2017/03/11(土) - 10:33
残り20kmから独走に持ち込み、最大勾配20%の「壁」を単独で駆け上がったサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)が単独でフィニッシュ。「壁」でメイン集団はバラけ、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が総合リードの拡大に成功した。
パリ〜ニースは南仏のプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏に達した。山岳3連戦の幕開けを告げる第6ステージはスタート直後から1級山岳レスピグリエ峠を登る193.5kmの山岳コース。残り60kmを切ってから6%前後の勾配が続く1級山岳ブリガイユ峠を2度こなし、最後は2級山岳ファイヤンスの山頂フィニッシュだ。
史上3度目の登場となるファイヤンスは残り1.3kmの平均勾配が9.8%。最大勾配20%の「壁」区間も登場する。まるで「アルデンヌ・クラシック」を彷彿とさせるレイアウトだ。
総合争いにおいても注目が集まるステージは序盤の1級山岳レスピグリエ峠から高速化。逃げが決まらないアタックの応酬が続き、レスピグリエ峠通過後の52km地点でようやく8名の先行が決まる。シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)といったすでに総合で大きく遅れている有力選手が逃げに乗った。
最大5分まで広がったタイム差を詰めにかかったのはチームスカイ。プロヴァンスの内陸部に分け入り、後半の山岳地帯に差し掛かるとタイム差の縮小は加速する。フィニッシュまで70kmを残して3分あったタイム差は1回目の1級山岳ブリガイユ峠の上りで1分を割り込んだ。
この今大会最初のカテゴリー1級で先頭はデマルキとエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)の2人に絞られた一方で、メイン集団ではフィニッシュまで50kmを残したタイミングでアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が攻撃を開始する。
「タフな展開に持ち込みたかった」というコンタドールのアタックにはセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)とダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)がすかさず合流した。
総合タイム1分31秒差を逆転したいコンタドールの早めのアタックは吸収され、そこからは人数を揃えるチームスカイがメイン集団を牽引する。フィリップ・ダイグナン(アイルランド)、セバスティアン・エナオ(コロンビア)、ミケル・ニエベ(スペイン)が上りで強力なペースを作ってエナオをリード。
一度ファイヤンスのフィニッシュラインを通過後、メイン集団は2回目の1級山岳ブリガイユ峠で先頭のデマルキとセプルベダを飲み込んでしまう。チームスカイのペースメイクで人数を減らした集団から、フィニッシュまで20kmを残して、ブリガイユ峠の頂上まで1kmを残して、総合15位・2分16秒遅れのイェーツが飛び出した。
後続の様子を確認することなく、チーム無線のイヤホンを外し、ただ前だけを見て踏み続けたイェーツは、ブリガイユ峠の頂上通過時点で10秒だったタイム差を下り区間でぐんぐんと広げる。チームスカイやBMCレーシングが集団を牽引したにもかかわらず、平坦区間でタイム差を50秒まで拡大したイェーツが2級山岳ファイヤンスの「壁」に突入した。
次点でヤングライダー賞ジャージを着るイェーツがテンポを刻んで「壁」をよじ登るその50秒後方では、総合ですでに大きく遅れているリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)が最初に動いた。しかしポートのアタックは決定力を欠き、勾配が増したタイミングでコロンビアチャンピオンジャージのエナオが勢いあるアタックを繰り出す。
そのまま独走で「壁」を上りきったイェーツがステージ優勝。全長1.3kmの上りをイェーツよりも約30秒早いペースで駆け上がったエナオが17秒遅れのステージ2位でフィニッシュし、ステージ3位にはポートが。そしてマーティンにアシストされてコンタドールらから3秒先行したアラフィリップがステージ4位に食い込んだ。
2016年ツール・ド・フランスでヤングライダー賞(総合4位)に輝いたアダム・イェーツの双子の兄弟サイモン・イェーツが、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝に続くUCIワールドツアーレース勝利をつかんだ。なお、現在双子の兄弟アダムはイタリアのティレーノ〜アドリアティコに出場している。
総合8位にジャンプアップしたイェーツは「総合でタイム差を付けられていたので比較的自由度が高かった。失うものはなかったし、一か八かでアタックしたんだ。誰かが付いてくると予想したけど誰もアタックには反応せず、自分一人でひたすら全開で踏むことになった。持っている力を出し尽くしたよ。同世代のジュリアン(アラフィリップ)との総合タイム差はまだ大きいけど、チャンスが残されているのでまた挑戦したい。明日はタフなレースになりそうだ」とコメントする。アラフィリップとの総合タイム差は1分37秒まで縮まっている。
総合リードを守ったアラフィリップはリーダージャージを着て翌日のクイーンステージに挑むことに。「ファイヤンスの壁は厳しい上りだった。ステージ優勝と総合狙いの動きが起こったものの上手く乗り越えることができたと思う。エナオには先行されたもののその他のライバルたちからタイムを奪うこともできた。エナオのスピードは凄まじく、彼のホイールに食らいついたもののすぐに離されてしまった。明日もエナオが危険な存在になるはず」とアラフィリップ。総合2位トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)とのタイム差は36秒。総合3位に浮上したエナオが46秒差で続いている。
パリ〜ニース2017第6ステージ結果
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 4h37’51”
2位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +17”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +26”
4位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +29”
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)
6位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +32”
7位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
9位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
10位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)
11位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) +39”
12位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)
13位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)
個人総合成績
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)21h58’22”
2位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) +36”
3位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +46”
4位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター) +57”
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +1’20”
6位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +1’31”
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) +1’34”
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +1’37”
9位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +2’04”
10位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) +3’08”
ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) 41pts
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 36pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) 30pts
山岳賞
1位 アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼール) 19pts
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 17pts
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)17pts
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)21h58’22”
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +1’37”
3位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +17’53”
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 66h02’54”
2位 チームスカイ +10’04”
3位 ロット・ソウダル +16’55”
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
パリ〜ニースは南仏のプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏に達した。山岳3連戦の幕開けを告げる第6ステージはスタート直後から1級山岳レスピグリエ峠を登る193.5kmの山岳コース。残り60kmを切ってから6%前後の勾配が続く1級山岳ブリガイユ峠を2度こなし、最後は2級山岳ファイヤンスの山頂フィニッシュだ。
史上3度目の登場となるファイヤンスは残り1.3kmの平均勾配が9.8%。最大勾配20%の「壁」区間も登場する。まるで「アルデンヌ・クラシック」を彷彿とさせるレイアウトだ。
総合争いにおいても注目が集まるステージは序盤の1級山岳レスピグリエ峠から高速化。逃げが決まらないアタックの応酬が続き、レスピグリエ峠通過後の52km地点でようやく8名の先行が決まる。シルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)といったすでに総合で大きく遅れている有力選手が逃げに乗った。
最大5分まで広がったタイム差を詰めにかかったのはチームスカイ。プロヴァンスの内陸部に分け入り、後半の山岳地帯に差し掛かるとタイム差の縮小は加速する。フィニッシュまで70kmを残して3分あったタイム差は1回目の1級山岳ブリガイユ峠の上りで1分を割り込んだ。
この今大会最初のカテゴリー1級で先頭はデマルキとエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)の2人に絞られた一方で、メイン集団ではフィニッシュまで50kmを残したタイミングでアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が攻撃を開始する。
「タフな展開に持ち込みたかった」というコンタドールのアタックにはセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)とダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)がすかさず合流した。
総合タイム1分31秒差を逆転したいコンタドールの早めのアタックは吸収され、そこからは人数を揃えるチームスカイがメイン集団を牽引する。フィリップ・ダイグナン(アイルランド)、セバスティアン・エナオ(コロンビア)、ミケル・ニエベ(スペイン)が上りで強力なペースを作ってエナオをリード。
一度ファイヤンスのフィニッシュラインを通過後、メイン集団は2回目の1級山岳ブリガイユ峠で先頭のデマルキとセプルベダを飲み込んでしまう。チームスカイのペースメイクで人数を減らした集団から、フィニッシュまで20kmを残して、ブリガイユ峠の頂上まで1kmを残して、総合15位・2分16秒遅れのイェーツが飛び出した。
後続の様子を確認することなく、チーム無線のイヤホンを外し、ただ前だけを見て踏み続けたイェーツは、ブリガイユ峠の頂上通過時点で10秒だったタイム差を下り区間でぐんぐんと広げる。チームスカイやBMCレーシングが集団を牽引したにもかかわらず、平坦区間でタイム差を50秒まで拡大したイェーツが2級山岳ファイヤンスの「壁」に突入した。
次点でヤングライダー賞ジャージを着るイェーツがテンポを刻んで「壁」をよじ登るその50秒後方では、総合ですでに大きく遅れているリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)が最初に動いた。しかしポートのアタックは決定力を欠き、勾配が増したタイミングでコロンビアチャンピオンジャージのエナオが勢いあるアタックを繰り出す。
そのまま独走で「壁」を上りきったイェーツがステージ優勝。全長1.3kmの上りをイェーツよりも約30秒早いペースで駆け上がったエナオが17秒遅れのステージ2位でフィニッシュし、ステージ3位にはポートが。そしてマーティンにアシストされてコンタドールらから3秒先行したアラフィリップがステージ4位に食い込んだ。
2016年ツール・ド・フランスでヤングライダー賞(総合4位)に輝いたアダム・イェーツの双子の兄弟サイモン・イェーツが、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝に続くUCIワールドツアーレース勝利をつかんだ。なお、現在双子の兄弟アダムはイタリアのティレーノ〜アドリアティコに出場している。
総合8位にジャンプアップしたイェーツは「総合でタイム差を付けられていたので比較的自由度が高かった。失うものはなかったし、一か八かでアタックしたんだ。誰かが付いてくると予想したけど誰もアタックには反応せず、自分一人でひたすら全開で踏むことになった。持っている力を出し尽くしたよ。同世代のジュリアン(アラフィリップ)との総合タイム差はまだ大きいけど、チャンスが残されているのでまた挑戦したい。明日はタフなレースになりそうだ」とコメントする。アラフィリップとの総合タイム差は1分37秒まで縮まっている。
総合リードを守ったアラフィリップはリーダージャージを着て翌日のクイーンステージに挑むことに。「ファイヤンスの壁は厳しい上りだった。ステージ優勝と総合狙いの動きが起こったものの上手く乗り越えることができたと思う。エナオには先行されたもののその他のライバルたちからタイムを奪うこともできた。エナオのスピードは凄まじく、彼のホイールに食らいついたもののすぐに離されてしまった。明日もエナオが危険な存在になるはず」とアラフィリップ。総合2位トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)とのタイム差は36秒。総合3位に浮上したエナオが46秒差で続いている。
パリ〜ニース2017第6ステージ結果
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 4h37’51”
2位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +17”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +26”
4位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +29”
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)
6位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +32”
7位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
9位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
10位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)
11位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) +39”
12位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)
13位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)
個人総合成績
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)21h58’22”
2位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) +36”
3位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ) +46”
4位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター) +57”
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +1’20”
6位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +1’31”
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) +1’34”
8位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +1’37”
9位 ホン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +2’04”
10位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ) +3’08”
ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) 41pts
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 36pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) 30pts
山岳賞
1位 アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼール) 19pts
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) 17pts
3位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト)17pts
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)21h58’22”
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +1’37”
3位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +17’53”
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 66h02’54”
2位 チームスカイ +10’04”
3位 ロット・ソウダル +16’55”
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
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