにおいてもグリップ力と低転がり抵抗という相反する性能を向上させたという。
また、チューブレスレディ専用に「TECHWALL ROAD」と呼ばれるケーシング構造を採用する。120tpiのケーシングをベースとし、トレッドとの間にパンク防止用の補強層を挟み込んだ作りとなっている。ノーマルのP ZERO RACE TLRにはトレッド中央部分にのみ耐パンク層を1枚追加しており、日頃のライドでも安心して使えるよう工夫されている。
各社のリムとのマッチングがシビアなチューブレスレディタイヤとあって、ETRTO規格に基づいた設計としていることも特徴。17C、19C、21Cという昨今のワイドリムに合うよう周長などが揃えられており、各サイズのリムに嵌めた際のタイヤ幅や外径も公表している。なお、フックレスリムには非対応とタイヤに印字されている。
また、体重別の推奨空気圧も出されており、快適性を重視するならフロントを0.3Bar低く、ウェットコンディションでは前後を0.3Bar低くするなど、タイヤを知り尽くした世界的なメーカーらしい細かなアドバイスもあるため、セッティング時にはぜひ参考にしてみてほしい。
レースレベルのパフォーマンスを重視したP ZERO RACE TLR SLは、転がり抵抗の低い縦溝が2本入ったのみのトレッドパターンとし、一方でP ZERO RACE TLRはショルダー部分に稲妻状のパターンを入れることでコーナーでのグリップや水はけを向上させるよう考えられている。
24C、26C、28Cという3サイズが共通ラインアップで、ノーマルモデルには30Cも用意される。価格はP ZERO RACE TLR SLが9,800円(税抜)、P ZERO RACE TLRが9,200円(税抜)だ。
― 編集部インプレッション
ピレリ初のレーシングチューブレスレディタイヤとして登場したP ZERO RACE TLR。今回、ノーマルモデルとSLモデルの2種(どちらも26C)を借り受け試乗を行った(体重55kgで空気圧は6Barを基本としテスト)。
ロードのチューブレスタイヤに関しては、マヴィック、IRC、コンチネンタル、ハッチンソン等を使用してきた筆者だが、それらと比べてもP ZERO RACE TLRは手で触った時のしなやかさが印象的。重量の軽さに貢献しているであろうトレッドの薄さが感じられ、スピードを追求したレーシングモデルだということがよく分かる。
そのしなやかさ故に、テストに使用したイーストンのホイールにも素手で簡単に嵌めることができた(特にSLは装着のしやすさが顕著だった)。空気を入れる際もフロアポンプでビードを上げることができたので、タイヤの精度も良く扱いには不便しないはず。チューブレスレディとあってシーラントの併用は必須だ(試しにシーラントを入れずに装着してみたが程なくして空気は抜けてしまった)。
乗り始めでまず感じたのがチューブレス特有の乗り心地の良さ。特に今作はモチモチとは言わないまでも柔らかな感触の乗り味に仕上がっており、路面からの振動を確実にカットしてくれている印象だ。硬いタイヤだとコツコツした衝撃が手に伝わるが、今作はさらに振動の角が取れた優しい乗り心地で、快適性は非常に高い。
その乗り味と反比例するかのように、スピードに乗った時の転がり感は至ってレーシー。路面の上を滑っていくかのような軽快なフィーリングがあり、レース向けな速さ重視のタイヤなのだと気づかせてくれる。重量で見た時に極端に軽いという訳ではないが、TT向けの超軽量タイヤを思わせるような軽い走りを見せてくれた。
転がりもそうだが、走りの挙動やハンドリングも異様に軽い。路面に張り付くようなタメ感が一切なくバイクが付いてくるような感覚で、操舵感はかなりクイックだ。左右への素早い切り返し、ダンシングでの振りやすさはピカイチで、そういった性格もレーシングタイヤらしさを助長していると感じた。
逆に言えば、路面への接地感は薄めでグリップに関しても心理的な不安感は若干あった。モータースポーツを知り尽くしたピレリとあって、断面形状を上手くコントロールすることでそういった軽さを与えているのかもしれない。もちろん私のようなホビーレベルのコーナリングでは攻め切ることはできず、グリップが抜けるようなことは皆無だった。
ただ、トラクションを稼ごうと5Barほどまで空気圧を落としてみると、乗り心地等は良くなるものの、このタイヤの旨味である転がり感が損なわれてしまい"コレジャナイ"感が出てしまった。このタイヤのキャラクターを考えれば、やはりより速く気持ち良く転がる走行感を重視したいところ。ピレリの製品ページでは体重別の推奨空気圧も示されているので、ぜひ参考にしてみてほしい。
ノーマルモデルとSLモデルを比較したときには、漕ぎ出しや加速時などスピードを上げ下げする場面でSLの軽さが際立った。単純に耐パンク層の有無に起因する重量差による違いなのだろう。トレッドパターンも両者で異なっているが、ドライな路面ではその差を感じ取ることはできなかった。
チューブレスレディタイヤとしては後発となったものの、他社ブランドと十分に渡り合える高い性能を感じられた今回のP ZERO RACE TLR。よりハイスピードな走りを追求するライダーにぜひ使って欲しい一品だ。(CW編集部:村田)
ピレリ P ZERO RACE TLR SL
サイズ:700x24C、700x26C、700x28C
重 量:230g(24C)、245g(26C)、275g(28C)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:SmartEVO Compound
アンチパンクチャー:TechWALL
価格:9,800円(税抜)
ピレリ P ZERO RACE TLR
サイズ:700x24C、700x26C、700x28C、700x30C
重 量:245g(24C)、270g(26C)、295g(28C)、320g(30C)
ケーシング:120tpi
コンパウンド:SmartEVO Compound
アンチパンクチャー:TechWALL+
価格:9,200円(税抜)
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