コースが93.1kmに短縮され、超級山岳ラ・プラーニュにフィニッシュしたツール・ド・フランス第19ステージ。今大会最後の山頂フィニッシュをテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)が制し、ポガチャルがパリでのマイヨジョーヌ獲得をほぼ確実なものにした。

マイヨブランを着て山岳決戦に臨むリポヴィッツ photo:A.S.O. 
スタート前にヴィッテルで補給するモビスター photo:A.S.O.

スタート前に健闘を誓うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)とヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.
7月25日(金)第19ステージ
アルベールヴィル〜ラ・プラーニュ(山岳)
距離:93.1km
獲得標高差:3,250m
天候:晴れのち雨
気温:18度

短縮されたツール・ド・フランス第19ステージのコースプロフィール image:A.S.O.
ロズ峠で白熱の山岳バトルが繰り広げられた翌日も、選手たちは過酷なアルプスの山岳に立ち向かう。本来は129.9kmに5つのカテゴリー山岳が詰め込まれた獲得標高差4,550mのステージだったが、序盤に登る予定だった1級山岳セジエにいる牛の群れで伝染性結節性皮膚炎の発生が確認されたため、そこを回避する93.1kmの短縮コースとなった。
そのため出発地点のアルベールヴィルから、3つ目の予定だった超級山岳コル・ド・プレ(距離12.6km/平均7.7%)を登るレイアウトとなった。その後は予定通り2級山岳を越え、約33kmの下り&平坦路をクリアし、最後に超級山岳ラ・プラーニュ(距離19.1km/平均7.2%)を駆け上がる。

この日も序盤のレース展開をコントロールするリドル・トレック photo:CorVos
レース序盤は前日同様、リドル・トレックがアタックを許さない集団コントロールから始まった。その目的は12.1km地点に設定された中間スプリントを、ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が先頭通過するため。マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るミランは作戦通りビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)を退け、20ポイントを加算した。
その勢いのまま超級山岳コル・ド・プレに突入した集団の中から、逃げを目指す動きが活発化する。マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)をアシストするべくジュリアン・アラフィリップ(フランス)が積極的に動いたものの、逃げ集団を形成したのはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)。頂上手前でヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)も加わり、マルティネスを先頭に3名が頂上を通過する頃には、プロトンから52秒のリードを得た。

最初の超級山岳で形成されたログリッチら3名の逃げ集団 photo:A.S.O.
ダム堤体の上を通り、2級山岳もマルティネスがトップ通過し、失ったマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)の奪還に動く。47秒後方のプロトンからは早くも総合7位のケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)が遅れ、最終的にトップから6分18秒遅れの区間17位でフィニッシュ。しかし総合7位の順位は変わらず、フランス期待の新星が意地を見せた。
先頭が長い下りに取り掛かると、2日連続で逃げに乗ったログリッチが飛び出す。しかし25名に絞られたプロトンをハイペースに持ち込んだティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)がそれを許さず、残り21km地点でログリッチを吸収。一度止んだ雨が再び降り出すなか、いよいよ今大会最後の山頂フィニッシュの場、超級山岳ラ・プラーニュ(距離19.km/平均7.2%)の登坂が始まった。

ポガチャルとヴィンゲゴーに追いついたテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
13名まで絞られた集団を牽引したのは、UAEチームエミレーツXRGやヴィスマ・リースアバイクではなく、デカトロンAG2Rラモンディアールだった。その狙いは総合6位につけるフェリックス・ガル(オーストリア)の総合ジャンプアップ。第16ステージの勝者ヴァランタンの兄オレリアンから、トラック競技出身のカラム・スコットソン(オーストラリア)に先頭交代し、その役割を終えると、ガルのペースアップにジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)が遅れた。
ガルが脚を緩め、牽制に入った精鋭集団からはテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。それに一拍遅れてポガチャルが加速すると、唯一ヴィンゲゴーが反応。瞬く間に追い抜かれたアレンスマンだったが、粘りの走りで2名に追いつき、何度かのアタックの末、残り13km地点から単独先頭へと躍り出た。

残り13km地点で単独先頭に立ったテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
ヴィンゲゴーが頑なにポガチャルの前に出なかったため、再び牽制に入った2名にはガルら後続が追いつく。その間にアレンスマンはタイム差を稼ぎ、残り5kmを表すバナーを26秒のリードで通過。後続ではポガチャルのアタックと高速登坂に、ヴィンゲゴーと総合3位のフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)しか食らいつくことができなかった。
「後ろは見ず、とにかく全力で踏み続けた」と語るように、アレンスマンはリードを維持。再三にわたるポガチャル、そしてヴィンゲゴーのアタックもアレンスマンに届くことはなく、わずか2秒差でフィニッシュラインに到達。信じられないと口元を抑え、フィニッシュ後も地面に座り込み、雨に打たれながら静かに勝利を噛み締めた。

2秒差で後続を振り切り、勝利したテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

フィニッシュ直後、座り込むテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.
第14ステージで逃げから勝利を掴み、そして今度はマイヨジョーヌのいる精鋭集団から飛び出し、今大会2勝目を手に入れたアレンスマン。「僕は総合争いに無関係なので、アタックしても周りは牽制するのではと思った。逃げの時とは違い、相手はタデイ(ポガチャル)やヨナス(ヴィンゲゴー)という異次元の強さを誇る選手たち。僕はただの人間だけど、それでも勝ちたいと思い、仕掛けた。まるで夢の中にいるようだよ」と、勝利の喜びを語った。

今大会2勝目を手に入れたテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌを堅守したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O. 
総合3位とマイヨブランを見事守ったフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.
2位はヴィンゲゴーが入り、同タイムでフィニッシュしたポガチャルとの差を2秒縮めることに。区間4位(6秒遅れ)だったリポヴィッツは、区間5位オンリーとの総合タイムを41秒差まで拡げ、総合3位とマイヨブラン(ヤングライダー賞)を守りきった。
翌日はステージを通してアップダウンが連続する丘陵ステージだが、本格山岳は登場しない。そのためヴィンゲゴーに4分24秒差をつけるポガチャルが、これでパリでの総合優勝を大きく引き寄せた。



7月25日(金)第19ステージ
アルベールヴィル〜ラ・プラーニュ(山岳)
距離:93.1km
獲得標高差:3,250m
天候:晴れのち雨
気温:18度

ロズ峠で白熱の山岳バトルが繰り広げられた翌日も、選手たちは過酷なアルプスの山岳に立ち向かう。本来は129.9kmに5つのカテゴリー山岳が詰め込まれた獲得標高差4,550mのステージだったが、序盤に登る予定だった1級山岳セジエにいる牛の群れで伝染性結節性皮膚炎の発生が確認されたため、そこを回避する93.1kmの短縮コースとなった。
そのため出発地点のアルベールヴィルから、3つ目の予定だった超級山岳コル・ド・プレ(距離12.6km/平均7.7%)を登るレイアウトとなった。その後は予定通り2級山岳を越え、約33kmの下り&平坦路をクリアし、最後に超級山岳ラ・プラーニュ(距離19.1km/平均7.2%)を駆け上がる。

レース序盤は前日同様、リドル・トレックがアタックを許さない集団コントロールから始まった。その目的は12.1km地点に設定された中間スプリントを、ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が先頭通過するため。マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るミランは作戦通りビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)を退け、20ポイントを加算した。
その勢いのまま超級山岳コル・ド・プレに突入した集団の中から、逃げを目指す動きが活発化する。マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)をアシストするべくジュリアン・アラフィリップ(フランス)が積極的に動いたものの、逃げ集団を形成したのはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)。頂上手前でヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)も加わり、マルティネスを先頭に3名が頂上を通過する頃には、プロトンから52秒のリードを得た。

ダム堤体の上を通り、2級山岳もマルティネスがトップ通過し、失ったマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)の奪還に動く。47秒後方のプロトンからは早くも総合7位のケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)が遅れ、最終的にトップから6分18秒遅れの区間17位でフィニッシュ。しかし総合7位の順位は変わらず、フランス期待の新星が意地を見せた。
先頭が長い下りに取り掛かると、2日連続で逃げに乗ったログリッチが飛び出す。しかし25名に絞られたプロトンをハイペースに持ち込んだティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)がそれを許さず、残り21km地点でログリッチを吸収。一度止んだ雨が再び降り出すなか、いよいよ今大会最後の山頂フィニッシュの場、超級山岳ラ・プラーニュ(距離19.km/平均7.2%)の登坂が始まった。

13名まで絞られた集団を牽引したのは、UAEチームエミレーツXRGやヴィスマ・リースアバイクではなく、デカトロンAG2Rラモンディアールだった。その狙いは総合6位につけるフェリックス・ガル(オーストリア)の総合ジャンプアップ。第16ステージの勝者ヴァランタンの兄オレリアンから、トラック競技出身のカラム・スコットソン(オーストラリア)に先頭交代し、その役割を終えると、ガルのペースアップにジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)が遅れた。
ガルが脚を緩め、牽制に入った精鋭集団からはテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。それに一拍遅れてポガチャルが加速すると、唯一ヴィンゲゴーが反応。瞬く間に追い抜かれたアレンスマンだったが、粘りの走りで2名に追いつき、何度かのアタックの末、残り13km地点から単独先頭へと躍り出た。

ヴィンゲゴーが頑なにポガチャルの前に出なかったため、再び牽制に入った2名にはガルら後続が追いつく。その間にアレンスマンはタイム差を稼ぎ、残り5kmを表すバナーを26秒のリードで通過。後続ではポガチャルのアタックと高速登坂に、ヴィンゲゴーと総合3位のフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)しか食らいつくことができなかった。
「後ろは見ず、とにかく全力で踏み続けた」と語るように、アレンスマンはリードを維持。再三にわたるポガチャル、そしてヴィンゲゴーのアタックもアレンスマンに届くことはなく、わずか2秒差でフィニッシュラインに到達。信じられないと口元を抑え、フィニッシュ後も地面に座り込み、雨に打たれながら静かに勝利を噛み締めた。


第14ステージで逃げから勝利を掴み、そして今度はマイヨジョーヌのいる精鋭集団から飛び出し、今大会2勝目を手に入れたアレンスマン。「僕は総合争いに無関係なので、アタックしても周りは牽制するのではと思った。逃げの時とは違い、相手はタデイ(ポガチャル)やヨナス(ヴィンゲゴー)という異次元の強さを誇る選手たち。僕はただの人間だけど、それでも勝ちたいと思い、仕掛けた。まるで夢の中にいるようだよ」と、勝利の喜びを語った。



2位はヴィンゲゴーが入り、同タイムでフィニッシュしたポガチャルとの差を2秒縮めることに。区間4位(6秒遅れ)だったリポヴィッツは、区間5位オンリーとの総合タイムを41秒差まで拡げ、総合3位とマイヨブラン(ヤングライダー賞)を守りきった。
翌日はステージを通してアップダウンが連続する丘陵ステージだが、本格山岳は登場しない。そのためヴィンゲゴーに4分24秒差をつけるポガチャルが、これでパリでの総合優勝を大きく引き寄せた。
ツール・ド・フランス2025第19ステージ
1位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | 2:46:06 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:02 |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | |
4位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:06 |
5位 | オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +0:47 |
6位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +1:34 |
7位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | +1:41 |
8位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | +2:19 |
9位 | ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ) | +3:47 |
10位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | +3:54 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 69:41:46 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +4:24 |
3位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +11:09 |
4位 | オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +12:12 |
5位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +17:12 |
6位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | +20:14 |
7位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +22:35 |
8位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +25:30 |
9位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | +28:02 |
10位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | +34:34 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 352pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 272pts |
3位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 213pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 117pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 104pts |
2位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 97pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 69:52:55 |
2位 | オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +1:03 |
3位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +11:26 |
チーム総合成績
1位 | ヴィスマ・リースアバイク | 210:05:23 |
3位 | UAEチームエミレーツXRG | +24:26 |
2位 | デカトロンAG2Rラモンディアール | +1:18:56 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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