2019/07/24(水) - 02:06
最高気温が39度まで上がったツール・ド・フランス第16ステージは集団スプリントで決着。落車リタイアした総合9位フルサングを欠く集団によるスプリントで、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が今大会2勝目をマークした。
7月23日(火)第16ステージ
ニーム〜ニーム
距離:177km
獲得標高差:1,500m
天候:晴れ
気温:36〜39度
7月23日(火)第16ステージ ニーム〜ニーム 177km photo:A.S.O.
7月23日(火)第16ステージ ニーム〜ニーム 177km photo:A.S.O.
コロンビア国旗があちこちに photo:Kei Tsuji
早めに出走サインを終えたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
水道橋ポン・デュ・ガールの前を通過する逃げグループ photo:Kei Tsuji
最高気温39度の南フランスを駆ける
ピレネー山岳ステージをグルペットで乗り越え、最後の休息日で英気を養ったスプリンターたちに久々にチャンスが回ってきた。最終週の幕開けを告げるツール・ド・フランス第17ステージは、2017年ブエルタ・ア・エスパーニャの開幕地であるニームを発着する177km。古くから織物の町と栄え、デニムの語源(デ・ニーム)となったニームの円形闘技場の前をスタートし、最高気温39度という灼熱の内陸部を走ってニームの町外れの大通りでフィニッシュを迎える。
大会3週目をスタートさせたのは163名の選手たち。背中の痛みが回復せずにリタイアを選んだウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)を除くプロトンが、暑さがピークを迎える午後1時35分、南フランスらしい乾いた内陸部へと走り出す。序盤に登場する水道橋ポン・デュ・ガールに到着するまでに5名の逃げグループが形成された。
逃げグループを形成した5名
ラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
ルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド、CCCチーム)
アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)
今大会5回目の逃げを試みたロセットを含む5名の『逃げ屋』が暑さの中を逃げる。しかしロット・スーダルやユンボ・ヴィズマ、UAEチームエミレーツといったスプリンターチームがすぐさまメイン集団のコントロールを行なったため、タイム差が2分以上に広がることはなかった。
平均スピード45km/h前後で進行したメイン集団内ではゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)がコーナリング中にスリップダウンするシーンも。今大会3回目の落車に見舞われたトーマスは大怪我を負うことなくメイン集団に復帰している。
水道橋ポン・デュ・ガールを通過するメイン集団 photo:Kei Tsuji
今大会3度目の落車に見舞われたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:CorVos
小さなタイム差で逃げ続けるルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド、CCCチーム) photo:Kei Tsuji
スプリンターチームがレースを支配し、総合9位フルサングが落車リタイア
スプリントポイント(65km地点)を逃げグループから1分15秒遅れで差し掛かったメイン集団はエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)先頭。その後もスプリンターチームがタイム差を1分前後に押さえ込みながら残り50kmを切る。風を警戒する総合系チームも集団前方に上がったが、エシュロンを形成して集団が分裂するような事態は起こらなかった。
残り28km地点で発生したのは集団分裂ではなく集団落車。ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)がセース・ボル(オランダ、サンウェブ)らとともに地面に叩きつけられた。マイヨジョーヌから5分27秒遅れの総合9位につけていたフルサングは再スタートすることができず、そのまま救急車でフィニッシュ地点に向かうことに。X線検査で骨折は発見されなかったが、前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネを制したフルサングがアルプス決戦を前にレースを去った。
逃げグループとメイン集団のタイム差は残り15km地点で40秒。ユンボ・ヴィズマやドゥクーニンク・クイックステップの懸命な集団牽引によってタイム差は縮小を続け、10秒前後のタイム差を保ったままニームの街に差し掛かる。フルサングに続いて総合13位ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ディメンションデータ)も落車によってメイン集団から脱落。総合14位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)もこの落車の影響で遅れを被った。
最後まで協力して逃げ続けた先頭5名だったが、残り10kmを切ってからフィニッシュまで下り基調&向かい風基調のコースを平均スピード57.2km/hで駆け抜けたプロトンに残り2.5km地点で飲み込まれてしまう。そこからスプリンターチームによるリードアウトバトルが始まった。
フラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過し、ドゥクーニンク・クイックステップが誇るミケル・モルコフ(デンマーク)とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)という2人のナショナルチャンピオンが先頭に立ってリードアウト。残り150mからエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が加速を開始したものの、後方からロングスプリントを仕掛けたユアンが並ぶ。発射台役リケーゼを追い抜いてからさらに加速したユアンがヴィヴィアーニを振り切った。
トリコロールとマイヨジョーヌ photo:Kei Tsuji
オクシタニー地域圏ガール県の田舎町を走る逃げグループ photo:Kei Tsuji
メイン集団を牽引するマキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・スーダル)ら photo:CorVos
灼熱のスプリントを締めくくったユアンが今大会ステージ2勝目
向かい風が吹くスプリントで、ユアンのトップスピードは66.6km/h。マシューズの67.5km/hやボニファツィオの67.2km/hに及ばないが、ドゥクーニンク・クイックステップのリードアウトトレインを巧く利用しながら好タイミングで踏み切ったユアンが勝利した。第11ステージに続く2勝目を飾ったユアンは「自分に何が起こっているのかよくわからない。出場するだけで夢のような、そしてステージ1勝するだけでも夢のようなツール・ド・フランスでステージ2勝するなんて」と喜ぶ。
今大会ステージ2勝を飾っている唯一のスプリンターとなったユアンは「正直に打ち明けると今日はあまり調子が良くなかった。残り1kmの時点では理想的な位置どりではなかったものの、クイックステップのトレインに乗って大きくジャンプアップ。暑さにやられていたけど、現地に駆けつけてくれた妻と娘の存在がモチベーションになったんだ」と勝利の秘訣を語る。
今大会9回目のトップ5フィニッシュしたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がマイヨヴェールをキープ。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は平坦ステージを平穏に集団内で終えている。
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)と競り合うカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
ヴィヴィアーニやフルーネウェーヘンを振り切るカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
スプリント2勝目を飾ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
第16ステージフォトフィニッシュ photo:A.S.O.
スプリント2勝目を飾ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
マイヨジョーヌ11日目を終えたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
マイヨヴェールと闘牛士 photo:Kei Tsuji
7月23日(火)第16ステージ
ニーム〜ニーム
距離:177km
獲得標高差:1,500m
天候:晴れ
気温:36〜39度
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最高気温39度の南フランスを駆ける
ピレネー山岳ステージをグルペットで乗り越え、最後の休息日で英気を養ったスプリンターたちに久々にチャンスが回ってきた。最終週の幕開けを告げるツール・ド・フランス第17ステージは、2017年ブエルタ・ア・エスパーニャの開幕地であるニームを発着する177km。古くから織物の町と栄え、デニムの語源(デ・ニーム)となったニームの円形闘技場の前をスタートし、最高気温39度という灼熱の内陸部を走ってニームの町外れの大通りでフィニッシュを迎える。
大会3週目をスタートさせたのは163名の選手たち。背中の痛みが回復せずにリタイアを選んだウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)を除くプロトンが、暑さがピークを迎える午後1時35分、南フランスらしい乾いた内陸部へと走り出す。序盤に登場する水道橋ポン・デュ・ガールに到着するまでに5名の逃げグループが形成された。
逃げグループを形成した5名
ラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
ポール・ウルスラン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
ルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド、CCCチーム)
アレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)
今大会5回目の逃げを試みたロセットを含む5名の『逃げ屋』が暑さの中を逃げる。しかしロット・スーダルやユンボ・ヴィズマ、UAEチームエミレーツといったスプリンターチームがすぐさまメイン集団のコントロールを行なったため、タイム差が2分以上に広がることはなかった。
平均スピード45km/h前後で進行したメイン集団内ではゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)がコーナリング中にスリップダウンするシーンも。今大会3回目の落車に見舞われたトーマスは大怪我を負うことなくメイン集団に復帰している。
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スプリンターチームがレースを支配し、総合9位フルサングが落車リタイア
スプリントポイント(65km地点)を逃げグループから1分15秒遅れで差し掛かったメイン集団はエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)先頭。その後もスプリンターチームがタイム差を1分前後に押さえ込みながら残り50kmを切る。風を警戒する総合系チームも集団前方に上がったが、エシュロンを形成して集団が分裂するような事態は起こらなかった。
残り28km地点で発生したのは集団分裂ではなく集団落車。ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)がセース・ボル(オランダ、サンウェブ)らとともに地面に叩きつけられた。マイヨジョーヌから5分27秒遅れの総合9位につけていたフルサングは再スタートすることができず、そのまま救急車でフィニッシュ地点に向かうことに。X線検査で骨折は発見されなかったが、前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネを制したフルサングがアルプス決戦を前にレースを去った。
逃げグループとメイン集団のタイム差は残り15km地点で40秒。ユンボ・ヴィズマやドゥクーニンク・クイックステップの懸命な集団牽引によってタイム差は縮小を続け、10秒前後のタイム差を保ったままニームの街に差し掛かる。フルサングに続いて総合13位ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ディメンションデータ)も落車によってメイン集団から脱落。総合14位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)もこの落車の影響で遅れを被った。
最後まで協力して逃げ続けた先頭5名だったが、残り10kmを切ってからフィニッシュまで下り基調&向かい風基調のコースを平均スピード57.2km/hで駆け抜けたプロトンに残り2.5km地点で飲み込まれてしまう。そこからスプリンターチームによるリードアウトバトルが始まった。
フラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過し、ドゥクーニンク・クイックステップが誇るミケル・モルコフ(デンマーク)とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)という2人のナショナルチャンピオンが先頭に立ってリードアウト。残り150mからエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が加速を開始したものの、後方からロングスプリントを仕掛けたユアンが並ぶ。発射台役リケーゼを追い抜いてからさらに加速したユアンがヴィヴィアーニを振り切った。
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灼熱のスプリントを締めくくったユアンが今大会ステージ2勝目
向かい風が吹くスプリントで、ユアンのトップスピードは66.6km/h。マシューズの67.5km/hやボニファツィオの67.2km/hに及ばないが、ドゥクーニンク・クイックステップのリードアウトトレインを巧く利用しながら好タイミングで踏み切ったユアンが勝利した。第11ステージに続く2勝目を飾ったユアンは「自分に何が起こっているのかよくわからない。出場するだけで夢のような、そしてステージ1勝するだけでも夢のようなツール・ド・フランスでステージ2勝するなんて」と喜ぶ。
今大会ステージ2勝を飾っている唯一のスプリンターとなったユアンは「正直に打ち明けると今日はあまり調子が良くなかった。残り1kmの時点では理想的な位置どりではなかったものの、クイックステップのトレインに乗って大きくジャンプアップ。暑さにやられていたけど、現地に駆けつけてくれた妻と娘の存在がモチベーションになったんだ」と勝利の秘訣を語る。
今大会9回目のトップ5フィニッシュしたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がマイヨヴェールをキープ。マイヨジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)は平坦ステージを平穏に集団内で終えている。
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ツール・ド・フランス2019第16ステージ結果
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 3:57:08 |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | |
4位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー) | |
6位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) | |
7位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
8位 | ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) | |
9位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) | |
10位 | アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール) | |
69位 | ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ディメンションデータ) | 0:01:02 |
71位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | |
DNF | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | |
DNS | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 64:57:30 |
2位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) | 0:01:35 |
3位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) | 0:01:47 |
4位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:01:50 |
5位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 0:02:02 |
6位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:14 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:04:54 |
8位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:05:00 |
9位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:05:33 |
10位 | リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) | 0:06:30 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 309pts |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 224pts |
3位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 203pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 64pts |
2位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 50pts |
3位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) | 37pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 64:59:32 |
2位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:13:31 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:42:00 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 195:19:44 |
2位 | トレック・セガフレード | 0:30:45 |
3位 | チームイネオス | 0:30:54 |
text:Kei Tsuji in Nimes, France