2018/01/21(日) - 10:51
カーボンバイクを各種ラインアップするイタリアンブランド、クォータよりフルモデルチェンジを果たしたエントリーモデルの「KRYON」をインプレッション。より空力性能と剛性を最適化したフレーム形状と、独自の振動吸収機構を搭載することで各性能強化を図っている。
カーボンフォークメーカーであるシンテマ社が興したイタリアンブランド、クォータ。2001年のミラノショーにて発表した処女作「KSANO(クザーノ)」を皮切りにスタートし、現在ではTTバイクやMTB、グラベルロードまで手がけるカーボン専業のバイクメーカーである。老舗工房ひしめくイタリアにおいていち早くカーボン素材を取り扱い始め、他社に抜きん出た経験と技術を以て高性能なレーシングバイクを生み出し続けてきた。
創業から20年弱とまだ若いブランドながら、2010~2012年にはUCIワールドチームのアージェードゥーゼル・ラモンディアールに、2015~2016年にはUCIプロコンチネンタルチームのアンドローニ・ジョカトーリに機材サポートを行ってきた実績も同社を語る上では外せないだろう。
加えて2018シーズンからはナセル・ブアニ(フランス)擁するUCIプロコンチネンタルチームのコフィディスをサポート。同チームは今年のツール・ド・フランスへのワイルドカード出場も決めており、数年ぶりにグランツールを駆けるクォータバイクの活躍に期待がかかる。
そんな同社のバイクラインアップより、今回インプレッションを行ったのはフルモデルチェンジを果たしたエントリーモデルの「KRYON(クレヨン)」である。クォータのエントリーグレードを担ってきたロングセラーモデルKHARMA(カルマ)の後継機として2015年より登場した同バイクだが、2018モデルからはフレーム形状を刷新し装い新たに展開される。
KHARMAに特徴的であった曲線を多用した有機的なエアロフォルムを受け継いだKRYONだったが、今作ではより直線的なフレームワークを採用。滑らかに湾曲していたトップチューブや緩やかにベンドしたフロントフォークは、いずれもストレート形状へモディファイされその性能を最適化している。
もちろんエントリーモデルらしからぬエアロロード然とした力強いシルエットはそのまま。空力性能を意識したチュービングを各所に取り入れるとともに、前方投影面積を減らすヘッドチューブ形状や専用のエアロシートポストによって空気抵抗低減が図られている。加えて昨今のエアロロードには標準的となったコンパクトなリアトライアングルや、後輪に沿ってカットオフされたシートチューブのデザインもエアロダイナミクスを追求した結果と言える。
フレームは高弾性カーボンを使用しモノコック成型とすることで剛性と軽量性を追求。多角形状の断面としたトップチューブやダウンチューブの造形によりねじれ剛性を高める設計となる。またシェル幅の広いBB386を採用しボリュームを出したBB周りのデザインはパワー伝達性を高め、エアロとともに高剛性化に貢献する短めなシートステーによってリアの反応性を向上させている。
加えてモデルチェンジしたKRYONのハイライトとも言えるテクノロジーが、シートクランプ部に搭載された振動吸収機構だろう。シートピラーの後方とシートチューブの間にエラストマーを挿入することで、ピラーが前後方向へとしなりを生み出し優れた乗り心地を実現している。一般的に突き上げ感が大きいと言われるエアロシートポストの弱点を補うことで、快適性の強化を狙ったものとなる。
またこのシートポストはリバーシブル形状となっており、前後を反転させて装着することでシート角を変更しサドルの前後位置を大きく変えることができるのだ。通常であればシート角74度の設計だが、反転時はシートが起きた84度となり、より前乗りが可能となる。タイムトライアルやトライアスロン用のポジションも実現できる高い汎用性も備えたバイクとして仕上がっている。
その他、薄く扁平させたトップチューブは振動吸収性を高め、剛性を確保する上下異径のヘッドチューブとともにストレート形状のフォークが機敏なハンドリングを実現。トレンドに合わせワイドな28cタイヤまで対応したクリアランスも新たに確保している。ケーブルはインターナル仕様で、電動コンポーネントにも対応する。
販売はシマノULTEGRAと105をそれぞれアセンブルした完成車2種にて行われ、独創的なモザイクデザインを含む全5色にて展開される。今回はその中からモザイクレッドカラーの105完成車にてテストを行った。それでは、インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「エントリーモデルながらレースユースにも対応する高い走行性能」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
エントリーグレードのモデルではありますがフレーム全体の剛性が高く、踏み抜くと鋭い加速を見せてくれます。中でもBB周りの剛性感がしっかりしており、ライダーのパワーを余すこと無く推進力に変えてくれる印象です。それこそ1世代前のハイエンドレーシングバイクに近い反応性を持っており、ロードバイクらしい気持ちの良い加速感を味わう事ができる1台です。
全体的にフレーム剛性が硬めですので、レース向けバイクといった感覚です。それこそホビーレースから実業団レースまでレーシング機材として使用して不満なく走る性能は持っていると感じます。その上でフレームのエアロ形状から来る空力特性は高く、特に高速巡航性に優れた走りが特徴的ですね。
フロントフォークのデザインも面白く、ストレート形状ながら前方から見るとハの字のように外側にベンドしています。これがクイックなハンドリングの中に扱いやすさを生み出しているのでしょう。バイクのコントロール性も高く、シッティングからダンシングに切り替えるシーンでもハンドルを取られること無く安定した挙動を見せてくれますね。もちろんコーナリング時には鋭角にラインを取ることが出来ますので、レースにも十分対応してくれます。
またシートポストの裏側に挿入されたエラストマーは、走ってみるとその効果を実感できます。路面が少し荒れた場所をシッティングで走ってみたのですが、本来感じるであろうアスファルトの細かな突き上げもなく、振動吸収性の向上に貢献していると思います。またリアだけでなくフロント部分も衝撃は少なく、フレーム全体の快適性が高いように感じました。
ホイールに関しては剛性が高めのものを合わせたほうが、このフレームの特性を活かせるような気がします。リムハイトは走るレースに応じて選択していいでしょうね。高速な展開が予想されるレースであればディープリムホイールが良いでしょうし、逆にヒルクライムレースでも軽量なロープロファイルホイールを履かせれば卒なくこなしてくれるでしょう。
上位モデルにはもっとレーシーで高性能なバイクがあると思うのですが、この価格帯でレースを真剣にやりたい人には最適なチョイスになると思います。フレーム自体がしっかり作られているので、若い選手などにトレーニングからレースまで使い倒して欲しいですね。今回シマノ105の完成車パッケージでしたが、パーツをアップグレードしていけばフレームの良さが更に見えてきますし、デュラエースで組んでも見劣りしないと思います。
ロードバイクらしい加速感は十分に持っているため、サイクリングで使用しても楽しくライドができると思います。ただ硬めの剛性感から、ギアをかけて踏みすぎてしまうと脚に疲労が溜まってしまうので、上手いギア選択が必要になってくると思います。逆にビギナー層の方がこういったバイクに乗れば、ギアの使い方も含めて上達が早いのかもしれませんね。
「エアロと快適性が両立されたオールラウンド性の高い1台」辻本尚希(L-Breath Bike)
トップチューブが扁平形状や、シートポストに追加されたエラストマーなどの効果もあって、非常に快適性が高いというのが第一印象です。その上でシートポストはエアロ形状になっていたり、シートチューブも後輪に沿うようにカットされていたりと空力性能も高いため、高速走行時の巡航がし易いのが特長です。エアロと快適性のバランスが高く、オールラウンドに使えるバイクですね。
フレーム全体でエアロフォルムを纏っており、空力性能の高さはすぐに感じられました。ダウンチューブも独特な断面形状となっていますが、これも空力性能を意識しているのでしょうね。実際に40km/hで巡航してみてもホイールからの風切音などが聞こえず、風を切り裂いて進んでいるような印象を受けます。
快適性が高く、振動が身体にあまり伝わってこないのもこのバイクの特長ですね。今回のモデルから追加されたというエラストマーも効果的に効いているように思いますし、フレーム形状もトップチューブから扁平させることで、フレーム全体で振動を吸収しようという設計思想を感じます。細く造形されたシートステーも快適性向上に一役買っているでしょう。
また、ホイールベースを長めに取ったジオメトリーも快適に走れる要因の1つです。ヘッド角が寝ており、BBドロップが下がったジオメトリーであるため、低重心を実現しており直進安定性が高いのが特長です。その分機敏な動きはそこまで得意ではないのですが、ストレートフォークと掴みやすいバイク重心により、バイクに荷重を預けやすく、コーナリング時でも安定感のある挙動を見せてくれます。
反応性に関してはボリューミーに作られたBB周りが丁度よいパワー伝達性を生み出しており、スピードを上げたいと思った時にしっかり応えてくれます。もちろんそこまで剛性は高くないので、脚への負担も少なく、ビギナーに優しい味付けになっています。ヒルクライムでは体重をかけてリズムで登っていくような走り方に合っているように思いますね。
シマノ105組の完成車で26万円というプライスですが、フレームのポテンシャルは非常に高いですし、お金をかける価値のあるバイクだと思います。現在アルミのロードバイクに乗っていて、カーボンフレームにデビューしたい方や、より長い距離を速く走りたいという方には最適な選択肢になると思います。
また将来的にレースを走りたいという場合でも、硬めのホイールをアセンブルすることでレーシーな乗り味になってくれます。エアロと快適性という要素を上手くバランスしているバイクですので、いろんな楽しみ方が出来ると思いますね。
クォータ KRYON
サイズ:XXS、XS、S、M、L
カラー:モザイクレッド、モザイクグリーン、モザイクオレンジ、ブラックグリーン、イエローブラック
重量:フレーム1,070g、フォーク480g
BB:BB386
価格:シマノアルテグラ完成車 319,000円
シマノ105完成車 268,000円
インプレッションライダーのプロフィール
杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
CWレコメンドショップページ
Bicicletta IL CUORE ショップHP
辻本尚希(L-Breath Bike)
管洋介氏率いるAVENTURA AIKOH VICTORIA RACINGのエースライダーとしてロード競技を続けつつ、普段はL-Breath Bike 御茶ノ水店のスタッフとして働く。順天堂大学時代は自転車競技部の主将を務めるとともに、2013年の学生選手権個人ロードチャンピオンにも輝く。現在はアスリート社員として自転車のソフト面の強化に力を入れており、チームやショップが行うスクールの企画・運営・講師も務める。
CWレコメンドショップページ
L-Breath BIKE 御茶ノ水店 ショップHP
ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:ベル、スミス
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
カーボンフォークメーカーであるシンテマ社が興したイタリアンブランド、クォータ。2001年のミラノショーにて発表した処女作「KSANO(クザーノ)」を皮切りにスタートし、現在ではTTバイクやMTB、グラベルロードまで手がけるカーボン専業のバイクメーカーである。老舗工房ひしめくイタリアにおいていち早くカーボン素材を取り扱い始め、他社に抜きん出た経験と技術を以て高性能なレーシングバイクを生み出し続けてきた。
創業から20年弱とまだ若いブランドながら、2010~2012年にはUCIワールドチームのアージェードゥーゼル・ラモンディアールに、2015~2016年にはUCIプロコンチネンタルチームのアンドローニ・ジョカトーリに機材サポートを行ってきた実績も同社を語る上では外せないだろう。
加えて2018シーズンからはナセル・ブアニ(フランス)擁するUCIプロコンチネンタルチームのコフィディスをサポート。同チームは今年のツール・ド・フランスへのワイルドカード出場も決めており、数年ぶりにグランツールを駆けるクォータバイクの活躍に期待がかかる。
そんな同社のバイクラインアップより、今回インプレッションを行ったのはフルモデルチェンジを果たしたエントリーモデルの「KRYON(クレヨン)」である。クォータのエントリーグレードを担ってきたロングセラーモデルKHARMA(カルマ)の後継機として2015年より登場した同バイクだが、2018モデルからはフレーム形状を刷新し装い新たに展開される。
KHARMAに特徴的であった曲線を多用した有機的なエアロフォルムを受け継いだKRYONだったが、今作ではより直線的なフレームワークを採用。滑らかに湾曲していたトップチューブや緩やかにベンドしたフロントフォークは、いずれもストレート形状へモディファイされその性能を最適化している。
もちろんエントリーモデルらしからぬエアロロード然とした力強いシルエットはそのまま。空力性能を意識したチュービングを各所に取り入れるとともに、前方投影面積を減らすヘッドチューブ形状や専用のエアロシートポストによって空気抵抗低減が図られている。加えて昨今のエアロロードには標準的となったコンパクトなリアトライアングルや、後輪に沿ってカットオフされたシートチューブのデザインもエアロダイナミクスを追求した結果と言える。
フレームは高弾性カーボンを使用しモノコック成型とすることで剛性と軽量性を追求。多角形状の断面としたトップチューブやダウンチューブの造形によりねじれ剛性を高める設計となる。またシェル幅の広いBB386を採用しボリュームを出したBB周りのデザインはパワー伝達性を高め、エアロとともに高剛性化に貢献する短めなシートステーによってリアの反応性を向上させている。
加えてモデルチェンジしたKRYONのハイライトとも言えるテクノロジーが、シートクランプ部に搭載された振動吸収機構だろう。シートピラーの後方とシートチューブの間にエラストマーを挿入することで、ピラーが前後方向へとしなりを生み出し優れた乗り心地を実現している。一般的に突き上げ感が大きいと言われるエアロシートポストの弱点を補うことで、快適性の強化を狙ったものとなる。
またこのシートポストはリバーシブル形状となっており、前後を反転させて装着することでシート角を変更しサドルの前後位置を大きく変えることができるのだ。通常であればシート角74度の設計だが、反転時はシートが起きた84度となり、より前乗りが可能となる。タイムトライアルやトライアスロン用のポジションも実現できる高い汎用性も備えたバイクとして仕上がっている。
その他、薄く扁平させたトップチューブは振動吸収性を高め、剛性を確保する上下異径のヘッドチューブとともにストレート形状のフォークが機敏なハンドリングを実現。トレンドに合わせワイドな28cタイヤまで対応したクリアランスも新たに確保している。ケーブルはインターナル仕様で、電動コンポーネントにも対応する。
販売はシマノULTEGRAと105をそれぞれアセンブルした完成車2種にて行われ、独創的なモザイクデザインを含む全5色にて展開される。今回はその中からモザイクレッドカラーの105完成車にてテストを行った。それでは、インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「エントリーモデルながらレースユースにも対応する高い走行性能」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
エントリーグレードのモデルではありますがフレーム全体の剛性が高く、踏み抜くと鋭い加速を見せてくれます。中でもBB周りの剛性感がしっかりしており、ライダーのパワーを余すこと無く推進力に変えてくれる印象です。それこそ1世代前のハイエンドレーシングバイクに近い反応性を持っており、ロードバイクらしい気持ちの良い加速感を味わう事ができる1台です。
全体的にフレーム剛性が硬めですので、レース向けバイクといった感覚です。それこそホビーレースから実業団レースまでレーシング機材として使用して不満なく走る性能は持っていると感じます。その上でフレームのエアロ形状から来る空力特性は高く、特に高速巡航性に優れた走りが特徴的ですね。
フロントフォークのデザインも面白く、ストレート形状ながら前方から見るとハの字のように外側にベンドしています。これがクイックなハンドリングの中に扱いやすさを生み出しているのでしょう。バイクのコントロール性も高く、シッティングからダンシングに切り替えるシーンでもハンドルを取られること無く安定した挙動を見せてくれますね。もちろんコーナリング時には鋭角にラインを取ることが出来ますので、レースにも十分対応してくれます。
またシートポストの裏側に挿入されたエラストマーは、走ってみるとその効果を実感できます。路面が少し荒れた場所をシッティングで走ってみたのですが、本来感じるであろうアスファルトの細かな突き上げもなく、振動吸収性の向上に貢献していると思います。またリアだけでなくフロント部分も衝撃は少なく、フレーム全体の快適性が高いように感じました。
ホイールに関しては剛性が高めのものを合わせたほうが、このフレームの特性を活かせるような気がします。リムハイトは走るレースに応じて選択していいでしょうね。高速な展開が予想されるレースであればディープリムホイールが良いでしょうし、逆にヒルクライムレースでも軽量なロープロファイルホイールを履かせれば卒なくこなしてくれるでしょう。
上位モデルにはもっとレーシーで高性能なバイクがあると思うのですが、この価格帯でレースを真剣にやりたい人には最適なチョイスになると思います。フレーム自体がしっかり作られているので、若い選手などにトレーニングからレースまで使い倒して欲しいですね。今回シマノ105の完成車パッケージでしたが、パーツをアップグレードしていけばフレームの良さが更に見えてきますし、デュラエースで組んでも見劣りしないと思います。
ロードバイクらしい加速感は十分に持っているため、サイクリングで使用しても楽しくライドができると思います。ただ硬めの剛性感から、ギアをかけて踏みすぎてしまうと脚に疲労が溜まってしまうので、上手いギア選択が必要になってくると思います。逆にビギナー層の方がこういったバイクに乗れば、ギアの使い方も含めて上達が早いのかもしれませんね。
「エアロと快適性が両立されたオールラウンド性の高い1台」辻本尚希(L-Breath Bike)
トップチューブが扁平形状や、シートポストに追加されたエラストマーなどの効果もあって、非常に快適性が高いというのが第一印象です。その上でシートポストはエアロ形状になっていたり、シートチューブも後輪に沿うようにカットされていたりと空力性能も高いため、高速走行時の巡航がし易いのが特長です。エアロと快適性のバランスが高く、オールラウンドに使えるバイクですね。
フレーム全体でエアロフォルムを纏っており、空力性能の高さはすぐに感じられました。ダウンチューブも独特な断面形状となっていますが、これも空力性能を意識しているのでしょうね。実際に40km/hで巡航してみてもホイールからの風切音などが聞こえず、風を切り裂いて進んでいるような印象を受けます。
快適性が高く、振動が身体にあまり伝わってこないのもこのバイクの特長ですね。今回のモデルから追加されたというエラストマーも効果的に効いているように思いますし、フレーム形状もトップチューブから扁平させることで、フレーム全体で振動を吸収しようという設計思想を感じます。細く造形されたシートステーも快適性向上に一役買っているでしょう。
また、ホイールベースを長めに取ったジオメトリーも快適に走れる要因の1つです。ヘッド角が寝ており、BBドロップが下がったジオメトリーであるため、低重心を実現しており直進安定性が高いのが特長です。その分機敏な動きはそこまで得意ではないのですが、ストレートフォークと掴みやすいバイク重心により、バイクに荷重を預けやすく、コーナリング時でも安定感のある挙動を見せてくれます。
反応性に関してはボリューミーに作られたBB周りが丁度よいパワー伝達性を生み出しており、スピードを上げたいと思った時にしっかり応えてくれます。もちろんそこまで剛性は高くないので、脚への負担も少なく、ビギナーに優しい味付けになっています。ヒルクライムでは体重をかけてリズムで登っていくような走り方に合っているように思いますね。
シマノ105組の完成車で26万円というプライスですが、フレームのポテンシャルは非常に高いですし、お金をかける価値のあるバイクだと思います。現在アルミのロードバイクに乗っていて、カーボンフレームにデビューしたい方や、より長い距離を速く走りたいという方には最適な選択肢になると思います。
また将来的にレースを走りたいという場合でも、硬めのホイールをアセンブルすることでレーシーな乗り味になってくれます。エアロと快適性という要素を上手くバランスしているバイクですので、いろんな楽しみ方が出来ると思いますね。
クォータ KRYON
サイズ:XXS、XS、S、M、L
カラー:モザイクレッド、モザイクグリーン、モザイクオレンジ、ブラックグリーン、イエローブラック
重量:フレーム1,070g、フォーク480g
BB:BB386
価格:シマノアルテグラ完成車 319,000円
シマノ105完成車 268,000円
インプレッションライダーのプロフィール
杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
CWレコメンドショップページ
Bicicletta IL CUORE ショップHP
辻本尚希(L-Breath Bike)
管洋介氏率いるAVENTURA AIKOH VICTORIA RACINGのエースライダーとしてロード競技を続けつつ、普段はL-Breath Bike 御茶ノ水店のスタッフとして働く。順天堂大学時代は自転車競技部の主将を務めるとともに、2013年の学生選手権個人ロードチャンピオンにも輝く。現在はアスリート社員として自転車のソフト面の強化に力を入れており、チームやショップが行うスクールの企画・運営・講師も務める。
CWレコメンドショップページ
L-Breath BIKE 御茶ノ水店 ショップHP
ウェア協力:ルコック
ヘルメット協力:ベル、スミス
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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