2016/07/09(土) - 09:39
「キャリアの中で最も美しい勝利」とコメントしたのは、自身2度目のツールステージ優勝を飾ったスティーブ・クミングス。倒れてきたフラムルージュのアーチに接触したアダム・イェーツは「何が起こったのか分からなかった」と当時の状況を語りました。
独走勝利を飾ったスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)
ニーバリやナバーロに勝てるかどうか自信がなかったし、逃げ集団の中にはコフィディスやキャノンデール、アスタナは複数名を揃えていたので戦略的に走る必要があった。ナバーロらのアタックには迷うことなく反応。チームメイトがいるのにどうしてクライマーのナバーロ自ら平地で動いたのかはわからない。とにかくキャノンデール(ブレシェル)とシャヴァネルのチームメイト(デュシェーヌ)との先行は理想的な展開だった。
後ろからニーバリに追いつかれる展開は避けたかったので、早めに仕掛けて独走に持ち込んだんだ。勾配5〜6%の登りが続くアスパン峠は自分向きだった。ニーバリが追いついてきた場合、彼に最後のスプリントで勝てるかどうかを考えながら走っていた。もしかしたらマルコ・パンターニのようなハイペースで置き去りにされるんじゃないかとも思った。
昨年のステージ優勝は夢のようだった。でもしばらくして自問し始めたんだ。「ステージ優勝の次は何だ?」と。答えはなかなか見つからなかったけど、自分の偉業を噛みしめるうちに、またステージ優勝したいと強く思うようになっていた。自分には自信が必要だった。過去の映像を見るのは好きじゃないけど、自信をなくした時はステージ優勝の映像を見返した。自分のトレーニングはいつも同じで、自分の体重はずっと変わらない。つまり勝利する能力を持ち続けている。あとは運が必要だった。
リオ五輪のイギリス代表に選ばれなかったことへの反骨心から何かを成し遂げたいと思うようになったわけじゃない。選考されなかったことは残念だったけど、自分はすでに次のチャプターに進んでいる。ツール・ド・フランスは世界最大の自転車レース。サイクリストにとっては五輪よりも大きな存在だ。
チームにとって大成功だった1週間がこの勝利でさらに素晴らしいものになる。これまでキャリアの中で最も美しい勝利だ。今年のツールはエースのマーク(カヴェンディッシュ)のために走っている。自分を信頼し続けてくれているチームにはとても感謝している。
落車しながらも総合2位に浮上したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
今日はマイヨブラン獲得を狙ってアスパン峠の頂上でアタックしたんだ。少しでもタイム差を稼ぐためにリスクを負いながら下りを攻めた。でもフィニッシュに向かっている時に、フラムルージュのアーチが倒れてきた。実際には何が起こったのか分からなかった。何もできることはなかった。反応する時間さえなかった。
巻き込まれたのが自分一人でよかったよ。もし今日が平坦ステージで、スプリンターたちが70km/hで突入していたら凄惨な結果になったと思う。
とても調子が良かっただけに、落車という形で終わってしまったことは残念だ。顎にまた一つ傷ができたけど、身体は問題なさそう。こんなことはあってはならない。
マイヨジョーヌを守ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
今日の逃げで燃料タンクは空っぽだ。とてもハードだったけど、幸い2日前のダメージから身体は回復していた。昨日が平穏なステージだったので助かったよ。さすがにステージ2勝目は現実的ではなかったけど、マイヨジョーヌを守って、しかもライバルたちから総合リードを奪ったことに満足している。
アスパン峠の手前で逃げグループが分裂した時、追走グループから単独でブリッジをかけるために大きなエネルギーを使った。山岳ステージでニーバリやナバーロ、クミングスに勝つなんて難しい。アスパン峠では自分のリズムで走ることだけを考えた。ニーバリがアタックした時も、リミットを超えないように自分を抑えた。マイヨジョーヌを守ることだけを考えていた。
マイヨジョーヌを1日でも着ると人生が変わると言われている。今日のハードな走りのおかげで明日もマイヨジョーヌを着ることができる。とてもワンダフルな1日だった。でもその代償として明日は厳しい走りを強いられると思う。
安全にピレネー初日を終えたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
いよいよ厳しい山岳が続く週末がやってきた。今はタンクに入った燃料を少しでも浪費しないように走る必要が有る。明日は今日よりもずっと大きなタイム差がつくだろう。今日は決してイージーなステージではなかったので、疲労によってスピードを失う選手も出てくるはずだ。
今日の集団コントロールではモビスターがチームスカイよりも速いペースで集団を引いていた。まるで逃げを引き戻すためにペースを上げているようだった。でもそのおかげで最後のアスパン峠で戦力を失っていたように見えた。
タイムを失わずにピレネー初日を終えたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
最後の1級山岳が1つ登場するだけの単純なコースだったが、スタートからフィニッシュまでずっとスピードが速かった。そしてアスパン峠は強い風が吹いていた。暑さも手伝って調子を落とす選手もいる中、向かい風の中を速いテンポで進んだので、あえて集団の後ろに下がって体力を温存した。ペースの変化には対応しにくいけど、風の影響を受けなくて済んだ。
自分のレーススタイルには反するけど、今日はとにかくコンサバティブに走ることを心がけた。今日のステージは明日から始まるバトルの食前酒にすぎない。今はしっかりとリカバリーして、3週目も視野に入れながらピレネーの2日間を乗り越えたい。明日はもっと厳しいステージが待っている。
マイヨアポワを守ったトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
運が味方して山岳賞トップの座を守ることができた。でも明日は山岳賞ジャージを着て走る最後の日になるかもしれない。ジャージを守るためには逃げに乗って山岳ポイントを量産する必要が有る。そうしたいけど、現実的には難しいと思っている。昨日よりも調子が戻っているのを感じたので、水曜日の逃げのダメージからはしっかり回復できている。
逃げて敢闘賞を獲得したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
懸命に追走して先頭グループが見えてきたときにクミングスがアタックした。レース後に彼と話したけど、どうやら自分たちのグループに追いつかれることが怖かったらしい。今日は正しい逃げに乗り、正しく逃げ続けたけど、レース展開を読むのは難しい。
このツールでは調子を上げることが目標。楽しみながら走りたいと思っている。総合では順位を落としてしまったけど、リラックスしているし、チームの中では笑いが絶えない。総合優勝したジロ・デ・イタリアの後だけど、良い走りをする自信がある。チームのエースはファビオ・アル。彼はとても調子が良いし、彼の総合優勝がチームの最大の目標だ。
マイヨブランを失ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
表彰式が終わってからマイヨブランを失ったと知らされて残念な気持ちになった。でも遅かれ早かれジャージを手放す日がやってくると思っていた。
アスパン峠で失速したティボー・ピノ(フランス、FDJ)
単純に今日は力が足りなかった。言い訳を探してもどうにもならない。ピレネーで失速するのはこれが3回目。ツールには100%の状態で挑まなければならないのに、100%の状態ではなかった。努力が無駄になった。
シーズンのハイライトであるツールでの目標が最初の山岳ステージで途絶えた。準備が悪かったとは思わない。モンヴァントゥーにピークを合わせていたけど、マシーンではないのでコンディショニングがいつもうまくいくとは限らない。今日は今日、明日は明日。明日も今日のような状態になってしまっても驚かない。今日は走り出して2kmほどして調子が悪いと感じていた。
翌日の難関山岳ステージを見据えるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
逃げに大きなリードを与えないようにチームはメイン集団をコントロール。想定よりも速いペースでレースは進んだ。アスパン峠の登坂スピードも想定以上だった。明日は今日よりも総合が動く可能性が高い。
text:Kei Tsuji
独走勝利を飾ったスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)
ニーバリやナバーロに勝てるかどうか自信がなかったし、逃げ集団の中にはコフィディスやキャノンデール、アスタナは複数名を揃えていたので戦略的に走る必要があった。ナバーロらのアタックには迷うことなく反応。チームメイトがいるのにどうしてクライマーのナバーロ自ら平地で動いたのかはわからない。とにかくキャノンデール(ブレシェル)とシャヴァネルのチームメイト(デュシェーヌ)との先行は理想的な展開だった。
後ろからニーバリに追いつかれる展開は避けたかったので、早めに仕掛けて独走に持ち込んだんだ。勾配5〜6%の登りが続くアスパン峠は自分向きだった。ニーバリが追いついてきた場合、彼に最後のスプリントで勝てるかどうかを考えながら走っていた。もしかしたらマルコ・パンターニのようなハイペースで置き去りにされるんじゃないかとも思った。
昨年のステージ優勝は夢のようだった。でもしばらくして自問し始めたんだ。「ステージ優勝の次は何だ?」と。答えはなかなか見つからなかったけど、自分の偉業を噛みしめるうちに、またステージ優勝したいと強く思うようになっていた。自分には自信が必要だった。過去の映像を見るのは好きじゃないけど、自信をなくした時はステージ優勝の映像を見返した。自分のトレーニングはいつも同じで、自分の体重はずっと変わらない。つまり勝利する能力を持ち続けている。あとは運が必要だった。
リオ五輪のイギリス代表に選ばれなかったことへの反骨心から何かを成し遂げたいと思うようになったわけじゃない。選考されなかったことは残念だったけど、自分はすでに次のチャプターに進んでいる。ツール・ド・フランスは世界最大の自転車レース。サイクリストにとっては五輪よりも大きな存在だ。
チームにとって大成功だった1週間がこの勝利でさらに素晴らしいものになる。これまでキャリアの中で最も美しい勝利だ。今年のツールはエースのマーク(カヴェンディッシュ)のために走っている。自分を信頼し続けてくれているチームにはとても感謝している。
落車しながらも総合2位に浮上したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
今日はマイヨブラン獲得を狙ってアスパン峠の頂上でアタックしたんだ。少しでもタイム差を稼ぐためにリスクを負いながら下りを攻めた。でもフィニッシュに向かっている時に、フラムルージュのアーチが倒れてきた。実際には何が起こったのか分からなかった。何もできることはなかった。反応する時間さえなかった。
巻き込まれたのが自分一人でよかったよ。もし今日が平坦ステージで、スプリンターたちが70km/hで突入していたら凄惨な結果になったと思う。
とても調子が良かっただけに、落車という形で終わってしまったことは残念だ。顎にまた一つ傷ができたけど、身体は問題なさそう。こんなことはあってはならない。
マイヨジョーヌを守ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
今日の逃げで燃料タンクは空っぽだ。とてもハードだったけど、幸い2日前のダメージから身体は回復していた。昨日が平穏なステージだったので助かったよ。さすがにステージ2勝目は現実的ではなかったけど、マイヨジョーヌを守って、しかもライバルたちから総合リードを奪ったことに満足している。
アスパン峠の手前で逃げグループが分裂した時、追走グループから単独でブリッジをかけるために大きなエネルギーを使った。山岳ステージでニーバリやナバーロ、クミングスに勝つなんて難しい。アスパン峠では自分のリズムで走ることだけを考えた。ニーバリがアタックした時も、リミットを超えないように自分を抑えた。マイヨジョーヌを守ることだけを考えていた。
マイヨジョーヌを1日でも着ると人生が変わると言われている。今日のハードな走りのおかげで明日もマイヨジョーヌを着ることができる。とてもワンダフルな1日だった。でもその代償として明日は厳しい走りを強いられると思う。
安全にピレネー初日を終えたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
いよいよ厳しい山岳が続く週末がやってきた。今はタンクに入った燃料を少しでも浪費しないように走る必要が有る。明日は今日よりもずっと大きなタイム差がつくだろう。今日は決してイージーなステージではなかったので、疲労によってスピードを失う選手も出てくるはずだ。
今日の集団コントロールではモビスターがチームスカイよりも速いペースで集団を引いていた。まるで逃げを引き戻すためにペースを上げているようだった。でもそのおかげで最後のアスパン峠で戦力を失っていたように見えた。
タイムを失わずにピレネー初日を終えたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
最後の1級山岳が1つ登場するだけの単純なコースだったが、スタートからフィニッシュまでずっとスピードが速かった。そしてアスパン峠は強い風が吹いていた。暑さも手伝って調子を落とす選手もいる中、向かい風の中を速いテンポで進んだので、あえて集団の後ろに下がって体力を温存した。ペースの変化には対応しにくいけど、風の影響を受けなくて済んだ。
自分のレーススタイルには反するけど、今日はとにかくコンサバティブに走ることを心がけた。今日のステージは明日から始まるバトルの食前酒にすぎない。今はしっかりとリカバリーして、3週目も視野に入れながらピレネーの2日間を乗り越えたい。明日はもっと厳しいステージが待っている。
マイヨアポワを守ったトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)
運が味方して山岳賞トップの座を守ることができた。でも明日は山岳賞ジャージを着て走る最後の日になるかもしれない。ジャージを守るためには逃げに乗って山岳ポイントを量産する必要が有る。そうしたいけど、現実的には難しいと思っている。昨日よりも調子が戻っているのを感じたので、水曜日の逃げのダメージからはしっかり回復できている。
逃げて敢闘賞を獲得したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
懸命に追走して先頭グループが見えてきたときにクミングスがアタックした。レース後に彼と話したけど、どうやら自分たちのグループに追いつかれることが怖かったらしい。今日は正しい逃げに乗り、正しく逃げ続けたけど、レース展開を読むのは難しい。
このツールでは調子を上げることが目標。楽しみながら走りたいと思っている。総合では順位を落としてしまったけど、リラックスしているし、チームの中では笑いが絶えない。総合優勝したジロ・デ・イタリアの後だけど、良い走りをする自信がある。チームのエースはファビオ・アル。彼はとても調子が良いし、彼の総合優勝がチームの最大の目標だ。
マイヨブランを失ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
表彰式が終わってからマイヨブランを失ったと知らされて残念な気持ちになった。でも遅かれ早かれジャージを手放す日がやってくると思っていた。
アスパン峠で失速したティボー・ピノ(フランス、FDJ)
単純に今日は力が足りなかった。言い訳を探してもどうにもならない。ピレネーで失速するのはこれが3回目。ツールには100%の状態で挑まなければならないのに、100%の状態ではなかった。努力が無駄になった。
シーズンのハイライトであるツールでの目標が最初の山岳ステージで途絶えた。準備が悪かったとは思わない。モンヴァントゥーにピークを合わせていたけど、マシーンではないのでコンディショニングがいつもうまくいくとは限らない。今日は今日、明日は明日。明日も今日のような状態になってしまっても驚かない。今日は走り出して2kmほどして調子が悪いと感じていた。
翌日の難関山岳ステージを見据えるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
逃げに大きなリードを与えないようにチームはメイン集団をコントロール。想定よりも速いペースでレースは進んだ。アスパン峠の登坂スピードも想定以上だった。明日は今日よりも総合が動く可能性が高い。
text:Kei Tsuji
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