2019/01/27(日) - 09:50
ウィリエールのハイエンドエアロロード「Cento10 PRO」をインプレッション。ツール・ド・フランスに合わせて登場し、プロ選手らの要望に応えて、より高剛性に仕上げられたレーシングマシンの実力に迫る。
北イタリアのロッサノ・ベネトに拠点を置くウィリエール・トリエスティーナ社。その歴史は旧く、1906年、日本の表記にすると明治39年にまで遡る。多くの老舗が集まるイタリアにおいても、長い歴史を誇るブランドとして人気を集めている。
そんな歴史あるブランドのロードバイクラインアップのなかで頂点に輝くのがCentoシリーズだ。イタリア語で100を意味するモデル名の通り、創業100周年を迎えた2006年に発表された記念モデルから連綿と受け継がれてきた伝統のシリーズとなっている。
初代Centoがデビューした翌年には軽量性と剛性を強化したCento1へとアップデート。その後、更に剛性を強化したCento1 SR、そして空力を考慮したCento1 Airと続々と新作が発表されてきた。そして創業110周年となった2016年には、エアロオールラウンダーとしてCento10 AIRが発表された。
ウィリエール・サウスイーストが駆り、存在感を示したCento10 AIRだったが、2018シーズンにサポートを開始したディレクトエネルジーの選手らの要望によって、更なる剛性強化を施されて登場したのが、今回紹介するCento10 PROである。
フレーム形状はCento10 AIRを踏襲。Cento1 SRから採用されたカムテールデザインにNACAプロファイルのアルゴリズムを導入して設計が行われ、徹底的に空力を煮詰めたフレームワークは空気抜けの良さを追求したもの。
フロントフォークやシートステーはホイールとのクリアランスを大きめに取ったチュービングとされ、効率的に空気が流れる設計。チューブ単体で見たときも、部位によって断面形状が細やかに調整され、乱流の発生を抑えている。
フォーククラウンからヘッドチューブにかけてのインテグレートデザインやコンパクトなリアトライアングル、カムテールデザインの専用シートポスト、臼式のシートクランプなど、最先端のエアロロードのトレンドを抑えた設計を与えられたCento10 AIR。
そんなレーシングエアロロードの設計はそのままに、カーボンレイアップを改良することで重量は据え置きでフレーム剛性を6%アップしたのがCento10 PROだ。ウィリエールはディレクトエネルジーの選手らに重量はそのままで剛性を上げるか、剛性をそのままに軽量化するかの要望を聞いた結果、前者が支持されたのだという。
そんなプロユースに相応しい走行性能を実現したCento10 PROだが、従来のダイレクトマウントブレーキ仕様に加え、ディスクブレーキ仕様が追加されたことも、前作からの変更点だ。ディスクブレーキの制動力を受けとめるために最適化したフォークやリアバック形状を与えられているという。
また、ステム一体型の専用ハンドル「ALABARDA」、別体型の専用ステム/ハンドル「STEMMA+BARRA」が用意されており、ディスクブレーキモデルではケーブルを完全内装、キャリパーブレーキモデルでもシフトケーブルのフル内装を実現。すっきりしたルックスと空気抵抗を低減している。
今回インプレッションするのは、メインコンポーネントに機械式ULTEGRAをアセンブルし、ユニパーのワイドリムカーボンホイールを組み合わせた1台だ。プロ選手のリクエストを実現する高剛性フレームの走りを2人のインプレションライダーに解き明かしてもらおう。
― インプレッション
「パリッと乾いた踏み味の純然たるレーサー」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
フレームがしっかり硬くてよく走るレースバイクといった印象ですね。乗り心地はそこまで良くはないですが、速いバイクなので割り切って使う事が出来ます。踏み味もパリッと乾いた印象で、踏み込んだパワーを瞬時に推進力に変えるような反応性の良さがありますので、それこそ純然たるレーサーという感じですね。
踏み込んだ時に響くカーボンの音もパキーンと乾いた感じです。フレームを見てみても全体的にボリューム感があって、レースバイクとして開発されたんだなというのが一目見てわかるようなルックスですよね。
ハンドルやヘッドまわりの剛性も高く、狙ったラインよりも1本内側を走る事が出来るアグレッシブなハンドリングも大きな特徴です。切れ込むハンドリングですが、それでいて扱いやすいので操る楽しみがあるバイクですね。レースに対応したクリッピングポイントを取る走りができるので、より速いコーナリングが可能です。
加速性抜群の走行性能を持っているので、スプリントやアタックといった急加速を楽しむ事ができます。レースなどでは積極的に仕掛けたくなる走りですね。何度もアタックするストイックなレース展開で活躍する姿が想像できます。
加えて一定ペースで踏むような走り方にも柔軟に対応してくれました。ですのでヒルクライムをペースで走るようなシーンや、平坦を巡航するようなシーンでもスピード維持はしやすい印象です。平坦に関してはフレームのエアロ効果が効いているような感覚もありましたし、登りも不満なくこなせるので見た目以上にオールラウンドな走りが楽しめます。
どんなレースシーンにも対応できる速さを持っていますが、一方で脚への反発はありますし、乗り心地も良いとはいい難い部分も多少あります。ですので、ある程度トレーニングを積んで中級~上級レベルの走力があると、ハイエンドレースバイクとしてさらに性能を活かせることでしょう。
ダウンチューブにリアディレイラーのワイヤー調整用アジャスターがついているのは実戦的ですね。レース中に異変を感じることもあると思うのですが、走りながら調整出来るので、トラブルに即対応する事が出来ると思います。
クリテリウムやJBCFレースのEクラスのように距離が長すぎず、常にアタックがかかるようなレースでは大きな武器になるでしょう。ロングレースで使う事もできますが、それに応じたトレーニングは必須になりますね。レース機材として走行性能の高いイタリアンバイクが欲しい方には最適な選択となると思います。
「見た目以上に総合力の高さが魅力のレーシングロード」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)
リムブレーキバイクの良い所がよく出ているバイクだと思いました。フォークやリアエンドといった先端のしなやかさを活かした乗り味が特徴的です。ルックスに反してエアロ感はそこまで感じなかったのですが、乗り味の良さとハンドリングの素直さ、登りの軽快感などがバランスされており、総合力が高いですね。
ツールに向けて剛性を上げたモデルということですが、剛性感は硬すぎる印象ではなく、丁度良いバランスになっていると思います。ダッシュした時も粘ってから推進力に変わる感覚があるので、踏み続けると常に加速してくれる感触がありますね。そういった部分は名門イタリアンブランドとしての意地を感じる部分です。
チェーンステーは太めでマッシブな造形ですが、その見た目ほど硬くないのは驚きました。フレームのリアトライアングルのしなりがトラクションを確保してくれるので、スピードの速い下りでも恐怖感を感じる事なく走る事ができます。
またハンドリングに関しては、華奢な印象のあるフロントフォークに相反する安定感のある走りが特徴的です。思ったよりもしっかりとバイクを支えてくれるので、コーナリングもより攻める事が出来ます。フロントフォークもリアトライアングルも見た目だけでは判断出来ない走りの良さがありますね。
リムブレーキバイクが持っている自転車全体のバランスの良さというのはあると思います。もちろんマイルドなリムブレーキの制動力を自分でコントロールしていく醍醐味みたいな部分もありますし、フレームの先端部分がしなやかで、より気持ち良い走りが出来るなど、メリットは沢山あると思いますね。
エアロな見た目ではありますが、中身は総合力の整ったオールラウンドレーシングバイクです。もちろん登りも軽快に登ってくれますし、平坦や下りもそつなくこなしてくれるでしょう。スタンダードなレーシングバイクが欲しい方は選択肢に入れて欲しい1台です。
ウィリエール Cento10 PRO
フレーム素材:ウィリエール 60Tカーボン
重量:フレーム約990g、フォーク約350g
サイズ:XS、S、M、L、XL
カラー:イエロー、レッド、マットブラック
価 格:
シマノDURA-ACE+WH-RS300 700,000円(税抜)
シマノULTEGRA+WH-RS300 585,000円(税抜)
フレームセット 500,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。
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西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
北イタリアのロッサノ・ベネトに拠点を置くウィリエール・トリエスティーナ社。その歴史は旧く、1906年、日本の表記にすると明治39年にまで遡る。多くの老舗が集まるイタリアにおいても、長い歴史を誇るブランドとして人気を集めている。
そんな歴史あるブランドのロードバイクラインアップのなかで頂点に輝くのがCentoシリーズだ。イタリア語で100を意味するモデル名の通り、創業100周年を迎えた2006年に発表された記念モデルから連綿と受け継がれてきた伝統のシリーズとなっている。
初代Centoがデビューした翌年には軽量性と剛性を強化したCento1へとアップデート。その後、更に剛性を強化したCento1 SR、そして空力を考慮したCento1 Airと続々と新作が発表されてきた。そして創業110周年となった2016年には、エアロオールラウンダーとしてCento10 AIRが発表された。
ウィリエール・サウスイーストが駆り、存在感を示したCento10 AIRだったが、2018シーズンにサポートを開始したディレクトエネルジーの選手らの要望によって、更なる剛性強化を施されて登場したのが、今回紹介するCento10 PROである。
フレーム形状はCento10 AIRを踏襲。Cento1 SRから採用されたカムテールデザインにNACAプロファイルのアルゴリズムを導入して設計が行われ、徹底的に空力を煮詰めたフレームワークは空気抜けの良さを追求したもの。
フロントフォークやシートステーはホイールとのクリアランスを大きめに取ったチュービングとされ、効率的に空気が流れる設計。チューブ単体で見たときも、部位によって断面形状が細やかに調整され、乱流の発生を抑えている。
フォーククラウンからヘッドチューブにかけてのインテグレートデザインやコンパクトなリアトライアングル、カムテールデザインの専用シートポスト、臼式のシートクランプなど、最先端のエアロロードのトレンドを抑えた設計を与えられたCento10 AIR。
そんなレーシングエアロロードの設計はそのままに、カーボンレイアップを改良することで重量は据え置きでフレーム剛性を6%アップしたのがCento10 PROだ。ウィリエールはディレクトエネルジーの選手らに重量はそのままで剛性を上げるか、剛性をそのままに軽量化するかの要望を聞いた結果、前者が支持されたのだという。
そんなプロユースに相応しい走行性能を実現したCento10 PROだが、従来のダイレクトマウントブレーキ仕様に加え、ディスクブレーキ仕様が追加されたことも、前作からの変更点だ。ディスクブレーキの制動力を受けとめるために最適化したフォークやリアバック形状を与えられているという。
また、ステム一体型の専用ハンドル「ALABARDA」、別体型の専用ステム/ハンドル「STEMMA+BARRA」が用意されており、ディスクブレーキモデルではケーブルを完全内装、キャリパーブレーキモデルでもシフトケーブルのフル内装を実現。すっきりしたルックスと空気抵抗を低減している。
今回インプレッションするのは、メインコンポーネントに機械式ULTEGRAをアセンブルし、ユニパーのワイドリムカーボンホイールを組み合わせた1台だ。プロ選手のリクエストを実現する高剛性フレームの走りを2人のインプレションライダーに解き明かしてもらおう。
― インプレッション
「パリッと乾いた踏み味の純然たるレーサー」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
フレームがしっかり硬くてよく走るレースバイクといった印象ですね。乗り心地はそこまで良くはないですが、速いバイクなので割り切って使う事が出来ます。踏み味もパリッと乾いた印象で、踏み込んだパワーを瞬時に推進力に変えるような反応性の良さがありますので、それこそ純然たるレーサーという感じですね。
踏み込んだ時に響くカーボンの音もパキーンと乾いた感じです。フレームを見てみても全体的にボリューム感があって、レースバイクとして開発されたんだなというのが一目見てわかるようなルックスですよね。
ハンドルやヘッドまわりの剛性も高く、狙ったラインよりも1本内側を走る事が出来るアグレッシブなハンドリングも大きな特徴です。切れ込むハンドリングですが、それでいて扱いやすいので操る楽しみがあるバイクですね。レースに対応したクリッピングポイントを取る走りができるので、より速いコーナリングが可能です。
加速性抜群の走行性能を持っているので、スプリントやアタックといった急加速を楽しむ事ができます。レースなどでは積極的に仕掛けたくなる走りですね。何度もアタックするストイックなレース展開で活躍する姿が想像できます。
加えて一定ペースで踏むような走り方にも柔軟に対応してくれました。ですのでヒルクライムをペースで走るようなシーンや、平坦を巡航するようなシーンでもスピード維持はしやすい印象です。平坦に関してはフレームのエアロ効果が効いているような感覚もありましたし、登りも不満なくこなせるので見た目以上にオールラウンドな走りが楽しめます。
どんなレースシーンにも対応できる速さを持っていますが、一方で脚への反発はありますし、乗り心地も良いとはいい難い部分も多少あります。ですので、ある程度トレーニングを積んで中級~上級レベルの走力があると、ハイエンドレースバイクとしてさらに性能を活かせることでしょう。
ダウンチューブにリアディレイラーのワイヤー調整用アジャスターがついているのは実戦的ですね。レース中に異変を感じることもあると思うのですが、走りながら調整出来るので、トラブルに即対応する事が出来ると思います。
クリテリウムやJBCFレースのEクラスのように距離が長すぎず、常にアタックがかかるようなレースでは大きな武器になるでしょう。ロングレースで使う事もできますが、それに応じたトレーニングは必須になりますね。レース機材として走行性能の高いイタリアンバイクが欲しい方には最適な選択となると思います。
「見た目以上に総合力の高さが魅力のレーシングロード」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)
リムブレーキバイクの良い所がよく出ているバイクだと思いました。フォークやリアエンドといった先端のしなやかさを活かした乗り味が特徴的です。ルックスに反してエアロ感はそこまで感じなかったのですが、乗り味の良さとハンドリングの素直さ、登りの軽快感などがバランスされており、総合力が高いですね。
ツールに向けて剛性を上げたモデルということですが、剛性感は硬すぎる印象ではなく、丁度良いバランスになっていると思います。ダッシュした時も粘ってから推進力に変わる感覚があるので、踏み続けると常に加速してくれる感触がありますね。そういった部分は名門イタリアンブランドとしての意地を感じる部分です。
チェーンステーは太めでマッシブな造形ですが、その見た目ほど硬くないのは驚きました。フレームのリアトライアングルのしなりがトラクションを確保してくれるので、スピードの速い下りでも恐怖感を感じる事なく走る事ができます。
またハンドリングに関しては、華奢な印象のあるフロントフォークに相反する安定感のある走りが特徴的です。思ったよりもしっかりとバイクを支えてくれるので、コーナリングもより攻める事が出来ます。フロントフォークもリアトライアングルも見た目だけでは判断出来ない走りの良さがありますね。
リムブレーキバイクが持っている自転車全体のバランスの良さというのはあると思います。もちろんマイルドなリムブレーキの制動力を自分でコントロールしていく醍醐味みたいな部分もありますし、フレームの先端部分がしなやかで、より気持ち良い走りが出来るなど、メリットは沢山あると思いますね。
エアロな見た目ではありますが、中身は総合力の整ったオールラウンドレーシングバイクです。もちろん登りも軽快に登ってくれますし、平坦や下りもそつなくこなしてくれるでしょう。スタンダードなレーシングバイクが欲しい方は選択肢に入れて欲しい1台です。
ウィリエール Cento10 PRO
フレーム素材:ウィリエール 60Tカーボン
重量:フレーム約990g、フォーク約350g
サイズ:XS、S、M、L、XL
カラー:イエロー、レッド、マットブラック
価 格:
シマノDURA-ACE+WH-RS300 700,000円(税抜)
シマノULTEGRA+WH-RS300 585,000円(税抜)
フレームセット 500,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。
CWレコメンドショップページ
アウトドアスペース風魔横浜 ショップHP
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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