2020/01/24(金) - 16:18
ナーバスな横風区間でのポジション争いを経て始まったツアー・ダウンアンダー第4ステージの集団スプリント。独特の低いポジションでかっ飛んだカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)がベネットやフィリプセンを下してステージ2勝目を飾った。
アデレード郊外のノーウッドからゴージロード(峡谷路)を経てアデレードヒルズを駆け抜け、オーストラリア最長(2,508km)の河川であるマレー川が作り出した広大な平野部にフィニッシュするツアー・ダウンアンダー第4ステージ。フィニッシュ地点としては初登場のマレーブリッジはその名の通りマレー川に初めてかかったマレー橋(1879年完成)がある田舎町として知られている。
この日は「ウェストパックチャレンジツアー」と呼ばれる一般サイクリストが朝早くにスタートしてプロと同じコースを走るイベントが開催された。ニュートラル区間を含む162kmを走る最長カテゴリーの参加費はジャージ付きで155ドル(約11,800円)。2020年は合計4,000人以上の参加者を集めた。
第3ステージを終えた時点で総合1位リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)と総合2位ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)は6秒差、総合3位ロバート・パワー(オーストラリア、サンウェブ)は9秒差。この接戦は18.1km地点と40.3km地点に設定された中間スプリントでのボーナスタイム争いを演出した。
ボーナスタイムを狙いたいのはもちろんインピーとパワーで、ミッチェルトン・スコットとサンウェブの牽引によって逃げを封じ込めたままメイン集団は第1スプリントに突入する。エースのためにボーナスタイムを消したいジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)とマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)に先行を許しながらも、3番手通過したインピーが1秒のボーナスタイムを獲得する。インピーは続く第2スプリントでもボーナスタイム2秒を獲得し、総合1位ポートとの総合タイム差を3秒にまで詰めることに成功している。
2つの中間スプリントでのボーナスタイム争いが落ち着くとようやくこの日の逃げが生まれた。山岳賞ジャージを着るジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)や、序盤からアタックを繰り返していたローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)を含む5名が逃げ、まずはリーダーチームのトレック・セガフレードが、そして後半にかけてスプリンターチームが追いかける古典的な展開に。KOMで山岳ポイントを稼いだロスコフや、ステージ敢闘賞を獲得したデヴリーズを含めて逃げは、横風を警戒してスピードを上げるメイン集団によって残り25km地点で捕らえられている。
フィニッシュ地点マレーブリッジに向かって南下するステージ終盤は概ね横風(西風)。集団がエシュロンを形成して分断するような強風ではないものの、集団内の緊張感を高めるには必要十分な風。残り17kmを切ってユンボ・ヴィスマが60〜65km/hの高速巡航を開始すると集団は縦に長く伸びたが、決定的な集団分裂は最後まで起こらなかった。
アルカンシェル(ピーダスン)がリーダージャージ(ポート)のポジションを守り、ミッチェルトン・スコットやEFプロサイクリング、アスタナ、UAEチームエミレーツといったライバルチームのペースアップを耐え凌ぐ。ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)はタイミング悪くパンクに見舞われたものの集団に復帰。ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、EFプロサイクリング)らが落車するなど、ナーバスな集団がマレーブリッジに近づいていく。
ドゥクーニンク・クイックステップやロット・スーダル、コフィディス、グルパマFDJが集団先頭に入り乱れる形で残り1kmアーチを潜り、残り300mの最終コーナーを曲がるとミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)の最終リードアウトがスタート。その後ろから、フィニッシュラインまで150mを残してサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が加速した。
第1ステージに続く2勝目に向けた体制が完璧に整ったかに見えた。しかし、残り100mでスリップストリームを脱したユアンがすぐさまベネットに並ぶ。ベネットが右を向いて確認したユアンの加速はフィニッシュラインまで伸び続けた。
最終コーナーで40km/h程度まで落ちたところから加速し、登り基調の最終ストレートを60km/hを超えるスピードで駆け抜けたユアンが勝利。頭を前に深く下げた独特のエアロポジションでもがくことなく、好調さを感じさせるパワフルなスプリントで押し切った。
「最終コーナーが厄介だったけど、正直に言うと、コーナーがあるようなテクニカルなフィニッシュが好きなんだ。チームメイトの力を借りてサム・ベネットの番手につけて、最終コーナーを抜けてからスプリントした」と、第2ステージに続く2勝目を飾ったユアン。
翌日の第5ステージもスプリンター向きだが、残り20km地点にKOMカービーヒル(距離4km/平均5.6%/最大12.2%)が設定されている。「明日はどちらに転ぶか図りかねるステージ。前回同じようなコースを走った時は登りで脱落してしまった。明日こそは集団に食らいつけることを願っているよ」とユアンは語っているが、フィニッシュでのボーナスタイム獲得を狙うミッチェルトン・スコットがメイン集団のペースを猛烈に上げることは想像に容易い。
第4ステージ全体の平均スピードは43.84km/h。ペースが上がった残り17km地点からフィニッシュラインまでの平均スピードは54km/hだった。エースのハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)とサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)を安全にフィニッシュまでエスコートした新城幸也(バーレーン・マクラーレン)はトップと同タイムのステージ56位。「今日は2人がしっかりついてきてくれた」と手応えを感じながらフィニッシュした新城は変わらず総合30位につけている。
アデレード郊外のノーウッドからゴージロード(峡谷路)を経てアデレードヒルズを駆け抜け、オーストラリア最長(2,508km)の河川であるマレー川が作り出した広大な平野部にフィニッシュするツアー・ダウンアンダー第4ステージ。フィニッシュ地点としては初登場のマレーブリッジはその名の通りマレー川に初めてかかったマレー橋(1879年完成)がある田舎町として知られている。
この日は「ウェストパックチャレンジツアー」と呼ばれる一般サイクリストが朝早くにスタートしてプロと同じコースを走るイベントが開催された。ニュートラル区間を含む162kmを走る最長カテゴリーの参加費はジャージ付きで155ドル(約11,800円)。2020年は合計4,000人以上の参加者を集めた。
第3ステージを終えた時点で総合1位リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)と総合2位ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)は6秒差、総合3位ロバート・パワー(オーストラリア、サンウェブ)は9秒差。この接戦は18.1km地点と40.3km地点に設定された中間スプリントでのボーナスタイム争いを演出した。
ボーナスタイムを狙いたいのはもちろんインピーとパワーで、ミッチェルトン・スコットとサンウェブの牽引によって逃げを封じ込めたままメイン集団は第1スプリントに突入する。エースのためにボーナスタイムを消したいジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)とマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)に先行を許しながらも、3番手通過したインピーが1秒のボーナスタイムを獲得する。インピーは続く第2スプリントでもボーナスタイム2秒を獲得し、総合1位ポートとの総合タイム差を3秒にまで詰めることに成功している。
2つの中間スプリントでのボーナスタイム争いが落ち着くとようやくこの日の逃げが生まれた。山岳賞ジャージを着るジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)や、序盤からアタックを繰り返していたローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)を含む5名が逃げ、まずはリーダーチームのトレック・セガフレードが、そして後半にかけてスプリンターチームが追いかける古典的な展開に。KOMで山岳ポイントを稼いだロスコフや、ステージ敢闘賞を獲得したデヴリーズを含めて逃げは、横風を警戒してスピードを上げるメイン集団によって残り25km地点で捕らえられている。
フィニッシュ地点マレーブリッジに向かって南下するステージ終盤は概ね横風(西風)。集団がエシュロンを形成して分断するような強風ではないものの、集団内の緊張感を高めるには必要十分な風。残り17kmを切ってユンボ・ヴィスマが60〜65km/hの高速巡航を開始すると集団は縦に長く伸びたが、決定的な集団分裂は最後まで起こらなかった。
アルカンシェル(ピーダスン)がリーダージャージ(ポート)のポジションを守り、ミッチェルトン・スコットやEFプロサイクリング、アスタナ、UAEチームエミレーツといったライバルチームのペースアップを耐え凌ぐ。ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ)はタイミング悪くパンクに見舞われたものの集団に復帰。ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、EFプロサイクリング)らが落車するなど、ナーバスな集団がマレーブリッジに近づいていく。
ドゥクーニンク・クイックステップやロット・スーダル、コフィディス、グルパマFDJが集団先頭に入り乱れる形で残り1kmアーチを潜り、残り300mの最終コーナーを曲がるとミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)の最終リードアウトがスタート。その後ろから、フィニッシュラインまで150mを残してサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が加速した。
第1ステージに続く2勝目に向けた体制が完璧に整ったかに見えた。しかし、残り100mでスリップストリームを脱したユアンがすぐさまベネットに並ぶ。ベネットが右を向いて確認したユアンの加速はフィニッシュラインまで伸び続けた。
最終コーナーで40km/h程度まで落ちたところから加速し、登り基調の最終ストレートを60km/hを超えるスピードで駆け抜けたユアンが勝利。頭を前に深く下げた独特のエアロポジションでもがくことなく、好調さを感じさせるパワフルなスプリントで押し切った。
「最終コーナーが厄介だったけど、正直に言うと、コーナーがあるようなテクニカルなフィニッシュが好きなんだ。チームメイトの力を借りてサム・ベネットの番手につけて、最終コーナーを抜けてからスプリントした」と、第2ステージに続く2勝目を飾ったユアン。
翌日の第5ステージもスプリンター向きだが、残り20km地点にKOMカービーヒル(距離4km/平均5.6%/最大12.2%)が設定されている。「明日はどちらに転ぶか図りかねるステージ。前回同じようなコースを走った時は登りで脱落してしまった。明日こそは集団に食らいつけることを願っているよ」とユアンは語っているが、フィニッシュでのボーナスタイム獲得を狙うミッチェルトン・スコットがメイン集団のペースを猛烈に上げることは想像に容易い。
第4ステージ全体の平均スピードは43.84km/h。ペースが上がった残り17km地点からフィニッシュラインまでの平均スピードは54km/hだった。エースのハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)とサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)を安全にフィニッシュまでエスコートした新城幸也(バーレーン・マクラーレン)はトップと同タイムのステージ56位。「今日は2人がしっかりついてきてくれた」と手応えを感じながらフィニッシュした新城は変わらず総合30位につけている。
ツアー・ダウンアンダー2020第4ステージ結果
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 3:29:08 |
2位 | サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | アンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) | |
5位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ) | |
6位 | マーティン・ラース(エストニア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング) | |
8位 | エリック・バシュカ(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
9位 | マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ) | |
10位 | ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
56位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) |
個人総合成績
1位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 13:39:32 |
2位 | ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:03 |
3位 | ロバート・パワー(オーストラリア、サンウェブ) | 0:00:08 |
4位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:11 |
5位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィスマ) | 0:00:14 |
6位 | ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:15 |
7位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム) | |
8位 | ローハン・デニス(オーストラリア、チームイネオス) | |
9位 | ディラン・ファンバーレ(オランダ、チームイネオス) | |
10位 | ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:23 |
30位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) | 0:00:44 |
その他の特別賞
ポイント賞 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) |
山岳賞 | ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム) |
ヤングライダー賞 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) |
チーム総合成績 | ミッチェルトン・スコット |
ステージ敢闘賞 | ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ) |
text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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