2017/03/07(火) - 12:13
3月8日から14日まで、7日間かけてイタリア半島を横断するティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)が開催される。同時期開催のパリ〜ニースに負けるとも劣らないビッグネームが集結する「二つの海のレース」の見どころをプレビュー。
パリ〜ニースに肩を並べるもう一つのステージレース
1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCS Sportが主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、イタリア半島を横断してアドリア海沿岸に至るステージレースだ。2つの海を結ぶその行程から、イタリアでは「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。
同時期に開催されるパリ〜ニースと同様にクラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力選手たたちが大勢出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分けている。
パリ〜ニースよりも1日短い全7ステージながら、チームTTから個人TT、平坦ステージ、丘陵ステージ、本格ステージまでコースはとにかくバリエーションに富んでいる。
初日はティレニア海に面したリード・ディ・カマイオーレでのチームタイムトライアル。平坦な22.7kmコースを23チームの選手たちが高速で駆け抜け、優勝チームの先頭フィニッシュ選手が青いリーダージャージを受け取る。
第2ステージは後半にかけて3つのGPM(グラン・プレミオ・モンターニャ=カテゴリー山岳)が設定された中級山岳ステージで、残り9kmから最大勾配16%の急坂区間を含む登り基調。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に代表されるパンチャーたちの出番だ。一方でピュアスプリンター向きの平坦ステージと呼べるのは第3ステージと第6ステージぐらいしかない。いずれのステージもフィニッシュ手前に短い登りが設定されているため、リードアウトトレインがレースを支配するような単純な集団スプリントにはならないだろう。
標高1675mのGPMテルミニッロにフィニッシュする第4ステージが今大会のクイーンステージ。イタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈に分け入り、ティレーノの名物峠になりつつある(年によっては大雪が降る)テルミニッロを駆け上がる。登坂距離16.1kmの平均勾配は7.3%で、先頭の登坂時間は45分弱。ここで生まれたタイム差が総合争いに大きく響く。
アドリア海に面したマルケ州のフェルモにフィニッシュする第5ステージは、同州らしい丘陵地帯のアップダウンコースが特徴。標高319mの丘の上に佇むフェルモに向かって、残り4kmから急勾配の登りを進む。最大勾配22%の激坂をこなした後、しばらくの平坦区間を経てフィニッシュ前は再び10%の登り勾配だ。
最終日は恒例となっているサンベネデット・デル・トロントの10km個人タイムトライアル。海岸通りを含む真っ平らなハイスピード走行で総合優勝者が決まる。
ティレーノ〜アドリアティコ2016ステージリスト
3月8日(水)第1ステージ リード・ディ・カマイオーレ 22.7km(チームTT)
3月9日(木)第2ステージ カマイオーレ〜ポマランチェ 228km
3月10日(金)第3ステージ モンテロトンド・マリッティモ〜モンタルト・ディ・カストロ 204km
3月11日(土)第4ステージ モンタルト・ディ・カストロ〜テルミニッロ 171km
3月12日(日)第5ステージ リエーティ〜フェルモ 209km
3月13日(月)第6ステージ アスコリ・ピチェーノ〜チヴィタノーヴァ・マルケ 168km
3月14日(火)第7テージ サンベネデット・デル・トロント 10km(個人TT)
ジロ狙いのキンタナ、ニーバリ、トーマスらが激突
すべてのUCIワールドチームが顔を揃え、ワイルドカードとしてUCIプロコンチネンタルチームのアンドローニジョカトリ、バルディアーニCSF、NIPPOヴィーニファンティーニ、ノボノルディスクが出場。グランツールよりも1名少ない8名ずつの出場となる。
2017年にジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの同年制覇を目論んでいるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は、直前のGPインダストリア&アルティジアナートに続くイタリアンレース出場。キンタナは2015年にテルミニッロ山頂フィニッシュを制してティレーノ総合優勝を果たしている。
ジロでキンタナの最大のライバルになると目されるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は2012年と2013年のティレーノ覇者だ。チームを移籍したニーバリは今シーズンまだ勝利を手にしていない。元チームメイトのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とともに地元イタリアの期待を背負う。
ジロ狙いのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は連覇がかかったパリ〜ニースではなくティレーノをセレクト。ミケル・ランダ(スペイン)や、ストラーデビアンケを制したばかりの好調なミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)のバックアップを受ける。
アブダビツアーを制したルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)や、2015年総合2位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、2016年総合3位のボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)らも総合優勝候補に挙がる。
登坂力に秀でたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)、そしてTTでの挽回が可能なトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)も総合争いのキーパーソンになる。
2016年はクイーンステージが悪天候でキャンセルされたため、オールラウンダーではなくパンチャーによる総合争いが繰り広げられた。サガンとの熾烈な総合争いを制したのはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。両者は再びアップダウンコースで火花を散らすことになるだろう。
サガンやヴァンアーヴェルマートと同じパンチャー系選手としてはセップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)の名前も。ディメンションデータは起伏のあるステージではボアッソンハーゲンが、そして平坦ステージではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がエースを担う。リードアウトマンのマーク・レンショー(オーストラリア)やベルンハルト・アイゼル(オーストリア)を揃える熱の入れようだ。
アブダビツアーでそのスピードを遺憾なく発揮したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)にとってはこのティレーノがヨーロッパ初戦。ユアンと同じ22歳のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)も出場する。ガビリアはトム・ボーネン(ベルギー)とダブルエースを組むことになるだろう。地元イタリアンスプリンターとしてはエリア・ヴィヴィアーニ(チームスカイ)やサーシャ・モードロ(UAEチームエミレーツ)らに注目だ。
text:Kei Tsuji
パリ〜ニースに肩を並べるもう一つのステージレース
1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCS Sportが主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、イタリア半島を横断してアドリア海沿岸に至るステージレースだ。2つの海を結ぶその行程から、イタリアでは「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。
同時期に開催されるパリ〜ニースと同様にクラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力選手たたちが大勢出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分けている。
パリ〜ニースよりも1日短い全7ステージながら、チームTTから個人TT、平坦ステージ、丘陵ステージ、本格ステージまでコースはとにかくバリエーションに富んでいる。
初日はティレニア海に面したリード・ディ・カマイオーレでのチームタイムトライアル。平坦な22.7kmコースを23チームの選手たちが高速で駆け抜け、優勝チームの先頭フィニッシュ選手が青いリーダージャージを受け取る。
第2ステージは後半にかけて3つのGPM(グラン・プレミオ・モンターニャ=カテゴリー山岳)が設定された中級山岳ステージで、残り9kmから最大勾配16%の急坂区間を含む登り基調。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に代表されるパンチャーたちの出番だ。一方でピュアスプリンター向きの平坦ステージと呼べるのは第3ステージと第6ステージぐらいしかない。いずれのステージもフィニッシュ手前に短い登りが設定されているため、リードアウトトレインがレースを支配するような単純な集団スプリントにはならないだろう。
標高1675mのGPMテルミニッロにフィニッシュする第4ステージが今大会のクイーンステージ。イタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈に分け入り、ティレーノの名物峠になりつつある(年によっては大雪が降る)テルミニッロを駆け上がる。登坂距離16.1kmの平均勾配は7.3%で、先頭の登坂時間は45分弱。ここで生まれたタイム差が総合争いに大きく響く。
アドリア海に面したマルケ州のフェルモにフィニッシュする第5ステージは、同州らしい丘陵地帯のアップダウンコースが特徴。標高319mの丘の上に佇むフェルモに向かって、残り4kmから急勾配の登りを進む。最大勾配22%の激坂をこなした後、しばらくの平坦区間を経てフィニッシュ前は再び10%の登り勾配だ。
最終日は恒例となっているサンベネデット・デル・トロントの10km個人タイムトライアル。海岸通りを含む真っ平らなハイスピード走行で総合優勝者が決まる。
ティレーノ〜アドリアティコ2016ステージリスト
3月8日(水)第1ステージ リード・ディ・カマイオーレ 22.7km(チームTT)
3月9日(木)第2ステージ カマイオーレ〜ポマランチェ 228km
3月10日(金)第3ステージ モンテロトンド・マリッティモ〜モンタルト・ディ・カストロ 204km
3月11日(土)第4ステージ モンタルト・ディ・カストロ〜テルミニッロ 171km
3月12日(日)第5ステージ リエーティ〜フェルモ 209km
3月13日(月)第6ステージ アスコリ・ピチェーノ〜チヴィタノーヴァ・マルケ 168km
3月14日(火)第7テージ サンベネデット・デル・トロント 10km(個人TT)
ジロ狙いのキンタナ、ニーバリ、トーマスらが激突
すべてのUCIワールドチームが顔を揃え、ワイルドカードとしてUCIプロコンチネンタルチームのアンドローニジョカトリ、バルディアーニCSF、NIPPOヴィーニファンティーニ、ノボノルディスクが出場。グランツールよりも1名少ない8名ずつの出場となる。
2017年にジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの同年制覇を目論んでいるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は、直前のGPインダストリア&アルティジアナートに続くイタリアンレース出場。キンタナは2015年にテルミニッロ山頂フィニッシュを制してティレーノ総合優勝を果たしている。
ジロでキンタナの最大のライバルになると目されるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は2012年と2013年のティレーノ覇者だ。チームを移籍したニーバリは今シーズンまだ勝利を手にしていない。元チームメイトのファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とともに地元イタリアの期待を背負う。
ジロ狙いのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は連覇がかかったパリ〜ニースではなくティレーノをセレクト。ミケル・ランダ(スペイン)や、ストラーデビアンケを制したばかりの好調なミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)のバックアップを受ける。
アブダビツアーを制したルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)や、2015年総合2位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、2016年総合3位のボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)らも総合優勝候補に挙がる。
登坂力に秀でたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)、そしてTTでの挽回が可能なトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)も総合争いのキーパーソンになる。
2016年はクイーンステージが悪天候でキャンセルされたため、オールラウンダーではなくパンチャーによる総合争いが繰り広げられた。サガンとの熾烈な総合争いを制したのはグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)。両者は再びアップダウンコースで火花を散らすことになるだろう。
サガンやヴァンアーヴェルマートと同じパンチャー系選手としてはセップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)の名前も。ディメンションデータは起伏のあるステージではボアッソンハーゲンが、そして平坦ステージではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がエースを担う。リードアウトマンのマーク・レンショー(オーストラリア)やベルンハルト・アイゼル(オーストリア)を揃える熱の入れようだ。
アブダビツアーでそのスピードを遺憾なく発揮したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)にとってはこのティレーノがヨーロッパ初戦。ユアンと同じ22歳のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)も出場する。ガビリアはトム・ボーネン(ベルギー)とダブルエースを組むことになるだろう。地元イタリアンスプリンターとしてはエリア・ヴィヴィアーニ(チームスカイ)やサーシャ・モードロ(UAEチームエミレーツ)らに注目だ。
text:Kei Tsuji
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