ジロ第13ステージは逃げ切った少人数のスプリントに持ち込まれ、マヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)が制し、地元に錦を飾った。総合上位には変動なし。

仲良くインタビューに応じるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ)仲良くインタビューに応じるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とダニエーレ・リーギ(イタリア、ランプレ) photo:Kei Tsujiこの日のゴール地点、チェゼナティコは2004年に急逝した史上最高のクライマーの一人に数えられるマルコ・パンターニの故郷。街にはパンターニのモニュメントが建ち、この日の沿道には多くのピラータ(パンターニの愛称)ファンの姿が見られた。

そんな第13ステージ、山岳はカテゴリー2級が二つと、決してクライマーに捧げられたステージではない。のみならず、前半はフラットに走るため、逃げ狙いの選手にチャンスのあるステージとなった。

ポルト・レカナーティをスタートする選手たちポルト・レカナーティをスタートする選手たち photo:Riccardo Scanferla逃げ切りの可能性が高そうなステージでは、誰しもがチャンスを狙うために却って逃げは決まりにくい。この日逃げが決まったのはスタートから76kmの地点だった。しかし、人数は17人とまたも大人数の逃げ集団形成となった。

ここには、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)といったスプリンターや、セバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)やルーベンス・ベルトリアーティ(スイス、アンドローニ・ジョカトーリ)といったルーラーが入った。総合最上位は16分14秒遅れのイバン・マヨス(スペイン、フットオン・セルヴェット)。

逃げグループを形成するトム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク)ら17名逃げグループを形成するトム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク)ら17名 photo:Kei Tsujiこの逃げ集団は順調に差を広げ、142km地点で9分40秒差を稼ぎ出す。スプリンターチームが積極的に牽引することは無く、マリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア)擁するサクソバンクや、総合上位にシャビエル・トンド(スペイン)、カルロス・サストレ(スペイン)を擁するサーヴェロ・テストチームがコントロール。

161.6km地点の最初の2級山岳で、逃げ集団から7分遅れのメイン集団からウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)がアタック。単独で抜け出し山頂を目指す。この山頂をカルペツは6分2秒、メイン集団は6分37秒差で通過する。

サーヴェロ・テストチームがコントロールするメイン集団サーヴェロ・テストチームがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsujiカルペツはここの下りでペースを上げ、集団との差を少しずつ広げていく。残り50kmを切ってこの日最後の2級山岳に差しかかると、逃げ集団ではマルコ・マルツァーノ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)がアタックして揺さぶりをかける。

しかしこの2級山岳を先頭で通過したのはベルトリアーティ。これにマヨスが続く。この下りでステージ優勝を意識した選手たちのアタックが頻発。アタック、吸収を繰り返しながらゴールまでの距離を縮めていく。

単独で集団を引き離すウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)単独で集団を引き離すウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla単騎集団から逃げるカルペツは残り25km地点で先頭から4分8秒遅れ。メイン集団は2分後方を走る。カルペツの狙いはステージ勝利ではなく、総合順位のジャンプアップだ。

アタックの応酬で目まぐるしく先頭が入れ替わる逃げ集団から、残り12km地点でイバン・マヨス(スペイン、フットオン・セルヴェット)、マウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、トム・スタムスニデル(オランダ、ラボバンク)、カーレ・クリット(エストニア、コフィディス)の4人が後続との差を広げる。

1つ目のカテゴリー山岳で集団から飛び出したリーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)1つ目のカテゴリー山岳で集団から飛び出したリーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム) photo:Riccardo Scanferlaしかし残り5kmを切って追走が追いつき先頭は12人に。残り3kmで積極的に仕掛けるのはファッチ。これに続くのはマヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)、マチュー・クロード(フランス、Bboxブイグテレコム)、クレイグ・ルイス(アメリカ、チームHTCコロンビア)。

そして残り1km手前でルイスが一気にペースアップ。ロングスパートで一人飛び出し、残り300mまでトップをひた走る。しかし少し勢いが落ちたその隙を見計らってベレッティのスプリントが爆発。有力と見られたヘンダーソンが追いつけない完璧なスプリントで、ベレッティがこのステージを制した。

雄叫びを上げてゴールするマヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)雄叫びを上げてゴールするマヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) photo:Kei Tsuji感涙にむせぶような表情で何度もガッツポーズを見せるベレッティはこのチェゼーナの出身。偉大なパンターニに彩られた地元で値千金となるジロでの勝利をその脚で手に入れた。

逃げ集団から降りてきたホアン・オラク(スペイン、カチューシャ)のアシストを受けたカルペツは、5分1秒遅れの17位でゴール。メイン集団が7分28秒遅れてゴールしたため、カルペツは総合順位を19位からヴィノとエヴァンスの間となる14位に上げることに成功した。

メイン集団内でゴールするマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)メイン集団内でゴールするマリアローザのリッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク) photo:Kei Tsujiその他には総合上位に変動はなく、ポルトがマリアローザをキープしている。新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は7分55秒遅れの104位でゴールし、総合は1時間53分58秒遅れの136位につけている。

翌日に控える第14ステージからいよいよジロは山岳ステージのオンパレードとなる。有力勢が10分以上遅れたことを受けて、熾烈な総合争いの最終週がついに始まる。



ジロ・デ・イタリア2010第13ステージ結果
1位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)   5h27'12"
2位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
3位 イバン・マヨス(スペイン、フットオン・セルヴェット)
4位 ポール・ヴォス(ドイツ、チームミルラム)
5位 セバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
6位 カーレ・クリット(エストニア、コフィディス)
7位 マチュー・クロード(フランス、Bboxブイグテレコム)
8位 クレイグ・ルイス(アメリカ、チームHTCコロンビア)
9位 セルゲイ・クリモフ(ロシア、カチューシャ)
10位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)+5"


個人総合順位
1位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)      56h20'56"
2位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)           +1'42"
3位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ)   +1'56"
4位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +3'54"
5位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・ドイモ)     +4'41"
6位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)  +5'16"
7位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)         +5'34"
8位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム)     +7'09"
9位 ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、サクソバンク)      +7'24"
10位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)      +8'14"

ポイント賞 マリアロッサ
ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)

山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)

チーム総合成績
サクソバンク

敢闘賞
マヌエル・ベレッティ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)

フーガ(逃げ)賞
リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji, Riccardo Scanferla

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