2020/03/15(日) - 12:14
最終日となった1級山岳フィニッシュのクイーンステージでナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)の登坂力が炸裂。ライバルの攻撃に耐え抜いたマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がキャリア最大の総合優勝を手にした。
本来の最終第8ステージを待たずして、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1日前倒し閉幕となることが決まった第78回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)。名物終着地であるニースの海岸通り「プロムナード・デ・ザングレ(イギリス人の遊歩道)」には辿り着かなかったものの、第7ステージのスタート地がニース市街地であることから大会名称は辛くも保たれた。
この日は前日のバーレーン・マクラーレンに続き、イスラエル・サイクリングアカデミーがレースから撤退。ペテル&ユライサガン兄弟をはじめ31名がレース中リタイアを選んでいる。
166.5kmコースの勝負所は最後に控える1級山岳ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ(登坂距離16.3km/平均勾配6.3%)だが、それ以前にも序盤から1級、2級、2級と切り立った岩山に据え付けられた登りが多数登場する。今大会最初にして最後の長大山岳フィニッシュとあって、序盤から総合成績を狙う各チームの思惑が交錯した。
総合勢が多数加わったアタック合戦からエスケープしたのは総合10位のアラフィリップや、逃げ巧者デヘント、更には2日連続の逃げとなる山岳賞ジャージのエデを含む豪華な6名。この動きに乗ろうとしたロマン・バルデ(フランス。アージェードゥーゼル)やルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)らを振り払って逃げた。
逃げグループを形成した6名
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
オレリアン・パレパントル(フランス、アージェードゥーゼル)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFプロサイクリング)
リーダーチームのボーラ・ハンスグローエやアルケア・サムシックがコントロールするメイン集団から逃げる6名。3分弱のリードを得たことでアラフィリップはバーチャルリーダーに立ち、そしてペレスの献身的なアシストを受けたエデは途中の山岳ポイントを荒稼ぎして総合山岳賞獲得を決めている。
1級山岳ラ・コルミアーヌが近くほどにペースが上がり、逃げグループからはペレスが遅れ、メイン集団ではボーラ・ハンスグローエがサンウェブを従えた状態で集団の絞り込みを掛けていく。渓谷沿いの登坂が始まるとデヘントが加速し、調子の上がらないアラフィリップを振り切って独走体制に持ち込んだ。
1分後方のメイン集団ではクライマーを揃えたアルケア・サムシックが総合首位マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)を丸裸にしたものの、一度ペースが落ち着いたことでデヘントとの差は1分半に拡大。逃げ切りを見据えて踏むデヘントに対しては唯一マルタンが追走したものの、最終的にその背中を捉えることはなかった。
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のためにトレック・セガフレードのケニー・エリッソンド(フランス)やリッチー・ポート(オーストリア)がコントロールするメイン集団からはバルデもアタックしたが、断続的に緩斜面が現れる峠でリードを奪うには至らない。すると残り4kmサインをきっかけにナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が飛び出した。
「パリ〜ニース最終日の最終山岳をアグレシッブなスタイルで獲りたかった」と言うキンタナは、牽制に陥るシャフマン、ベノート、イギータ、ニバリ、そしてピノを置き去りにして一瞬のうちにリードを築き上げる。一時逃げ切りの可能性を見出していたデヘントを捉えてもペースは緩まず、メイン集団とのタイム差は残り1km地点で45秒以上にまで拡大。フランスチームに移籍したキンタナが、ツール・ド・プロヴァンス、ツール・ド・アルプスに続く今季5勝目に向けて独走した。
メイン集団では36秒差の総合2位から逆転勝利を狙うベノートがアタック。苦しいシャフマンはニバリとピノ、イギータに牽引を任せるほか無かったものの、ベノートが最終盤に失速したことでリーダーポジションを辛くもキープする。先頭キンタナ、2番手ベノート、そして3番手のシャフマングループがそれぞれフィニッシュを目指した。
最後までペースを守ったキンタナがバイクとジャージを指差してクイーンステージ制覇。ベノートは46秒遅れのステージ2位+ボーナスタイム6秒獲得、その12秒後にピノ、イギータ、ニバリが続き、2秒遅れてシャフマンがフィニッシュ。ゴール直後路上に倒れ込んだシャフマンがリードを失いながらも18秒差でマイヨジョーヌを守り抜いた。
「今日はモチベーションも高く、積極的な走りができた。逃げグループの後ろでチームメイトたちが完璧な仕事をしてくれたので僕も続く必要があったんだ。第3ステージの落車で総合優勝は遠のいてしまったけれど、その分ステージ優勝に目標を切り替えて狙い続けていた。今日の勝利はチーム全員で勝ち取ったものだ」と、今季出場したフランスレースでステージ優勝記録を更新中のキンタナは語っている。
ライバル勢の猛攻を凌ぎきり、ドイツチャンピオンジャージの上にマイヨジョーヌを重ね着したシャフマンは、「パリ〜ニースで総合優勝だなんて素晴らしい気分だけど、それよりもとにかく厳しい一日だった。フェリックス、パトリック、そしてミカエルの3人自らレースを作ってくれた。終盤、特に残り3kmからは、正直言って苦痛でしかなかった。地獄に向かうような気分だったよ」と、キャリア初のワールドツアーレース総合優勝をもたらしたタフな一日を振り返る。
「でも、今は天国にいる気分さ。脚に感じる小さな痛みも全てそれに値するものだ。プロ4年目で掴んだ今回の勝利は僕にとってこれまでで最も重要で大きなステップになる。今までずっと総合系選手になれるかどうか疑問だったし、そうなることが夢だったから。今僕は最も価値のある1週間のステージレース総合優勝を手にしたんだ」と、並み居る強豪を抑えたシャフマンは締めくくっている。
フランス国内での無期限レース中止、ティレーノ〜アドリアティコ、ミラノ〜サンレモ、ジロ・デ・イタリアなどRCSスポルト管轄レースの延期、フランドルクラシックの中止など、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のために、欧州プロトンは明日から一時休業状態に入る。
本来の最終第8ステージを待たずして、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1日前倒し閉幕となることが決まった第78回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)。名物終着地であるニースの海岸通り「プロムナード・デ・ザングレ(イギリス人の遊歩道)」には辿り着かなかったものの、第7ステージのスタート地がニース市街地であることから大会名称は辛くも保たれた。
この日は前日のバーレーン・マクラーレンに続き、イスラエル・サイクリングアカデミーがレースから撤退。ペテル&ユライサガン兄弟をはじめ31名がレース中リタイアを選んでいる。
166.5kmコースの勝負所は最後に控える1級山岳ヴァルドゥブロール・ラ・コルミアーヌ(登坂距離16.3km/平均勾配6.3%)だが、それ以前にも序盤から1級、2級、2級と切り立った岩山に据え付けられた登りが多数登場する。今大会最初にして最後の長大山岳フィニッシュとあって、序盤から総合成績を狙う各チームの思惑が交錯した。
総合勢が多数加わったアタック合戦からエスケープしたのは総合10位のアラフィリップや、逃げ巧者デヘント、更には2日連続の逃げとなる山岳賞ジャージのエデを含む豪華な6名。この動きに乗ろうとしたロマン・バルデ(フランス。アージェードゥーゼル)やルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ)、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)らを振り払って逃げた。
逃げグループを形成した6名
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
オレリアン・パレパントル(フランス、アージェードゥーゼル)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)
アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFプロサイクリング)
リーダーチームのボーラ・ハンスグローエやアルケア・サムシックがコントロールするメイン集団から逃げる6名。3分弱のリードを得たことでアラフィリップはバーチャルリーダーに立ち、そしてペレスの献身的なアシストを受けたエデは途中の山岳ポイントを荒稼ぎして総合山岳賞獲得を決めている。
1級山岳ラ・コルミアーヌが近くほどにペースが上がり、逃げグループからはペレスが遅れ、メイン集団ではボーラ・ハンスグローエがサンウェブを従えた状態で集団の絞り込みを掛けていく。渓谷沿いの登坂が始まるとデヘントが加速し、調子の上がらないアラフィリップを振り切って独走体制に持ち込んだ。
1分後方のメイン集団ではクライマーを揃えたアルケア・サムシックが総合首位マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)を丸裸にしたものの、一度ペースが落ち着いたことでデヘントとの差は1分半に拡大。逃げ切りを見据えて踏むデヘントに対しては唯一マルタンが追走したものの、最終的にその背中を捉えることはなかった。
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のためにトレック・セガフレードのケニー・エリッソンド(フランス)やリッチー・ポート(オーストリア)がコントロールするメイン集団からはバルデもアタックしたが、断続的に緩斜面が現れる峠でリードを奪うには至らない。すると残り4kmサインをきっかけにナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)が飛び出した。
「パリ〜ニース最終日の最終山岳をアグレシッブなスタイルで獲りたかった」と言うキンタナは、牽制に陥るシャフマン、ベノート、イギータ、ニバリ、そしてピノを置き去りにして一瞬のうちにリードを築き上げる。一時逃げ切りの可能性を見出していたデヘントを捉えてもペースは緩まず、メイン集団とのタイム差は残り1km地点で45秒以上にまで拡大。フランスチームに移籍したキンタナが、ツール・ド・プロヴァンス、ツール・ド・アルプスに続く今季5勝目に向けて独走した。
メイン集団では36秒差の総合2位から逆転勝利を狙うベノートがアタック。苦しいシャフマンはニバリとピノ、イギータに牽引を任せるほか無かったものの、ベノートが最終盤に失速したことでリーダーポジションを辛くもキープする。先頭キンタナ、2番手ベノート、そして3番手のシャフマングループがそれぞれフィニッシュを目指した。
最後までペースを守ったキンタナがバイクとジャージを指差してクイーンステージ制覇。ベノートは46秒遅れのステージ2位+ボーナスタイム6秒獲得、その12秒後にピノ、イギータ、ニバリが続き、2秒遅れてシャフマンがフィニッシュ。ゴール直後路上に倒れ込んだシャフマンがリードを失いながらも18秒差でマイヨジョーヌを守り抜いた。
「今日はモチベーションも高く、積極的な走りができた。逃げグループの後ろでチームメイトたちが完璧な仕事をしてくれたので僕も続く必要があったんだ。第3ステージの落車で総合優勝は遠のいてしまったけれど、その分ステージ優勝に目標を切り替えて狙い続けていた。今日の勝利はチーム全員で勝ち取ったものだ」と、今季出場したフランスレースでステージ優勝記録を更新中のキンタナは語っている。
ライバル勢の猛攻を凌ぎきり、ドイツチャンピオンジャージの上にマイヨジョーヌを重ね着したシャフマンは、「パリ〜ニースで総合優勝だなんて素晴らしい気分だけど、それよりもとにかく厳しい一日だった。フェリックス、パトリック、そしてミカエルの3人自らレースを作ってくれた。終盤、特に残り3kmからは、正直言って苦痛でしかなかった。地獄に向かうような気分だったよ」と、キャリア初のワールドツアーレース総合優勝をもたらしたタフな一日を振り返る。
「でも、今は天国にいる気分さ。脚に感じる小さな痛みも全てそれに値するものだ。プロ4年目で掴んだ今回の勝利は僕にとってこれまでで最も重要で大きなステップになる。今までずっと総合系選手になれるかどうか疑問だったし、そうなることが夢だったから。今僕は最も価値のある1週間のステージレース総合優勝を手にしたんだ」と、並み居る強豪を抑えたシャフマンは締めくくっている。
フランス国内での無期限レース中止、ティレーノ〜アドリアティコ、ミラノ〜サンレモ、ジロ・デ・イタリアなどRCSスポルト管轄レースの延期、フランドルクラシックの中止など、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のために、欧州プロトンは明日から一時休業状態に入る。
パリ〜ニース2020第7ステージ結果
1位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 4:27:01 |
2位 | ティシュ・ベノート(ベルギー、サンウェブ) | 0:46 |
3位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:56 |
4位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) | |
5位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | |
6位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:58 |
7位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | 1:19 |
8位 | タネル・カンゲルト(エストニア、EFプロサイクリング) | 1:22 |
9位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル) | 1:32 |
10位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) |
個人総合成績
1位 | マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 27:14:23 |
2位 | ティシュ・ベノート(ベルギー、サンウェブ) | 0:18 |
3位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) | 0:59 |
4位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード) | 1:16 |
5位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 1:24 |
6位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック) | 1:30 |
7位 | ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) | 2:03 |
8位 | タネル・カンゲルト(エストニア、EFプロサイクリング) | 2:16 |
9位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 3:39 |
10位 | セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ) | 4:36 |
その他の特別賞
ポイント賞 | ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ) |
山岳賞 | ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) |
ヤングライダー賞 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) |
チーム総合成績 | サンウェブ |
Text:So.Isobe
Photo:CorVos
Photo:CorVos
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