2010/01/04(月) - 09:52
フランス・ディジョンに本拠地を構えるラピエールは、創業1946年の老舗バイクメーカーだ。しかし長らくフランス国内のみでの流通だったため、日本での知名度は極めて薄かった。しかし2002年に国際市場への進出を果たし、自国プロチームのフランセーズデジュへのバイク供給なども手伝って、一躍フランスを代表する総合自転車メーカーとして認知されるに至った。
ラピエール・ゼリウス400CP (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
現在はコガミヤタなどと同じくオランダのアクセルグループの一員であり、その豊富な情報網を生かして開発を行っている。 日本では以前から少量が流通していたが、サーベロの正規代理店でもある東商会が独占販売権を新たに取得し、今後の国内販売および製品サポートへの期待が大いにできる。
ラピエールの2010年コレクションは、モデル名が従来から一新された。従来の「Xライト」は「ゼリウス」、「Sライト」が「センシウム」に、そして「Rライト」は『アウダシオ』となり、グラフィックも一新されラインナップされる。
緩やかなカーブを描いて乗り心地を高めるトップチューブ
鮮やかなトリコロールカラーはフランセーズデジュのレプリカカラーだ
リヤブレーキのワイヤはトップチューブに内蔵されている
しっかりと内側に絞り込まれたチェーンステーが駆動力を高める
今回試乗するゼリウス400CPは、ゼリウスシリーズのプロチームカラーモデルだ。3色の塗り分けはもちろんフランセーズデジュチームのもの。
ゼリウスはコンペティションシリーズとしてロードバイクの最上級モデルに位置づけられ、ラピエールの持つカーボンテクノロジーが惜しげもなく注ぎ込まれる。2009年のツール・ド・フランスでは山岳ジャージを4日間着用するのに貢献した。
フレームはモノコック製法で作られる。ユニークなのはその型であり、シリコン製が用いられる。これにより、さらに最適な加熱と圧力をかけることが可能になり、カーボン層同士の接着力がより強固になっている。つまりは剛性を高める効果もあり、今まで補強が必要だったヘッドやBB部分も、それなしで十分な剛性を確保できるようになった。
緩やかなカーブを描いて乗り心地を高めるトップチューブ
BB部では横に広がり踏力のロスを防ぐダウンチューブ
したがって軽量化もできるのだ。HMとVHMのユニディレクショナルカーボンで製作されたフレームは、エンド部までフルカーボン製で、わずか860g(サイズ55cm)という重量を実現している。ちなみにシフトアウターストッパー小物も100%フルカーボン製だ。ここまでカーボンで作れるメーカーは世界でもごくわずかだ。
フレーム形状に目をやると、トップチューブは緩やかなカーブを描き、最先端のアーチシェイプデザインも取り入れていることが分かる。またシートステーも快適性向上のために屈曲加工が施されている。
フロントフォークは、下ワンにワンポイントファイブ規格を採用した上下異径コラムで、それに伴いヘッドチューブもテーパー形状だ。このフォークはロゴが入るとおり、リッチーと共同開発したスペシャルモデルだ。ストレートに近いブレード形状と、ボリュームを持たせた肩部分は高い剛性を予感させる。
また、一時は同社のバイクにも採用されていたインテグラルシートポスト仕様が、全てのモデルで姿を消しているのは興味深い傾向だ。これは通常のシートポストの方がセッティング範囲が広く、使い勝手が良いと判断されたためだろう。話題を呼んだ新機構だが、否定派も増えている。
リッチーとの共同開発されたラピエール専用品のフロントフォーク
BB部では横に広がり踏力のロスを防ぐダウンチューブ
ボリュームあるシートステー集合部でブレーキ性能向上がねらわれる
ゼリウス400CPは、最上位機種となる最上位のゼリウス900と同じフレームであり、つまりは日本のサイクリストもトッププロが本場のレースで使用するバイクに極めて近い性能を持つモデルが手ごろな価格で手に入るということだ。極めてお買い得感の高いモデルと言えるだろう。
このフレンチレーサーをテストライダー達はどう評価するのだろうか?早速、インプレッションをお届けしよう。
― インプレッション
「前後・上下・左右、あらゆる方向へのバランスが良い上品なバイク」 鈴木祐一(Rise Ride)
「あらゆる方向へのバランスが良い上品なバイク」 乗り味が良く、振動吸収性が高くて上品というのが最初の感想である。運動性能のレベルは全体的に高い。前後、上下のバランス、左右へのバイクの振りやすさなど、まとまりの良さが光るバイクだ。
ペダリングの時のウイップも、硬すぎず柔らかすぎずの適度な感覚で、リズムのいい反発性を体感できた。非常によくまとまっており、破錠がない。
全体を通してみて、このバイクには特化した部分はないが、様々な要素が高い次元で「ど真ん中」にまとまっている。絶対的なレベルが高いので、速くても走っても、ゆったり乗っていても快適なのが特徴だ。これは最初に言ったこのバイクの上品な部分に通じる。ゆっくり走っても振動のカットの仕方が上手く、マイルドなのだ。
どんな速度域でも対応できるのがこのバイクの特徴だと思う。大きい衝撃を小さくするのではない。なにかを誤魔化しているのでもない。あくまでマイルドにしてくれるのだ。
サスペンションが付いているような感覚ではなく、大きな衝撃の角を取ってしまうような安楽さでもない。全体的なエネルギーは変わらないが、衝撃を横に引き延ばして伝えてくれるような感じだ。これがすなわち上品なという言葉に繋がる。
あまり特徴がないとも言えるほど、自然な走り心地がゼリウス400CPの特徴だ。それは高次元で性能がまとまっていることの証明とも言えるだろう。
「乗っているのを忘れてしまう素晴らしい性能バランス」 浅見和洋(なるしまフレンド)
「乗っているのを忘れてしまう素晴らしい性能バランス」 とてもバランスがとれていて、優等生的なロードバイクという印象。飛び抜けて秀でている部分はないのだが、どの要素も非常に良いレベルにまとまっている。さすがにプロレースで鍛え上げられただけのことはある。
全てにおいてバランスが取れすぎているくらいなので、走っているとサドルに跨っているのを忘れてしまうくらい。本当にクセというクセが無く、不快な部分が無い。何の違和感もなく乗りこなすことができた。
強いて目立った部分を挙げれば、フロント周りの剛性がしっかりしているせいか、ダンシング性能が非常に高かった。自分はかなり前荷重でダンシングする乗り方だが、そうした場合の車体の安定感は、他に同時に試乗したバイクの中でも最も良いと感じた。
今回は完成車販売のモデルに乗ったが、新型アルテグラフルセットに、ホイールはマヴィック・キシリウムエキップというスペックで45万1500円という価格は、ライバルメーカーと比較した場合、ブランドのネームバリューなども計算に入れると妥当なものだろう。
サイズラインナップもいい。ラピエールは大きなサイズも揃えているのだ。日本でも欧米並みに大柄な人がいるので、そういったライダーにも喜ばれる1台だろう。
ロードレース、ヒルクライム、クリテリウム、耐久レース、ロングライド...。それら全ての用途で使えると思う。どんな人が買ってもマイナス面のないモデルであり、個人的にも非常に気に入った1台だった。
ラピエール・ゼリウス400CP (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ラピエール・ゼリウス400CP
フレームマテリアル ゼリウス HM UD カーボンモノコック
フォーク リッチー・WCS カーボン テーパー X400FDJ
メインコンポ シマノ・アルテグラ
クランク シマノ・アルテグラ
ホイール マヴィック・キシリウムエキップ
フレームサイズ 46、49、52、55
カラー プロチームカラー
希望小売価格 451,500円(完成車)
鈴木祐一(Rise Ride) 鈴木祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
浅見和洋(なるしまフレンド) 浅見和洋(なるしまフレンド)
プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド
ウェア協力:カステリ(インターマックス)
text:吉本 司
photo&edit:綾野 真
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現在はコガミヤタなどと同じくオランダのアクセルグループの一員であり、その豊富な情報網を生かして開発を行っている。 日本では以前から少量が流通していたが、サーベロの正規代理店でもある東商会が独占販売権を新たに取得し、今後の国内販売および製品サポートへの期待が大いにできる。
ラピエールの2010年コレクションは、モデル名が従来から一新された。従来の「Xライト」は「ゼリウス」、「Sライト」が「センシウム」に、そして「Rライト」は『アウダシオ』となり、グラフィックも一新されラインナップされる。
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今回試乗するゼリウス400CPは、ゼリウスシリーズのプロチームカラーモデルだ。3色の塗り分けはもちろんフランセーズデジュチームのもの。
ゼリウスはコンペティションシリーズとしてロードバイクの最上級モデルに位置づけられ、ラピエールの持つカーボンテクノロジーが惜しげもなく注ぎ込まれる。2009年のツール・ド・フランスでは山岳ジャージを4日間着用するのに貢献した。
フレームはモノコック製法で作られる。ユニークなのはその型であり、シリコン製が用いられる。これにより、さらに最適な加熱と圧力をかけることが可能になり、カーボン層同士の接着力がより強固になっている。つまりは剛性を高める効果もあり、今まで補強が必要だったヘッドやBB部分も、それなしで十分な剛性を確保できるようになった。
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したがって軽量化もできるのだ。HMとVHMのユニディレクショナルカーボンで製作されたフレームは、エンド部までフルカーボン製で、わずか860g(サイズ55cm)という重量を実現している。ちなみにシフトアウターストッパー小物も100%フルカーボン製だ。ここまでカーボンで作れるメーカーは世界でもごくわずかだ。
フレーム形状に目をやると、トップチューブは緩やかなカーブを描き、最先端のアーチシェイプデザインも取り入れていることが分かる。またシートステーも快適性向上のために屈曲加工が施されている。
フロントフォークは、下ワンにワンポイントファイブ規格を採用した上下異径コラムで、それに伴いヘッドチューブもテーパー形状だ。このフォークはロゴが入るとおり、リッチーと共同開発したスペシャルモデルだ。ストレートに近いブレード形状と、ボリュームを持たせた肩部分は高い剛性を予感させる。
また、一時は同社のバイクにも採用されていたインテグラルシートポスト仕様が、全てのモデルで姿を消しているのは興味深い傾向だ。これは通常のシートポストの方がセッティング範囲が広く、使い勝手が良いと判断されたためだろう。話題を呼んだ新機構だが、否定派も増えている。
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ゼリウス400CPは、最上位機種となる最上位のゼリウス900と同じフレームであり、つまりは日本のサイクリストもトッププロが本場のレースで使用するバイクに極めて近い性能を持つモデルが手ごろな価格で手に入るということだ。極めてお買い得感の高いモデルと言えるだろう。
このフレンチレーサーをテストライダー達はどう評価するのだろうか?早速、インプレッションをお届けしよう。
― インプレッション
「前後・上下・左右、あらゆる方向へのバランスが良い上品なバイク」 鈴木祐一(Rise Ride)
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ペダリングの時のウイップも、硬すぎず柔らかすぎずの適度な感覚で、リズムのいい反発性を体感できた。非常によくまとまっており、破錠がない。
全体を通してみて、このバイクには特化した部分はないが、様々な要素が高い次元で「ど真ん中」にまとまっている。絶対的なレベルが高いので、速くても走っても、ゆったり乗っていても快適なのが特徴だ。これは最初に言ったこのバイクの上品な部分に通じる。ゆっくり走っても振動のカットの仕方が上手く、マイルドなのだ。
どんな速度域でも対応できるのがこのバイクの特徴だと思う。大きい衝撃を小さくするのではない。なにかを誤魔化しているのでもない。あくまでマイルドにしてくれるのだ。
サスペンションが付いているような感覚ではなく、大きな衝撃の角を取ってしまうような安楽さでもない。全体的なエネルギーは変わらないが、衝撃を横に引き延ばして伝えてくれるような感じだ。これがすなわち上品なという言葉に繋がる。
あまり特徴がないとも言えるほど、自然な走り心地がゼリウス400CPの特徴だ。それは高次元で性能がまとまっていることの証明とも言えるだろう。
「乗っているのを忘れてしまう素晴らしい性能バランス」 浅見和洋(なるしまフレンド)
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全てにおいてバランスが取れすぎているくらいなので、走っているとサドルに跨っているのを忘れてしまうくらい。本当にクセというクセが無く、不快な部分が無い。何の違和感もなく乗りこなすことができた。
強いて目立った部分を挙げれば、フロント周りの剛性がしっかりしているせいか、ダンシング性能が非常に高かった。自分はかなり前荷重でダンシングする乗り方だが、そうした場合の車体の安定感は、他に同時に試乗したバイクの中でも最も良いと感じた。
今回は完成車販売のモデルに乗ったが、新型アルテグラフルセットに、ホイールはマヴィック・キシリウムエキップというスペックで45万1500円という価格は、ライバルメーカーと比較した場合、ブランドのネームバリューなども計算に入れると妥当なものだろう。
サイズラインナップもいい。ラピエールは大きなサイズも揃えているのだ。日本でも欧米並みに大柄な人がいるので、そういったライダーにも喜ばれる1台だろう。
ロードレース、ヒルクライム、クリテリウム、耐久レース、ロングライド...。それら全ての用途で使えると思う。どんな人が買ってもマイナス面のないモデルであり、個人的にも非常に気に入った1台だった。
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ラピエール・ゼリウス400CP
フレームマテリアル ゼリウス HM UD カーボンモノコック
フォーク リッチー・WCS カーボン テーパー X400FDJ
メインコンポ シマノ・アルテグラ
クランク シマノ・アルテグラ
ホイール マヴィック・キシリウムエキップ
フレームサイズ 46、49、52、55
カラー プロチームカラー
希望小売価格 451,500円(完成車)
インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
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プロショップ「なるしまフレンド原宿店」スタッフ。身長175cm、体重65kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質は厳しい上りがあるコースでの活躍が目立つクライマータイプだ。ダンシングでパワフルに走るのが得意。最近の嗜好は日帰りロングランにあり、例えば東京から伊豆といった、距離にして300kmオーバーをクラブ員らと楽しんでいる。
なるしまフレンド
ウェア協力:カステリ(インターマックス)
text:吉本 司
photo&edit:綾野 真
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