2016/11/30(水) - 10:01
ヘルメットブランド BELL(ベル)から新たなロード用のフラッグシップモデル「Zephyr MIPS(ゼファー・ミップス)」がデビューした。スイスでのローンチイベントでテストライドしたインプレも合わせて紹介する。
アメリカ、カリフォルニアを拠点とするバイクヘルメットのパイオニア的メーカー、BELL(ベル)。最先端のヘルメットをリリースし続けながらも、安全第一というヘルメットの基本性能を重要視した製品づくりを続けているリーディングブランドだ。
今回、2017年のロードヘルメットラインアップにおけるフラッグシップモデルとして登場するのが、Zephyr MIPS(ゼファー・ミップス)だ。「60年以上にわたるヘルメットの研究開発、衝突実験のデータ、ノウハウの全てをこのヘルメットに注いだ」とするベルが、その集大成として世に問うハイエンドヘルメットとなる。
まずZephyr MIPSの画期的な構造として、唯一このモデルにのみ搭載される新技術が『インテグレーテッドMIPS』だ。
近年の各社のハイエンドヘルメットに搭載されることが多くなったMIPS(ミップス)とは、「Multidirectional Impact Protection System」の略称で、回転衝撃から頭部への衝撃を減少させるスリップ・プレーン(滑り面)システムのこと。ヘルメット内部に配置された1枚のシートが頭の動きに応じて動くことにより、衝撃から伝達されるエネルギーを緩和する働きをする。地面にヘルメットから落ちた時、頭部へのダメージを軽減してくれるMIPSは、すでにオートバイヘルメットの世界では高い評価を得ているシステムだ。
Zephyr MIPSに搭載された「インテグレーテッドMIPS」とは、MIPSのスリップ・プレーンとフィッティングシステムを直結した全く新しい技術。後付けされることが多いMIPSを最初から組み込むことを前提に、かつフィッティングシステムとともに一体設計することで、より軽量で高いフィッティング性能を得ることに成功している。
その他にも、Zephyr MIPSは異なる2層のシェルで構成された「プログレッシブレイヤリング」を採用する。これはちょうど大小2つのヘルメットによる2重構造のような複合シェル構造で、低密度フォームを内側に、強く高密度なフォームを外側に効果的に配置することで、重量増を抑えながら、起こり得る衝撃エネルギーに対処することができるシステム。例えば衝撃を受けた際、頭に近い側のフォームは速やかに変形することでダメージを最小限にするのだ。
これらの複合機能により、Zephyr MIPSは圧倒的な安全性と抜群のフィット感を得ることに成功している。モダンでシャープなルックスはハイエンドモデルに相応しく、同社が「BELL史上最高のロードヘルメット」と謳うに十分な革新的なヘルメットと言えるだろう。
ー インプレッション
スイスで開催されたローンチイベントでZephyr MIPSのテストライドを体験
ここからはCW編集部・綾野が8月にスイスで開催されたZephyr MIPSのプレゼンテーション&テストライドを体験してのインプレッションをお伝えする。同製品を被り、2日間でスイスの山岳地帯において約250kmのライドを通し、開発者とともにZephyr MIPSを体験したレポートだ。
「ユーロバイク開催前にスイスで新型ヘルメットのプレゼンとライドがあるから出席を」という招待を受け、渡欧のため予約していた航空便を急遽変更してスイス入りした。会に集まったのは15人程度の世界のサイクリングメディアのジャーナリストたち。
ヘルメットメーカーが新製品のための発表会とテストライドイベントをわざわざ国外で開催するというのは前例が無い。それだけ同社がこの製品に力を入れている証拠でもあるだろう。
19歳の頃にジョン・トマックに憧れてBELLのヘルメット「IMAGE(イメージ)」を手に入れた私だが、以来、VOLT、GAGE、STAR PROなどBELLの歴代の代表的ロードモデルを使い続けてきた。
BELLのヘルメットの印象は、他社よりも少し重めだが、タフで安全性が高い(と思われる)こと。経営的にはGIROと同一の親会社ながら、派手さを少し控えめに、ヘルメットの基本性能である安全性を最優先してモノづくりをしてきたことに共感を得ている。
スイスの山中にあるホテルにおいて開発スタッフによる製品についてのプレゼンテーションを受けた後、2日間みっちり走るテストライドへと出かけた。欧米ブランドはこういったプレゼンの際に本格的なライドを盛り込むことで、開発者からしっかりと話を聞く機会が得られるのだ。
ドイツ国境に近い、スイスの険しい山中でのライドは非常に充実したものだった。幸か不幸か初日は雨が降り、2日目は暑い夏日。山岳地帯とあって路面状況は非常に険しく、テスト条件が揃っていた。ヘルメットのテストだからといって転倒する必要は無いが、頭にフィットするかどうかも含め、乗り込むことで見えてくることがある。
まずもっとも画期的な「インテグレーテッドMIPS」機構について。幸い転倒することが無かったため頭部へのダメージについては検証できないが、被ったときのフィット感が非常に高いことがまず大きなメリットとして感じられた。MIPSを組み込むことを前提にフィッティングシステムから設計されたとあって、そのフィット感の高さは他のベル製ヘルメットと比べても段違いに良いものだと感じた。
他社のMIPS装着ヘルメットはどうしてもMIPSの後付け感があり、ヘルメット内部に窮屈さを生み出したり、スリップ・プレーンの存在があるがゆえの浮くようなフィットの悪さを感じてきたものだが、Zephyr MIPSにはそれが無く、かなりのフィット感の高さを実感できた。MIPSシート自体がフィットパーツに融合しているため、後頭部のダイアルを締め込むことでフィット感が高められる仕組みだ。
一言にフィット感が高いと言って、それがどれくらいかというと、今まで同社のヘルメットならVOLT、GAGE、STAR PROの3つともにMサイズを選んできた筆者だが、Zephyr MIPSはひとつ小さめのSサイズが被れてしまった。筆者の頭型は典型的な日本人頭で、国産ならKabutoがベストフィットする形状。BELLの他の3つのヘルメットも僅かな違和感を感じながら愛用してきたのが実情だ。
Zephyr MIPSは違和感がないため、いわゆるアジアンフィットと呼ばれるワイドフィットモデルは必要無いとさえ思われる。このことは開発担当者に伝えさせていただいた。その開発担当者曰く、「それこそMIPSとフィッティングシステムを統合(インテグレート)して設計したことによる恩恵だ」とのことで、よりフィット感が高いという謳い文句は、私のケースにおいては実証された。参加したメディアのライダー達もこぞってフィット感の高さに感心していた。
より小さいSサイズが被れたことに対しては、開発責任者のショーン・コフィ氏に被った状態をチェックしてもらったうえで、コフィ氏は「もし問題なく被ることができるならヘルメットもウェアと同様に小さめが良い。例えば転倒して路面を転がった際にも、大きなヘルメットの場合より安全度が高いのは確かだね」と話す。
さらに、コフィ氏にはデザインがハイエンドモデルとしてはやや控えめなフォルムであることに対して質問させてもらった。後部に流麗なフィンや突起部が無い、おとなしいデザインであることに対し、「エッジの効いていないデザインはGiroとの差別化か?」と質問したのだが、コフィ氏は「転倒して地面に接した(転がった)際、ヘルメット後部などの突起が少ないほうが捻りダメージが少ない。それはちょうどMIPSと同じような考えに基づくものだ」と答えてくれた。
Mサイズで280gという重量は、最近の他社製ハイエンドヘルメットと比べるとやや重めな重量だ。2重構造の「プログレッシブレイヤリング」は内部のリブ(骨組み)などが無い代わりに、内側の帽体の外側にもしっかりとしたシェルがあり、”ヘルメットの2つ重ね” のような構造になっている。重量的にはかさむものの、その構造による安全性の高さはMIPSとあいまって非常に高いものになるという。
数字的には気になるが、2日間のライドでその重量をハンデと感じることは無かった。最近愛用しているKASK PROTONEが230g(Mサイズ)であることから、手に持ってすぐに重量差を感じた。しかしそれは被ってすぐに慣れることができるもので、ライドを通してとくに気になるものではなかった。最近の軽量ヘルメットに慣れた人なら同じように感じるだろうが、むしろ安全マージンにつながる安心感として納得できるものだ。
Zephyr MIPSはシェル外殻や全体の作りが堅牢だ。多くの軽量ヘルメットは持ち運びに気を配らないとすぐにシェルに凹みや傷がついてしまうもので、とくに持ち運ぶときなどはハードケース的なもので外側の保護をする必要がある。Zephyr MIPSには布製のバッグが付属するが、むき出しでも凹みを生じないほどシェル外殻の丈夫さがある。
また、走りながら感心したのがスウェットパッドの構造だ。額に当たる部分の汗止めパッドが、ちょうどヘルメット先端部にかけて突き出るように回り込んでいる。走りながらその機能が何を果たすのか認識できた。かいた汗はパッドに集まるが、この先端部の突き出しがあることで、飽和した汗はそのポイントから滴り落ちる仕組みだ。つまり今までのようにアイウェア内側などに垂れることがなく、額からの距離をもって先端のポイントから滴り落ちるのだ。
峠を登りながら頭に激しく汗をかきつつも、汗がこの1点から滴ることでアイウェアを汚すことがない。この点は素晴らしいストレス軽減のアイデア。まさに乗っている開発者でなければ思いつかない構造だ。
2日目のライドは夏日で、コースは平坦のスピードライドだった。通気性が良いのは見た目通りだ。2日間のライドを終えてBELLヘルメットの開発者たちにはこのように伝えた。
「日本のユーザーはヘルメットに対して軽さを重視する傾向があるので、Zephyr MIPのカタログ重量が販売上のネックになると思う。しかし、安全性の高さと設計の素晴らしさを体感することができました。フィット感も素晴らしかった。典型的な日本人頭の私がまったく問題無く被れたのだから、アジアンフィットモデルの開発はおそらく必要無いはずです」と。
筆者の頭サイズは56cm。SとMのちょうど境にある、両方が被れるサイズだ。BELLのヘルメットを今までに被ってきた人ならある程度のフィットの傾向は掴めると思うが、一部のカラーにのみ設定されたSサイズモデルの入荷は2月となる。SかMかのどちらかに迷う人は両方を試着できるタイミングまで待つのが良さそうだ。
【製品スペック】
Zephyr MIPS / ゼファーミップス
価格:27,000円(税抜)
ベンチレーション:18
安全規格:CPSC Bicycle / CE EN1078
サイズ:*S(52~56㎝)266g / M(55~59㎝)280g / L(58~62㎝) 313g
機能
・インテグレーテッドミップス
・プログレッシブレイヤリング
・フロートフィットレース
・ノーツイスト トリグライド
・X-スタティック消臭パッド
・スウェットガイドパッド
・サングラスガイド
・JCF2017取得予定
カラー:*マットブラック/ネオンピンク、マット/グロスレティーナシア/ブラック、マット/グロスレッド/ブラック/ホワイト、マット/グロスブルー/ホワイト、*マット/グロスブラック、マット/グロスホワイト/ブラック、*ゴースト
*Sサイズ展開カラー:マットブラック/ネオンピンク、マット/グロスブラック、ゴースト
※「ゴースト」(写真上右)はシェルにリフレクティブ(再帰反射)機能を持つカラー
発売時期:2016年11月下旬(ゴースト:2017年2月予定 / Sサイズモデル:2017年2月予定)
photo&text:Makoto.AYANO
photo:Brian.VERNOR
アメリカ、カリフォルニアを拠点とするバイクヘルメットのパイオニア的メーカー、BELL(ベル)。最先端のヘルメットをリリースし続けながらも、安全第一というヘルメットの基本性能を重要視した製品づくりを続けているリーディングブランドだ。
今回、2017年のロードヘルメットラインアップにおけるフラッグシップモデルとして登場するのが、Zephyr MIPS(ゼファー・ミップス)だ。「60年以上にわたるヘルメットの研究開発、衝突実験のデータ、ノウハウの全てをこのヘルメットに注いだ」とするベルが、その集大成として世に問うハイエンドヘルメットとなる。
まずZephyr MIPSの画期的な構造として、唯一このモデルにのみ搭載される新技術が『インテグレーテッドMIPS』だ。
近年の各社のハイエンドヘルメットに搭載されることが多くなったMIPS(ミップス)とは、「Multidirectional Impact Protection System」の略称で、回転衝撃から頭部への衝撃を減少させるスリップ・プレーン(滑り面)システムのこと。ヘルメット内部に配置された1枚のシートが頭の動きに応じて動くことにより、衝撃から伝達されるエネルギーを緩和する働きをする。地面にヘルメットから落ちた時、頭部へのダメージを軽減してくれるMIPSは、すでにオートバイヘルメットの世界では高い評価を得ているシステムだ。
Zephyr MIPSに搭載された「インテグレーテッドMIPS」とは、MIPSのスリップ・プレーンとフィッティングシステムを直結した全く新しい技術。後付けされることが多いMIPSを最初から組み込むことを前提に、かつフィッティングシステムとともに一体設計することで、より軽量で高いフィッティング性能を得ることに成功している。
その他にも、Zephyr MIPSは異なる2層のシェルで構成された「プログレッシブレイヤリング」を採用する。これはちょうど大小2つのヘルメットによる2重構造のような複合シェル構造で、低密度フォームを内側に、強く高密度なフォームを外側に効果的に配置することで、重量増を抑えながら、起こり得る衝撃エネルギーに対処することができるシステム。例えば衝撃を受けた際、頭に近い側のフォームは速やかに変形することでダメージを最小限にするのだ。
これらの複合機能により、Zephyr MIPSは圧倒的な安全性と抜群のフィット感を得ることに成功している。モダンでシャープなルックスはハイエンドモデルに相応しく、同社が「BELL史上最高のロードヘルメット」と謳うに十分な革新的なヘルメットと言えるだろう。
ー インプレッション
スイスで開催されたローンチイベントでZephyr MIPSのテストライドを体験
ここからはCW編集部・綾野が8月にスイスで開催されたZephyr MIPSのプレゼンテーション&テストライドを体験してのインプレッションをお伝えする。同製品を被り、2日間でスイスの山岳地帯において約250kmのライドを通し、開発者とともにZephyr MIPSを体験したレポートだ。
「ユーロバイク開催前にスイスで新型ヘルメットのプレゼンとライドがあるから出席を」という招待を受け、渡欧のため予約していた航空便を急遽変更してスイス入りした。会に集まったのは15人程度の世界のサイクリングメディアのジャーナリストたち。
ヘルメットメーカーが新製品のための発表会とテストライドイベントをわざわざ国外で開催するというのは前例が無い。それだけ同社がこの製品に力を入れている証拠でもあるだろう。
19歳の頃にジョン・トマックに憧れてBELLのヘルメット「IMAGE(イメージ)」を手に入れた私だが、以来、VOLT、GAGE、STAR PROなどBELLの歴代の代表的ロードモデルを使い続けてきた。
BELLのヘルメットの印象は、他社よりも少し重めだが、タフで安全性が高い(と思われる)こと。経営的にはGIROと同一の親会社ながら、派手さを少し控えめに、ヘルメットの基本性能である安全性を最優先してモノづくりをしてきたことに共感を得ている。
スイスの山中にあるホテルにおいて開発スタッフによる製品についてのプレゼンテーションを受けた後、2日間みっちり走るテストライドへと出かけた。欧米ブランドはこういったプレゼンの際に本格的なライドを盛り込むことで、開発者からしっかりと話を聞く機会が得られるのだ。
ドイツ国境に近い、スイスの険しい山中でのライドは非常に充実したものだった。幸か不幸か初日は雨が降り、2日目は暑い夏日。山岳地帯とあって路面状況は非常に険しく、テスト条件が揃っていた。ヘルメットのテストだからといって転倒する必要は無いが、頭にフィットするかどうかも含め、乗り込むことで見えてくることがある。
まずもっとも画期的な「インテグレーテッドMIPS」機構について。幸い転倒することが無かったため頭部へのダメージについては検証できないが、被ったときのフィット感が非常に高いことがまず大きなメリットとして感じられた。MIPSを組み込むことを前提にフィッティングシステムから設計されたとあって、そのフィット感の高さは他のベル製ヘルメットと比べても段違いに良いものだと感じた。
他社のMIPS装着ヘルメットはどうしてもMIPSの後付け感があり、ヘルメット内部に窮屈さを生み出したり、スリップ・プレーンの存在があるがゆえの浮くようなフィットの悪さを感じてきたものだが、Zephyr MIPSにはそれが無く、かなりのフィット感の高さを実感できた。MIPSシート自体がフィットパーツに融合しているため、後頭部のダイアルを締め込むことでフィット感が高められる仕組みだ。
一言にフィット感が高いと言って、それがどれくらいかというと、今まで同社のヘルメットならVOLT、GAGE、STAR PROの3つともにMサイズを選んできた筆者だが、Zephyr MIPSはひとつ小さめのSサイズが被れてしまった。筆者の頭型は典型的な日本人頭で、国産ならKabutoがベストフィットする形状。BELLの他の3つのヘルメットも僅かな違和感を感じながら愛用してきたのが実情だ。
Zephyr MIPSは違和感がないため、いわゆるアジアンフィットと呼ばれるワイドフィットモデルは必要無いとさえ思われる。このことは開発担当者に伝えさせていただいた。その開発担当者曰く、「それこそMIPSとフィッティングシステムを統合(インテグレート)して設計したことによる恩恵だ」とのことで、よりフィット感が高いという謳い文句は、私のケースにおいては実証された。参加したメディアのライダー達もこぞってフィット感の高さに感心していた。
より小さいSサイズが被れたことに対しては、開発責任者のショーン・コフィ氏に被った状態をチェックしてもらったうえで、コフィ氏は「もし問題なく被ることができるならヘルメットもウェアと同様に小さめが良い。例えば転倒して路面を転がった際にも、大きなヘルメットの場合より安全度が高いのは確かだね」と話す。
さらに、コフィ氏にはデザインがハイエンドモデルとしてはやや控えめなフォルムであることに対して質問させてもらった。後部に流麗なフィンや突起部が無い、おとなしいデザインであることに対し、「エッジの効いていないデザインはGiroとの差別化か?」と質問したのだが、コフィ氏は「転倒して地面に接した(転がった)際、ヘルメット後部などの突起が少ないほうが捻りダメージが少ない。それはちょうどMIPSと同じような考えに基づくものだ」と答えてくれた。
Mサイズで280gという重量は、最近の他社製ハイエンドヘルメットと比べるとやや重めな重量だ。2重構造の「プログレッシブレイヤリング」は内部のリブ(骨組み)などが無い代わりに、内側の帽体の外側にもしっかりとしたシェルがあり、”ヘルメットの2つ重ね” のような構造になっている。重量的にはかさむものの、その構造による安全性の高さはMIPSとあいまって非常に高いものになるという。
数字的には気になるが、2日間のライドでその重量をハンデと感じることは無かった。最近愛用しているKASK PROTONEが230g(Mサイズ)であることから、手に持ってすぐに重量差を感じた。しかしそれは被ってすぐに慣れることができるもので、ライドを通してとくに気になるものではなかった。最近の軽量ヘルメットに慣れた人なら同じように感じるだろうが、むしろ安全マージンにつながる安心感として納得できるものだ。
Zephyr MIPSはシェル外殻や全体の作りが堅牢だ。多くの軽量ヘルメットは持ち運びに気を配らないとすぐにシェルに凹みや傷がついてしまうもので、とくに持ち運ぶときなどはハードケース的なもので外側の保護をする必要がある。Zephyr MIPSには布製のバッグが付属するが、むき出しでも凹みを生じないほどシェル外殻の丈夫さがある。
また、走りながら感心したのがスウェットパッドの構造だ。額に当たる部分の汗止めパッドが、ちょうどヘルメット先端部にかけて突き出るように回り込んでいる。走りながらその機能が何を果たすのか認識できた。かいた汗はパッドに集まるが、この先端部の突き出しがあることで、飽和した汗はそのポイントから滴り落ちる仕組みだ。つまり今までのようにアイウェア内側などに垂れることがなく、額からの距離をもって先端のポイントから滴り落ちるのだ。
峠を登りながら頭に激しく汗をかきつつも、汗がこの1点から滴ることでアイウェアを汚すことがない。この点は素晴らしいストレス軽減のアイデア。まさに乗っている開発者でなければ思いつかない構造だ。
2日目のライドは夏日で、コースは平坦のスピードライドだった。通気性が良いのは見た目通りだ。2日間のライドを終えてBELLヘルメットの開発者たちにはこのように伝えた。
「日本のユーザーはヘルメットに対して軽さを重視する傾向があるので、Zephyr MIPのカタログ重量が販売上のネックになると思う。しかし、安全性の高さと設計の素晴らしさを体感することができました。フィット感も素晴らしかった。典型的な日本人頭の私がまったく問題無く被れたのだから、アジアンフィットモデルの開発はおそらく必要無いはずです」と。
筆者の頭サイズは56cm。SとMのちょうど境にある、両方が被れるサイズだ。BELLのヘルメットを今までに被ってきた人ならある程度のフィットの傾向は掴めると思うが、一部のカラーにのみ設定されたSサイズモデルの入荷は2月となる。SかMかのどちらかに迷う人は両方を試着できるタイミングまで待つのが良さそうだ。
【製品スペック】
Zephyr MIPS / ゼファーミップス
価格:27,000円(税抜)
ベンチレーション:18
安全規格:CPSC Bicycle / CE EN1078
サイズ:*S(52~56㎝)266g / M(55~59㎝)280g / L(58~62㎝) 313g
機能
・インテグレーテッドミップス
・プログレッシブレイヤリング
・フロートフィットレース
・ノーツイスト トリグライド
・X-スタティック消臭パッド
・スウェットガイドパッド
・サングラスガイド
・JCF2017取得予定
カラー:*マットブラック/ネオンピンク、マット/グロスレティーナシア/ブラック、マット/グロスレッド/ブラック/ホワイト、マット/グロスブルー/ホワイト、*マット/グロスブラック、マット/グロスホワイト/ブラック、*ゴースト
*Sサイズ展開カラー:マットブラック/ネオンピンク、マット/グロスブラック、ゴースト
※「ゴースト」(写真上右)はシェルにリフレクティブ(再帰反射)機能を持つカラー
発売時期:2016年11月下旬(ゴースト:2017年2月予定 / Sサイズモデル:2017年2月予定)
photo&text:Makoto.AYANO
photo:Brian.VERNOR
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