3月7日から14日までの8日間に渡って、フランス南部を中心に第68回パリ〜ニースが開催。ヨーロッパのロードレースシーズンは、このパリ〜ニースを皮切りに本格的なシーズンインを迎える。3度目のツール制覇を目指すアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)は、昨年の雪辱を狙う挑戦者としてパリに降り立つ。

パリからニースまで8日間・1288kmを南下

パリ〜ニース2010コース全体図パリ〜ニース2010コース全体図 image:www.letour.frツール・ド・フランスと同じASO(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)が主催するパリ〜ニースは、今年で開催68回目を迎える伝統のステージレース。

パリ〜ニースは毎年3月に開催され、クラシックレースに向けてコンディションを整える選手や、グランツールに向けて調子を確認したい選手が挙って出場する。3日後の3月10日にイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春を代表する中級ステージレースだ。

2008年は主催者ASOとUCI(国際自転車競技連合)の闘争によって当時のUCIプロツアー制度を脱し、フランスのナショナルレースとして開催されたが、昨年からUCIワールドカレンダーにUCIヒストリカルレースとして組み込まれている。

パリ〜ニース2010第4ステージ・コースプロフィールパリ〜ニース2010第4ステージ・コースプロフィール image:www.letour.fr「パリからニースまで」という名前が示すように、レースは花の都パリから地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽のレース(La Course au Soliel)」とも呼ばれる。

スタート地点は、パリから西に50kmほどのモンフォール・ラモリー。レースはこの小さな街を舞台にした8kmのプロローグ(個人タイムトライアル)でスタートする。

パリ〜ニース2010第6ステージ・コースプロフィールパリ〜ニース2010第6ステージ・コースプロフィール image:www.letour.fr石畳含むコースには合計100mほどの高低差があり、1.5km地点に早速3級山岳が登場。つまり、最初の1.5kmの上りを最速で登った選手が山岳賞ジャージを獲得する。もちろんこの日最速タイムを叩き出せば黄色いリーダージャージ獲得だ。

カテゴリー山岳ゼロの第1ステージや、難易度の低い3級山岳が3つ設定された第2ステージは、スプリンターのために用意された平坦ステージ。ニースに近づくとともに山岳が険しさを増し、総合争いが加熱して行くというのが通例だ。

パリ〜ニース2010第7ステージ・コースプロフィールパリ〜ニース2010第7ステージ・コースプロフィール image:www.letour.fr第3ステージは正にアタッカー向きのステージ。序盤から4つ連続するカテゴリー山岳がスプリンターたちの脚を弱め、ゴール3km手前に設定された2級山岳コテ・ド・ラ・マルティニーでアタック合戦が勃発する。最終的な総合争いに大きな影響は無いと思われるが、リーダージャージの持ち主が入れ替わる可能性が高い。

第4ステージは今大会唯一の頂上ゴールが登場。170kmのコースの先に待っているのは、「ローラン・ジャラベール山」の異名を持つ1級山岳ラ・クロワ・ヌーヴだ。この上りは登坂距離こそ3.0kmほどだが、平均勾配は10.7%に達する。この急峻な上りでクライマーたちが飛び出し、総合順位に大きな変動が起きることは間違いないだろう。なお、このラ・クロワ・ヌーヴは、今年のツール・ド・フランス第12ステージでも登場予定だ。

いよいよ地中海が近づき、総合争いは佳境を迎える。第6ステージには実に8つのカテゴリー山岳が設定されており、後半にかけて難易度がアップ。ゴール33km手前で1級山岳ヴォンス峠(登坂距離9.7km・平均勾配6.6%)をクリアすると、あとはー気にダウンヒル。上りで絞られたグループ、もしくは下りで飛び出したグループが、上り基調のゴール地点でスプリントを繰り広げるだろう。

最終日は今年もニースを発着する119kmの名物山岳コース。1級山岳ポルト峠、1級ラ・トゥルビー、1級山岳エズ峠の3つの難関山岳が総合優勝者を選び出す。例年最後まで息を飲む総合争いが繰り広げられ、特にニースに至るエズ峠のハイスピードダウンヒルで勝負が決まることも。

パリ〜ニース2010日程(※開幕前に主催者が第1ステージをプロローグに変更)
プロローグ 3月7日(日)モンフォール・ラモリー 8km(個人TT)
第1ステージ 3月8日(月)サン・タルヌー・アン・イヴリン〜コントル 201.5km
第2ステージ 3月9日(火)コントル〜リモージュ 201km
第3ステージ 3月10日(水)サン・ジュニアン〜オーリヤック 208km
第4ステージ 3月11日(木)モール〜マンド 173.5km(頂上ゴール)
第5ステージ 3月12日(金)ペルヌ・レ・フォンテーヌ〜エクス・アン・プロヴァンス 157 km
第6ステージ 3月13日(土)ペニエ〜トゥレット・シュル・ルー 220 km
第7ステージ 3月14日(日)ニース〜ニース 119km

王者コンタドールに闘いを挑むLLサンチェスやライプハイマー、その他大勢

昨年の雪辱を果たしたいアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)昨年の雪辱を果たしたいアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos誰よりも注目を集めている選手、それは今や世界最強のグランツールレーサーとしての名声を得ているアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)に違いない。グランツール全制覇を成し遂げ、今年ツールで3度目の総合優勝を目指すコンタドールは、生まれ変わったアスタナチームを率いて2度目の大会制覇を目指す。

コンタドールは2007年大会で劇的な逆転総合優勝を飾ったが、2008年大会はチーム欠場のため連覇ならず。2年ぶりの出場となった2009年大会は頂上ゴールを制してリーダージャージを獲得したものの、最終日前日にライバルたちの攻勢に敗れ、失速して首位を明け渡した。

昨年のパリ〜ニース総合表彰台、左から3位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)昨年のパリ〜ニース総合表彰台、左から3位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、優勝ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)、2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vos今年もコンタドールはアスタナのチームリーダーとして総合優勝を目指す。すでにヴォルタ・アン・アルガルヴェデ総合優勝を飾って好調は実証済み。チームもアシストに特化したメンバー編成で、オスカル・ペレイロ(スペイン)らがコンタドールを援護する。

昨年コンタドールが失速する中、熾烈な総合争いを制したのはルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)だった。LLサンチェスは今シーズンすでにツアー・ダウンアンダーのウィランガステージで優勝を飾っており、大会連覇に向けて順調な仕上がりを見せている。

リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vos今年はブエルタ・ア・エスパーニャ覇者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)も出場することから、チームリーダーが入れ替わる可能性も。いずれにしても強力な布陣であることに変わりはない。

ちなみに元ケースデパーニュのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)は新チームのエースとして出場予定だ。

ジロ・ディ・サルデーニャで総合優勝を飾ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)ジロ・ディ・サルデーニャで総合優勝を飾ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) photo:Cor Vosツールでアスタナ最大のライバルになると目される新生レディオシャックは、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)の二枚看板で勝負。元アスタナの2人は、かつてのチームリーダーに挑戦状を叩き付ける。

昨年の総合2位フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)や総合3位シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)は今年も総合争いに絡んでくるだろう。

アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Kei Tsuji総合優勝候補としては一つランクが落ちるが、山岳ステージでの活躍に期待が集まるのがクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)、そして昨年山岳賞を獲得したトニ・マルティン(ドイツ、チームHTC・コロンビア)。

直前のジロ・ディ・サルデーニャで総合優勝を飾ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)も不気味な存在だ。ツアー・ダウンアンダーでブレイクしたチームメイトのペーター・サガン(スロバキア)の動きにも注目したい。

若手としては、U23世界チャンピオンのロメン・シカール(フランス、エウスカルテル)や、昨年ツールの超級山岳頂上ゴールを制したブリース・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ)らがフランスの期待を集める。

集団スプリント向きの平坦コースは2〜3ステージしか用意されていないが、今大会は多くの有力スプリンターが顔を揃える。中でも今シーズンすでに勝ちまくっているアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)は、ゴス、ハンセン、マルティンらを従えての出場。おそらくHTCコロンビアトレインがゴール前で主導権を握ることになるだろう。

グライペルに対抗するのは、ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)やグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)、ダニーロ・ナポリターノ(イタリア、カチューシャ)、そしてツアー・オブ・カタールでステージ2勝を飾って乗りに乗るフランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス)らだ。

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Kei Tsuji

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