2020/02/26(水) - 09:07
ロード用チューブレスタイヤの先駆者 IRCが、Formula Pro(フォーミュラ・プロ)のモデルチェンジを正式発表。新作は全てのモデルにRBCCコンパウンドを採用しグリップ力を強化するなど、全方位に進化を遂げている。
IRCがロードバイク用チューブレスタイヤを初めてリリースしてから13年。当時、ロード用TLを開発しているブランドは片手で数え切れるほどしか無く、IRCはその頃から開発、販売を続けてきた。長い開発と販売期間によるノウハウを集結したロードバイク用チューブレスタイヤ「Formula Pro(フォーミュラ・プロ)」がモデルチェンジを果たす。神宮クリテリウムのブースにて行われた発表会の様子を交え、新製品を紹介しよう。
(3/4 更新)また、シクロワイアードでは新型Formula Proの特集ページを展開中。このページでは書ききれないIRCチューブレスタイヤの歴史、テクノロジーを紹介しているため、ぜひチェックして欲しい。リンクはこちら。)
3モデルのラインアップは変わらず、S-LIGHTモデルのみチューブレスレディに変更
Formula Proはハイグリップ/オールラウンドモデルの「RBCC」、耐パンク性を強化したモデルの「X-GUARD」、軽量モデルの「S-LIGHT」という3モデルがラインアップされており、新型でも継続される。この3種類のモデルは、2017年にリリースされた4代目Formula Proでは全て「チューブレス」仕様だった。
しかし5代目となる新型ではS-LIGHTが「チューブレスレディ」仕様に変更される。チューブレスレディとは、タイヤ自体に空気を保持する機能を備えず、シーラントでタイヤ内に皮膜を作ることで空気をタイヤ内に保持させようという規格。
チューブレスレディのメリットはタイヤ自体を軽量に仕上げられること。新型S-LIGHTは205g(23C)、220g(25C)と、シーラントを30ml充填してもなおヒルクライム用として十分選択肢に挙げられる軽さを手に入れた。
全方位で進化を遂げるFormula Pro 3つの大きな変更
新型Formula Proでは主に3つのアップデートが行われた。まず1つは、RBCCというグリップ強化コンパウンドが大幅な進化を遂げたこと。各性能がアップデートされており、転がり抵抗が5%、グリップレベルが15%、コンパウンド摩耗試験においての摩耗レベルも280%、耐候性(紫外線等によるひび割れなど)が230%が向上している。そんな新RBCCはラインアップする3種類全てに採用されることになった。
2つ目はトレッドパターンが杉目に加え円周方向に刻まれる縦溝が設けられたこと。縦溝は一般軽快車用タイヤにも用いられるほどポピュラーなトレッドパターンであり、意図は転がり抵抗低減にある。Formula Proは、新たなコンパウンドによりグリップ力と耐久性が向上し、さらに新たなトレッドパターンにより転がり抵抗を低減、全方位に進化を遂げたと言っても過言ではない。
3つ目はビード製法の変更と補強を加えたこと。チューブレスタイヤにおいてビード部分の設計は空気保持やホールド力に直結する大事なポイント。製法を変更し、設計精度が向上したことで、ISO規格に準拠した形状のままタイヤを嵌めやすいビードへとアップデートされているという。また、補強は強い力がかかるビードが、リムのフックによって傷つけられないようにするため。あらゆるメーカー/ブランドのホイールでFormula Proを問題なく使用できるようにする配慮だ。
トレンドのリム幅に合わせるサイズ展開
近年ホイールのリム幅とタイヤ幅が太くなる傾向にあり、軽量さを好むプロ選手も25C幅が定番となっている。そのトレンドを受け、新型Formula Proでは25C、28Cと30Cが全てのモデルでラインアップされることに。S-LIGHTのみは軽量性を求めるユーザー向けに23Cが追加されていることもポイント。23Cは内幅15mmのリムのみ対応しているため、選ぶ際は注意して欲しい。25Cと28Cタイヤは主流になりつつある15mm、17mm、19mmの3種類のリム幅に対応する。価格はいずれも7,600円(税抜)だ。近日公開予定の特集にて設計意図などテクノロジーの詳細に触れる予定だ。
チューブレスタイヤの進化と共に歩んできたチームユーラシア橋川監督
橋川健さんは2010年より現在までチームユーラシア、2015年にチャンピオンシステムの監督としてIRCのチューブレスタイヤの性能と進化を見届けてきた。新型Formula Proの発表会では、チームとIRCタイヤがレースで歩んできたキーとなるエピソードを語ってくれた。
IRCのタイヤを使い始めた2010年当時、レースではまだまだチューブラーが席巻していた頃。橋川さんとしても使用する前はチューブラーのほうが優れていると考えていたが、使用してみるとチューブレスの性能に驚いてしまったという。その後2015年、ベルギーのクラシックレースにチャンピオンシステムが出場。他チームのライダーは次々とパンクに見舞われ戦線離脱していく一方、チャンピオンシステムの選手たちは一人もパンクすること無くレースを終えることができたという。チューブレスに訝しげであった他のチームメイトたちも、耐パンク性能に関する優位性をそこで実感したという。
また、チームユーラシアは開発にも協力。2019年の5月に行われたサンプルのブラインドテストで選手全員が異口同音に性能を絶賛したという。それが現在使われている新型「RBCC」だ。その後、富士スピードウェイにて行われた雨の全日本選手権ロードレースでは、早速新型RBCCのタイヤを投入。異常なほど落車が多発するなか、チームユーラシアの選手は誰一人落車することなく、グリップ力の高さを実証した。
加えてブラインドテストでは「RBCC」モデルの方が「S-LIGHT」よりも軽く転がるという意見も得られた。25Cで比較すると重量は約50gの差があり、重量による影響は少なくないはず。それでもRBCCの評価のほうが高かったと橋川さんは言う。もちろんテストでは空気圧は統一したという。
このRBCCの転がりの軽さについて、IRCはRBCC(チューブレス)とS-LIGHT(チューブレスレディ)との比較テストを行った。ブラインドテストの意見同様、数値としてもRBCCの方が転がり抵抗が少ないという結果だという。ちなみに同一の金型とゴムを使用したチューブレスとチューブレスレディが、IRCのラインアップに用意されるのは新型Formula Proが初めて。ほぼ同じTLとTLRタイヤの比較が初めてということになる。その結果が、TLの方が転がり抵抗においては優位だったという。この結果は非常に興味深い。これからIRCでもその理由についてさらに追求していくという。
近年はチューブレスタイヤを試すプロ選手が現れているように、タイヤの性能がチューブラーに匹敵するようになっており、潮流が変わるのではないかと橋川さんは考える。昨年のクラシックレースで使用されたチューブレスタイヤのパンクについては、空気圧などのセッティングが上手く煮詰められていなかったと分析。それを踏まえた上で、橋川さんとチームユーラシアはIRCのチューブレスタイヤを積極的に使って行くという。
IRC Formula Pro Tubeless RBCC
サイズ:25C(270g)、28C(315g)、30C(330g)
価 格:7,600円(税抜)
IRC Formula Pro Tubeless X-GUARD
サイズ:25C(300g)、28C(345g)、30C(370g)
価 格:7,600円(税抜)
IRC Formula Pro Tubeless Ready S-LIGHT
サイズ:23C(205g)、25C(220g)、28C(250g)、30C(275g)
価 格:7,600円(税抜)
IRCがロードバイク用チューブレスタイヤを初めてリリースしてから13年。当時、ロード用TLを開発しているブランドは片手で数え切れるほどしか無く、IRCはその頃から開発、販売を続けてきた。長い開発と販売期間によるノウハウを集結したロードバイク用チューブレスタイヤ「Formula Pro(フォーミュラ・プロ)」がモデルチェンジを果たす。神宮クリテリウムのブースにて行われた発表会の様子を交え、新製品を紹介しよう。
(3/4 更新)また、シクロワイアードでは新型Formula Proの特集ページを展開中。このページでは書ききれないIRCチューブレスタイヤの歴史、テクノロジーを紹介しているため、ぜひチェックして欲しい。リンクはこちら。)
3モデルのラインアップは変わらず、S-LIGHTモデルのみチューブレスレディに変更
Formula Proはハイグリップ/オールラウンドモデルの「RBCC」、耐パンク性を強化したモデルの「X-GUARD」、軽量モデルの「S-LIGHT」という3モデルがラインアップされており、新型でも継続される。この3種類のモデルは、2017年にリリースされた4代目Formula Proでは全て「チューブレス」仕様だった。
しかし5代目となる新型ではS-LIGHTが「チューブレスレディ」仕様に変更される。チューブレスレディとは、タイヤ自体に空気を保持する機能を備えず、シーラントでタイヤ内に皮膜を作ることで空気をタイヤ内に保持させようという規格。
チューブレスレディのメリットはタイヤ自体を軽量に仕上げられること。新型S-LIGHTは205g(23C)、220g(25C)と、シーラントを30ml充填してもなおヒルクライム用として十分選択肢に挙げられる軽さを手に入れた。
全方位で進化を遂げるFormula Pro 3つの大きな変更
新型Formula Proでは主に3つのアップデートが行われた。まず1つは、RBCCというグリップ強化コンパウンドが大幅な進化を遂げたこと。各性能がアップデートされており、転がり抵抗が5%、グリップレベルが15%、コンパウンド摩耗試験においての摩耗レベルも280%、耐候性(紫外線等によるひび割れなど)が230%が向上している。そんな新RBCCはラインアップする3種類全てに採用されることになった。
2つ目はトレッドパターンが杉目に加え円周方向に刻まれる縦溝が設けられたこと。縦溝は一般軽快車用タイヤにも用いられるほどポピュラーなトレッドパターンであり、意図は転がり抵抗低減にある。Formula Proは、新たなコンパウンドによりグリップ力と耐久性が向上し、さらに新たなトレッドパターンにより転がり抵抗を低減、全方位に進化を遂げたと言っても過言ではない。
3つ目はビード製法の変更と補強を加えたこと。チューブレスタイヤにおいてビード部分の設計は空気保持やホールド力に直結する大事なポイント。製法を変更し、設計精度が向上したことで、ISO規格に準拠した形状のままタイヤを嵌めやすいビードへとアップデートされているという。また、補強は強い力がかかるビードが、リムのフックによって傷つけられないようにするため。あらゆるメーカー/ブランドのホイールでFormula Proを問題なく使用できるようにする配慮だ。
トレンドのリム幅に合わせるサイズ展開
近年ホイールのリム幅とタイヤ幅が太くなる傾向にあり、軽量さを好むプロ選手も25C幅が定番となっている。そのトレンドを受け、新型Formula Proでは25C、28Cと30Cが全てのモデルでラインアップされることに。S-LIGHTのみは軽量性を求めるユーザー向けに23Cが追加されていることもポイント。23Cは内幅15mmのリムのみ対応しているため、選ぶ際は注意して欲しい。25Cと28Cタイヤは主流になりつつある15mm、17mm、19mmの3種類のリム幅に対応する。価格はいずれも7,600円(税抜)だ。近日公開予定の特集にて設計意図などテクノロジーの詳細に触れる予定だ。
チューブレスタイヤの進化と共に歩んできたチームユーラシア橋川監督
橋川健さんは2010年より現在までチームユーラシア、2015年にチャンピオンシステムの監督としてIRCのチューブレスタイヤの性能と進化を見届けてきた。新型Formula Proの発表会では、チームとIRCタイヤがレースで歩んできたキーとなるエピソードを語ってくれた。
IRCのタイヤを使い始めた2010年当時、レースではまだまだチューブラーが席巻していた頃。橋川さんとしても使用する前はチューブラーのほうが優れていると考えていたが、使用してみるとチューブレスの性能に驚いてしまったという。その後2015年、ベルギーのクラシックレースにチャンピオンシステムが出場。他チームのライダーは次々とパンクに見舞われ戦線離脱していく一方、チャンピオンシステムの選手たちは一人もパンクすること無くレースを終えることができたという。チューブレスに訝しげであった他のチームメイトたちも、耐パンク性能に関する優位性をそこで実感したという。
また、チームユーラシアは開発にも協力。2019年の5月に行われたサンプルのブラインドテストで選手全員が異口同音に性能を絶賛したという。それが現在使われている新型「RBCC」だ。その後、富士スピードウェイにて行われた雨の全日本選手権ロードレースでは、早速新型RBCCのタイヤを投入。異常なほど落車が多発するなか、チームユーラシアの選手は誰一人落車することなく、グリップ力の高さを実証した。
加えてブラインドテストでは「RBCC」モデルの方が「S-LIGHT」よりも軽く転がるという意見も得られた。25Cで比較すると重量は約50gの差があり、重量による影響は少なくないはず。それでもRBCCの評価のほうが高かったと橋川さんは言う。もちろんテストでは空気圧は統一したという。
このRBCCの転がりの軽さについて、IRCはRBCC(チューブレス)とS-LIGHT(チューブレスレディ)との比較テストを行った。ブラインドテストの意見同様、数値としてもRBCCの方が転がり抵抗が少ないという結果だという。ちなみに同一の金型とゴムを使用したチューブレスとチューブレスレディが、IRCのラインアップに用意されるのは新型Formula Proが初めて。ほぼ同じTLとTLRタイヤの比較が初めてということになる。その結果が、TLの方が転がり抵抗においては優位だったという。この結果は非常に興味深い。これからIRCでもその理由についてさらに追求していくという。
近年はチューブレスタイヤを試すプロ選手が現れているように、タイヤの性能がチューブラーに匹敵するようになっており、潮流が変わるのではないかと橋川さんは考える。昨年のクラシックレースで使用されたチューブレスタイヤのパンクについては、空気圧などのセッティングが上手く煮詰められていなかったと分析。それを踏まえた上で、橋川さんとチームユーラシアはIRCのチューブレスタイヤを積極的に使って行くという。
IRC Formula Pro Tubeless RBCC
サイズ:25C(270g)、28C(315g)、30C(330g)
価 格:7,600円(税抜)
IRC Formula Pro Tubeless X-GUARD
サイズ:25C(300g)、28C(345g)、30C(370g)
価 格:7,600円(税抜)
IRC Formula Pro Tubeless Ready S-LIGHT
サイズ:23C(205g)、25C(220g)、28C(250g)、30C(275g)
価 格:7,600円(税抜)
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